【高嶺の、花】
【不健全鎮守府 アーリーデイズ act1:鎮守府海域を取り戻せ!】
…の二本です
【高嶺、の花】
かつて、戦争があった…
ヒロイン・ザ・ヒロインの栄誉と4年間のメインヒロインの座を賭けたヒロインサバイバルマッチ最終決戦!数々の死闘と激戦の果てに生き残った熊野だったが、最終決戦の最中、突如として甦ったデビルヤマトが襲来!そして!謎の覆面ファイターの正体は、熊野の実の姉、鈴谷であった!今度こそデビルヤマトを止め、この悲劇の連鎖を終わらせる!死はもとより覚悟の上!鈴谷はデビルヤマト共々自分を撃てと叫び、熊野は姉、鈴谷のその想いに応え、涙の晴嵐天驚拳を放つのだった…
◆◆◆
…俺はどこでどう選択肢を間違えたのだろう?何度も、何度も、何度も、何度も、何度も繰り返しても、世界は何も変わらない、何が間違っているのかすらわからない、いや…おそらくは最初から…?いや、そもそも世界は間違ってなどいない、俺そのものが間違っていたに違いない!
「だと思うんだよなぁ〜…ボカぁ〜」
「うるさいですわ!ちょっと静かにしてくださいまし!」
「ん?あぁ、スマンスマン」
切って刻んですり潰したリンゴとバーモ●ト中辛を鍋に放り込み、グルグルと混ぜつつ俺は今までの人生について振り返っていた、たぶんアレだろうな、あぁ、たぶんアレだわ、やっぱ酔った勢いって良くないよな、五月雨の野郎から“提督はベッドの上でも疾風ですか?”とディスられたし…
俺も誇り高きキュウシュウ男児、責任は果たさねばならないと考え、とりあえず綺麗だからと黄色の薔薇の花束を買っていざ告白の刻!と臨んだら鼻で笑われたがアッサリ快諾、そして、それからなんやかんやあったものの、俺は海軍少将となり、若くて嫉妬深い妻と疾風ではないもののようやく生まれた子と、庭付き一戸建て(建て売り)とそれなりの生活を送っていた…
「う〜ん………難しいですわね」
「返せよ!なー!返せって!」
「もうちょっと!もうちょっとだけ考えさせてくださいまし」
リビングで知恵の輪をガチャガチャしてるアホな妻と、知恵の輪の持ち主である息子はオレがやるから返せよーとまとわりついていた…
「…フンッ!!」
ブチィィィ!!(知恵の輪ァ…)
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ァァァ!!知恵の輪ァァァ!」
「できましたわ!どうです!母はやはりスゴ…」
「な、ナニすんだババアー!!」
「ダァァレがッ!!ババアですの!なんて口の利き方…ちょっと!ちょっと!アナタ聞きました!?この子!母をババアって…」
熊野はお母様は許しませんよー!とか言って息子を捕まえ、尻を出しなさい!尻を!と言いながらズボンに手をかけた
「やめろォ!タスケテ!父さん!タスケテー!」
そんな悲痛な息子の声に、たぶんダースベ●ダーもこんな気分だったのだろうと思いつつ、俺は遊んでないで皿でも用意しろよとリビングで暴れる熊野にみかんをぶつけた
「痛い!ですわ!!」
「痛いですわじゃねーですわ、ったく…」
既に軍を辞め、家庭に入り、一子をもうけた熊野だが基本的にはアホのままだった、いや、まぁ、昔はそこにイラっとしてたが、ある意味そこがチャーミングな点でもあり、現在もよくイラっとはするが、この底抜けのアホさぶりに癒されるコトもある
そんな若くてアホな妻と、顔立ちだけは母親譲りのジュ●ンボーイでクラスではなかなかモテているらしい息子は互いにチッとか言いながらテーブルへとやって来た…
「そう言えばそろそろ授業参観ですわね…聞きましたわよ、お隣の名取さんから」
「…ねーし、授業参観とか」
熊野はカレーを食いつつ授業参観のお知らせのプリントを既に貰ってますわよねぇ〜?と言いながらウスターソースを息子のカレーに一滴一滴垂らす…
