【登場人物】
原田技術少佐
クズ系真面目の技術者、天才型ではなく苦労型
かつて梶輪大将に島流しの憂き目に遭わされ非常に恨んでいる
とある南の島…
「さて、とりあえずどこからお話ししたらいいか…」
地図にも載ってないような絶海の孤島で出逢った元海軍技術将校と謎の吹雪型…
男の口から出た“深海進化研究室“と言う単語に興味を持った私は男と吹雪型を船に乗せ、自宅へと戻ってきたワケですが…
とりあえず、二人とも無人島暮らしが長かったせいか、匂いもキツく、身なりが些かワイルドな風貌なのでまずは身なりを整えてはいかがですかとシャワーを勧め、大鳳に服を用意させるとそれなりに現代風な装いになった…
「まずはそう、オレ……いや、私が何故あの無人島に追いやられたかをお話ししましょう」
男の名は原田、階級は技術少佐、かつて海軍本部付深海進化研究室と言う部門に在籍し艦娘と深海棲艦の関連性、そして、深海棲艦の特異性を艦娘に転用、もしくは流用する事が可能かを日夜研究に明け暮れていたらしく、度重なる実験と失敗を繰り返したものの、ある一定の“成果”には漕ぎ着けた…
それが“フブキ”…
最強の艦娘を目指し、深海由来の超絶パワーをその身に宿した艦娘…
………しかし、その成果に漕ぎ着けたものの、度重なる実験は一般的な見解や人道的な観点からすれば許されるものではなく、当初は支援や擁護の声があったものの彼が研究に没頭している間に擁護は批判へと変わっており、彼は世紀の研究を為した偉人ではなく、許されざる大罪人となっていた…
「……そして、オ!オレを軍から追放した男こそ当時海軍で数々の武勲を立て最も勢いがあった男、梶輪ァ!ヤツはオレの成果を認めず、あまつさえオレを拠点の意味すらない、あの何もない孤島へと追いやったのだァ!!」
彼は絶望した…
しかし、彼は絶望の中でも決して諦めはしなかった
彼は自らが生涯を賭して造りあげた成果は決して既存の艦娘に負けてはいない、むしろフブキこそ最も優れた艦娘である!
そして、いつかこの島を脱出し、あの男に、最強の艦娘であるフブキを使い、梶輪に復讐をしてやると固く誓い、それだけを心の糧として孤独に過ごしてきたのだ…!
---
「ヤツだけは……決してヤツだけは許さんッ!!オレはヤツに復讐するコトだけを考えて生きてきたのだッ!」
「…なるほど、お話はだいたいわかりました」
正直、彼の復讐など私にとってはどうでもいいのですが、あのフブキと言う艦娘にはかなり興味がある…
私が技本に入るより以前、深海進化研究室なる部署の資料はあまり無かったので詳しいコトはわかりませんが、彼は“堕天”とは違う方向にアプローチしたらしく、彼女はその“成果”と言うコトになります
まぁ、私も堕天を試みる前は色々ヤっているのでなんとなくの心当たりはありますが、私自身の出した結果とするならば、不安定、不良品、不具合だらけでどうにも使いものにならないと判断し、堕天と言う違う方向からアプローチしてみたワケですが…
彼は私が見棄てた研究を既に完成させていた、と言う点では評価できます
「…ふむ」
しかしこのフブキと言う艦娘、あまり感情に抑揚がなく、言うなれば感情制御のようなモノを施しているのか、もしくは実験による感情の欠落か…
どちらにせよ、私としてはあまり好ましいものではありません
「ところで原田技術少佐」
「ハ、はぁ?なんでしょうか?」
「その………梶輪とは、おそらくですが現在は中央司令部の大将じゃないかと…」
「た、大将ォ!?あ……あの男がァ!!」
「えぇ」
彼の話を聞くに、キュウシュウの狂犬と呼ばれ、数々の武勲を打ち立てて中央司令部へと昇ってきた男と言えばおそらく西の鉄拳、梶輪大将でしょう…
