不健全鎮守府   作:犬魚

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不定期更新最終章その10、海軍下剋上編

【登場人物】

梶輪大将(源三)
中央司令部所属10人の大将の1人、若い頃はわりと脳筋だったものの、上に行くべくしたたさかと狡猾さを覚えた、提督の上位互換

川奈大佐(純)
ヨコスカ所属の人格だけでなくルックスもイケメンな大佐、わりと言葉が足りてない分は叢雲が補う関係

提督(メガネ男子)
シリアルパートだと格段にキャラが薄い中佐、もういなくていいんじゃないですか?


提督地獄変【最終章⑩】

梶輪大将 VS 九条元帥…

 

おそらく、海軍史上初めてとなる海軍大将から元帥への下剋上戦の挑戦状…

 

九条元帥が海軍の頂点に立ち半世紀以上が過ぎている…

九条元帥も既に齢八十を越え、年齢的に、いずれは身を退く事に変わりはない、しかし、誰もが“次代”の話をする事はなく、誰もが“変わる者などいない”と思うに至る絶対的頂点…

 

まさしく九条元帥こそが、海軍そのものであると…

 

 

そして今、海軍の頂点に燦然と君臨する絶対王者に、挑戦者が挑むッッッ!!

 

「オラァー!ビビっとんのかコラァ!」

 

挑戦者の名は梶輪源三、半世紀前の深海戦争初期から最前線の戦場で血で血を洗う苛烈かつ獰猛な戦いを繰り広げ、その戦いぶりは“修羅”と怖れられた歴戦の猛将であり、現在は海軍中央司令部大将…

 

「貴様ァ…梶輪ァ!!自分がナニを言っているのかわかっているのかーッ!!」

 

石畳の演習場中央に陣取る梶輪大将に対し、九条元帥と同じく貴賓席の位置に居た男がその身を乗り出し中央の梶輪大将を怒鳴りつける

 

「あー?なんだってー?聞こえねー」

 

「貴様ァ……九条元帥相手に将奪戦だと?巫山戯るのも大概にしろォ!!」

 

「やかましい、ふざけてねぇよ、こっちは大真面目だコラ、なんならテメーからヤっちまうぞ?鞍馬ァ…」

 

「梶輪ァ…!!」

 

梶輪大将を怒鳴りつける男、海軍中央司令部大将、鞍馬

梶輪を西の大将と位置付けるならば彼は東の大将と呼べる人物で、彼もまた、開戦初期から最前線で戦果を挙げ、現在の地位へと昇った男であり、おそらく海軍将校将兵の誰よりも九条元帥に対して厚い忠義を誓っている…

 

「…面白い、いいだろう………梶輪、貴様の思い上がり、ここで砕いてやる」

 

「チッ…めんどくせぇな」

 

元帥VS大将の空気から一転、大将VS大将の一戦……それも、東西を代表する大将同士の戦いに発展する空気に場内はざわつき、どよつき、おどろき、しかしそれぞれがこの戦いを決して見逃す事はできないと言う空気に包まれていた…

 

しかし…ッ!!

 

「鞍馬大将、そして………九条元帥、少しよろしいでしょうか?」

 

石畳の舞台に上がって来たのは先程までの演習、叢雲の指揮を執っていた川奈大佐…

 

「梶輪大将が将奪戦を申し込むにあたり、やはり急な申し込みでありタダと言うワケにもいかないとは思います、そこで…」

 

川奈大佐は一つ呼吸を置き、九条元帥と鞍馬大将の居る席を見据えて言う…

 

「九条元帥の最も信を置く将達を、梶輪大将が信を置く我々が同じく将奪戦で撃破することで、梶輪大将の挑戦を受けて頂きたい」

 

「キサマァ……川奈ァ!!将奪戦で大将を……?つまりこの俺を倒すだと?調子に乗るなよ若僧が!!」

 

鞍馬大将怒りの咆哮が場内に響く!そして…

 

「よかろう、その提案、乗ろうじゃないか…」

 

これまで一度も言葉を発する事なくこの状況を静観していた九条元帥がついに動く

 

「元帥…ッ!?」

 

「何か問題があるのか?鞍馬」

 

「いえ、問題など………あろうハズがない!」

 

鞍馬大将は恭しく頭を下げ、会場上層の貴賓席より演習場の石畳の上へ飛び降りたッッ!!

 

「オイ川奈、任せていいんだな?」

 

「もとよりそのつもりでしたよ、俺たちは…」

 

「そうか、じゃ、任せた」

 

そう言って梶輪大将はガハガハ笑いつつ石畳の演習場から降り、そこら辺にあった椅子に腰掛けた

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

元帥VS大将!大将VS大将からさらに状況は大将VS大佐…ッ!!

