不健全鎮守府   作:犬魚

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帰ってきたMUTEKIゲーマー

【登場人物】

提督(下手の横好きレベル)
得意技はカイザージャンプ、べ、別に狙ってるわけじゃないんだからね!

鈴谷(下手の横好きレベル)
得意技は八●女、カッコいいから使いたがる

平戸(ランキング外)
常に虚ろな目と空虚な笑いを浮かべてる子、提督よりぷよ●よが強いらしい…


提督と埃と誇りある戦い

雨、いや、ホントに雨、梅雨でもないのに長雨かよクソが天気予報を眺めていると、今日も雨に濡れたビッチ臭い鈴谷がゲーセン行こうぜとやって来た…

 

「K●Fしよーぜ!K●F!鈴谷の八●女でブチ殺してやるじゃん!」

 

「やかましい、何がブチ殺すだカスが、暇ならビジネスホテルにでも行って部屋でオ●ニーでもしてろダボが」

 

「なんでビジホ…?ま、いいや、ゲーセン行こうぜ!ゲーセン!近所のゲーセンにストⅡ’入荷したって!」

 

「マジかオイ、しかも今更かよ!」

 

◆◆◆

 

基地から公共の交通機関を利用して約30分程の場所にあるクソボロい貸しビルの地下に存在するゲームセンター“覇我亜怒”…

激動の昭和・平成を生き抜きそしてこの令和の時代にまで残るこの店はもはや近代ヤンキー・ツッパリ文化遺産として国が認めてもいいのではないだろうかと思うぐらい懐かしさと言うかノスタルジーな気分にさせてくれる…

 

ボロい設備、ヤニ焼けした内装、折れたパンチングマシン、不死身と化したワニ、たまに聞こえてくるハメ技への怒号と骨が砕ける音、子供だけで入ろうものなら1億%カツアゲの憂き目に遭うここは地域の小学校でも絶対に立ち寄ってはダメと注意されているとかなんとか…

 

「って!レインボーじゃねーかッ!!」

 

「え?なんか違うの!?」

 

レインボー!!いわゆる、海賊版ROMでタイトルロゴが正規品と違い変な色をしていることからこの名で呼ばれており、ストⅡにはレインボー以外にも様々な種類の海賊版ROMが存在し、その全てのバージョンの違いを把握している人間はおそらく存在しないだろうと言われている…

 

「で?ナニが違うの?コレ?」

 

「やればわかる」

 

そしてコイツはタイトル画面から察するにおそらく“降龍”と呼ばれるバージョン、平たく言えばやたら波動拳がでるバージョンと言っていいが、いやもう、ワケわからんぐらい出る、当時ちびっ子だった世代なら小学校で波動昇竜はある!とケンカになった思い出も一つや二つぐらいあるだろう…

まぁ、対戦ツールにはまったく向かないいわゆるバカゲーと言っていい仕様だが、コレはコレで楽しめるようになったら、オマエはまた一つオトナの階段を昇ったんだぜ

 

「いや、オトナの階段踏み外してるじゃん、ただのクソゲじゃん」

 

「クソゲーとか言うなボケ!これもまた格闘ゲーム史の進化の過程で産まれた青春の1ページだ」

 

「進化の過程で産まれたものの環境に適応できなかったグロい生物じゃん」

 

「なんてコト言うのかね、この娘は」

 

まったく最近の若い娘はそーゆー考えだからいかんのだよ、これはおじさんがわからせなくてはいけないかな?こんな盛り場にパンツ見え見えのそんな短いスカートで来てしまうおバカな娘に、社会と大人の怖さを…

 

そんな大人としての正義感について考えていると、店内南側コーナーのシマから大きな歓声が上がった!

 

「なんだろ?提督、見に行ってみよーぜ」グイグイ

 

「ナチュラルに腕を組むな、折るぞ」

 

「ヒドくね!?」

 

南側コーナーにあるのはたしかバーチャだったか…

そんなコトを考えつつやって来ると、シマにすでに人集りがデキていた…

 

「うわー!!鳥海サンがまるで手も足も出ねぇー!」

 

「あのガキ、ハンパじゃねぇ…!もうこの店でヤツに勝てるのはランキング1位の大淀サンか、覇我亜怒最強の男、バトルキングしかいねぇー!」

 

「つ…強すぎる」

 

ランキング6位の鳥海が椅子から転げ落ち、巻雲や沖波ら仲間達が転げ落ちた鳥海に鳥海サン!鳥海サンと駆け寄った!

 

「ま…まさかこの私が手も足も出ないとは…」クイッ!

 

「う…ウワサじゃ非公式の野試合で既に上位ランカーの霧島サン、武蔵サン、ローマサンも敗れ去ったと聞く!」クイッ!