「ってか母さん来るなよ!父さん来てくれよ!父さんが!来週の日曜…」
「えー…だって父さん忙しいしなぁ〜、来週日曜はバ●ターコールあるかもしれねぇし」
「ないよ!ない!ってかいつもいつもバ●ターコール言い訳に使うなよ!」
「ワガママ言うんじゃありませんわ、大丈夫!来週の日曜ですわね?この母がちゃ〜んと行きますわ」
「だから来るなって言ってんだよォ!!」
…まったく、気難しくて繊細な年頃ってやつだな、まぁ、コイツの気もわからなくはないが、そう言えば以前、お隣の名取さん(人妻)にキチンとお礼が言えて偉いねって頭撫でられてた時、妙にウキウキしてたなコイツ…
「まぁいいじゃねぇか?何が気に入らねぇんだ?」
「全部」
「は、反抗期…っ!これが世に言う反抗期ですのね!」
いや、単に熊野がウザいだけだろう?わかるってばよ、あるよな、そーゆー時期が………いや、時期関係なくややウザいが
「ハァ…ったく、まぁオマエの気持ちはわからんでもないが、ま、諦めろ」
「大人はすぐに諦めろって言う!」
「それが大人の特権だよ」
俺は我が子を谷に突き落とした
「あ、そうそう、今度鈴谷がウチに遊びに来ると言ってましたわ」
「あ?」
鈴谷か……アイツ、軍を辞めた後、カレー屋になる為にインドで修行するとか言ってインドへ渡り、カレーの技ではなく
「鈴谷か、懐かしい名だ…」
「先月も来ましたわ」
「そうだっけか?」
「えぇ、わざわざ私の目の前で私の旦那様を誘惑し、旦那様もまんざらでもなさげなだらしない顔をしていましたわ」
「そうだっけか?」
だってエロいんだもん、アイツ、トシの近い姉妹なだけあって熊野とはよく似ているが、アイツには熊野に抜けているドエロスが詰まっている
「…ま、いいですわ」
熊野は大して気にした様子もないらしく、スプーンでカレーをすくって口に運んだ
「甘いですわね」
「オマエが甘いの好きだからな」
「えぇ、好きですわ」ニコッ
個人的にはカレーは辛いのが好きだが、まぁ…好きな女に合わせるのも悪くないわな
おわり
■■■■■
【不健全鎮守府 アーリーデイズ act1:鎮守府海域を取り戻せ!】
母なる深海から現れ、突如として人類に牙を剥いた人類の天敵!深海棲艦、そして、この世に邪悪が蔓延る時、必ず現れる希望の闘士!艦娘、艦船の艤装を身に纏い、その拳は空を裂き、その蹴り大地を割る、この海上の愛と平和を守る誇り高き戦士達である…
「えー…戦艦レシピ戦艦レシピ、あぁ、あった、コレだコレだ」
「提督さん?ナニしてんの?」
「あ?見てわかんねーのかカス、相手は戦艦だぞ?戦艦」
あのな、戦艦はすごい艦だ!恐竜みたいなもんだ!ガンガン殴られても平気な浮かぶパンチングマシンさ!とアツく由良さんの肩を叩き、戦艦の必要性を力説した…
先日、遂に現れた敵の戦艦級、戦艦ル級、そのおそるべき強さに俺たちは戦慄した、駆逐艦や軽巡とは桁違いのパワーとタフネス、そして、真におそるべきは砲撃フェイズが一巡し終わったかと思いきやまさかの追加ターン!その圧倒的な超性能の前に敗北を喫した俺たちは、対戦艦ル級の作戦を模索し、一つの結論へと至った…
そうだ!戦艦を作ろう!
「どこにそんな資材あるのかな?ね?」
「心配すんな!資材ならギリギリある!」
「ギリギリね、うん、ギリギリ…」
ウチのような実績もない田舎の零細基地には上も期待していないのか、資材はなかなか回ってこない、それだけに弾も油も貴重品である
「由良の艤装、油切れてるんだけど?」
「ガッツで補え」
「由良の艤装、なんか煙出てるんだけど?」
「勇気で補え」
由良さんは笑顔で一旦距離を取り…
「舐めてるんじゃあないわよ!!このカスがァァァァァ!!」
強烈なボディブローが俺の腹にメリ込んだッ!!
「オゴォ!!……クッ、テメー……上司にナニしてくれてんだコラァ!!」
俺の膝が由良さんの腹にメリ込んだッ!!
