不健全鎮守府   作:犬魚

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おいしくなーれポコポコポーン

【登場人物】

提督(メガネ)
100円か、200円か、それが問題だ…

古鷹(エンジェル)
天より舞い降りし天使、給料は趣味につぎ込みがち

明石(ピンク)
本当に金が好き




提督と古鷹さんとポコポコポーン

大してやるコトのない午後、たまには基地の施設点検でもするかとプラプラ歩いていると、なんかよくわからない行列ができていた…

 

「なんだアレ?」

 

俺の役職は提督、名探偵だ、俺はこの謎を解かねばならない…

 

あれは何の行列なのか?注意して観察すればその謎を解くヒントはすぐに見つかる、まずあの行列に並んでいるヤツらだ、見たところガキどもが多い、そして列のその先、おそらくあの先にあるのは明石の店、つまり明石の店を先頭にあの行列は形成されているのだ…

 

ではいったいあの行列は何を目的として作られているのか?皆がこぞって並んでまで購入したいものがそこにはあるのだろう…

それがいったい何なのか?それを知るヒント、それはこの場で唯一、あの行列に並んでいない人物が知っているハズだ…

 

「よぉ、古鷹さん」

 

「あ、テイトク、コンニチハ」

 

彼女の名前は古鷹さん、重巡だ

ウチに来た頃は田舎から出て来たばかりの垢抜けてなさが漂う田舎のJKみたいだったが、いつの頃からか?スタイリッシュな今風の娘に垢抜けてしまい、今や付き合いたい重巡ランキング、ヤリたい重巡ランキング、多少の変態プレイに付き合ってくれそうランキングに堂々ランクインするほどだ…

 

そんな古鷹さんは、あの行列に並ぶワケでもなく、ただ、困ったなぁ〜と言いたげな表情でこの場に立っていた、俺の勘は彼女なら何か知っているのだろうと確信していた

 

「オイオイオイ、古鷹さんよ、こいつはいったい何の列だい?」

 

「さぁ…?なんか明石さんの店にゲーム機を置いたとかなんとか聞いてますケド…」

 

「ゲーム機ぃ?」

 

あのピンク、また俺の許可なく勝手なコトを…どうやらあのピンクにはわからせが………いや、この基地の絶対支配者が誰なのかその身と心に教え込む必要があるらしい

 

「私も明石さんのお店に用事があるんですケド、なんかすごい行列だからどうしようか躊躇っちゃって…」

 

「なるほど」

 

古鷹さん曰く、今期鼻血が出るほど楽しみにしていたアイドリッシュセ●ンSecond BEAT!がアニメ制作の都合で休止してしまい絶望していた時、大して期待はしてなかったけど一応チェックしていたB●nG Dreamのボーイズバンド、最初はイマイチノリ気ではなかったものの見ている内に“アレ?コレ、アリなんじゃ…”と考えるようになり、今やGYR●AXIAにどハマりし、明石の店にグッズを買いに行くところだったそうな…

 

「カッコいいんですよ、那由多クン、典型的な俺様キャラなんですけど音楽に対してだけはホントに真剣で本気度が伝わるって言うか〜…」

 

「へぇ〜」

 

「聞いてるんですか!!」

 

「はいはい聞いてます、聞いてますよ、アルゴノートだっけ?お父さん達が言った的なアレだろ?」

 

「GYR●AXIAです!!」

 

ダァン!!!

 

古鷹さんのアツい壁ダァン!に思わずドン引きしかけたが、俺は提督だ、歴戦の猛将でありこの程度の危機は何度だって乗り越えてきた、そう俺は“帝王”なのだ

正直チビリそうになったが、今の古鷹さんのパワーはたしかに凄まじいものだが、俺には見えていた、避けられないワケじゃあない…

 

「へ、へへ…スマネェ、ちょっと間違えちまっただけさ、へへへ…」

 

「……それでですね、那由多クンの話に戻しますケド…」

 

そうですか、と一つ置き、にこやかな笑顔を見せる古鷹さん、そう、以前、誰が言ったか……古鷹さんこそ天より舞い降りしエンジェルなのだと…

その笑顔はまさにエンジェルそのもの、見事天使のようにアツくGYR●AXIAを語る古鷹さんは天使のように那由多クンの俺様を語りこの場を早く去りたいと言う俺を置きざりに天使のように突き進む、その姿まさに………天使

 

誰か、誰か俺を救え…っ!!誰でもいい、悪魔でも…っ!!

