不健全鎮守府   作:犬魚

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忘れた頃にやってくる最終章、最終章なのに提督は出ません

【登場人物】

川奈大佐(イケメン)
提督とは同期の関係にある有能で優秀で見た目も心もイケメンの善人

鞍馬大将(大将)
中央司令部大将の1人、若い頃から俺様系ワイルド属性の梶輪大将とは反りが合わず、いつか殺すと言い合ってる仲


提督地獄変【最終章⑪】

鞍馬隆盛、66歳…

中央司令部が擁する10人海軍大将の1人にして海軍九条元帥の右腕として長きに渡りその力と忠誠を捧げてきた生粋の海軍将校

若き日よりその頭角を現し、艦隊指揮力、軍内での求心力、あらゆる面にて高いその能力を疑う者は少なく、まさしく仁・智・勇に優れた次代の元帥候補筆頭…

 

その男が、今、二回り以上も離れた若輩を前に立ちふさがる!!

 

「死ぬ覚悟はできているな?小僧ォ…」

 

「そんな覚悟は必要ない、何故なら俺は負けないからだ」

 

「フハッ!!言ってくれるッ!!」

 

鞍馬大将は羽織っていた外套を脱ぎ捨て、さらに着ていた上着をも脱ぎ……

 

『ゲ、ゲェーッ!!アレが海軍大将ーッ!』

 

『齢六十を越え、今なお、あれほど若く、瑞々しい肉体とは…!』

 

『ジジイの身体じゃねぇぜ……まったく、あれで全盛期じゃねぇなら当時はどうだってんだ、ハハッ!…バケモノめ!』

 

戦闘態勢は整った…ッ!!対して、川奈大佐は上着のボタンを外し、一つ、深く息を吸込み…

 

「…始めようか」

 

「応ッ!!」

 

ーーー

 

海軍大将VS海軍大佐、海軍史上稀に見る下剋上再び!

定期的に開催されている公開演習かと思いきや、まさかの叢雲VS五月雨の一騎討ち!駆逐艦同士の戦いなど低レベルな戦いになるのではと不安視されたこの戦いだったが蓋を開けてみれば高練度艦同士のハイスピードで見応えのある一戦であり、見に来ていた観客も終わってみれば良いものを見たと満足気味だったが、今日の戦いはまだ終わっていなかった!!

 

「ガハハハ、サミちゃん飴食うか?飴」

 

「結構です、叢雲ちゃんに殴られた肋が痛くてそれどころじゃないんで」

 

「アンタねぇ……そんな言うなら私だって鼻が痛いわよ!アンタマジで顔面にグーとか、少しは躊躇とかなかったの!?」

 

「ないです、だって叢雲ちゃん強いし」

 

「あ、あぁ…そ、そう…」

 

九条元帥にケンカを売った梶輪大将、そして、つい先程まで死闘を繰り広げていた五月雨と叢雲は梶輪大将と同じく舞台側に用意されたベンチに腰掛けていた…

 

「ところでサミちゃん」

 

「なんですか?」

 

「髪の短いサミちゃんもなかなか似合うな!」

 

「そうですか?まぁ、雑に切ったから後でちゃんと整えますけど…」

 

先程の叢雲との戦い、囮に使う為に自らの髪をズバッと切った五月雨はやはり髪が無いのが気になるらしく、短くなった毛先の辺りを触っていた

 

「それより梶輪大将、あの鞍馬大将はどのぐらい強いんですか?」

 

「あ?ワシよか弱い」

 

「真面目にお願いします」

 

「真面目にか、そうだなぁ……まぁ、今中央に居る大将の中じゃワシの次ぐらいに強いな」

 

「へぇ〜…」

 

梶輪大将曰く、今は半ば現役を離れたとは言え戦争初っぱなの激戦期をくぐり抜けてるだけあってその力はホンモノ、並の将校程度なら目が合っただけでチビるのは間違いないと…

 

「まぁ、あの頃はオマエらの提督程度はゴロゴロいたからなぁ……良いヤツはみんな死んだが」

 

「へぇ〜」

 

「へぇ〜…じゃないわよ!!それやっぱメチャクチャ強いってコトじゃない!」

 

「大丈夫ですよ叢雲ちゃん、叢雲ちゃんが信じないで誰が信じるんですか?」

 

「アンタねぇ、他人事みたいに…」

 

ーーー

 

試合開始直後から積極的に攻めるのは………鞍馬大将ッッッ!!

