不健全鎮守府   作:犬魚

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娑婆じゃ見られない基地ところせましと繰り広げられる狂気と根性の祭典、良い席はお早めに

【登場人物】

提督(卑劣漢)
海軍の演習を私欲の為にエンターテイメントに変えるエンターテイナー

表島大佐(快男児)
猛烈にイヤな予感がするのぉ〜…






EXTRA GAME②

年に数度の特別斡旋演習…

通常開催される演習とは違い、基地を一般市民に開放し、周辺地域の住民達に、深海棲艦に対し、海軍が如何に優れた戦力を持っているのかを対外的にアピールする事が許可されており、噂に聞く“艦娘”の可憐かつ勇猛な海の乙女達を一目見てみようと多くの観客が集まるイベントでもある

 

「サミー子、集客はどうだ?」

 

「今のところ、六千弱ですかね…とりあえず前売りチケットは売れてますし、当日も売れてるそうです」

 

「カッカッカ!そうか!カッカッカ!」

 

そしてさらに、当基地ではウチのバカどもによる出店も出しており、会場の外ではアツアツの焼き鳥やお好み焼き、モチロン酒類も販売している

 

「って言うか、このチラシなんなんですか?」

 

キュウシュウ最大級!特別斡旋演習開催ッ!!掟破りのデスマッチ!!【白露型姉妹】VS【白露型姉妹】

禁断の姉妹対決!お茶の間では絶対みられないどちらかが死ぬまで戦う今世紀最大のライブ・パフォーマンス!!

 

「人間とはいつだって血と争いを求める業の深い生き物、それは古代ローマ、コロシアムの時代からみても変わらないDNAの定めしカルマと言えるだろう…」

 

「はぁ?」

 

「ちなみに、そのチラシは香取先生にデザインして頂いた」

 

まったく、香取先生はいつだって俺の想像を……いや、イメージを塗り替えてくれる、先生こそ俺を、そしてウチのバカガキどもを導いてくれる先導者だ…

 

「…そうですか、あ、そう言えば浦風さんが屋台の人手が足りないから誰か人を回してくれって言ってましたよ」

 

「甘えるなブタ乳女と伝えておけ」

 

◇◇◇◇◇

 

「テーマパークに来たみたいだぜ、テンション上がるなぁ〜…」

 

「いや、これはさすがにどうかと…」

 

「提督さん、タコ焼き買っていいっぽい?」

 

特別演習に挑むべくキュウシュウの基地へとやって来た俺達なんだが………なんだろう?今日は何かのライブイベントでもやってるんじゃないだろうかってぐらい人で溢れていた

 

ってか、こんな中で演習するの?いいのコレ?あ、ビール売ってる

 

「…山風、お金出すからビール買ってきてくれる?おつりで好きなもの買っていいから」

 

「飲んどる場合かーッ!」

 

ビタン!(平手打ち)

 

財布からお札を取り出そうとしていると、時雨から妙にスナップの効いたビンタを浴びた

 

「あべし…っ!フッ、時雨………イイビンタだ、だが、お前のビンタを食らって倒れなかったのは、俺が初めてだ!」キッ!

 

「ナニワケのわからないコト言ってるんだよ、ほら、さっさと行くんだよ」

 

「へいへい、よぉーしみんな、ちゃんと並べよー、行くぞー」

 

ーーー

 

演習が開催される会場へと入った俺達は、まず、超満員のスタンドに圧倒された…

そもそも俺達はこんな超満員の観衆がいる中での公開演習など経験がない、果たして慣れないこの環境下でいつも通りのパフォーマンスが発揮できるのだろうか…

 

「ようこそ、表島大佐殿、我が基地へ…」

 

「あ、どうも…」

 

会場に入り、待っていたのは、件の危険人物と名高い中佐と〜………隣に居る娘は秘書艦かな?五月雨…?だよな、うん、なんかうちの五月雨と雰囲気が違う気がするが…

 

「今回の演習、公開演習なんですね」

 

「何か問題が?」クイッ!

