【登場人物】
提督(中佐)
忘れがちだけどまだ中佐、秋雲の漫画にわりとテキトーなアドバイスを送るジャ●プ歴20年のめんどくさい読者
秋雲(漫画家)
画力と技術力だけはあるらしく、わりと色んなタッチの絵が描ける上に速筆、ただ、絶望的なまでに話を考える能力がないらしく、原作の山田ゼレフ先生とも作風がそもそも合わないせいでよく揉める
原作なしで描くと、筋肉力と男臭がやたらと上がる
初夏の梅雨明けには蒸し暑さにイライラする執務室…
「で?どうすか?今回は方向性をかなり変えてみたんすけど…」
金やちやほやして欲しいからではなく、ただ純粋に!読んで貰いたいからこそ漫画を描く!そのアツい情熱を持つ少年漫画家(アマチュア)秋雲先生の新作漫画…
内容としては、誰にも言えない秘密を持つ魔女(巨乳)がドラゴン族の双子の子供の奴隷を買い、家族同然に育てていくけど最近何故か変、私の知らない間に立派に育った奴隷の子達が私に催眠術をかけて私を●してる…!?ヤンチャ系&インテリ系奴隷の催眠W責め…っ!
「いや、普通にジャ●プに載せられねぇーだろ!ナニオマエいきなりこんなどエロイの描いてんの!?なんなの?なんかイヤなコトあったの!?」
「や、たしかに今回は描いててなんか違うな、と思いはしたんすけど…」
なんかネット広告とかでこんな漫画見たコトある気もしなくもないが…
しかし相変わらず絵だけは上手いなコイツ、もう少年漫画諦めてコ●マガジンとかワ●ブックスとかに持ち込めよマジで、これで目標の漫画家は本宮ひ●志先生とか才能の方向がまるで違うだろ
「やっぱアレっすかね、山田ゼレフみてぇーなエロラノベ屋と関わり合いになったのがマズいんすかね」
「山田ゼレフ先生をエロラノベ屋とかゆーな」
「クッソ!こんなのじゃいつまで経っても団地妻エージに追いつけねぇ!!アイツの漫画、漫画→アニメ化→映画化→興業記録更新中とかマジパネぇんすよ!マジパネぇんすよ!」
「知ってるのだよ」
少年達のハートをガッチリキャッチする漫画を描かせたら漫画史にも必ず刻まれるであろう本物の天才、団地妻エージ先生、っーかその団地妻エージ先生も山田ゼレフ先生も普段はウチで働いてるってんだから世間は狭いものだ
「しかしまぁアレだろ、オマエ疲れてんだよ」
「やっぱ疲れてるんすかね?このクソ暑いのに部屋にこもって窓だけ開けて原稿描いてたせいか、ブラウスもパンツもビチョビチョなんすよ、ビチョ濡れっすよ!」
「そりゃオマエアレだよ、水分が足りてねぇんだよ、まずは深呼吸して自分の胸に手を当てて聞いてみろよ、カラダが水分を欲してるよ」
「やっぱそうなんすかね?ハー…フー…ハァー……フゥー!か、渇くゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」
秋雲は今更己の水分が足りてないことに気づいたのか、まるでヴァンパイアに血液を吸われた被害者の如くみるみる全身が枯れ木のようにヘシ折れたので、とりあえずグラスに入った麦茶をぶっかけてやると、麦茶をぶっかけた部分だけ肌にツヤが戻った
「まったく、相変わらず仕方のねぇヤローだなテメーは、よっしゃ!今からマミー屋で甘いモン食ってエネルギー充填すっか!奢ってやんよ!ガハハハハ」
「マジっすか!さすがテイトク!カーッ!秋雲!元気がMORIMORI湧いてきたっすよ!ガハハハハー!」
そんな夢と希望がMORIMORI湧きつつ互いにガッチリと手を組む俺達に対し、自分の席で趣味のクロスワードパズルを嗜んでいたらしい秘書艦サミー子は頭の悪いやつを見る目で俺達をチラ見してたが、わりとどうでも良かったのか、再びクロスワードパズルに視線を戻した…
◆◆◆
「コーヒーとティラミスを2つ」
「コーヒーとティラミスですね、あと、ご一緒にイカの塩辛はいかがですか?」
「いらないのだよ」
甘いモンも辛いモンも扱う本格スイーツ店、マミー屋
今日はオススメは特にないのか、執拗なオススメをオススメされなかったが…………なんでイカの塩辛?大量在庫とかか?
