不健全鎮守府   作:犬魚

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節目の誰得長編回最終回
この海には、まだまだ強えーヤツがいっぱい居る!

【登場人物】

仁科元大佐(天才)
智と恥を司る狂気のムァッドサイエンティストォ
少なくとも、善人ではない

天海ユウ(実妹ヒロイン属性)
長いこと眠っていたせいか、肉体年齢に精神年齢がややついていけてない、性善説の塊

提督(主人公属性0)
今回は特に何もしていない役立たずっぷり




BUCKY⑦

非公式演習と言う名の超決戦から数日後…

 

 

「うまい、うまい、うまい」

 

「へぇ~…それで?そのよくわからない子にボッコボコにされちゃったんですか~?すごく強かったんですねー」

 

「あぁ、すごく、すごく、とても強かった」

 

「へぇ~」

 

とある南国の島にある生活家電修理屋兼町医者の住む店舗兼住居でティーを飲みつつお菓子を食べていた天海ユウは最近知り合ったばかりの艦娘、フブキの話を興味深そうに聞いていた…

 

「それはもうリベンジしかないですねっ!」

 

「リベ……?」

 

「リベンジですっ!」

 

ユウは負けっぱなしで悔しくないんですかー!とテーブルをバシバシ叩きフブキにグイグイ迫るが、フブキはリベンジの意味がよくわかっていないのか首を捻っていると、ユウともう1人、離れたところに立っていた男が口を開いた…

 

「…もう一度戦いたいか、ってコトだ」

 

「それですっ!」

 

「もう一度………?」

 

フブキは珍しく難しい顔で考えつつ低く唸り、そして…

 

「…………戦って、みたい」

 

「ですよねっ!そうですよフブキちゃんさん!その意気や良しです!次はきっと勝てますよ!」

 

「…う、あ、あぁ…!勝てる………気がする」

 

「そうですよっ!」

 

フブキちゃんさんならやれますよと鼻息を荒くグイグイくるユウに、男はあまり困らせるようなコトを言うものじゃないぞと言って小さくため息を吐いていると、部屋の扉が開き、両手に山盛りの皿を載せた大鳳が入ってきた

 

「お待たせしましたー!あ、コレ、パイナップルクッキーです!」

 

「ほぉー!これはこれは!」パクパク

 

「うまい、うまい、うまい」ガツガツ

 

「まだまだいっぱい作ってますからどうぞ遠慮なく食べて行ってくださいね、あ、ドーベルマンさんもどうぞ遠慮なく」ニコニコ

 

「あ、あぁ…」

 

---

 

「あー………天気が良いのぉ…」

 

美しい南の空と浜辺がよく見える丘で、老人はエクトプラズムのようなものを吐きつつ遠くを見つめて座っていた…

 

「オイ、あのジイさん、いったいどうしたんだ?何か前に比べてやたらと老けたと言うか…」

 

「う~ん、少々クスリが強すぎましたかねぇ」

 

「オイ」

 

「冗談ですよ、小粋なニシナジョーク」

 

南の島から南の島へ帰還してから数日後、なんやかんやあったせいか、急激に老け込んだ原田技術少佐…

 

おそらく、彼の心にはもう“復讐”と言う名の黒い炎はメラメラと燃えておらず、今や酸素を吸って二酸化炭素を吐き出すだけの無害な存在へと変わり果てていた…

 

「一応聞いておくが、あのフブキって艦娘はどう扱うつもりだ?」

 

「どう、と言うと…?」

 

「…一応だが、あまり変な実験とかはするなよ」

 

「ハッハッハ、しませんよぉ?」

 

ユウはフブキと仲が良さそうだからな、と付け加えた男は上着からタバコを取り出して火を点け…

 

「フーッ~………ゴホッ…!!ッッ!」

 

「慣れないタバコはやめたらいかがです?アナタには似合いませんよ」

 

「うるさい!」

 

「あとついでに、シスコンもホドホドにしておいた方がいいですよ?」

 

「やかましい!!誰がシスコンだ!!」

 

男はタバコを携帯灰皿に押し付け、仁科にわかったな!と念を押しつけて去って行った…

 

「やれやれ…」

 

---

 

はじまりは自分と似たものですが、辿った道は違い、そして結末も違う男……天海キョウヤ

 

彼とその妹の関係に自分でも言い知れぬセンチメンタルな感情を持つのはまだ私が人である“情”を捨てきれていないのかもしれませんねぇ

 

「さて…」

 

今回はまた存外に面白いデータをとるコトができました…

 

ある意味では“堕天”を凌駕する深海進化……いえ、あえて名を付けるとするなら“深化”としましょうか

 

あの驚異的なパワーと爆発力………私にはない発想から生まれたものですが、実に興味深く、そして素晴らしい可能性を感じました

 

そして………その超絶的なパワーを正面から切って落としたあの力…

 

え~……たしかなんと言いましたか?たしかリベ…?キヨッチオでしたかね?まぁ、名前などどうでもいいですか…

 

「大鳳、珈琲を淹れて頂けますか?」

 

「はい!ブラックですか?ホワイトですか?」

 

「………ホワイト?」

 

「え?あ~…あの、ユウさんから珈琲にはホワイトもあるんですよ!って教わったんですけど…」

 

「ふむ………ちなみにそのホワイトとやら、コーヒーにミルクでも淹れるのですか?」

 

「はいミルク99でコーヒー1だそうです!」

 

…………それはもうただのミルクでは?

 

「………ククク、大鳳、アナタには教わるコトが多くて退屈しませんねぇ」

 

まったく………

 

「ではそのホワイトを一杯頼みましたよ」

 

「はい!大佐!」

 

「あと、私は大佐ではありません、私は……」

 

◆◆◆◆◇

 

四月のゴキゲンな執務室…

 

「そういやキヨシとリベッチオのヤツ、朝食堂で今日こそ武蔵に勝つぜー!とか言って武蔵にケンカ売ってたがどうなったんだ?」

 

「さぁ?ぶっとばされたんじゃないですか?」

 

秘書艦サミー子はまるで興味なさげにクロスワードパズルをしつつコーヒーでも飲みますかとコーヒーを勧めてきたが、泥水で口をすすいだ方がマシだと懇切丁寧に断った…

 

「マジでキレる5秒前ですね」

 

「MK5か」

 

 

ちなみに、後から聞いた話では最強戦士リベッシモは武蔵の殺人ブローで内臓破裂して医務室に運ばれたらしく、後日、無事に回復したキヨシとリベッチオはザリガニ釣りに出かけたそうな…




次回

その名は、G


岸ちゃんもでるよ!

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