不健全鎮守府   作:犬魚

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踊る人形

【登場人物】

提督(霊?そんなものはトリックだ!)
この世に科学で説明できねぇものは100億%ねぇ!

鹿島先生(ホラーは苦手)
や、だって普通に怖いじゃないですか?まぁ、でも一番怖いのはやはり香と…

香取先生(好きな映画はゴースト)
…鹿島?何か言った?


提督と倉庫整理と踊る人形

秋の基地美化週間運動、ふだん怠けている不要物の廃棄、必要なものの整理整頓をキチンとやりましょうをスローガンに、毎年行われているこの運動だが…

 

今年は明石のボケナスが倉庫に隠しているであろう不要物を発見、処分すると言うのが真の狙いであり、言うなればこれは内部監査の意味もある…

 

「さて、相変わらずワケわからん箱ばっかあるな」

 

「そうですね」

 

香取先生、鹿島先生と共に倉庫にやって来た俺はとりあえずそこら辺にあったダンボール箱の封を剥がし中身を確認する………なんだ、鬼刃魂か……ギリギリセーフだな

 

「いや、アウトでは…?」

 

「鹿島先生、バカを言ってはいけない、本製品はただのジョークグッズだ、あの有名漫画とは一切関係がない、邪推や決めつけはやめて貰いましょうか!」

 

「あ、え…ぁ、はい」

 

明石のヤロウ、また大量に仕入れやがって……もう既に正式版権のグッズが巷には過剰供給されているんだぞ、どう始末するつもりだ?

 

「提督、とりあえず酒保のリストに載ってないヤツは全て差し押さえで宜しいですね?」

 

「無論、構いません」

 

今日も眼鏡がステキな香取先生はリストを片手に1つ1つ、ダンボール箱を丁寧に調べるべく手袋を着用する、まったく…香取先生はいつだってエレガントでいらっしゃる

 

「あの……提督」

 

「なんでしょう?鹿島先生」

 

「あ、いえ……アレ、なんでしょうか?人形?」

 

倉庫整理を始めて30分程経ったぐらいか…

鹿島先生が倉庫の隅に転がる不気味な人形を指差し、不安げな顔をしている……まったく、鹿島先生を不安にさせちまうなんて罪な人形だ、っーかやっぱ鹿島先生は不安げなお顔も実にチャーミングでいらっしゃる、OK!怖いならもっと俺にくっついていいんだZE!

 

「人形……ですなぁ」

 

どう見ても不気味な人形だな、明石のコトだ、ナニかの抱き合わせでタダ同然の値段で仕入れてみたが、よく見るとやっぱキメーわと放置したとかそんな感じだろう

 

ギギギ……ギギギ……

 

「あの…提督、あの人形、今…ちょっと動きませんでしたか?」

 

「ハッハッハ、鹿島先生はこーゆーのは苦手ですかな?ハッハッハ」

 

ギギギ…ギギギギギギ…

 

「や!やっぱり動きましたよ…っ!って立った!あの人形!立ち上がりましたよ!?」

 

まったく…青い顔をして涙目で必死に指差す鹿島先生のお顔もまたお美しくいらっしゃる、いけないなぁ先生、そんなにボクを誘惑するのは………でも我慢我慢♠︎

 

「ハッハッハ、そんなワケな…」

 

ギギギギギギギギギギギギ……

 

「な……い」

 

(どこからともなく楽しげなBGM♪)

 

『『僕らは陽気なカ●コブリーナ』』

 

『『怖くて可愛い人形さ!』』

 

………なにやら数体のキモい人形がプランプランしながら踊り出した

 

「て……提督っ!提督さんっ!アレ、アレってやっぱりりりりり!!」

 

「ハ、ハハハハハ…ま、まぁ、落ち着いて落ち着いくだささささカシカカシカズマ先生!!」

 

「鹿島です!」

 

俺は震える鹿島先生の肩を掴んでその身体を自らに引き寄せつつ素数を数えて落ち着く、素数は自分と1でしか割れない孤独の数字!勇気を与えてくれる…っ!ってか鹿島先生めっちゃ良い匂いする、こんな淫靡な牝の匂いさせて先生やってるなんて各方面に失礼だよね?セ●クスの化身かよ

 

「いいですか鹿島先生、この世に霊的なものなどは存在しないのです、つまりアレは………そう!トリック!!」

 

「トリック!?」

 

そう!これは科学を用いたトリックに過ぎない、俺の知性は既にカオスの欠片からこのトリックを暴き出している!

 

「あれはただの人形ではなくおそらく………ドローン!」

 

「ドローン!?」

 

「そう、Wi-Fiを駆使してまるであたかも心霊現象が起きたかのように演出している初歩的なトリック!その証拠をお見せしましょう!!」

 

俺はそこらに立てかけてあった鉄パイプを手に取り、踊りましょー踊りましょーと不気味に踊る人形1体の頭をカチ割った!!

