不健全鎮守府   作:犬魚

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キンパツ美少女パースちゃん

【登場人物】

提督(大人)
最近疲れ気味なせいか、更新ペースが落ちぎみのだらしない提督ですまない…

Perth(金髪)
イギリス生まれオーストラリア育ちの金髪美少女
山田ゼレフ先生の大ファン、友達は少ない

秋雲(茶髪)
執筆中はいつも満開、秋雲先生はこれからも“男”を描き続けます

山田ゼレフ先生(?)
ラノベ界隈で史上最も凶悪だったと噂される黒ラノベ作家、その正体はあまり知られていない


提督とPerthと秋雲先生(原作:山田ゼレフ)

今日も元気だウ●コがぶっとい、朝から必殺のビッグ・ベンを放ち、明石の店で買った基地スポを片手に執務室に向かっていると、中庭的なスペースに設置してあるベンチでキンパツの美少女が本を読んでいた…

 

「よぉ、え~……パースくん」

 

「……ん?あぁ、なんだ、テイトクか、何か用?」

 

プライドが高くてア●ルが弱そうなキンパツ美少女ことチームABDAの一員、パースちゃん

 

「別に用は無いが…」

 

「そう…」

 

パースちゃんは俺から興味を失くし……いや、初めから興味など持っていなかったのだろう、再び手にしていた文庫本みたいなのに視線を移した…

 

パースちゃんはイギリス生まれのオーストラリア育ちではあるが日本語を熱心に勉強したらしく、今も日本語で書かれた本を手にしている…

 

「それ、山田ゼレフ先生のかね?」

 

「そうよ」

 

パースちゃんが日本語を熱心に勉強した原因に、この山田ゼレフ先生なる作家の作品がある…

俺は読んだコトはないが、読んだコトあるらしいサミーが言うには痴情のもつれやドロドロした愛憎劇、そして過激な性描写がやたらと多い作風らしく、一部界隈では人気らしい

 

「面白いのかね?それ?」

 

「ハァ…?アナタ、ケンカ売ってるの?」

 

「いや、単純な興味なのだよ」

 

「………そうね、まぁ、面白いと思う人には面白いかもね」

 

パースちゃんによる当たり障りのない回答…

たしかに、万人が満場一致で面白いと感じる作品などはありはしない、キュウシュウに来たばかりの者に“美味しいラーメンってどこ?”と尋ねられるのと同じく、味覚には人それぞれの感性があるので軽易に自分好みの味の店は教え難いものだ

 

「なるほど」

 

「あ、そうだテイトク、アナタの秘書、え~……サミーダーレだったかしら?今度お茶でもしながらお話ししましょうって伝えておいてくれるかしら?」

 

「サミーダーレ…?あぁ、五月雨な」

 

このパースちゃん、自分と同じく山田ゼレフ先生の作品を激読しているらしいサミーに対して妙に親近感を持っているらしく、キンパツ美少女でプライドが高そうなパースちゃんはたぶんトモダチが少ないのだろう

 

「わかったのだよ」

 

「そう、頼むわね」

 

そんなキンパツ美少女のパースちゃんと上司と部下の小粋なコミュニケーションをとっていると、食堂の方から紙袋とドリンクを抱えた秋雲がブツブツ言いながら歩いて来た…

 

「よぉ秋雲、ナニやってんだ?」

 

「…ん?あ、テイトクじゃねーっすか?ティーッス」

 

駆逐艦秋雲、自分でも夕雲型なのか陽炎型なのかよくわからない記憶の中でフワフワした存在らしく、むしろ陽炎も夕雲も秋雲に対して姉妹なのかどうかよくわかっておらず、やはり記憶の中でフワフワした存在らしい

 

「それと~……キンパツ美少女の人、こんなとこでナニやってんすか?ナンパっすか?」

 

「バカヤロウオマエ、俺がキンパツで美少女だからってナンパするよーなチャラチャラしたmen'sに見えるのか?オォ?あと、この娘はパースくんだ、キンパツ美少女の人とかシツレーだろーが」

 

「そうすか?」

 

コイツ、まるで反省の色がないわい、まぁ、たしかにパースちゃんはご覧の通りのキンパツ美少女、それ以上でも以下でもないのは既に常識…

 

「………アナタ、エ~………アキ、アキグモだったかしら?」

 

「そうすよ、あ、それ山田ゼレフのヤツじゃねーすか?」

 

秋雲はパースちゃんの持っていた本に目ざとく気付いたらしく、それ?買ったんすか?と問いかけると…

 

「アナタも知ってるの!?」クワッ!

