不健全鎮守府   作:犬魚

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全3回の短期集中回、たぶん

【登場人物】

提督(センパイ)
タチの悪い先輩

日女大佐(後輩)
今回の主役待遇、提督の後輩
実家が修道院らしく、シスターになるのがイヤだったらしいとは本人の弁なので真偽の程は怪しい




提督と後輩の後輩【前編】

「お久しぶりっす、センパイ」

 

「………何の用だ?」

 

季節は秋に突入した11月のある日…

本日快便、今日も元気だウ●コがぶっといと執務室に行くと、朝っぱら珍客が来ていた…

 

「またまたぁ~、何の用だとかそんな他人行儀な!私とセンパイの仲じゃねーっすか!」

 

「他人行儀じゃねーで他人だろーが、っーかサミー子、なんでコイツがいるんだ?俺、聞いてないよ?」

 

「私だって聞いてないですよ」

 

突如としてやって来た珍客………日女、俺の後輩であり、海軍兵学校時代からの付き合いである

兵学校時代からワリとウザいヤツだったが、卒業し、互いに一軍の将となった現在でもそのウザさは変わらず、3日に1回くらいはウザいメールがきており、他にも色々あるが、なによりウザいのは、後輩のくせに俺よか階級が上ってのが一番ウザい

 

「なんか朝から基地の門でピンポンピンポン鳴らしてうるさかったんで…」

 

「メーワクな野郎だなオイ」

 

「迷惑とは失礼な、あ、手ブラじゃワリーと思って手土産ぐらいは持ってきてるっすよ、ハイ、マカダミアナッツ」

 

「ナニがマカダミアナッツなのだよ」

 

◆◆◆

 

「…で?わざわざウチに来てまで何の用だ?」

 

「まぁ、別に電話でも良かったんすけどね、あ、サミーちゃんティーとか淹れてもらえないっすか?アツいやつ」

 

もしかして電話だとなんかマズい感じの話なのか?軍がヤバイ的な…

 

「ちょいとセンパイに相談に乗って貰おうかなっと…」

 

「金の話か?」

 

「や、どっちかと言えば権力の話っすかね…」

 

そう言って、普段から開いてるのか閉じてるのかよくわからないヒメの目が一瞬うっすらと開いたのは俺じゃなきゃ見逃しちゃうだろう…

 

………っーか話を聞く前からロクな予感がしねぇ

 

「や、私、今度の特選演習に斡旋されたんすよね」

 

「ふ〜ん、ガンバレよ」

 

特別選抜演習、通称“特選”…

艦娘を率いる艦隊司令として優秀な成績及び結果を出している提督がお呼ばれする文字通りにトクベツな演習で、6人6艦隊最大36人参加のデスマッチ式が採用されるとても危険で、とても野蛮な演習である…

 

ちなみにこの特選、見事勝ち抜けば階級が上がるのはほぼ間違いなく、ハイリスク・ハイリターン人生にたまらない興奮があるとかないとか…

 

「別にオマエんトコ弱くねぇだろ」

 

「たしかに、ウチの娘らはたしかに弱くはねーっすよ」

 

そもそも“特選”に斡旋されるレベルだ、コイツ自身、普段はチャンラン=ポ=ランだが艦隊指揮能力はそこそこ高く、むしろやる気のコイツの卑劣さと狡猾さは俺でもブルっちまうぐらいだ

 

「ただ相手が悪いんすよ、相手が」

 

「へぇ〜」

 

「へぇ〜…じゃないっすよ、私以外は全員全国区の有名人ばっかなんすよ!」

 

「有名人ねぇ、佐世保の火の玉ボーイとか、舞鶴の鉄砲玉みたいな?」

 

「なんすかそのアダ名……初めて聞いたんすけど、有名なんすか?その人達?」

 

「ん?あぁ、佐世保の火の玉ボーイこと雁高長蔵クンは着任したその日にイ級をウコチャヌプコロしていたところを秘書艦に見られ秘書艦の心に深い傷を与え、舞鶴の鉄砲玉こと摩羅太クンは年上好きを公言してたがよりにもよって入浴中の海防艦の中に見事特攻し心に深い傷を与えて逮捕され…」