 

開始と同時に勢い良く飛び出し、急襲のフライングニーで川奈の体勢を崩し追撃の逆水平を連打で浴びせる!!

 

「同世代の他より少しばかり優秀な結果を出していると調子に乗ったな小僧がッ!」

 

「…ッ!」

 

「たしかに貴様は優秀な男だ、そして有望な男であった………しかし!!」

 

鞍馬大将は川奈の身体を掴み、頭を自身の両足で正面から挟み、胴体を両腕で抱えて持ち上げて勢い良く落下したッッ!!

 

いわゆる、パイルドライバーである!!

 

ズカアァン!!!

 

「貴様程度の男なら、開戦初期にはゴロゴロおったわ!」

 

時代が違う!年季が違う!執念が違う!小僧っ子と自分では格が違う!

ただ一撃で、ただそれだけで雄弁にそれを語るには十分…

 

『スゲェ!!あれが海軍大将…っ!!』

 

『一撃一撃の重さがまるで違う!』

 

『やはりあの若者では大将に挑むには早すぎたかーッ!』

 

海軍大将の放つ海軍式脳天杭打ち(パイルドライバー)!!その絶大な破壊力に観客数からアツい鞍馬コールが鳴り響く!!

 

「……なるほど」

 

そんなアツい鞍馬コールの中、今しがた海軍式脳天杭打ち(パイルドライバー)で撃沈されたと思われていた川奈がゆっくりと立ち上がった

 

「ムゥ?貴様ァ…」

 

「さすがに海軍大将と言うだけはある…」

 

まるで大したダメージでもないと言うように立ち上がった川奈は再び構えをとり、続けようと右手の人差し指をクイクイっと動かした

 

「愚か者が!!ミエミエの痩せ我慢しおって!!」

 

「…」

 

「効いていないハズがなかろう!!」

 

挑発に乗った鞍馬大将の連打!左右の豪腕から繰り出される連打をブロックする川奈!

 

「ならば次の技を耐えられるか?この技はかつて梶輪をリングに沈め……」

 

「ハアッ!!!」

 

バシイッ!!!(ハイキック)

 

「ぐあっ……!?」

 

川奈の強烈な右ハイキックが鞍馬大将の側頭部を打ち、鞍馬大将は片膝をついた

 

「キ……貴様ァ!」

 

「すまない、あまりに隙が大きかったので…」

 

「イチイチ癇に障るヤツめ!」

 

鞍馬大将は再び豪腕を繰り出すものの、そのパンチは………当たらない!左も!右も!さっきまでブロックするのが精一杯だったはずのパンチがまるで当たらなくなっている!

 

「ハァ…ハァ……なんと!」

 

「鞍馬大将、貴方の力はだいたいわかった…」

 

「だいたいわかった?なんだと……?小僧ォ、貴様!!だいたいわかったとは何事だッッッ!!」

 

万死に値するッッッ!!!怒りに震える鞍馬大将の覇気が会場中に広がる!!

 

---

 

「バカなの!?ウチの提督ってもしかしてバカなの!?」

 

「まぁまぁ叢雲ちゃん、イケメンなら許せるんじゃないですか?」

 

「多少イケメンでも許せないわよ!!クッ…!まったく、あーゆートコあるから格下に足すくわれるのよ」

 

「叢雲ちゃん、格下のザコってウチの提督のコトですか?」

 

「ザコとまでは言ってないわ」

 

開始直後はやや押され気味に見えたが、意外にもそうではなかった…

少なくとも、叢雲には自分の提督が負けるとは思ってはいなかったが……まさかここまでとは思っていなかった

 

「ガハハハハ、なかなかやるのぉ、川奈のヤツ」

 

「当たり前でしょ!私の、提督よ!」

 

「ま、ワシより弱いがの」

 

「負けず嫌いか…っ!クソジジイ!」





たぶん年内には最終章も折り返しかなと思ってます、はい

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