 

中央司令部に所属する最高戦力ッ!10人の大将の1人、九条元帥の右腕と呼ばれる男、鞍馬隆盛大将ッッッ!!

 

その、最高戦力が今!!演習場の舞台へとリングイン!!

 

「若僧が……梶輪などに唆されおって、貴様にも“制裁”が必要らしいな」

 

齢60を越え既に老境を迎えつつあるハズの肉体だが、その身体から張ちきれんばかりのエネルギーが溢れているのは誰の目にも明らかッッッ!!

 

そして、その鞍馬大将に相対するのは………

 

海軍入隊以来、めざましい戦果を挙げ続け、中央司令部入りは確実!後の大将は彼で間違いないだろうと誰もが頷いた天才!ヨコスカの貴公子ッッッ!川奈純大佐ッッッ!

 

「…甘くみないコトだ」

 

最強の老兵と!最強の若手が今!己のPRIDEを賭けた将奪戦の舞台へと上がるッッッ!!

 

「って!!ちょ、ちょっと待ちなさいよ提督!」

 

「…なんだ?叢雲」

 

「え?ちょ…将奪戦ってナニ?え?ナニ?私聞いてないんだけど!!」

 

今まさに、決戦の舞台に上がろうとしていた川奈大佐に、彼の秘書艦であり、つい先程まで五月雨と激戦を演じていた叢雲は自分の上司に駆け寄って掴みかかった

 

「…いや、まぁ……たぶんこうなるかなって」

 

「だから!!なんで言わないの!?」

 

「…キミは対五月雨に集中していたし、余計な事は言わない方がいいと」

 

「どこが余計なコトよッ!!オオゴトじゃない!?ってかいつからこの話あったの!!」

 

叢雲は掴んだ川奈をガックンガックン揺らしエキサイトしていると、ベンチに座っていた梶輪大将がまぁそのくらいにせんかいと声をかけ…

 

「ハァ!アンタは黙ってて!クソオヤジ!!」

 

「クソ…!?オイオイ、サミちゃん、今コイツオレをクソ呼ばわりしおったぞ、最近の娘は怖ぇのぉ〜」

 

「叢雲ちゃんのクソは褒め言葉ですよ、昔から」

 

「っーか五月雨ェ!!なんでアンタもシレッとそこに座ってんの!!っーかアンタもまさか事前に聞いてたんじゃないでしょうね!」

 

「まぁまぁ叢雲ちゃん、そんなエキサイトしないで、ほら、ここ座って、ここ」

 

五月雨は自分の隣の空いているスペースをバシバシ叩き、ほら、こ↑こ↓と座れよアピールした…

 

「チッ!!……あー!!もう!!」

 

叢雲は川奈大佐の背中をバシッと叩き、背中を押し…

 

「モチロン、勝つんでしょうね?」

 

「…勝つよ、俺はキミのなんだ?」

 

「〜〜〜〜〜ッッッ!!提督よ…っ!!」

 

秘書艦叢雲に最後の活を貰い、川奈純大佐…

 

今、決戦のリングへリングイン!!

 

「行くぞォ!!ゴングを鳴らせーッ!!戦闘開始だッッッ!!」

 

「…悪いが、俺は勝つ気でここに来ている」

 

中央司令部大将 鞍馬大将 対 中央司令部付ヨコスカ基地所属大佐 川奈大佐

 

将奪戦 開戦ッッッ!!

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

鞍馬大将VS川奈大佐の戦いが始まるのとほぼ同時刻…

 

中央司令部横須賀演習場地下通路にて始まる誰の注目もないもう一つの“将奪戦”…

 

「オイオイオイ…コイツはとんでもないハズレを引いたな、オイ」

 

「梶輪の犬は二頭いたか…」

 

「誰が犬だ」

 

提督の前に立つ男こそ、海軍中央司令部最高戦力の10人の大将の1人、その中でもおそらくは最も強いと噂されている男、霧谷大将、その人である…

 

「まぁ、私のやる事に変わりは無いか…」

 

「そいつは奇遇だね、俺のやるコトにも変わりはない」

 

梶輪大将とやり合っても勝てる気がしなかったのに、さらにそれに輪をかけてヤバい相手だとわかる、相対しただけでハッキリとわかる実力差…

 

「ブチのめさせて貰うぜぇ、大将ォ!!」

 

「できると思うか?」

 





次回は狼と言ったが、あれは嘘だ

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