「ンギッ!!……こ、この…っ!!」
「だいたいテメーらが悪りぃーじゃねぇーか!あ?戦艦ぐれー殴り殺してこいや!バカか?あんな屁みてーなパンチで戦艦相手にペチペチして勝てるかボケ!ナニが軽巡だ、フェザー級か?あ?」
「あー………キレたわ、由良、完全にキレちゃったわー」
「おぉ!キレろキレろ!怒り狂え!怒りと憎しみがオマエを強くするんだよ」
由良さんは執務室に転がる鉄パイプを、俺はカドの尖った段ボール箱を手に取った
「死ねェェェェ!!」
「上司に向かって死ねとはなんだテメー!立て!修正してやる!」
ガチャ…(扉オープン)
「失礼しまー……って!提督、由良さん!ナニしてるんですか!?」
俺たちが互いに髪を引っ張り合い、ブス!このブス!と憎しみをぶつけ合っていると、なにやら書類みたいなのを持った髪の長いのが執務室へやって来て俺たちのアツいファイトを止めにかかった
「ジャマよ!!殺さなきゃ……コイツだけは!」
「ちょ…!由良さん、落ち着いて!ホント落ち着いてください!ほ、ほら!提督も…」
「ハハッ!お前もその仲間に入れてやるってんだよ!」
「遊びでやってんじゃないんだよー!」
その時、由良さんが不思議な光に包まれた
「…な、なんだと?あ、あ…あれは…?」
「
「こ、こいつ…何だ?」
「ナニが楽しくて、戦いをやるの!貴様のような奴はクズだ!生きていちゃいけない奴なのよ!」
「誰がクズだ!」
由良さんが再びパンチを放つが、そんなスローで貧弱なパンチなどこの提督様に…
ドゴンッ!!(お腹パンチ)
「ブハァ!!!バ、バカな……な、なんだこの力は!」
コ、コイツ……さっきまでとはまるで別人だ!それにさっきの光、ま、まさか!まさかコレが“改”の力だとでも言うのか…!この土壇場で、
「ク……ククク、ハハハ……ハァーッハッハッハ!さすがは由良さんだ、まさかここに来て“改”へと
俺の手には既に建造スイッチがあり!指がかかっている!由良さんもそれに気付いたようだが、一手遅かったな!
「サミー!!そいつは戦艦“レシピ”を建造する気よ!そいつにスイッチを押させちゃあいけない!」
「え?え?戦艦レシピって…え?」
「いいや!限界だ!“押す”ね!」
勝ったッッッ!!そしてようこそ!我が基地へ戦艦よーッ!!
カチッ!!(建造ボタン)
「………ん?」
カチッ!カチッ!(建造ボタン)
「あれ…?おかしいな、故障したのか?オイ、由良さん、なんかこのボタン壊れてない?」
えー…?マジかよ、参ったなこりゃ、電池切れてるだけならいいんだが…
「あのぉ〜…提督」
建造スイッチを振りながらもしもーしとやっていると、書類仕事任せたサミー子ちゃんがなにやら申し訳なさげな顔で声をかけてきた
「資材なら、さっき遠征とか演習して帰ってきた部隊に全部使っちゃいましたけど…」
「は?」
「だってほら…さっき」
さっき…?さっきと言うと、午前中か…
『あのぉ〜…お昼過ぎに遠征から帰って来た子と演習で使う分の資材、コレくらいになりそうなんですけど』
『ん?あぁ、うん、補給な、ケチケチすんな、腹いっぱいにしてやれ』
『はいっ!……って、ナニしてるんですか?それ』
『え?ガンプラ』
あー………そうだそうだ、言ったけな、そんなコト、話半分で聞いてたわー
「そっかそっかー、そうだったわなー」
いや、失敗失敗!そういやそうだったわ、ならしゃーなしだな、とりあえず今週は出撃は控えるとして…
「提督さん?」
俺の肩に手が置かれ、振り向くと笑顔が素敵な由良さん
「よう、相変わらずチャーミングな白髪だな、KISSしてもいいか?」
笑顔の由良さんが放つパンチは、俺の顔面にメリ込み、俺はそのまま窓ガラスをブチ破って二階から落下し、全治一週間の医務室送りになった…
その後、安全の為に執務室の窓に鉄格子を取り付けたのは今では良い思い出だ
おわり
次回は神風VS文明開化
乗り遅れるな!KUROFUNEに!