【登場人物】
提督(アーケード仕様)
ゲーセン=カツアゲ、ヤンキー=めっちゃ上手い
Warspite(高貴)
唯一無二の高貴な存在、庶民文化に興味しんしん丸
Nelson(剛毅)
陛下にも頭を下げない唯一無二の余、金ならある
明石(クズ)
提督と並ぶ基地クズ大人ランキングのトップランカー、本当に金が好き
深々と雪が降り積もる1月の寒い季節…
今日はどの娘にセクハラしてやろうかなと考えつつ執務室で基地スポを読んでいると執務室の電話が鳴り、女王陛下から今すぐ来いとlove call…
正直、女王陛下から直々の呼び出しとか本気でイヤな予感しかないが一体なんだろうか?まさかお茶会のお誘いか?いや、ないな、俺のような下々の民を女王陛下がお茶にお誘いになるワケがない
ならばナニか?叱責か?俺の与り知らぬところで女王陛下の逆鱗に触れるナニかが起き、基地責任者としてその責を問われる………一番ありがちなパターンだろう
ならば最初から平身低頭、とにかく謝罪の気持ちを前面に押し出すのが得策と考えた俺はマミー屋でこの店で一番高いスイーツを出せいとお高いスイーツ(48000円)を購入し、女王陛下の待つ部屋へと向かった…
「わざわざお呼び立てして申し訳ありません、Admiral…」
「いえ!女王陛下の呼び出しとあらばいつでも、あ、こちら、つまらないものですが!!」
「あら?そんなに気を遣わなくてもいいのに……」
陛下はわりと機嫌良さげにあらあらと俺から菓子箱を受け取ると、どうぞそちらの椅子におかけくださいと椅子を勧めてくれた…
なんだ?機嫌が悪いわけではないのか?と言うか、いつも陛下の側に居るあの女騎士がおらず、今、この部屋には陛下と陛下の御前でも不遜にもやたらと偉そうなネルソンだけか…
「それで、私めが呼ばれた理由とは…?」
「えぇ、それなのですが…」
陛下はわりと言い難そうに高貴な御手を口元に当てておられる…
なんだ?腹を切れとかそんな類ではなさそうではあるが……しかし、陛下が言い澱むほどの内容、これはかなり重い話ではないだろうか?おそらく、ここから先はNOギャグ時空、シリアスでない奴はお断りな不健全鎮守府真の最終章が始まるのだろう…
「Admiralはその……Amusement gameに詳しいとお聞きしたのですが?」
「アミューズメント…?あぁ、ゲーセンですか」
「そう!それ、それです!」
陛下がゲーセンに興味を…?ハハッ、聞き間違いかな?
「最近までヤン・キーやツッパ・リー、所謂、フリョーの溜まり場と聞いてはいましたが…」
「まぁ、まだそーゆー店もあるっちゃありますが…」
主に、俺や鈴谷の行く店はそーゆー店だ、ネットワーク環境皆無、未だにVS筐体やアストロ筐体が多く稼働する時代に取り残されたワルの聖域…
そこには過去の遺物とされながらもその道を諦めきれなかったバカども……生粋の純・ゲーマーが集まり日々切磋琢磨している魔境…
俺や鈴谷程度ではあの魔境の下位ランカーにすら太刀打ちできず、上位ランカーはもはや入店して来ただけで敗北を認める程だ…
「先日のことです」
「はぁ?」
陛下は腰かける椅子に座ったまま足を組み替え軽くコホッと咳をつき、語り始めた…
先日、アークロイヤルがジャーヴィスとジェーナスを連れて街のショッピングセンターに買い物に行った際、ショッピングセンター内にあった庶民的ゲーセンに立ち寄ったらしく、その時にクレーンゲームでデカいヌイグル・ミーだのを取ってきただのタイ・コーをボカスカ叩いてきただのいかに楽しかったかの土産話をされ、とりあえず陛下的には平静を装いそれは良かったですねとロイヤル対応でやり過ごしたものの、話を聞けば聞くほど興味だけが積み重なり、自分もゲーセンがどんなところか行ってみたくなったと……
「なるほど」
「Arkに頼むとロクなコト………いえ、Arkでは些か不安があるので、やはりここはAdmiralにescortを任せるのが良いかと…」
「なるほどなるほど」
陛下から些か不安があるとか、どんだけ信が厚くねぇんだあの女騎士は…
「あと、Nelsonも庶民的げーせんに興味があるとかで…」
「金なら、ある…っ!!」どんっ!!
ネルソンのアホは膝にネコを載せたまま、どんっ!!と誇らしげに声をあげた
「それで……いくら必要だ?余とold ladyが足を運ぶのだ、モチロン、最高級を用意して貰わなければな、最高級を…」
庶民的ゲーセンに最高級を求める矛盾……
と言うかこの余、たぶんゲーセンがなんなのかすらワカってねぇだろ、たぶん
「Nelson、私達が求めているのはあくまで“庶民的な”げーせんです、悪戯に高級を求めても主旨が変わってきます」
「フッ、なるほど、な!!」どんっ!