 

いや、そーゆーのは事前に連絡しとけよ、なんだよこのメガネ、なんでメガネクイッ!してるんだよ?知性アピールかよ?

 

「まさか……大佐殿の部下は大勢に見られていると恥ずかしくて十二分なパフォーマンスが発揮できない?とは言いますまいなぁ!ガハハハハ!」

 

「まさかぁ!そんなワケないですよ」

 

このヤロウ……ッ!!いきなりハメられたッ!!どうやら噂以上に卑劣な男らしいな……

 

そんな卑劣メガネはフェアに戦おうぜと握手を求めてきたので、とりあえずその手を握り返し…

 

「…どうかしたかね?」

 

「いや、握手は後でいいでしょう、俺達が勝った後で」

 

………危ない危ない、あの右手、何か仕掛けがあるかもしれない、そうだ、ここは敵地、アウェーだ…

そして、この緊張感…鉄底海峡戦でも何度となく感じたイヤな予感を身体の底から思い出す感覚だ

 

求められた握手を拒否し、ではまたと簡潔な挨拶だけして俺は仲間達の居るベンチへと戻った

 

ーーー

 

演習の形式は通常通りの6人選抜式…

しかし、この特別演習は通常ルールとは異なり、初戦を単艦同士のシングルマッチ、二戦、三戦目を二対二のダブルス形式、そして四戦目が再びシングルマッチと言う変則ルールで行われる…

 

 

【S1】

涼風 VS 夕立(表島)

 

【D1】

五月雨&村雨 VS 時雨&白露(表島)

 

【D2】

白露&海風 VS 江風&山風(表島)

 

【S2】

春雨 VS 春雨(表島)

 

 

………同キャラ対決になったのは春雨ちゃんだけか、まぁ、ある意味わかりやすくていいか

 

「よし!初戦は夕立だ、ぶちかましてやれ!」

 

「わかったっぽい!」

 

まず出し惜しみせずエースをぶつけて勢いに乗る!姉妹1の狂犬だ!

 

「…相手は夕立を出さないんだね」

 

「そうらしいな」

 

さすが時雨だ、冷静で的確な分析をする…

たしかに、相手のメンバーには夕立の名前がない、もしかして、夕立の練度は低いのだろうか?

 

「舐められてるんじゃないかな?」

 

「だとしたら、舐めたコトを後悔させてやるまでだ」

 

◆◆◆◆◆

 

「オイ、スズカ、真面目にやれよ、真面目に」

 

「ハァ…?っーかスズカじゃねぇし、涼風な」

 

「ナニが涼風だ、扇風機みてぇーな名前しやがって」

 

「誰が扇風機みてぇーな名前だコラ?」

 

提督様に対してメンチ切ってくる姉妹の末妹、涼風

五月雨に見た目が似ていることから、凶暴な方の五月雨や、五月雨Bと呼ばれており、最近来たばかりの新人や外人さんなどは五月雨と見分けがついてないらしく、五月雨のドッペルゲンガーかナニかと噂されているとかなんとか…

 

「ゴチャゴチャ言ってないで出番なんですからさっさと行ってくださいよ」

 

「あ?五月雨ェ、アタイに命令してんのかコラ?」

 

そしてこの五月雨と涼風、よく似ているくせにやたらと仲が悪い

 

「アイツの次はオマエからブッコロがすからな、覚えとけよ」

 

「覚えておきますよ、刹那で忘れますけど」

 

「あ゛ぁ?やっぱテメーからヤっとくか?」

 

ったく、なんでコイツらこんなに仲悪いんだよ…

五月雨と涼風は互いにメンチを切り合い空間がぐにゃあ〜っと歪みつつある

 

「オマエらが喧嘩すんな!スズカ、いいからとっとと行け!」

 

「チッ、あとでチョコレートパフェ奢れよ」





次回
熱戦!烈戦!超激戦!最強最悪の敵!白露型!

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