 

「このガキー!いったいなんなんだよテメーっ!」クイッ!

 

どいつもこいつもメガネをクイッ!とするのを忘れないメガネキャラムーヴ…っ!そして、この店の上位ランカー達をまるで赤子の首をヒネるように蹂躙していると言う謎の存在が!ついにその姿を現したッ!!

 

「あ、テイトク、コンニチハ」

 

「キミは……」

 

対戦台の向こう側からひょこっと顔を出したのは、えっと……なんだっけ?択捉?そう!択捉さんちの姉妹の、なんだっけ?サディズム?いや、サド……いや違う、サドサマはもっとバカっぽいもんな、たしかそう……

 

「…平戸クン?」

 

「平戸です」

 

そう平戸クンだ、そうか………たしかにこの子、前に何度か家庭用のゲーム機で何回か遊んだことがあるが、やたらめったら強かったな

 

「テイトクと……ビッチのお姉さん?」

 

「ダレがビッチ臭いだこのガキ、ジャンプしてみろよコラ、金的カマしてやるじゃん」

 

一目でビッチ臭いとディスられた鈴谷は平戸クンの胸ぐらを掴みあげてなめてんのーっ!と恫喝した

 

「い、いたい!いたい!」

 

「やめんか」

 

俺は鈴谷のお腹にシャークナックルをブチ込んでからのシャークナッパーで鈴谷はヤニ焼けした天井にKISSし、車田回転しつつ頭から床に激しくグシャアッ!!と激突した…

 

「ドヘァ!!」

 

「大丈夫かね?平戸クン」

 

「あ、ハイ…大丈夫、です、ハイ」

 

しかしこの子、あの猛者揃いの上位ランカー達と互角……いや、それ以上の実力があるとは……大した子だわと感心していると、覇我亜怒の入口のあたりが急にざわめき始めた…っ!!

 

「も、望月サン!」

 

「望月サンだ!」

 

「間違いない望月サンが、望月サンが久々にこの店に…っ!」

 

『『『帰ってきた!!!』』』

 

覇我亜怒の扉を開き、やって来たのは睦月姉妹の十一女、望月さん…

彼女もまた、このゲームセンター覇我亜怒の上位ランカーとしてその名を轟かせ、特に、バー●ャ2では無敵の強さを誇っており、その強さはランキング1位の大淀がバー●ャ2では望月さんとの対戦を避けるとまで言われ、バー●ャ2でなら謎に包まれたこの店の最強MUTEKIゲーマー、バトルキングにすら勝てるのでは?と噂されていた……

 

…がっ!しかし!!

 

彼女はその最も得意とするバー●ャ2で敗れたッ!!(※第673回 提督と鈴谷と乱世の風 参照ですわ!)

 

バー●ャ2ではMUTEKIを誇った望月さんの敗北は本人だけでなく、この店の上位ランカー全てに大きな衝撃を与え、そしてその敗北以来、望月さんはこの覇我亜怒に顔を出さなくなっていた…

 

それが今!!遂に望月さんは帰ってきたのだッッ!!漆黒のゲーラを纏い、闘争心と殺意を剥き出しに!!

 

※ゲーラとは?

ゲーマーオーラの略称、スンゴイゲーマーが放つオーラ的なもの、心が弱いものならそのオーラに触れただけで敗北を認めるどころか入店しただけで敗北を認めてしまいますわ

 

「な…なんてゲーラだ、まるで猛獣!喰い殺されねぇかってぐらいだ!」

 

「あぁ、相当仕上げてきたぜこりゃ…!」

 

覇我亜怒の仲間達曰く、望月さんは先の敗北から己と向かい合い弱さを克服し、精神力で勝るべく徹底的に自分を追い込む荒行に入っていたらしく、そのトレーニングの過酷たるやその場には耐久力を超えた使用で壊れたアーケードスティックが何個も転がっていたそうな…

 

「オレ、ビビって金出しそうになった」

 

「いや、フツーに出さないっしょ」

 

ちなみに、このゲーラは鈴谷のような低レベルにはまったく知覚できないらしい

 

そんな鬼と化した望月さんのターゲットはただ一人、望月さんの無言のアイコンタクトを察したのか、平戸クンはとても嬉しそうに笑みを浮かべて望月さんの座る台の向かい側の台に座った…

 

「は、始まるぞ!望月サンと白チビのリベンジ・マッチがッ!」

 

「クッ!なんてプレッシャーだ!息が詰まりそうだぜ!」

 

「勝てる!勝てるぜ望月サン、あんたなら勝てるぜ…!そうさ望月サンはオレ達のヒーローなんだから!」

 

 

この戦いはゲームセンター覇我亜怒の長い歴史の中でも後々まで語り継がれる名勝負、望月夏の陣・背水の逆転劇として長く語られるコトとなった…


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