そんなわりとどうでもいいコトを考えつつ、俺達は無事に注文の品を受け取り、テキトーなテーブルにでも座るかと思っていたら……
「お、早霜じゃねーっすか!」
店内の奥、窓際の席に座り雑誌のようなものを読みつつティーをしているのはたしかにキタローくん
秋雲はキタローくんにオイオイオイと馴れ馴れしく声をかけつつ同じテーブルの椅子を引いた
「…秋雲と、提督………こんにちは」ボソボソ…
「カーッ!相変わらずネクラっ子っすねー!アンタさんもティーっすか?」
「…そうだけど」ボソボソ…
「ふ~ん、ナニ読んでるすか?月刊サスペ●アすか?ってオイィィィ!!テイトク!コイツ少年ジ●ンプなんか読んでるっすよォォォォォォ!!」
「そりゃキタローくんだって少年ジャ●プぐれー読むだろ、そんなビビるこたぁーねぇだろ」
秋雲はコイツはたまげたなぁとか言いつつ、コーヒーをグィーッと一口に呷った
「苦っ!!」
「そりゃオマエ、ミルクと砂糖入れねぇからだろ、ガキがムリしてブラックなんか飲むんじゃないよ」
「ムリなんかしてねーっすよ!早霜!アンタはどうなんすか!」
「…私はブラックで」ボソボソ…
「カーッ!この子ったら大人ぶってムリしちゃってー!見てやってくださいよテイトクぅ!この大人ぶっちゃってる冴えない顔!まるで冴えないカノジョっすよ!」
何故か秋雲はキタローくんに対してやたらマウントとりたがる傾向があるが、たぶんまぁ、性格的なものだろう
「冴えないカノジョとか言うんじゃないよこの子は、キタローくんは今でも十分に冴えてるぞ、きっと将来は引く手あまたな美人なお嫁さんになれるな」
「カーッ!マジっすか!この呪いの日本人形みてぇーなヤツがすか!」
「呪いの日本人形とかゆーな」
その呪いの日本人形みてぇーなヤツがオマエの宿命のライバル(一方的な)団地妻エージ先生なんだが…
「キタローくん、コイツバカなだけだから気を悪くしないでやってくれ、そうだ!お詫びに提督に何か奢らせてくれないかね?うん、それがいい、好きなものを食べてくれたまえよ!」
「…いえ、そんなに気にしてませんし」ボソボソ…
「ナニ言ってんすか!ケチで有名なテイトクが好きなモン食っていいって言ってんすよ!ケーキ!ホールでいくっすよケーキ!で、私にも分けてください」
「…死ね」ボソボソ…
「え?なんだって!?よく聞こえねー!!」
「…なんでもないわ、なら、アナタの好きなものでいいわ、早く注文しに行って、1秒でも早く、あと、ここ戻ってこなくていいわ」ボソボソ…
「え?なんだって!?後半よく聞こえなかったっすけど秋雲さんの好きなのでいいんすね?おっしゃ!!任しとき!腹いっぱい食わせてやるからよォー!」
秋雲はヒャー!ガマンできねー!とか言いながら颯爽とカウンターへと走って行った……アイツ、ヒトの奢りとなるとマジで容赦ねぇな
っーかこの店で容赦ねぇ注文とかされたら提督の財布が痛いじゃ済まないのだが、手持ちがねぇよ!
「…問題ありません、私だしますから」ボソボソ…
「いやいや、そーゆーワケにはいかんよキミぃ」
「…大丈夫です、お金なら持ってますから」ボソボソ…
さすが団地妻エージ先生ェ、たぶんこの基地に所属してるヤツの中では納税額はトップじゃないだろうか…
むしろ俺よか納税額してると思う
「ま、まぁ!提督の手持ちでダメそうな時は頼もうかな、うん」
「…そうですか」ボソボソ…
この後、バカみてぇに注文してきた秋雲、そしてたまたまマミー屋へとやってきた秋雲組の仲間達と共に秋雲先生の漫画を大いに考える会を開始!アツいディスカッションとなった
【7月某日 ある駆逐艦の日記】
今日、あの人と間宮で楽しくお茶をした、まるで夢のよう、とてもとてもとても夢のような時間だった
あの人のコトを想うだけで私は十分満たされるのに今日はなんて良い日なのだろう、あの人は私にケーキは好きかね?あ、もしかしてビター系のほうがいいかな?と聞いてくれたり、コーヒーのおかわりはどうかな?と何度も私を気遣ってくれたけど、やはり緊張してしまって上手く受け答えできなかったのが悔やまれる
そうそう、あの人は私に素敵なお嫁さんになれると言ってくれた、素敵なお嫁さんに、素敵なお嫁さんに、素敵なお嫁さん素敵なお嫁さん素敵なお嫁さん素敵なお嫁さん素敵なお嫁さん素敵なお嫁さん素敵なお嫁さん
いけない、つい興奮してしまった、今日はもう寝よう、きっと素敵な夢が見れる予感がする
今日もあの人に幸福な夢を…
あと、あの人に馴れ馴れしくまとわりつく秋雲には死を、できる限り苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しみ抜いた後に残酷な死を
次回、次回から……たぶんifエンド回、たぶん