いちいち“どんっ!”が無いと喋れんのかこの余は…
「それでAdmiral、どうでしょうか?」
普通に考えて、陛下をただ庶民的ゲームセンターに連れて行くのはそう難しい事ではない、しかしだ、この絶対的に高貴な方をたかだか街のゲームセンターに連れて行って何かしらのトラブルがあるのは避けたい
もし仮に、何かしら陛下の逆鱗に触れるような不測の事態が起ころうなら国際問題待ったなし、日英の致命的決裂→第三次世界大戦勃発の可能性すらあり、その場合、俺はあらゆる責任を問われ間違いなく断頭台に登る事は必至!
モチロン、首を斬る側ではなく斬られる側としてだ、その後、俺は世界大戦の引鉄を引いた世界最悪の犯罪者として後世の歴史家に笑われることになるだろう…
ならばどうする?どうすれば生き残れる…つ!
陛下がお望みなのは庶民的ゲームセンターの体験…っ!ただ、それだけなのだっ!
街でトラブルを起こす可能性…!なら、いっそ基地内にゲーセンでもあれば…っ!
「………あ」
「どうしましたか?Admiral?」
ある…っ!!基地内にゲーセン!!いや、作れる!!すぐに!
俺の脳内を電撃的に駆け巡るひらめき…っ!そしてβ-エンドルフィン…!チロシン…!エンケファリン…!バリン、リジン、ロイシン、イソロイシン…!
俺はこの電撃的閃きに頭を抱えつつ、静かに陛下へと視線を上げ…
「…………陛下、明日、この時間に基地第四倉庫へ来ていただけませんか?」
「は?はぁ…倉庫、ですか?」
「本物の庶民的ゲームセンターをお見せしますよ…」
◆◆◆
「明石ィィィィィ!!明石はいるかァァァァァァァァ!」
「うわっ!?な、なんなんですか一体!?タバコですか?」
陛下との会談を終え、その足でまっすぐ明石の店へやって来た俺は店のカウンター内にある椅子に座ってテレビを見ていた明石の胸ぐらを掴みあげた
「な、なんなんですか!ウチは法に触れるモノとか裏モノは取り扱ってないですよ!………たぶん」
「やかましい、オイ、オマエたしか前に廃業した業者からゲーム機大量に引き取ってたろ?」
「えー?なんのコトかなー?私、そんなもの心当たりないなー(棒読み)」
「隠すなよ、ナニもオマエを罰したりするつもりなどない」
俺は明石の胸ぐらを掴んでいた手を離し、明石明石明石明石よぉ〜…ビジネスの話をしよーじゃねぇの?と優しくその肩に手を回した
「ちょ!なんなんですか!馴れ馴れしい!ってかナチュラルに乳揉まないでくださいよ、金取りますよ!」
「ハハッ、ゴメーヌ」
「相変わらずイラっときますねこのオッさんは、ってかビジネスって………儲け話ですか?」
「儲け話だ、うまくいけば大金がオマエの懐に入るぞ」
俺は明石の服に手を入れパイオツを揉んだ
「今現在、懐に入ってんの痴漢者の手ぇなんですけど……ちょっと、ちょっと真面目に話聞かせてくださいよ、話の内容によってはちょっとくらいサービスしてやってもいいですから」
「ハッハッハ、それじゃビジネスの話でもしようじゃないかね」
ーーー
「で?なんですって?前に私が仕入れたゲーム機がなんなんです?海外にでも売るんですか?」
店のシャッターを下ろし、とりあえず真面目にビジネスの話をしようやとテキトーな椅子に座った俺と明石…
「そのゲーム機は全部使えるのか?」
「さぁ?一応引き取り前まで稼働してたってハナシで引き取りましたけど、じゃ●ゃ丸ポップコーン以外は使ってないし」
「台数は?あと大まかなラインナップは?」
「クレーンとかメダルとかアーケードとか乗り物とか…細々あわせたら100台ぐらいですかね」
「よし、それ全部明日までに使えるようにするぞ」
「ハアァ!?」
「全部倉庫にあるな?それ全部それっぽく並べて倉庫内にゲームコーナー作るぞ、明日までに」
「いやいやいや、意味がまったくわかんねーんですけど、え?なんで?」
「ゴチャゴチャゆーなダボが、いいからヤるんだよ、オマエ、先に倉庫行って全台電源入れて稼働確認しろ、後で人をよこすし俺も行く」
「えー………正直めんどくさ…」
ビタンッ!!(ビンタ)
「痛いっ!!え…?なんで今叩かれたんですか?」
「バッキャロー!!できるできないの話じゃねぇ!ヤるんだよ!ヤらなきゃ世界は滅びるし俺もオマエも断頭台に登るコトになるんだぞ!」
「なんか大事ォ!?」
…………こうして、俺達は夢のゲームコーナー、アカシーファンタジーを作るべく動き出した
まずは機器の稼働チェック、そしてコーナーレイアウトと電源の確保、ゲームコーナーっぽくみせる飾りつけ、プライズ機への景品の補充………やるコトは山積みだ
だがやらねばならない、女王陛下が求める庶民的なゲーセン………これを見事に作り上げなければ、俺達に、いや、この世界に未来はないのだから…
次回は後編、懐かしの筐体が甦る…!