【登場人物】
提督(研究者)
あれは発情してる合図だよ
第四号海防艦(4)
哀しき存在
松(アネゴー)
基地には珍しい常識人
湿度が高くてイライラしがちな梅雨の日、たまに晴れると気分が良いものだ、思わず鼻唄でも歌っちまいそうだなぁ〜ンンフーッと思いつつ明石の店に菓子パンとタバコを買いに行くべく歩いていると、なにやらスケッチ・ブックのようなものを持ったガキが目についた…
「アレはたしか…」
えぇと……誰だっけ?たしか名前は〜………名前、いや、名前…?誰だ?あの子は?名前、あの子供の名前……バカな!思い出せないッッ!!ファミリーの名前を忘れているのか俺が?いや、あり得ない!俺はファミリーを大事にする男!ならばこれは………敵の“能力”ッ!!既に攻撃されているッ!!
「こんなトコで頭抱えて、何してるんですか?テイトク」
「気をつけろ!!既に敵の攻撃は始まっている!よくわからんが忘れさせる能力だ!」
スケッチ・ブックを持った子供とは別に、なにやら菓子パンの袋みたいなのを持ったヤツが俺に話しかけてきた!
「はぁ?」
「そしてキミは………えぇと、松クン、だったかな?」
「はぁ、松ですけど…?」
そう、たしかこの娘の名前は松クン、見た目だけならたぶんフロントウ●ングさんのゲームに居ても違和感のないツラをしている娘…
「マツのアネゴー!どうしたんですかぁ?あ、テイトクだ!こんにちはぁ」ペコォ!
「あ、あぁ?こんにちは」ペコォ!
この基地に所属してるクズどもには珍しく提督様に対して懇切丁寧におじぎしてアイサツする子供……そうだ、思い出した、いや……そもそもこの子には最初から名前など無かったのだ…
第四号海防艦………それがこの子を現す名前であり、記号である
提督も詳しくは知らないが、予想はできる…
おそらく、かつて軍の施設で行われたであろう最強の艦娘を作り出す事を目的とした計画、それは非合法・非人道の実験であり、多くの名もなき被験体達がその肉体と精神を破壊され処分されたのだろう…
そして、被験体No.4と名付けられたこの子は運良く施設を脱出したか、もしくは施設自体が計画そのものと共に消えて無くなったか……それはわからないが、とにかくこのNo.4は悪魔の実験施設から表の世界へと出る事ができたのだ
見た目、年端もいかない無邪気な子供だがこの子にはきっと辛い、そして哀しき過去があるのだろう…
「テイトクはお散歩ですかぁ?」
「ん?あぁ、まぁ、そんなとこだな、キミは何をしていたのかな?」
「ハイ!よっつはぁ〜…マツのアネゴとシャセイ大会です!」
「射精大会…?」ゴクッ…
「写生大会ですよテイトク、絵を描いてるんですからね」
「モチロンわかっているのだよ」
松クンの冷静で的確なツッコミはさておき、松クンによると今日は鹿島先生の授業で海防艦全員による写生大会が開催されているらしく、テーマは基地の中で暮らす生物を描きましょうなそうな…
「またえらく抽象的だな」
「そうなのよ、で、私はよつのお目付け役兼お手伝いってワケ」
「なるほど」
4号クン1人だと珍しい蝶とか見つけてフラフラしてそこらのドブに両足突っ込みかねないし、ガラの悪いお姉さんにカツアゲされかねないからと、まぁ、心配しているのだと…
「ふ〜ん、まるでお姉さん気取りだな」
「お姉さん気取りも何も長女だし、松型姉妹の長女ですよ?私」
「そういやそうか」
そう言えばたしかウチに妹もいたな、なんかガラの悪いヤカラみたいな……なんだっけ?タケだっけか?なんか激烈ローライズの痴女なのかロックなのか際どい判定のパンツ穿いてるやつ
「そのローライズ妹は何をしているのかね?」
「さぁ?私が部屋を出る前は部屋で漫画読んでましたけど?あの子、基本気分屋なんで…って言うか、ローライズ妹って……」