 

「ただのアホどもじゃないっすか!?」

 

「ただのアホどもじゃない、彼らもまた、現代社会と言う闇が生んだ理解され難き哀しきモンスターなのだよ…」

 

「ナニが哀しきモンスターっすか」

 

そしてまた俺もヤツらと同じ………“退屈な日常に飽き飽きしてる女性”や“痴漢願望、露出願望のある女性”を解き放ち、極上の快楽を与えるのが生き甲斐でもある趣味は違うとは言え同じく“逸脱者”なのだろう…

 

「で?どんなモンスターが相手なんだ?」

 

「モンスターじゃねーっすよ、ま……相手の1人に私の後輩がいるんすよ」

 

「ほぉ、後輩か…」

 

「コレがまたちょいと厄介な相手で…」

 

ヒメ曰く、かなり苦手と言うコトだが……基本的に誰にでもウザいぐらい馴れ馴れしいコイツが苦手とか珍しいな

 

「なるほど、後輩の後輩は我が後輩も同然、つまりそいつを叩き潰したいワケだな?」

 

「まぁ、できれば負けたくはねぇんすけど…」

 

「なんだ?歯切れが悪いな」

 

「そもそも勝てるかどうか怪しいんすよね、ま、とりあえずそいつの写真あるんで…」

 

そう言ってヒメが無い胸から取り出した一枚の写真…

その写真に写っているのは、規則違反な改造をした制服を着こなす金髪縦ロールのいかにも高飛車なお嬢様と言った女だった…

 

「お嬢様だな」

 

「ご覧の通り、お嬢様っすね、有馬さんほどじゃねーっすけど」

 

「縦ロールだな」

 

「ご覧の通り、縦ロールっすね」

 

「高飛車なのか?」

 

「見た目に反してこれがまた低姿勢で素直ちゃん」

 

そこはご覧の通りじゃねぇのな…

 

「ちなみにこのお嬢様はアレか?親から人生のレールを敷かれ、金持ちとの結婚を勧められているものの、親の思い通りに生きるのがイヤで自分の力で生きていけるコトを証明すべく若くして軍の門を叩いたとかそんな感じの…」

 

「ま、だいたい合ってるっす」

 

合ってるのか…

さらに、ヒメが言うには見た目に反してお嬢様であるコトにあぐらをかかず、さらに、人並み以上に努力を重ね、なおかつ天性の才能を持っており、いうなれば“努力する天才”と言う敵にするとかなり厄介な相手だと…

 

「なるほど………しかしオマエ、なんでそう露骨にイヤそうなんだ?」

 

「苦手なんすよ」

 

「………はぁ?」

 

「苦手なんすよ、コイツが、マジで」

 

本気(マジ)!!みてーな顔してナニ言ってんだコイツ…

 

そしてヒメ曰く、チャランポランな自分とは対極にあるまさしく最悪の相性らしく、今までも提督間での演習の申し入れ自体はあり全て断ってきたのだが、さすがに今回ばかりは逃げられないと…

ふ~む、コイツが苦手な相手とはイマイチ想像がつかんな…

 

「で、センパイに相談っーのは、特選当日に会場に乱入してもらい、この女を“カーッカッカッ弱体提督には演習参加をご遠慮願いましょうかねぇ~…”とヤってもらいたいと」

 

「誰がするか…っ!そんなの…っ!」

 

「え~…マジっすか、センパイなら笑顔でやってくれるものと…」

 

「やるワケねーだろーが!」

 

ただでさえ悪評が広がっているんだ、これ以上俺の評判を落としてたまるか…っ!俺はな!安全に出世したいんだよ!

 

「そこをなんとか!何卒ォ!何卒ォォォォォ!!」

 

「やかましい、行って死んで来い、骨は拾って犬の餌にしてやろう」

 

「マジっすか、センパイ優しぃ〜!」

 

「当たり前なのだよ、俺の半分は優しさで出来ているのだよ」

 

そしてもう半分は憎悪で出来ている

 

「ありがとうございます!サミちゃんも一緒に是非応援してやってください!」

 

「はぁ、まぁガンバってください」





次回は中編、特別選抜戦開幕!

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