 

「え?あ、あ~…まぁ、ボチボチっすけど」

 

パースちゃんはアナタも山田ゼレフ作品の読者なのね!と思いの外アツく喰いつき、秋雲の手をアツく握った!

 

「トモダチになりましょう!」

 

「え?友達っすか?別にいいっすけど…」

 

あの秋雲を若干引かせるとは………大したキンパツ美少女だ

 

「ちなみにアナタ山田ゼレフ作品のどれが好きなの?」

 

「え?あ~………いや、秋雲さん、山田ゼレフは知ってるっすけど作品はあんま好きじゃないっーか、趣味じゃないっーか」

 

「……………は?」

 

パースちゃんはさっきまでアツく握っていた秋雲の手を放し、持っていた素敵なハンカチーフで手を拭き…

 

「…そう、アナタとはトモダチにはなれないわ、ゴメンナサイ、消えてくれるかしら?」

 

パースちゃんは秋雲から興味を失い、さっきまでの無邪気で年相応な美少女からいつもの塩対応の孤高の美少女モードへと戻ってしまった

 

「ちょっと!!テイトク!なんなんすかこの人、いきなりシツレーすぎじゃねーっすか!?」

 

「まぁそう言うてやるな、パースくんは気難しくて繊細な今風のキンパツ美少女なのだよ」

 

「クッ!キンパツ美少女への甘めの対応!それが大人のすることかよ…っ!」

 

「大人だからこそさ!子供にはわかりはしない、それが大人になると言うことさ!」

 

「そんなだから大人は信用できない!だから子供達は自分の国を求める…っ!何故それがわからない!いや、わかろうとしないんだ…っ!」

 

「わからぬさ!!誰にも!」

 

秋雲め、私にプレッシャーをかけるか…!そうか、秋雲は良い提督を求めていた、しかし、私はそれを煩いと感じ、秋雲をマシーンとして扱っていたのか…!

 

「ちょっと、うるさいんだけど………口喧嘩なら私のジャマにならないとこでやってくれるかしら?」ジロッ

 

「あ、はい」

 

「スンマセン」

 

パースちゃんに睨まれ、俺達は決着は今、ここではないと互いに理解した

 

「…ま、いいっすわ、ところでテイトク、さっきの山田ゼレフで思い出したんすけど、その山田ゼレフ原作のやつ原稿アガったんでちょいと読んで貰っていいっすか?」

 

「別に構わないが…」

 

秋雲のヤツ、どうにも自分の画風と合わないとは言っているものの、一応、山田ゼレフ先生原作は描いてはいるのか…

 

「…………ちょっと待って、今、山田ゼレフ原作って言わなかった?」

 

「言ったっすよ」

 

「どう言うコト?何の話?」

 

さっきまで秋雲に対する興味を失っていたパースちゃんが再び喰いついてきた

 

「自分、趣味で漫画描いてるんすけど、自覚まったくないんすけど話の作りが上手くないらしくて、とりあえず、原作付けてみたりもしてるんすよ」

 

「………マンガ、あ……アナタ、マンガを描くの?」

 

「だからそー言ってるじゃねーっすか」

 

「え…?じゃあ、ア、アナタが絵を描いて、ヤマダゼレフ先生がお話を…?」

 

「まぁ、そーゆーのもたまにあるってハナ…」

 

ガシッッッ!!!(強握手)

 

「是非!!是非読ませて欲しいわ!!って言うかアナタヤマダゼレフ先生と知り合いなの!?会ったコトあるの!?」

 

「ちょ、なんなんすか!なんなんすか!?アンタさん!?」

 

あの秋雲にプレッシャーを与えている…ッ!やはりただのキンパツ美少女ではないな、パースちゃんは…

 

「テイトク!なんなんすかこの人!」

 

「ご覧の通り、キンパツ美少女だが?」

 

「知ってるっすよ!!そんなこたァ!!」

 

 

後日、秋雲の描いた漫画(作画:秋雲、原作:山田ゼレフ先生)を読んだパースちゃんはいたく感動したらしく、秋雲はパースちゃんからセンセーセンセーと付きまとわれて疲れているようだと食堂でメシ食ってたら夕雲から聞いたが俺は悪くない


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