「オ、オレを追放したあの男がッ!!あの男が今や中央司令部に席を………!しかものうのうと大将の座におさまっているとはッ!!」
「まぁ、若い頃はそれなりの猛将だったそうですからねぇ」
まぁ、私も詳しくは知りませんが
「クッ…!ゆ、許せんッ!!クソッ!」
「まぁまぁそうイキり勃たないで、珈琲でもいかがですか?コナ珈琲」
「仁科大佐殿ッ!このオレの……いや、この私の復讐にどうか手を貸して貰えないだろうか!?」
「ふむ…」
復讐などしても何になりますか?と問いたいところですが、まぁ、今の彼には何を言ったところで無駄でしょう…
それに、その梶輪大将は既に前線を退いた身ですし、むしろ私自身が軍から……いや、既に公的に死んだ身ですし、あまり表立って大きなコトをするつもりはまるで無いのですが……
◆◆◆◆◆
「まったく、やはりア●ラ・トリヤマは最高ね」
「そうか?」
大してやるコトのないある晴れた昼下がり、TSUT●YAでDVDを借りてきたので一緒に見てあげてもいいわよと田舎生まれのパリっ娘育ちから誘われ、先程から駆逐艦や海防艦のバカガキどもが居る談話室でDVDを見ていた俺たちだったが…
「最高だったわ」
「そうですか」
ニホンのアニメが好きだと言うリシュリューだが、中でもAK●RAとア●ラ・トリヤマの漫画が大好きらしく、スーパーモデルみたいな見た目をしているのに駆逐艦や海防艦のバカガキどもに交じって大興奮で大満足といった風に、そのふわっとキンパツヘアーを手櫛で靡かせた
「1人用のポッドでかぁ?」
「コラァ!ちょっとは手加減しろォー!」
「手加減?手加減ってなんだぁ?」
…そしてアホガキどもはキャッキャとハシャぎつつも俺の食っていたポテチを当たり前のように食い散らし、ゲハゲハ笑っていた…
よし、全員処刑だな
「しかしリシュリュー、オマエ、スーパーモデルみたいな見た目のワリになんでニホンのアニメなんか好きなんだよ?」
「C’est une question stupide、好きなモノに理由は必要かしら?」
「なんかあるだろ?」
「…そうね、まだ私が小さい頃にテレビで見たからかしら?」
「ふ〜ん」
おフランスでもやってたのか?まぁ、どうせそんなモンだろうとは思ったが…
汗臭いコトが誰よりも嫌いそうなリシュリューのヤツが見た目に反してやたらとシュギョーパートに熱心なのはおそらくこの辺が影響しているだろうか…
「まぁどうでもいいか………オイ、クソガキどもちょっとそこに一列に並べ、一列に、全員ビンタするから並べ」
正直、リシュリューがAK●RAだかア●ラだか好きなのはどうでもいいとして、とりあえずさっきからキィーキィー猿みてぇにヤンチャして回るクソガキどもにわからせてやる必要がある、この基地の絶対支配者が誰なのかを…
そう心に決め、右手の指をバキバキと鳴らしていると、なにやらポケットの携帯電話が震えていたのでポケットから取り出し画面を見ると…
「………168から?なんだ?わざわざ電話など…」
ピッ!(通話開始)
「はい、もしもーし?テイトクのチ●ポでも欲しくなったのか?」
『ハァ?そんなワケないし、ちょっとツラ貸してくれない?』
「やだよめんどくさい、オマエが来い」
『別にいいケド、今どこ?執務室?』
「懺悔室」
『ウチ、懺悔室とかあるんだ〜…』
「冗談だ、小粋なテイトクジョーク」
『死ねッ!』
ピッ!ツー…ツー…(通話終了)
なんて心の狭いヤツだ、俺の小粋なテイトクジョークを理解するユーモアが足りないな、168、たしかに彼女は優秀な艦だがどうにもユニークすぎ…
「む、またかかってきた……はいもしもーし?」
『今どこ?』
「オマエの後ろだ」
次回はその③
過去からの挑戦状、それは今