【登場人物】
提督(男児の春)
この基地で一番偉い絶対支配者、舐められがち
佐渡(S)
自称も他称も佐渡サマ、ドS
対馬(善)
動物に優しい基地に珍しい善人
帰ってきた真冬の厳寒と思いきや手のひらを返したようなポカポカ陽気、そんな気まぐれなたった一度の今日と言う日…
「あ、テイトクだ!」
「ホントだ、こんにちはぁ〜」
たまには基地内を点検して回るかと歩いていると、虫カゴ的なものを手にしたガキに声をかけられた
「よぉ、佐渡サマと……対馬クン、だったかな?」
「そうよ!そのまさかよ!」
バカガキ特有の実に元気の良いお返事をしてくれるのは敵・潜水艦を加虐なまでにいたぶり、苦しむ顔を見るのが何よりも好きだと無邪気に話す新世代のドSプリンセス、自称も他称も佐渡サマ
「そうです、ツ シ マ です」
佐渡サマの妹、対馬クン、常に瞳孔が開いたような目をしているが、バカガキだらけの海防艦の中では比較的真面目で良い子らしく、先日の絵画コンクールでは海防艦唯一の金賞を受賞した
「ナニやってんだ?ザリガニでも釣りに行ってたのかね?」
「ちげぇーよ、ほら!コイツ捕まえてきたんだぜー!」
そう言って佐渡サマが虫カゴから無造作に取り出したのは………カマキリ、そう、カマキリだ
いや、カマキリ?なんで…?何故この子はカマキリを…?いかんいかん、考え過ぎは良くないな、子供とは無邪気なものだ、ワンパクでもいい、子供は度胸、なんでもチャレンジしてみるべきだ
「で?そのカマキリどうするんだ?飼うのか?」
「佐渡サマとしてはこのカマキリ……スライスジョニーと対馬の飼ってるハムスターを決闘させたいと思ってる」
「や、やめてよぉ!」
「バッキャロー!!」
佐渡サマの容赦のないキックが対馬クンの尻に炸裂し、対馬クンはぎゃん!と声をあげて地面に転がった
「対馬ァ!オマエはスライスジョニーとハムスターの対決、見たくないのかーッ!」
「み、見たくないよぉ〜…」
「フン、相変わらず乳臭さの抜けんヤツよ、それでもオマエは海防艦の子かーッ!」
佐渡サマは対馬クンを羽交い絞めし、自身の両膝を対馬クンの膝上に絡ませ急所を全て破壊する勢いで締め付けるッッ!!
「ヌゥ……あの技は艦娘圧搾機」
なるほどさすが佐渡サマだ、まだまだ子供と思っていたが既にあの技を習得しているとは、やはり天才か…
ミシミシミシミシミシ!!(艦娘圧搾機)
「痛ァァァァァァァァ!!痛い!痛いよぉ!!」
「どうだァ!!対馬ァ!オマエも海防艦になれ!海防艦になると言えェェェ!」
「も、もぉ海防艦だよぉ!!」
「…………そっか、それもそうだな」
佐渡サマはアッサリと艦娘圧搾機を解き、全身を痛めつけられた対馬クンはヒィヒィ言いながら地面に転がった…
「佐渡サマは嬉しいぞ!対馬ァ!」
「そ、そう……」
佐渡サマは愛する妹をガシッ!と抱きしめ、オマエは海防艦だ!誰がなんと言おうと海防艦だ!とアツく背中をバシバシ叩いた
「素晴らしきかな友情、実にアツい友情の姿よ」
これからの新時代を担う若者達のマグマのようにアツいドロッドロの友情の姿に胸を打つナニかを感じずにはいられないなと考えていると…
「お、オッサンじゃん、ナニやってんだ?」
「あ…天霧、オッサンじゃないで提督って呼ばないと…」
「む?キミ達は…?」
明石の店にでも行った帰りなのか、菓子のようなビニル袋を持った仲良し姉妹……えぇと、なんと言ったかな?たしか、メガネの方が天霧クンで、幸の薄そうなのが…え〜…サギーくんだったか?
「2人は買い物かね?」
「ん?あぁ、アタシは飲み物で狭霧はエロ本買ってきた」
「エロ本じゃないよ!?資料!資料だからね!そう、資料……提督、資料ですから!」
「そうかね」
見た目、清らかな空気の中でしか生きられない森のエルフのように儚げで清純派なサギーくんだが、ワリとエグい性描写とバイオレンス展開に定評があり、あの気難しくてPRIDEが高くてア●ルが弱そうな金髪美少女のパースちゃんが大ファンだと言う人気黒ラノベ作家、山田ゼレフ先生その人でもある…
「お、カマキリじゃん」
「天霧ねーちゃん!天霧ねーちゃんもカマキリ好きなのか?」
「まぁ、好きか嫌いかったら好きかもな…」
天霧クンは佐渡サマにちょっとカマキリ貸してくれよと虫カゴからカマキリをヒョイっと取り出し、地面に置いた…
「なぁチビっ子、ライオンとかヒグマは強いと思うか?」
「あったり前じゃん!しかもカッコいいしな!」
「そうだよな、じゃあチビっ子、ライオンより、ヒグマより、いや、アフリカゾウより強いヤツがナニかわかるか?」
「う〜ん………わっかんねーな!」
「ハハ…そうか、わっかんねーか!でもなチビっ子、その…ライオンより、ヒグマより、アフリカゾウより強い相手は、もうそこにいるんだよ…」
「ハァ?ナニ言ってんだ天霧ねーちゃん、そこにって…」
カマキリじゃん!!
戦いという一点において昆虫はプロ中のプロ!猛獣なんか目じゃない…
まずは体力が桁違いだ、虎やライオンは自分の3〜4倍の重さの獲物を引きずって運ぶ、なら昆虫はどうだ?昆虫は、自分の7〜8倍の重さのエサをノンストップ長距離輸送だッッッ!!
ひとっ跳びで10mをジャンプする鹿類は珍しくないが、蚤やバッタに比べりゃかわいいもんさ、彼らが人間大のサイズなら10階建てのビルなんて楽々飛び越える…
そんな昆虫を手に取ったときに感じるハズだ、体重はオレらのわずか数千分の一……
なのにッッ!!指先に感じる彼らのパワーッッ!!!
もし彼らが同じサイズなら絶対に勝てない!!
あの脚力で蹴られたら!あの前脚で抑えこまれたら!あの鋭い牙で挟まれたら無事では済まないッッ!!!
「〜〜〜〜〜〜ッッッ!!」
「そこで、このカマキリだ、彼こそは戦いのプロフェッショナル…」
中国拳法におけるカマキリの動きを参考に創りあげられた蟷螂拳ッッ!!打撃!抑え込み!咬みつき!そして凶暴性!何をやらせても超一流!!
「もしそんなカマキリがオレら同じサイズになったなら…」
必ずアフリカゾウを捕食するッッ!!!
「…………でも、ちっちゃいじゃん」
「そう、なら………大きくすればいい」
後に、この場に居合わせた海防艦佐渡(択捉型)は我々にこう語った…
えぇ、たしかにそこにいたんです、その…デカいカマキリが、いやマジで、すっげーデケーのが、対馬なんかビビっておしっこ漏らしたもん
あと、テートクがやはりキミは天才だ!やはりキミは天才だ!やはりキミは天才だ!ってうっさかった