不健全鎮守府   作:犬魚

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新人面接回前半戦

【登場人物】

薄雲(駆逐艦)
…薄い

迅鯨(潜水母艦)
…重い

伊47(潜水艦)
…かわいい

第四号海防艦(海防艦)
悲しき存在

松(駆逐艦)
レッツビギンでございます



続続続続続続続続続続続・提督と新人と面接①

たった一度の今日という一日…

本物の男ってのは自分のそういう一度っきりの大切な日を…たった一度の今日という日を感じとれるヤツのコトをいうんだ…

 

新人面接と言うのは非常に面倒くさい仕事だが、俺はこの基地の絶対支配者であり提督様である、故に、この面倒な仕事にも熱意を持って取り組まぬばならない…

 

「特I型駆逐艦、七番艦、薄雲です」

 

「ほぉ、特I型…」

 

残夏の新人面接10連戦迎えるトップバッターはどう見てもズラ型駆逐艦姉妹の姉妹か…

 

「えー…薄雲クンはアレかね?ズラ型姉妹で?」

 

「ズラ…?」

 

「あぁいや、吹雪型だったな、スマンスマン」

 

どこぞの田舎出身でどうにも訛りのある吹雪姉妹だが、どうやらこの薄雲クンはあまり訛ってる感じではないらしい、もしかすると文字通り、薄雲と言う名前なだけあって、姉に比べて色々と薄いのかもしれないな…

 

「名は体を表すと言うが……もしその名前が偽りだとすると、その、存在自体が偽り、と言うコトになるのかな」

 

「…はぁ?」

 

しかしこの子、ホントに薄いな、そこに存在しているハズなのにまるで存在感を感じない、まるで吹雪型姉妹と言う強烈な個性の輝きの………影、これまさに、幻の七番艦

とりあえずお手元の資料から見るに、性能自体は尖ったモノはないごくごくありふれた吹雪型…

 

「ふむ、とりあえず君はファームで鍛えてからだな、ウチはイケると思ったら誰でもバンバン起用する実力史上主義だがそれはむしろチャンスでもある、励みたまえ」

 

「はぁ、ありがとうございます」

 

ーーー

 

薄い感じで始まり、薄い感じで1人目の面接を無事終え、そんな薄味の中迎える次の刺客…

 

「私、迅鯨型潜水母艦一番艦、迅鯨と申します」

 

「ほぉ…迅鯨クンか、ふむ」

 

とりあえず座ってどうぞと着席を促した俺は手元の資料を見るフリして迅鯨クンをチラ見してみる…

なるほど、これはなかなか大層なモノをお持ちのようだ、この巨乳にあのミニスカート、参るぜ

 

「えー……迅鯨クンはアレかね?潜水母艦っーとアレかね?前のゲイ子みたいな艦種の」

 

「ゲイ子…?」

 

「あー……えーっとなんだっけ?龍鳳クンに名前変わったアイツ」

 

「あぁ、大鯨さんですか」

 

そうそれ、大鯨クンも潜水母艦時代は新妻感パナイドエロス潜水母艦だったが、この迅鯨クンもそれに匹敵する新妻感……否、幼妻感と言ったところか?

とりあえずお手元の資料によると、この迅鯨クンはマジに純粋な潜水母艦らしく、龍鳳クンみたいに軽空母に超進化とかしない感じらしい…

 

「………性能はまぁ、ザコか」

 

「ザコくてスイマセン…」

 

「いや、構わんよ、誰にも向き不向きがある、迅鯨クンは迅鯨クンにデキる仕事を頑張ってくれればそれでいい、餅は餅屋、適材適所と言うヤツだな」

 

「は、はいっ!私、潜水艦の皆さんのお世話とか得意なので!」

 

「ハッハッハ、まぁ頑張ってくれたまえ、ハッハッハ」

 

「ありがとうございます!あと、ずっと前から好きでした!付き合ってください!」

 

「ハッハッハ、小粋な迅鯨ジョークと言うヤツかね?しかし残念だが提督のベッドは半年先まで予約でいっぱいさ、あと、俺たちは互いのコトをまだよく知らないじゃないか?」

 

「……………許せない」

 

「は?」

 

「私のコト好きって言ったのに!!」

 

迅鯨クンはエコバッグから取り出した包丁を投げつけてきた!!

