不健全鎮守府   作:犬魚

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塵芥-ちりあくた-

【登場人物】

戦艦新棲姫(蟹)
地獄の底から蘇った不屈の少女、個人的にぶっとばして差し上げたいのは死の神


PQ17船団を護衛せよ①

前半の海最後の戦い、第三ステージ!ノルウェー北岬沖/北極海!吹きつける極寒の海で待ち受けるのは深海期待の超新星!戦艦新棲姫!

 

『ソレデ ホンキナノ…?アーッハッハッハ!ワラエルーッ!』

 

「か、硬てェ…!」

 

「なんと言う硬度だ…ッ!ヤツの艤装は大戦艦級の艤装並みの硬度を備えていると言うのか!」

 

「どうやらアレをヤるしかないわね…」

 

並み居る海軍の強豪を退ける無敵の重装甲を纏う戦艦新棲姫を前に、己の小●宙(コ●モ)を燃やし戦う若き艦娘との戦いはネルソン、ガングート、アイオワ、三人の大戦艦級が揃って初めて可能な禁断の奥義、小規模ながらビッグバンの威力を持つテイトク・エクスクラメーションを発動を決意!

 

しかしッッッ!!戦艦新棲姫はその禁断の奥義すらも耐え抜いたのだッ!

 

『スゲェ!!サスガ戦艦新棲姫クンダ!』

 

『アァ!並ノ硬サジャネェゼ!』

 

『ヘヘッ、アノクソダサ蟹アーマー、ヨク見ルトカッコイイジャネェカ…!』

 

『ウォー!戦艦新棲姫!戦艦新棲姫!』

 

深海棲艦の仲間達から湧き上がる戦艦新棲姫コール!かつてこれほどまで海軍のヤツらを苦しめた事があったであろうか、今、戦艦新棲姫はたしかに………“希望”!

暗く、深い海から青い海を守り、散って行った数多の深海棲艦達の祈りが希望そのものになったのだった!

 

ーーー

 

「まさかヤツらでもダメとは…」

 

「まさかの急展開ですね」

 

どんだけ硬いんだよ、そして誰だよ、なんか甲でもイケる気がするとか俺に言ったヤツ、俺の中の邪悪なる俺か?それとも俺の中の頑張り屋さんの俺か?

俺は胸ポッケからライターを取り出しタバコに火を点けた

 

「フーッ〜………」

 

「窓開けてくださいよ」

 

「サミぃだろーが、っーかサミー、ヤツらを呼べ」

 

「寒いのか人の名前なのか紛らわしいんですケド、で?誰を呼べと?」

 

「決まっているだろう、この基地で最も強い者よ」

 

そもそも俺は間違っていたのだ、特効などに目を奪われ己の真の戦い方を見失っていた、だが…最早手加減など不要、この基地(サンクチ●アリ)最大最強の戦力をもって逆賊どもを抹殺してくれるわ!

 

「これでヤツらの命運は尽きたも同然!クックック…ハッハッハ……ハァーッハッハッハッハ!!」

 

「しかし、まっこと見事なまでの悪役ムーヴですよね」

 

ーーー

 

深海北極海方面艦隊の頭を務める戦艦新棲姫…

 

彼女の持つその強さの秘密は彼女の過去にあった…

深海棲艦の中でも中流家庭の子として生まれ、両親に愛され特に何も不自由なコトなくぬくぬくと育った彼女は優しい子に育った…

 

しかし、そんな彼女の人生を変える出来事が起きる

 

彼女がまだ深海小学校に通い始めた頃、深海ケーブルテレビの深海キッズス●ーションで絶賛放送していたある地上の番組がそれまで幸せだった彼女を一気に不幸のズンドコへと叩き落としたのだったッ!!

 

『コノ蟹ヤローメ!蟹ミタイニ泡吹カセテヤルゼー!』

 

『アジャパーッテ言ッテミロ、アジャパー!』

 

『マンモス哀レナヤツメ!』

 

…………泣いた、彼女は泣いた

子供とは残酷なものであった、ある番組のせいで、彼女はそれまで大好きだった自分の艤装が大嫌いになり、学校に行くのもイヤになった

どうしてウチの艤装は蟹なの!?こんなの恥ずかしくて着れない!せめて親戚のバタビア姉ちゃんみたいなオウムガイが良かったのに!と両親にも当たり散らした…

 

そして彼女はグレた、それまで優しい子だった彼女はグレて非行に走り、毎日ケンカに明け暮れた…

 

しかし、そんな彼女を救ったのもまた、深海キッズス●ーションだった…

ある日、いつものケンカから帰り家で深海キッズス●ーションを見ていた彼女はこれまた地上のある番組に目を惹かれた…

 

その番組は、かつて彼女を地獄の底に叩き落としたあの番組の派生作品だったらしく、最初は興味無かったものの、なんとなく見続けていると、ついに因縁の蟹が登場したあたりから彼女の心は大興奮した…!!

 

頼れる兄貴枠!前聖戦の際は蟹座で御座いました!師弟のWキャンサー!神の魂すら引き剥がす最強の積●気冥界波!三巨頭どころかあの双子神の一人を封印する大金星!

 

…………泣いた、彼女は泣いた

あまりのカッコよさに、地獄の底に落ちていたハズの全蟹座感動、全蟹座がアツい涙が止まらない、手●木先生アリガトウ、本当にアリガトウと…

 

それから彼女は変わった、自らの艤装を恥じたりはしない、むしろ誇りにすら感じるようになり、元々の優しい性格だけでなくケンカに明け暮れたせいで強い心も手に入れていたのだった

 

そして彼女は、この北極海ステージのBOSSに抜擢されたのだったッッ!!

 

 

『バ、バカナーッ!!ソレハ本当ナノカー!』

 

『ナ、ナンテ小●宙(コ●モ)ダ!今マデ出会ッタ戦艦級ヲ超エルコノ強大ナ小●宙(コ●モ)…!』

 

『フッ、ドウヤラアチラサンモトウトウ本気ヲ出シテキタッテワケダ』

 

禁断のテイトク・エクスクラメーションをも凌ぎ切ったチームの元に届いた報告、海軍最大戦力からの挑戦状…

大和と武蔵がそこへ向かう、その時キサマらは負ける、と…

 

『フン……マッテイタワ……ワカル…デショ?キサマラニモ……!ネェッ!!』クワッ!

 

『ソウダ!俺達ニハ戦艦新棲姫クンガイル!』

 

『ソウダゼ!俺達ハ絶対ニ負ケネェー!』

 

『野郎ドモ!海軍ヲ滅ボセーッ!』

 

沸き立つ勇気!希望の火は決して消えない!たとえ相手がどんなに強大であってもこの北極海を守る!

 

「フッ、なかなか骨がありそうだな大和よ、アレ、全部、死刑でいいんだろう?」

 

「えぇ、基地(サンクチ●アリ)からの、いえ、提督の勅命は抹殺です、逆賊は一人たりとも生かして帰しませんよ」

 

この戦い、きっと多くの仲間達が散るだろう……お調子者のナ級、口は悪いけど仲間想いのツ級、ぶっきらぼうだけど実は優しいヲ級、自分を信じてくれた最高の仲間達…

この強大な敵を前にしても、みんな笑っていた

 

『キタカァ!!サァヤロウゼ!塵芥ニモ魂ガアルッテコトヲ教エテヤルヨ!』





次回は②、ぶっとばして差し上げますわ

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