【登場人物】
提督(ジェントル)
基本、モクモクしちょるだけの敗北者
今回も甲勲章とか貰ってない安心のザコ提督
「えー…今回の作戦海域も皆さんの頑張りもあり、無事に成功し、完了したコトを提督は嬉しく思っています、えー…皆さんが普段から頑張っている姿、それを結果として残せたコトはこれからの皆さんにとって、かけがえのない思い出であり、財産になります、えー…お話が長くて皆さんもダレるでしょうが、もう少し、提督からお話をさせてください、えー…皆さんはこんな話を聞いたコトがありますか?あるところに一匹のドラ猫が〜…」
『いい加減にしろテメェー!』
『毎度毎度ハナシなげーんだよオッサン!』
『足クセーんだよ!』
大規模作戦を無事に終え、真夏の基地体育館で恒例の全艦集会を開催中なワケだが……まったく、いつまでも成長せんガキども…っ!目上の者からのありがたいご高説と言うものが未だに理解できぬクズ…っ!提督様のありがたいお話中に汚い野次が飛んでくるのもまた、自然の流れと言うものか………あと、俺の足はクサくない
クズどもの汚い野次に決して負けない提督は、スケジュール予定の時間45分をたっぷり使いクズどもにたっぷりとありがたい話を聞かせた、途中、立ちっぱなしの苦痛に膝を折りそうなバカガキどもの苦痛に喘ぐ表情がチラチラ見えるのが愉快でたまらなかったわい、ガハハハ
「えー………それじゃ、クソの役にも立たないお話はここまでにして、今からお給料の時間を始めまーす、名前を呼ばれたら元気に返事をするよーに」
俺は舞台袖に待機していたサミーに合図を送り、台車に載せたジュラルミンケースを用意させ、その中身を取り出す…ッ!!
現金…っ!キャッシュ!マネー!全ての欲望を叶えるこの世の魔王…っ!!
「えー…今回のMVPチケットランキングはなかなかの接戦ぶりだった、それもこれもオマエらクズどもがやる気を見せた証ってワケだが………まぁいい、えー今回のMVPチケットランキング1位は〜…長門、オメーだ」
南太平洋最終決戦、陸奥とのチームとは言えかつてのクロスロードパワーを彷彿させる謎のパワーを振るい深海のクズどもをメチャメチャにした最強戦艦長門ッッッ!!
その長門は、皆の拍手を一身に受けつつ堂々と壇上へと上がった
「よくやった、感動した」
「フッ、連合艦隊旗艦を務めた栄光に比べれば微々たるものだが、貰っておこうか…」
俺は長門の手をアツく握り、分厚い札束を手渡すと長門はあくまでCoolにそれを受け取った
『さ…さすが長門さん、生まれた瞬間に立ち上がってそのまま椅子に座ったと言うだけあるわ!』
『人生で一度も横たわったコトがないと言う噂すらあるのです!』
『ハラショー、いつも気高く冷静で強く全てが完璧な戦艦なだけはあるよ』
駆逐艦のバカどもから尊敬、そして畏敬の眼差しを受ける長門はまるで別に騒ぐほどの事はない、当然だと言わんばかりに軽く手を振って応えた
ガキどもから絶大な人気を誇る戦艦長門…!いつだってCoolで多くは語らないが、その、あまりに大きい背中はキッズ達の憧れの対象なのだ…ッ!!
『さすが長門サン、メチャカッケーっす!』ペコォ!
『長門サン、メチャシブいっす、マジ憧れるっす!』ペコォ!
『今回も長門サンにベンキョーさせて貰いましたァ!』ペコォ!
「………フッ」
湧き上がる長門コールの中、壇下へと降りる長門…
だが………これほどまで絶大な人気を誇る長門にも悩みはある
「陸奥さん!コレ終わったらドーナツ食べに行きましょ!」
「てぇ…食いてぇ〜……ドーナツ食いてぇ〜」
「はいはい、あ、そーだ、長門に奢ってもらう?今お金持ちよ、長門」
「長門サンに!?無理無理無理!無理ぃ!」
「もぉー!陸奥さん、長門サンがドーナツなんかシャバいものを食べるワケないじゃない!」
「そうよ、長門サンはドーナツなんか食べないわ!」
「そうかしらねぇ…」
………何故駆逐艦のキッズは陸奥には気さくに懐いているのにこの長門にはまるで懐かないのか、自分も陸奥のようにキッズ達の笑顔に囲まれたい、楽しくおしゃべりしたい、アイ●ツカードの交換とかしたい…
ーーー
「えー…第2位、長良主将」
「よっしぇあーッ!!」
MVPチケットランキング2位、アツいナイスガッツを持つナイスガッツ長良主将はナイスガッツな叫びをあげて壇上へと駆け上がってきたッ!!
