節目の前には必ずある誰得長編回のはじまりですって!
【登場人物】
仁科元大佐&大鳳(借りパク)
もう何度も借りパクしている坂下郁様の“逃げ水の鎮守府-艦隊りこれくしょん-”の中ボスにして最狂の紳士とその忠実な子分的存在のコンビ
間違っても善人ではなく、正義の味方でもなく、ついでに倫理観も持ち合わせていないかなり迷惑な人
キュウシュウよりもさらにずっともっと南…
南半球に位置するとある南の島で、男は四半世紀以上の時を過ごしていた…
照りつける南国の太陽、近くには滅多に船も通りかからない絶海の孤島…
その、過酷な環境においても男は胸に抱いた一つの目的の為に生きている、いや、生きていたッッッ!!
………そして、もう何度目かの夜明けと日没かを数えるのもやめて久しいその日、男が住む島に四半世紀以上ぶりに何者かが上陸したッッ!!
「この島で間違いないのですか?大鳳」
「ハイ!間違いないハズです」
「ふむ…………見たところ、無人島のようですが?」
「間違いないハズです!」
「ふむ………ま、いいとしましょう、誰もいないなら誰もいないでたまには無人島でバカンスと言うのも人生においては良い経験になるかもしれません、そして、誰もいないと言うのなら…」
男は着ていた衣服をスタイリッシュに脱ぎ、その、ギリシャ神話のように眩しい肉体を照りつける太陽の下で晒した
その姿は、まるでミケランジェロの彫刻が動き出したかのような躍動感…
「誰に気がねするコトもないと言うコトです」
「大佐、私がいます!」
「ふむ、それもそうですが………大鳳、アナタに対して私が気がねしたコトが一度でもありましたか?」
「あ、ありません…」
「その通り、つまり私はアナタに対して限りなく全幅に近い信頼を抱いていると言うコトです」
全裸の男は共に行動していた小柄な少女の肩に手をやり、ニカッ!とイケメンだけが許されたスマイルを浮かべた
「た、大佐ぁ…!」
男の名は仁科、元・海軍技術将校であり、彼が軍籍から抹消された後、彼の技術に続く者は現れていない、神の腕と悪魔の頭脳を併せ持つ不世出の天才…
ただし、彼は変態だった
変態だった
大事なコトだから二度三度言うぜ?変態なんだぜ、彼は…
◇◇◇◇◇
「………さて、無人島と言いましたが、大鳳」
「ハイ!なんですか大佐、バーベキューでもしますか?すぐに準備できます」
「バーベキューはまた今度でいいとして…」
どうやら大鳳の報告に間違いはなかったようですね…
私の住む島からさらに南に300キロ、どこの国や勢力から見ても何の意味も価値ももたなそうなこの島に、何か正体のわからない強大な反応を感じたと言うワケでわざわざ見に来たワケですが……
この近海に深海棲艦の根城があると言うワケでもなく、かと言ってどこの所属と言うワケでもない………ふむ
「そこに隠れている方、何か私達に御用ですか?」
海側とは逆に位置する原生林、そこに確かに居る誰かに声をかけると、誰かが動く反応があった…
「…もしかして、この島の所有者か何かですかね?そうだとしたら勝手に上がり込んだ無礼はお詫びしましょう」
『………あんた、ニホンジンか?』
「はい?」
草陰から随分と浅黒く日焼けした壮年の男が姿を現した…
「まぁ、生まれと育ちは日本人ですね、一応」
現在は国籍も戸籍もありませんが
『そ、そうか!やはりそうか!やはりニホンゴだったな!いや、間違えるハズがない…!懐かしい……懐かしい故郷の言葉だ!』
「はぁ?」
男はようやく迎えが来てくれたのかと草陰からこちらに歩いて来た…
「オレ……いや、私は帝國海軍技術将校の原田だ、うん!貴官もそう……なんだ?随分と大変な思いをしてここまで来たのだな!うん!」
そう言って、原田と名乗る男は自分が羽織っていた汚い布切れを私に差し出した
「はぁ?」
………この布切れに一体何の意味が?