 

ーーー

 

古鷹さんのアツい那由多クン推しにウンザリしつつ、とりあえず明石の店で菓子パンと缶コーヒーでも買うかと行列の横を歩いて明石の店へと行くと…

 

『おいしくなーれ、ポコポコポーン』

 

…店の前に、ニンジャがいた

 

むしろ、行列の原因はアレだったのか……なんかガキどもがキャッキャとハシャぎながらボタンを叩いている…

 

「テイトク、なんですか?あれ?」

 

「じゃじ●丸ポップコーンなのだよ」

 

「はい?」

 

そうか、古鷹さんは知らないのか…

 

「まぁ、平たく言えばポップコーンの自動販売機なのだよ」

 

「へぇ〜…あ、アレですか?ウチも昔、実家の近所のスーパーにキ●ィちゃんのがありましたよ」

 

「コンニチハー、出来たてのポップコーンはいかがー?って喋るやつかね?」

 

「それです!テイトク、意外と詳しいですね」

 

っーかなんでじゃじ●丸ポップコーンなんか設置してんだあのバカ、中古で買ったのか?俺を舐めてるにも程があるぞオイ、そんなワケで、俺はカウンターのところで硬貨を数えている明石に声をかけてみる…

 

「いらっしゃいませー…って、提督と古鷹さんじゃないですか、こりゃまた珍しい組み合わせで…」

 

「オイ明石、なんだありゃ?」

 

「なんだありゃ?とは…?」

 

このヤロウ、いきなりトボけるとはイイ度胸だなオイ

 

「あのじゃじ●丸ポップコーンについて聞いてんだよ」

 

「ご覧の通り、じ●じゃ丸ポップコーンですが?」

 

ギリギリギリギリギリ!!(魔のテイトククロー)

 

「見りゃワカんだよオイ!俺はそーゆーコト聞いてんじゃねぇよ、なぁオイ?」

 

「イダァァァァァァ!!痛い痛い痛い痛いィィィィィ!!割れる割れる割れる!!頭がァァァァァ!」

 

『おいしくなーれ、ポコポコポーン』

 

ーーー

 

「…実はカクカクシカジカで」

 

「ほぉ…言葉の意味はよくわからんが…」

 

魔のテイトククローから解放してやった明石曰く、元々はゲーム機レンタル業者が近所のスーパーに置いていたもので、その業者がゲーム機レンタルを廃業すると言うのでタダ同然で引き取ったそうな

 

「ふ〜ん」

 

「まだ使えるし勿体ないなぁ〜…って」

 

たしかに、別に壊れて捨てたってワケではないしな…

それにガキどもには物珍しくて好評らしく、今もキャッキャとハシャいでやがる、フッ…古い機械ではあるが、コイツにはまだ人を笑顔にするコトができるらしい

 

「…ま、許そう」

 

「ありがたきしあわせーッ!」

 

本来ならば設置には事前に提督様の許可を得る必要があるが、まぁ、これくらいなら構わんだろう…

 

「あ、そう言えば明石さん、こないだトラックで何日か倉庫往復してましたね」

 

「ギクゥー!!ふ、古鷹さん…!今のそのハナシは…」

 

「…………オイ、明石、トラックで往復した?オマエ、引き取ったの、それだけじゃねーな?」

 

「いやいやいや!!じ●じゃ丸くんだけ!じ●じゃ丸くんだけですよ!やだなぁ!別に中古で手に入れたゲーム機使って小銭を荒稼ぎしようとか思ってな…」

 

 

『おいしくなーれ、ポコポコポーン』


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