ifエンドの中でも意外な高評判なリシュリュー回の蛇足的サイドストーリーで今年は終わりです、はい
タイトル詐欺ではございま、ございま…すん!
Paris!!そこは花の都!そして芸術の都!嗚呼素晴らしきかな美しの都………と、まぁ、初めてここに訪れた者は感動にその身を震わすだろう、うん
「Parisも久々ね」
「そうだな」
「モォ!mon amiral、ズイブンと元気がないわね」
深海棲艦との戦いが終わり、海軍を辞め、かつての夢“西欧文明ドナウ起源論”を証明すべく活動の場を欧州に移し、その欧州での住み家(実家の納屋)を提供してくれたかつての部下、リシュリューと共にパリへとやって来たワケだが……
「最近田舎暮らしが板に付いてたからな、そんな田舎者にこの都市は眩しすぎる」
「まだそんな老け込むほど長く住んでないでしょ?」
と言うか、私の実家を田舎田舎と失礼よとツッコミを入れてくるあたり、地味にコイツのPRIDEの高さが窺える
「…さて、それじゃ俺はルーヴル行くから、えー…パリメトロのなんちゃらルーヴルで降りたらいいんだよな」
「え?エェ、そうよ?」
「そうか、じゃあな」
俺はリシュリューにアバヨと告げてクールにその場を去り…
「チョ!チョ!ま・ち・な・さ・い!」
「グエッ!!こ、この力は…ッ!!」
背後からハンドバッグの紐で首を絞められ、思わずギバーップ!俺の負けだー!とタップした俺は首の痛みと戦いつつ、リシュリューに向き直った…
「ナニすんじゃテメェェェェェ!!コロす気か!」
「モォ!じゃあな!ってナニよ?じゃあな!って、アナタ、ふ・ざ・け・な・い・で」
「ふざけるもナニもねぇだろ、俺はルーヴルに用事がある、オマエはたまにはパリでトレンディなお買い物したいとか言ってたろーが」
「言ったわ」
目的地は同じ、だがここへ来た目的は違うのだから何もおかしくはない、そう、俺は間違ってない………ないよな?うん
「アナタ、まさか私を1人で行かせるつもり?」
「そうだよ(便乗)」
「ナニがそうだよ!よ、ありえないわ!」
「ありえないもクソも俺はルーヴル美術館にしか用事がないんだから当たり前だろ、いいかリシュリュー?俺たちは大人だ、大人とは何か?大人とは全であり一であると同時に一であり全でもある」
つまり宇宙の心は彼だったのであると駅前で懇切丁寧に解説してやったが、リシュリューはやたらと不満そうに眉間に皺を寄せている…
「Amiralの言ってるコトはサッパリわからないわ」
「それもまた真理」
「マァ、いいわ、まずはMusée du Louvreに行きましょ?」
「なんだ?オマエ、美術館に興味あったのか?」
「シ・ツ・レ・イね!私だって芸術に理解はあるわよ!」
しかし、ただ、立っているだけで美術品みたいなリシュリューはかなり目立つ、並のスーパーモデルもゲロ吐いて逃げ出すレベルのコイツと連れ立って歩くとかとんだ拷問なのだよ
「まぁいいや、じゃ、ルーヴル着いたら後は自由行動な、できれば俺から離れて噴水の前でポージングでもしててくれ」
「そんなワケないでしょ!ほら、さっさと行くわよ!さっさと!」
「いや、提督はあまり目立ちたくは…」
「目立つ?あら?アナタ随分な自信家なのね?フフッ、ま、大丈夫よ、私の目から見て、mon amiralは地味な東洋人だわ」
だから!!俺じゃなくてオマエが目立つんだよ!もう既に周りからの目があるんだよ!コイツ、自分の商品価値わかってんのか?
地元で葡萄踏んでるだけで芸術品みたいなんだぞ?美しすぎる葡萄踏みとか新聞載ってんの知ってんのか…?
ちなみに葡萄踏み、地元では鉄の掟で生粋の“乙女”しか参加できないらしく、リシュリューのママンもいつまで踏んでんだバカ娘が…と不満を垂らしていたがそれはまた別の話…
「まぁいい、とっと行くか…」
ーーー
ルーヴル美術館、それは、フランス、パリのセーヌ川の右岸にある世界最大級の国立美術館であると同時に世界最大級の史跡でもある…
誰しもが名前ぐらいは聞いた事があるこの美術館には、これまた誰しもが名前ぐらいは聞いた事のある世界一有名と言っていい名画がある………その名は
モナ・リザ
レオナルド・ダ・ヴィンチ作、多くの謎に満ちたその絵画は、世界でもっとも知られ、もっとも見られ、もっとも書かれ、もっとも歌われ、もっともパロディ作品が作られた美術作品と言われ、今なお多くの人々を魅了してやまない…
「意外と小さいのね」
「オマエ自称パリっ娘だろ?今まで見たコトなかったのか?」
「ないわ、むしろMusée du Louvreにも初めて来たわ」
まるで自分がこの世で最も美しい存在だと言わんばかりの絶対的な自信、今日、このルーヴル美術館には最大の敵が現れたのかもしれないな…
「………しかし、なんとも不思議な絵だな」
「そうかしら?」
「オマエはまず審美眼を磨け」
しかしまぁ、たしかに素晴らしい絵だとは思うが……普段から至高の美を目にしている俺にはやや物足りないものがあるのも事実…
この名画ならば何かのヒントになればと思い、見に来たワケだが…
「ナニ?mon amiral?」
「なんでもない、行こうか」
「アラ??モォいいの?」
「ここに俺の求める美は無かった、それだけわかれば十分だ」
「フゥ〜ン」
*****
フランス、ボルドーの農家にて住んでいたと言われる無名の東洋人が残した絵画の内1枚…
葡萄踏みの乙女(正式作名不明)
豪奢な金の髪をした美しき女性が葡萄を踏む姿を描いたそれは、モデルとなったとされる女性の住んでいた村の教会に今も保管されており、葡萄祭りの際に、その絵画は飾られ見る者達に葡萄祭りの楽しさを伝えている
それでは皆さん、ごきげよう