そんなよくわからない布切れを前にしていると、隣にいた大鳳が私に小声で耳打った…
「大佐大佐、たぶんその人、大佐が全裸なのでその汚い布で大佐の陰部を隠してはどうかと言っているのでは?」ボソボソ…
「なるほど、大鳳、アナタはたまに冴えてますねぇ」
なるほどなるほど、つまりこの男は私が衣服を失うほど大変な思いをしてまでこの島に来たと思っていると…
…しかし、私が気になっているのはそこではありません
この男、自らの所属を“帝國海軍”と名乗った点です…
今より数十年前、私がこの世に生を受けるより昔、たしか一時期海軍は“帝國海軍”と自らを称した時期があったと何かの資料で読んだコトがあります、ただ、この名称は諸般様々な事情からあまり長く使われるコトはなく、数年で改められたと…
「原田………えぇ、原田さんは技術将校と言うコトですが、どちらの所属で?」
「あー……私は中央司令部付の研究機関“深海進化研究室”と言う部門でな」
「深海進化研究室…?」
………ふむ、以前、何かの書類で見た名前ですね
技本よりさらに昔、技術も経験も未熟ながらも艦娘と深海棲艦の関連性を研究していた部門だとかなんとか…
私の見た書類ではある時期を境に部門自体がプッツリと抹消され、実際に存在していたかどうかも怪しい部署でしたが…
なるほど、彼がそうだと言うなら、本当に実在していた研究機関であり、彼は私の先達と言える男と言うワケだ…
「なるほど」
これは面白い!最近退屈していましたが、どうやら面白い話が聞けるかもしれませんねぇ
「ま、こんなところで立ち話でもなんですし、あちらに私が乗ってきた船があります、お話はそちらで…」
「そ、そうか!いや、そうですな…!」
原田技術将校を名乗る男は頭をガリガリ掻き、少し待って頂いてよろしいですかと一言断りを入れ自身が潜んでいた草陰の辺りへ声をかけた
「オイ!フブキ!オマエもこっちへ来い!」
フブキ…?
原田技術将校の呼び声に応じたのか、草陰の中に潜んでいたらしい少女が姿を現した
「大佐、あの娘…」
「えぇ、特型駆逐艦……吹雪型の一番艦ですかね」
吹雪型一番艦、吹雪………
大して珍しい艦娘ではないハズですが………どうにも違いますね、あの艦は、月並みな表現になりますが…
…普通じゃあない
◆◆◆
「はいもしもーし?おかけになった電話は金髪巨乳の美女以外は現在お取り次ぎできません」
『やかましいわボケ、サミちゃんに代われ、サミちゃんに』
桜咲く春の執務室、執務室の電話にかかってきたクソオヤジの電話を取ってしまった俺だったが鼻毛が気になって仕方がない
「なんでサミーなんだよ、ウチの秘書にセクハラ電話やめてくれませんかねー?」
『ナニがセクハラ電話じゃい、ワシは別にサミちゃんが何色のパンツ穿いてよーが気にしたりせんわい』
「オイ五月雨ェ!大将殿が今日オマエ何色のパンツ穿いてるかってよォー?」
『オイやめろォ!!ワシがサミちゃんにセクハラしてるみたいに聞くなァ!!』
ったく、うるせぇ老害だな、たまには痛い目をみるがいいわい
「レース入りのピンクですよ」
自分の机でクロスワードパズルを解いていたサミー子は心底イヤそうな顔をし、面倒くさそうに答えた………ってか答えるのかよ
「ヒョウ柄に金のモール入りだってよ」
『ウソ吐くなこのダボがァ!あーもうキレた、バ●ターコールするわ、オマエんとこにバ●ターコールな!絶対に滅ぼすわい!オ●ラのようになァ!!ガハハハハハー!』
「やめろォ!!」
な、なんて大人気ないオヤジだ…!
たかだかサミーのパンツの色如きでバ●ターコールするなんてイカレてやがる!
次回はその②
明かされる原田技術将校と梶輪大将の因縁、四半世紀の過去から戦慄の脅威が迫るッ!!