 

グシャァッ!!!

 

『『うわー』』

 

「勝ったッ!!」

 

しかし………ッ!!!頭をカチ割られた人形の中身は……中身がないッ!!

 

バ、バカな…!コイツは精密機器じゃあないのか?頭をカチ割ってやれば精密パーツが流れ出してくるんじゃあないのか!?

 

しかも、なにやら残った人形どもがプランプランしながら集まり…!!

 

 

にんぎょうが がったいする

 

 

『『UGAAAAAAAAAAAAAA!!』』

 

不気味な人形は合体し、より不気味で、よりキモくてデカい人形になった!!

 

「ギャアアアアアアアアアアア!!!」

 

「ヒイィ…!ヒイィィ!!提督!提督…っ!ななななんですか!?アレなんですかァァァァァ!?ってかキモい!キモいキモいキモい!」

 

「ト、トリックだぁ!!トリックに決まっている!」

 

呪いの人形なんてものはありえない!そう……たぶんアレだ、合体ロボ的なアレだ、そう、ゼッタイ!悪霊だの妖精だのはメルヘンの世界の話にすぎん!!

 

『『UGAAAAAAAAAAAAAA!!』』

 

踊る人形カ●コブリーナは不気味な奇声をあげつつこっちに走ってきたッ!!

 

「ギャアアアアアアアア!!ヤバイヤバイヤバイ!キモいキモいキモい!!」

 

「ヒイィィ!!ヒイィィー!て、テイトク!置いていかないでくだ…」

 

そんな恐怖のカ●コブリーナに思わず失禁しそうな俺と鹿島先生の前に………

 

…救世主は現れたッ!!

 

「これはまた大きな人形ですね…」

 

 

『『『UGAAAAAAAAAAAAAA!?!?』』』

 

 

「アナタもう死んでますよ」

 

一瞬にしてバラバラに砕け散ったカ●コブリーナの前に立っていたのは……今日も眼鏡がステキでエレガントな香取先生ェ…

 

「先生ェ!!香取先生ェ!!」

 

「香取姉ぇ!!」

 

「何やら大きな物音がしますねと思って来てみたら……まったく、妖精達には後で厳しい躾が必要なようですね」

 

香取先生は手にした教鞭を指で弾きつつ、俺たちに大丈夫ですか?と優しく手を差し伸べてくれた…

 

「ありがとうございます、香取先生」

 

「ありがとう香取姉ぇ…」

 

「いえいえ、大したコトでは……あと、鹿島、公務中に香取姉ぇはやめなさい」

 

「…しかし香取先生ェ、あとで妖精に厳しい躾と言ってましたが…」

 

「えぇ、さっきの人形、中に妖精が入っていたようですし……まぁ、たぶん妖精のイタズラかと」

 

「え?アレ、中に妖精がいたの?」

 

「鹿島………まさかアナタ、気がつかなかったと?」ギロッ!

 

「え!?いや、も、モチロンわかってたよ!うん!全然知ってた!うん!そんなの当たり前じゃん香取姉ぇ!」ガタガタ

 

いや、鹿島先生は心底ビビってた、俺にはわかる、アレはマジだった

 

「………まぁいいでしょう、あと鹿島、香取姉ぇはやめなさい」ギロッ!

 

「は、はい、スイマセン…もうしません」ガタガタ

 

………しかしあの不気味な人形、妖精の仕業とは、っーかメルヘンじゃあるまいし、妖精なんているワケないんだが…

 

香取先生はバラバラにしたカ●コブリーナのそばに近寄ると、ナニかを拾いあげた?

 

『ギャース!タスケテー!』

 

「アナタ工廠の妖精ですね?少々イタズラが過ぎるようですが…」

 

『アカシデス!マスター・アカシカラコノソーコヲシラベルヤツヲハイジョシロトメーレーサレマシター!』

 

「なるほど…」

 

ーーー

 

みんなの店、アカシメイト…

金と権力が本当に好きで好きで仕方ない人間のプリミティブな部分を集めた明石の経営する小売店である…

 

「あー……本当に金が欲しい」

 

今日も菓子パンと雑誌と遊●王カードぐらいしか売れず、店のカウンターで暇そうに日課の帝●データバンクと全国倒産情報を見ていた明石………そこへ

 

「いらっしゃ…ゲッ!テイトク!?」

 

「よぉ…明石ィ〜…」

 

「きょ、今日はナニをお求めで?ジャ●プですか?」

 

「………カポエラ」

 

 

この後、明石は怒りの爆裂拳でメチャメチャに破壊され、全治一週間の医務室送りになった…


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