「よくやった!感動した!」
俺は長良主将に分厚い札束を手渡しその健闘を讃えると、大きな歓声……いや、長良コールが湧き上がり長良主将はそれに応えるように大きく両手を天に衝き上げたッ!!
「ナイスガッツ!ナイスガッツ!ナイスガッツ!オマエらみんなのナイスガッツの勝利だーッ!!」
『ウオォォォォ!!ナガラ!ナガラ!ナガラ!』
『ナイスガッツ!ナイスガッツ!ナイスガッツ!』
長良主将は湧き上がるナイスガッツと抑えきれないナイスガッツで壇上から飛び降り、アツいナイスガッツウェーブでもみくちゃにされて行った…
「………えー続いて第3位、木曾」
ーーー
粛々と行われるお給料の時間…
「最下位、浦風」
「なんでじゃあ!?ウチ活躍したやん!?」
「活躍以上に俺をイライラさせた、あとなんだその下品な乳は?誘ってんのか?」
最下位に給料の300円を手渡し、今回の大規模作戦における全ての行事は終わった、浦風は不遜にも俺に納得いかんわー!と掴みかかってきたのでパイオツを揉みしだいてやると“死ね!”とストレートな捨て台詞を吐いて逃げて行った…
「えー………では、今回も無事に海域作戦は終わりと言うコトで、ささやかではあるが酒や食事を用意してある」
「ヒャッハー!水だぁー!」
「オイ!ベーコンだ!厚切りのベーコンだぜ!」
「誰だオレのカラアゲ取ったヤローは!殺すぞ!」
まったく、まるで飢えた蛮族だな…だが、まぁそれも許そう、何故なら当基地は“あったけぇ…”コトに定評がある福利厚生に厚い基地だ、宴の席ではBreak-on、多少の無礼は全て許そう…
「さて…」
あっちの方ではリューホーくんがチンピラ空母どもに絡まれているようだが……あ、目が合った、気付かなかったフリをしよう、グッパイ、リューホーくん
とりあえず俺もテキトーなモンつまんでさっさとこの場を去るかとテーブルに行くと…
「あら?mon amiral、アナタ、ズイブンと遅いのね」
「そうかぁ?余裕を持った行動と言って欲しいな」
フランスから来た自称最強戦艦リシュリュー…
豪奢なキンパツと高飛車な態度を持つスーパーモデル戦艦様は何がそんなに誇らしげなのか、フフンと鼻で笑っていた…
「ちなみに私のオススメはこのCroc MonsieurとBisque、あとはそこのPoulet fritあたりもなかなかだったわ」
「すまんがニホン語で頼むわ、おフランス語はよくわからん」
「ハァー?ア・ナ・タ、少しはFrançaisを覚えようと言う気はないの?」
「Je ne sais pas de quoi tu parles……Richelieu」
「デキるじゃないの!?ってかアナタ!私のMèreとデンワで話してたでショ!実は普通に話せるんじゃないの!?」
「さぁ…?何を言っているのかわからないな…リシュリュー」
ーーー
「…フーッ、タバコタバコ」
テキトーに酒と料理を腹に入れ、殴り合いだの酔っ払いダーに絡まれない内に体育館の外へとやって来た俺はとりあえず胸ポケットからタバコとライターを……
「……ライターがねぇよ」
しまったな、ライターがないのだよ、どこやったっけか?執務机に置いてきたか?
「チッ、しゃーなしだな、オイ青髪ロング子、火ぃ持ってねぇか?」
「持ってませんよ、と言うかよく気付きましたね」
相変わらずいつの間にやらケーキっぽいものを載せた小皿を片手にぬるっと俺の背後に立っていた秘書艦サミー子、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね…
「卿は私の半身も同然、何か不思議はあるかね?」
「スイマセン、超キモいんで吐いていいですか?」
「あぁ、言ってみて俺も気分が悪くなった」
言ってみたものの、俺たちは互いに大して気にしたワケでもなくとりあえずテキトーなベンチに座った
「で?火ぃ持ってねぇか?」
「持ってないです、ケーキ食べます?」
「いらねぇよ」
「そうですか、あ、そうそう、明日新人面接あるんでビッとした格好でお願いします」
「マジかよメンドくせぇ、面接って何人ぐらいだ?3人か?4人か?」
「10人です」
「10人ゥゥゥゥゥゥ!?なんか多くねぇか!?」
オイオイオイ、マジかよクソがなんだその人数!?今まであったか?そんな大量配属!クソ!人事に電話してやんよ!人事に!
その後、ライターを取りに行くのが面倒くさい俺は毒咬みで火でも出ないかと頑張ってみたが出ないっぽいので諦めた
次回は全2回で新人面接回
恐るべき無情の刺客!十本刀現る!!