 

「危ねぇ!!な、なんだぁ…?」

 

「私のモノなのに!私のテイトクなのに!殺してやる!アハハハ……そうよ、それがいい、それが一番だわ……うふふふ、私のモノにならないテイトクなら私のモノにしちゃえばいいんだ…」

 

迅鯨クンはうふふだのアハハだの笑いながら新たに取り出した包丁の刀身をペロリと舐めている…!

 

「なんなのこの娘!?オイ、サミー!ブラスターだ!ブラスターで撃て!謀反人だ!」

 

この後、狂気の潜水母艦迅鯨クンは隣の部屋で待機していたらしい陸軍の暗殺艦、神州丸クンによって取押えられ、謎の注射を打たれて気を失い、引きずられて行った…

ちなみに、迅鯨クンの資料の備考欄に“情緒不安定、あと、重い”と書かれてあった…

 

ーーー

 

薄味かと思いきやいきなりの重さに戦慄する2人目を無事?に終了し、迎える3人目…

 

「伊号潜水艦、巡潜丙型の7番艦、伊47………ヨナって呼んでくださいな…」

 

「ほぉ、潜水艦か…」

 

こりゃまた懐かしい、最近新しい潜水艦の配属ってのはなかったからなぁ〜…たしか最後にウチに来たのはルイジくんだったか?

 

「ヨナ、ですよ?うふふ…」

 

「ふむ、伊47クンな」

 

かつては当基地でも一番の働き者だった実力派エリート集団の潜水艦どもだが、近年の海域改革でオリョール海やキス島という狩場を失い、現在はかつて程のマグナムシフトが組まれる事がなくなり職場環境はKENZEN化されている…

 

「まぁ、ウチは潜水艦に関しては独自の育成枠があるのでそこで頑張ってくれたまえ、何かわからないコトがあれば優しい潜水艦のセンパイ達が教えてくれるだろう」

 

高収入、無理のないシフト、長期休暇あり、優しいセンパイ達がサポートしてくれるアットホームな職場、それが当基地の掲げる潜水艦サポートプログラムである

 

「わかった、よ?」

 

「わかってくれて嬉しいよ」

 

しかしこの子、なんかバカでアタマの悪いヤツが多い潜水艦にしては随分とフワフワした感じだな、今もなんか落ち着きのない犬みたいにソワソワしてるし………ハッ!?まさか、おしっこか!おしっこを我慢しているのか!

 

クッ、それは悪いコトをしたな、だが提督は空気が読めて気のつかえる大人だ、過ちを恥じる事はない、ただ認め、次の糧にすればいいだけだ

 

「面接は以上だ、伊47クン、退室してくれて構わんよ」

 

「終わり?ホントに?」

 

「本当だとも、さぁ急いで!執務室を出て左に行ったら階段のすぐ横なのだよ」

 

「?、何が…?」

 

オイオイオイ、この子ホントに大丈夫なのか?

 

「終わったのなら、遊びに行っていい?」

 

「いいから!遠慮しなくていいから行ってきたまえ!」

 

「テイトクも、一緒にー?」

 

「キミはそーゆー趣味なのかねっ!?」くわっ!!