そんなわりとどうでもいい世間話をしていると、4号クンがアーッ!と声をあげてなにやら見つけたらしく走り出した
「アーッ!犬です!マツのアネゴー!犬ですよぉ!」
「Was?ビックリした」
「誰この子?レーベの知ってる子?」
「さぁ?知らないけど…」
どうやら犬の散歩をしていたらしい戦慄のドイツJr.!レーベきゅんとマックスきゅんは知らない子?が駆け寄ってきた事に戸惑いを隠せないようだったが、すぐに別に悪い子ではなさそうと気付いたようだ
「やぁレーベくんにマックスくん、犬の散歩かね?」
「あ、テイトクだ」
「コンニチハ、見ての通りよ」
レーベきゅんとマックスきゅんが連れているのはダルメチアンの老犬……以前、グラーフ・ツェッペリンがどこかで拾ってきた?らしく、その名もグラーフ・ツェッペリン犬…
「犬ですよぉ!マツのアネゴ!」
「そうだねー、犬だねー」
「マツのアネゴー!コイツをスケッチしてやってもいいですかねー?」
「どうかなぁ?それは飼い主に聞いてみないとねー」
松クンはレーベきゅんとマックスきゅんにとりあえず事情を説明すると、二人は別にいいんじゃない?と快く応じてくれた
「まぁ、そもそもボク達は飼い主じゃないけど…」
「グラーフ・ツェッペリン犬だしね」
「ナニその名前?え?名前なの?それ…?」
ある日、どこかに行っていたらしいグラーフが寮に帰ってくると、グラーフの後ろを付いてきたらしいこのダルメチアンの老犬、それを見たレーベきゅんとマックスきゅんはそれはグラーフの愛犬か?とグラーフに尋ねると、グラーフはその老犬を一瞥し“ふむ、私の犬に見えるか”とだけ答え、それ以来、寮でこの犬を飼っている………と、松クンに懇切丁寧に説明してくれた
「へぇ〜、ってかちゃんとした名前付けてあげないの?」
「さぁ?グラーフが付けてないっぽいし」
「だからグラーフ・ツェッペリン犬なのよ」
とりあえず4号クンのテーマである基地に住む生物も決まったので良かった良かったと提督も安堵していると、なんか中庭の方からキィーキィー叫び合う声が聞こえてきた
「なんだ?」
「アレじゃない?」
松クンが指差した先に居たのは………絶対スカート穿かないわ制服はスケスケだわで基地の風紀を乱しまくりの痴女、天津風クンとMAJOR出身のジブン大好きワガママハイスペックガールのジョンくんの2人…
「なんかケンカしてるのかしら?」
「どうせくだらねー理由だろ、たぶん」
アイツら、なんかよくわからんがお互いに嫌いらしく、非常に仲が悪い
「マツのアネゴー、テイトクぅー、アレはナニをやってるんですかぁ?」
「あれはアマツカゼ同士の縄張り争いなのだよ」
「ナワバリ?」
「そう、あの頭の白い方がニホンアマツカゼで茶色のがアメリカアマツカゼと言う、同じアマツカゼ類アマツカゼ目ではあるが非常に仲が悪い種でね、どちらも見た目がよく似ており、性格も攻撃的で凶暴なアマツカゼだが、ニホンアマツカゼは敏感で身が締まっており、アメリカアマツカゼは肉厚でジューシィと言われているのだよ」
「へぇ〜ベンキョーになりますっ!」
「いや、そーゆーワケわからない嘘よつに教えないでくれますか?よつ信じちゃうから」
「どっちが強いんですかぁ?」
「一般的には外来種でサイズの勝るアメリカアマツカゼの方が強いと言われてるね、しかしニホンアマツカゼは繁殖力がとても旺盛で一年の内300日以上発情期と言われているよ」
「だーかーら!!よつに変なコト教えんなっーのッッッ!!!」
ギリギリギリギリギリギリ!!(卍固め)
「グオオオオォォ!!痛いっ!スゴく痛い!!すいませんでしたッ!本当にすまないと思ってます!チョーシに乗りました!」
「許すかッッッ!!死ねっ!」