【登場人物】
Richelieu(戦艦)
航空戦艦を温存し、まぁどうせ後半戦は出番ないだろ気軽な感じでメンバー入りを果たした自称最強戦艦
シュークリームにはこだわりがあるらしく、人の話は聞かない系
駆逐林棲姫(イキリ駆逐艦)
前半戦のラスボス、イキリ散らしてる
阿武隈(六女)
夕張の咬龍がちょっと羨ましい
前半戦最終ステージ、知と力がせめぎ合う死闘の第四ステージ…
小笠原諸島の島嶼要塞群防衛力強化の名目の下、まずは輸送任務にせっせと精を出し、駆逐艦のキッズ達がアツい労働の汗を流す姿には提督として感動を覚えるものだ、あとで全員にアイスを買ってやろう
「陽炎!ヘイ!陽炎!」
「オーケー!不知火!」
『ウゲェ!!!』
ゴシャアッ!!(クロスボ●バー)
「でたーっ!かげぬい殺法コンビの殺艦技!クロスボ●バーッ!」
「アレを喰らって首を痛めなかったヤツはいないぜーッ!」
「ククク……死んだぞテメー」
◆◆◆
今日も梅雨の明けない7月の執務室…
オイオイもう7月も後半ですよ、後半、いつまでジャブジャブ降ってんのかねこの雨は、前に雨はいつか止むとか時雨様が言ってた気がするが、その当人が文字通り、血の雨を降らせるんだから笑えないジョークだと思うのだよ
「九三一空か」
「九三一空です」
そんなしょーもないコトを考えつつ、前半戦最終決戦に信じて送り出すチームのメンバーを考えていると、執務室の重厚なドアを叩き、今日もお腹急降下上等のヘソチラウエストが眩しいマゾ軽巡の夕張がなにやらやたら分厚い書類を片手に入室してきたのでついイラっときてお腹に一発パンチを食らわせてやったら、悶絶して床を転げ回りヒーヒーフーと何か新しい生命が生まれそうな呼吸法で回復し、その分厚い書類を執務机に置いた…
「今回、九三一は超抜エンジンらしくかなりイケてるとのコトです、もうコレは九三一のアタマからイくしかない流れです」
「なるほど、つまりアレだ……大本命、と言うワケかね?」
「然り」
恭しく頭を下げた夕張、たしかに、持ってきた書類に記載されたデータは確かなものらしく、しかも、厳正なる抽選で九三一を獲得したのがS級軽空母の瑞鳳とあっては◎をつけざるを得ないと…
「よかろう、卿を信じよう、見事期待に応えてみせよ」
「ありがきしあわせーっ!」
そんな俺たちのやりとりに、秘書艦サミー子は特に何を言うワケでもなく、俺が飲むハズだった麦茶のグラスを夕張の前に置いた
「どうぞ」
「ありがとー五月雨ちゃん………ぶはぁ!うんめー!」
麦茶をイッキに飲み干した夕張はグラスを執務机に叩きつけ豪快に口元を拭った、そうか……夕張は喉が渇いていたのか?そして、私はそれに気付かず、むしろ煩わしいと感じてお腹にパンチをしたのか…
「私の分は?」
「ご自分でどうぞ」
こやつめ!カッカッカ!こやつめ!
◆◆◆
ドルンドルンとゴキゲンなエギゾーストを響かせる小笠原の空…
「キサマの航空戦は周回遅れだーッ!!」
『ウゲェーッ!!』
『ヌ、ヌ級ーッ!ナンダアノマシン……!ハンパジャネェ!!』
『クソガ!コッチモ負ケテラレネェゾコラァー!キモイ鳥ダセ!キモイ鳥!』
小笠原諸島最終決戦!駆逐林棲姫率いる小笠原諸島沖深海駆逐林棲姫群VS天と地のはざまに立つ美の戦士、自称最強のリシュリュー率いる水上攻撃チームの激突は序盤から熾烈を極めた…
『ギャース!ギャース!』
「クソッ!このクソ鳥!キメェぞ!」
「Ça fait mal!!痛い…!コイツ噛んだわ!噛みやがったわー!!このド畜生がーッ!!」
「あったよ!!初月と10cm高角砲+高射装置が!」
「でかした!」
超抜エンジンとは言え九三一によるゴキゲンイグニッションには限りと言うものがある、いざ決戦となればやはり最後にモノを言うのはステゴロ、拳である…
「死になさい!和菓子Mon amiral直伝!ピラ●アンローズ!」
この前半戦最終決戦と言う大事な大事な大一番、本来なら暇そうにトランプゲームをしていた航空戦艦が抜擢されたであろうこのゲームに、自称最強戦艦リシュリューは自ら手を挙げ登板を志願していた…
理由は色々ある、最近稼ぎが悪い、ニホンの戦艦どもと比べ、ここぞと言う場面での戦果と言うか成績もあまり良くない、実家からは艦娘なんて辞め、誰か良い人と結婚し実家に帰って家業を継いで欲しい、あと、早く初孫の顔が見たいと遠回しにチクチク言われていた…
「ピラ●アンローズ!ピラ●アンローズ!ピラ●アンローズ!」
自由・平等・博愛、そんなモノはこの国に来て早々に間違いだと気付かされた、戦艦に必要なものは苛烈・残忍・残酷の精神、そしてMon amiralは私にこう教えてくれた……戦艦の拳は深海棲艦を叩くだけのものではなく己の心を表現するものなのだと…
「出た!テイトク大人気ない戦法No.02!飛び道具チクチク!」
「弾速の速い飛び道具で相手の邪魔をすると同時に飛び込んできた相手を無敵対空で迎撃する基本的戦法!単純でありながらこれがなかなか…」
その、Mon amiralの期待を一身に受けたこのRichelieuは決して負けな…
『ゴチャゴチャウルセェェェェェェェェ!!!』
「グボォ!!」
ネ級改の必殺スクリューお腹パンチがリシュリューのお腹に炸裂し、リシュリューは口から光る吐瀉物を吐きながら宙を舞った…
『戦艦ナラ拳ヒトツデ勝負センカイ!』ドヤァ!
