【登場人物】
提督(テイトク)
忘れがちながら未だに中佐、大佐に戻れる日はいつ来るのだろうか…
「えー…新しい年度になり、今年もこの時期がやって参りました、えー…前年度は皆さんの頑張り、そして奮起もあり、上から振られた思わず無茶ゆーな!と言いたくなる作戦の数々も無事に完遂し、新しい仲間を迎えることができました、えー…毎年のコトですが、上から今年度の目標を問われ、当基地の運営としましては甲勲章を是が非でも拝領できるように粉骨砕身する所存ですと答えたところ、オマエ毎年そう言ってるやん?やる気あんの?今、若いのでも甲勲章当たり前に持ってんのに何オマエ?やるやる詐欺も大概にせぇよダボ!との有難いお言葉と共に今年度の私の給料が5%カットされました、しかし、一応、どのような形であれ作戦は完遂している事は評価され、基地運営の予算はちょっと増えました、つきまして、ちょっと増えた予算を提督のカットされたお給料の補填とし、皆さんにはこれまで通りのエグみある中抜きしたお給料を…」
『コイツ、最悪だぞ…っ!!』
『ふざけんなテメー!!死ね!クズがーッ!!』
『足クセーんだよ!!』
季節は新年度に替わり、遂にシーズン開幕となる春の作戦海域…
基地体育館で当基地恒例の作戦海域全艦集会を開催しており、まず始めに提督様からの有難いアイサツをとなっているワケだが……おーおー、クズどもがCanCam吠えよるわい、壇上へ容赦なく浴びせられる罵声、雑言、怒号……見た目だけは可愛い艦娘達からのこの苛烈な仕打ちに並の提督ならノイローゼに追い込まれるだろうが、この俺は違うッッッ!!
『くたばれ!クソメガネが!』
『オイ!石持ってこい!石!ドタマカチ割ってやる!』
『あったよ!弩が!』
『でかした!』
◾️◾️◾️
「あのクソヤローどもが、提督様をいったいなんだと思ってやがるんだ、まったく……どいつもこいつも」
ったく、楽しい全艦集会で石とか投げやがって、っーか躊躇いなく頭部直撃のストレートとかマジで殺る気かよ、ゴシャアッ!とか擬音があったぞ!ゴシャアッ!って、おとさんでも即死するわ、そんな殺意の高い擬音…
そんな殺意の高い全艦集会も無事に終わり、缶コーヒーでも飲みつつ栄えある開幕戦のメンバーでも考えるかと自販機コーナーへと歩いていると、見知った顔のバカどもがぞろぞろ歩いていた
「よぉクズども、今からパチ●コか?」
「ハァ?行くワケねーし」
「ジョーダンは足の臭さだけにしとけなのね」
「やかましい、乳捥ぐぞテメー、あと、俺の足は臭くない」
ぞろぞろと歩いていた集団、潜水艦ズ
基地一番の働き者達としてこの基地の運営と発展に貢献してきたのも今は昔、数年前の海域刷新による働き方改革の影響を強く受け仕事量は激減、当時、稼ぎたいなら男は佐●急便、女は潜水艦と言われていた稼ぎも減少した
そして、かつてスーパーエリート戦士だった面影は最早なく、日がな博打と酒、ケーブルテレビだけを楽しみに生きるエリートニートと半ば化している
「あ、テイトクだ〜…コンニチハ」ペコォ…
「ん?あぁ、こんにちは」ペコォ…
クズどもにしては珍しく懇切丁寧にこの俺に挨拶してきたので思わず挨拶を返してしまったが……誰だコイツ?ウチにこんな娘いたっけか?
「ヨナタス、そいつクズだから頭なんか下げなくていいって」
「あと、手ぇ握られたら妊娠するってウワサだよ」
「誰が手ぇ握っただけで妊娠させるってか?あ?」
ギリギリギリギリ!(魔のテイトククロー)
「ぎゃあああああああああああ!割れる割れる割れるぅぅぅ!26のアタマァァァァ!!痛ァァァァ!!」
「26ーッ!!」
「オレらのナカマに手ぇ出してんじゃねーぞクソメガネが!ロー!ガンマナイフだ!」
「がるるるる!26パイセンを放すですって!」
潜水艦のクズどもから執拗なローキックを喰らい思わず体勢がグラついた俺は魔のテイトククローで頭部破壊をキメかけていた26を思わず放してしまった
「26!無事か!」
「大丈夫ですって!?ニンシンしてないですって?」
「…ユーも、心配」
「いけないのね、とりあえず上着を脱がすのね!」
「下もでち!いや、全部脱がせ!」
フン、クズどもにはクズどもなりに仲間を想うアツい友情とやらがあるか……っーかやっぱ乳デカいなコイツ、19のキョーダイってだけはある、写真撮っておこう
「見てるんじゃないです」
ガゴォ!(カド)
「アガッ…!痛いじゃないか?」
「カドですから」
潜水艦唯一の社会派潜水艦、8っちゃんさんから分厚い本のカドで殴られた
「フーッ〜…で?8っちゃんさん達はこんなとこでナニしてんの?サザエでも獲りに行くの?」
「いえ、今からみんなでヨナタスの泳ぎをみてやるって話になって…」
8っちゃんさん曰く、今回の作戦海域、久々に潜水艦の出番もあるらしく、今やただのクズどもだが、かつてオリョール海の荒波で鍛えられたスーパーエリート戦士であるその泳ぎは未だ健在である
かつての激務をまったく知らない優しい子である新人のヨナタスは潜水艦のセンパイ達にとても可愛がられているらしく、あの19さんが焼肉奢ってくれたり、168が服を買ってくれたりお小遣いくれたりとそれはもう蝶よ花よと可愛いがっているらしく、優しい子であり思わず守護ってあげたい気分にさせてしまう生来の魅力を持つヨナタスはすさまじく甘やかされていた…
しかし、甘やかすだけが教育ではないッッッ!!潜水艦として最低限度のPRIDEは必要である
そんな意見もあり、元々才能ある子であるヨナタスの才能を伸ばしてやりたいし本人もやる気があるとのことから今回、みんなでヨナタスに泳ぎの指導をしようと言う流れになったそうな…
「ふ〜ん、そうか……そう言えばヨナタスはオリョール行ったコトねぇんだな」
「そうなんです」
「なるほど」
安心の開幕五十鈴パイセン