 

俺は思わず執務机を勢い良く両手で叩くと、伊47クンはビックリしたのか、その場で跳ねた

 

「お……お……怒らないで」ポロポロ…

 

「あ、いや、別に怒ったワケじゃないのだよ、うん、キミに怒ったワケじゃあない、うん、すまない、驚かせてしまったね」

 

「ホントにぃ…?」ポロポロ…

 

「本当だとも、さぁ、早く行きたまえ、君の理性が残っている内に…」

 

ーーー

 

ビックリするほど扱いづらい繊細で今風の潜水艦に、やはり若い娘はナニ考えてるかわからんなと改めて思い知らされ、迎える本日4人目の刺客…

 

「マル戦計画で生まれた丁型海防艦、その二番艦、第四号海防艦でっすー」

 

「………はぁ?」

 

テー型カイボー艦…?あぁ、海防艦か……っーか4号?え?ナニそれ?名前なの?俺はとりあえず手元の履歴書的な資料を確認してみるが………

 

マジだった、マジで4号だった

 

「そうね~ぇ、よつ……って呼んでくれていいよぉ?テイトク、よろしくねぇ!」

 

「あ、あぁ…ヨロシク」

 

オイオイオイ、今まで数えるのも面倒なくらい艦娘がウチに配属され、俺もあらゆるワルと呼ばれた艦を見てきたがさすがにこんなパターンは初めてだ…

DQNネームとかキラキラネームとかならまだわかるが、まさかの4号だぞ!4号!コレ完全に人道とか倫理とかガン無視のヤバい機関が秘密裏に作り出した悲しき存在じゃねーか!!

 

「テートクぅ、マツのアネゴも来てるってホントですかぁ?」

 

「マツ?」

 

誰だそれ?いや、なんだ?マツ…?あぁ、松風BOYのコトか?たぶん

 

「あぁ、いるぞ、たぶんその辺でディナーショーでもやってるだろーから会いに行くといい」

 

「ディナーショー!?マツのアネゴすげぇ!」

 

しかしこの子、悲しき存在だろうになんと前向きなのだろう、資料を見るに、海防艦な上、2スロットとかザコ中のザコみてーなしょっぱい性能しかないと言うに……

おそらく倫理観ガン無視ハイパー海防艦実験は失敗し、彼女は失敗作として廃棄されたとかそんな悲しき過去があるのだろう…

 

俺はそんな悲しき過去があるであろう4号クンに対し、ガラにもなくアツいものを感じた、優しさ、友情、愛情、それはきっと彼女が今まで触れたコトのないもの……温かさを持った人間の光を、彼女に見せてやるのが大人の務めではないだろうか?

 

「4号クン、これで………その、なんだ?美味しいものを食べなさい」

 

「うっひゃあー! いいんですかぁ?」

 

俺は財布から紙幣を数枚取り出し、4号クンの手にアツく握らせてやった

 

「あぁ!いいさ!あぁ!キミが好きなだけここに居ればいい!安心したまえ、みんな優しいキミの家族だ」

 

ーーー

 

海軍の闇が作り出した悲しき存在に胸をアツくして迎えるのはようやく新人面接の5人目…

正直、疲れたのでもう帰りたいのだが…

 

「丁型駆逐艦、松型一番艦、松です!」

 

「…マツ?」

 

いや………マツ?ついさっきどこかで聞いたような名前な気がするが、まぁいい

 

「えー…松クンはアレかね?ウチに来る前職フロントウ●ングさんとかそんな感じかね?」

 

「…ハァ?あの、正直ナニを言ってるのかよくわからないんですけど…」

 

「すまない、松クンはそんな顔をしているものだからつい…」

 

レッツビギンでございますと言いたくなる気がするが、まぁ、気のせいだろう…

 

「えー…松クンの性能は〜……なんだザコか」

 

「や、いきなりザコ呼ばわりはヒドくない?まぁ、ザコいんですけど…」

 

性能的には人斬り神風クンの神風姉妹以上、アホガキ睦月姉妹改二以下と言ったところか…

 

「ま、ファームで徹底的に鍛えてからだな、ウチはどんなザコでもチャンスある職場だから、うん」

 

「はーい、ってかザコザコ言うのやめてくれません?一応傷つくんですけど」

 

「ならば励みたまえ、レッツビギンでございますだ」

 

「はぁ?」





次回は後半戦
MAJORからの刺客!!

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