ーーー
『アァ…?ヒトリジャナイッテ…ナカマガイルッテ……?
ダカラ…ナンナンダヨォ!ヒネリツブシテ…シンカイニ…シズメテヤルヨォ……カカッテコイヨォー!』
駆逐林棲姫、この、小笠原諸島を牛耳る深海チームの頭…
その駆逐艦にあるまじきイキリぶりから、仲間達からはイキリ駆逐艦とディスられているが、その残虐性、残忍性、そして実力はホンモノであり、かつてイキリ回って中枢棲姫にタイマン挑んだ時は鼻血が出るほど殴られた…
「えいっ!」
『アイタッ!』
「えいやっ!」
『イタイ…!ナンダオマエ…!ナンダオマエ!オイ!タイマン張レヨ!オイ!ビビッテンノカオイ!』
そんなイキリ駆逐艦に対するのは………長良姉妹の末妹、阿武隈率いる第2艦隊チーム…
「野分!そっち行った!」
「囲め囲め!オラ!逃げんなオラ!」
「まず足を狙え!足!ウロチョロできねよーによぉー」
仲間など不要!そう断じた駆逐林棲姫とは対照的に抜群のチームワークで駆逐林棲姫を囲み、リンチする形になったが………これは阿武隈の望む形ではなかった…
本来、阿武隈は長良姉妹の中でもとりわけ心優しい性格であり、誰かを傷つけたり誰かに傷つけられたりするのを嫌う本当に優しい子だった…
「あ…あの、みなさん……もう少し丁寧と言うか…」
「オイ!阿武隈サンが念入りにヤれってよォ!」
「ヒュー!さすが阿武隈サン!残忍ーっ!」
「え…?いや、ちが…」
ナイスガッツに溢れた体育会系ナイスガッツの長女長良、潜水艦狩りのカリスマ的存在五十鈴、敵の返り血でラムレーズンがストロベリーチップになっちゃったネと笑顔で言える最悪の姉由良…唯一心許せるのは一つ上の姉である鬼怒だけ…
そんな鬼姉達の評判のせいか、ここに配属されたばかりの頃、末妹である阿武隈もまた、鬼の子だと噂は広まっており、悪い意味でキッズ達からリスペクトされていた…
そして時は流れ、平凡な軽巡だったはずの自分がまさかの甲標的搭載のハードパンチャーとなり、まさかあの北上クンからもヤるじゃんオマエと一目置かれる立場になってしまった…
だが、彼女は本当は心優し…
『ウッギャアウッギャアギャギャー!!』
「阿武隈サン、コレ…」
そう言って、皐月が手渡してくれたのはピカピカに磨かれた黒光りする魚雷…
そう、みんな期待してくれている……コイツでガツンとヤっちゃえ、と…
みんな期待している、みんなが期待してくれている、みんなの期待に応えなくちゃいけない、みんなが期待……
「ヒィィ!!ヒイイィィィィィ!!ヒイイィィィィィ!!」ブルブル…
ジャリッ…
『ヤメナヨ…ヤメロッテェ…!!』ブルブル…
ゴスッ!!ゴガッ!!ドスッ!!ドガッドガッ!ガンッ!ガンッ!!ゴシャアッ!!メメタァ!(五連装酸素魚雷)
「ヒュー!やっぱ阿武隈サンマジパねぇー!」
「あの鬼気迫る顔!マジ鬼神っすわ」
「やっぱ長良姉妹はアクマっすわ、あーおっかね、マジキレっとナニすっかわかんねー」
『ウソダ…コンナノ…オマエノ…オマエタチノタタカイニ……イミナ……』
「ウヒャアアアアアア!!死んじゃえ!死んじゃえ!死んじゃえェェェェェ!」
ゴスッ!!ゴガッ!!ドスッ!!ドガッドガッ!ガンッ!ガンッ!!ゴシャアッ!!メメタァ!(五連装酸素魚雷)
「ヤリすぎっすよ!ヤリすぎっすよ阿武隈サン!山雲!ハーブ!オマエハーブ持ってたろ!」
「あるよ〜…トぶヤツ」
「阿武隈サン!阿武隈サン!ヤバいっすよ!それ以上はマジヤバいっすよ!ちょ…!オイみんな手ぇ貸せ!」
…こうして、駆逐林棲姫はマジヤバい感じで沈み、深海救急病院に深海救急搬送された…
ちなみにこの事件では阿武隈は正当防衛が認められ、今日も寮の部屋で由良からパシられている