【登場人物】
叢雲(ヨコスカ所属)
川奈大佐の秘書艦、プライドが高く、口癖はクソったれ
五月雨(青髪ロング子)
提督の秘書艦、性能的には一般的で平凡な白露型の域はでない
この演習に挑む東西両陣営、それぞれの指揮官から事前に艦に指示されていた初動はまったく同じ、両指揮官があらかじめ取り決めていたのではないかと疑われてもおかしくはないが、あくまで、相手ならこう動くだろうと考えた末に出た、必然
『『ぶちまかせしてやれ!』』
互いに共通した指示の下、開戦と同時に飛び出した東西の両艦は演習海場中央ですれ違いざまに大きく飛沫をあげながら激突したッッッ!!
「クッ…!」
「…」
叢雲の胴回し蹴りをガードし、左のショートアッパーを繰り出した五月雨だったが、そのショートアッパーはかわされ、互いに一度射程外へと舵を切って距離を置いた
「ったく、ぶちかまし失敗みたいね…」
叢雲はインカムのスイッチを押し、自分の提督である川奈大佐に早速だけど“アレ”使うわよと許可を求めた
「出来れば今は使いたくなかったけど、実際ぶつかってわかったわ、あの子、かなりヤる…」
自分の思い出の中にいる同期の子じゃあない………
この戦いの前に、自分と川奈大佐は対戦する相手の公式な出撃記録や戦果などを集め研究をしたが…
この五月雨は数年前から一度も公式な出撃記録がなく、演習や遠征にも記録にない、ほぼ陸の上にいたのだ
艦娘としては違和感はあるが、艦娘には戦闘が不向きな者も居るのでそう言う例はまったくないワケではない
………が、今、自分の目の前に居る五月雨はそうではない、それは今の接触でわかった
調べた限りのデータではどう見ても一般的かつ平凡の域を出ていない白露型駆逐艦、だが………あの子は、マトモじゃあない
ならばこちらも出し惜しみ無し!全力全開で行くべきだ!
叢雲は手にしていた槍を海上に投げ捨てると全身から光を放つ!!
「へぇ…」
◇◇◇
彼女の練度はとうに改二の水準を満たしていたが、これまで頑なに改二へ改装しようとはしなかった
基地の仲間達が何度か理由を尋ねてみたが、別に?今すぐじゃないでいいでしょ?と本人は流していたが…
そんな変わり者の秘書艦が、この戦いを前に、ちょっと相談したいコトがあると相談を受けた
プライドの高い彼女は、出来れば“乗り越えて”からにしたいと言っていたが、即座に考えを改めたらしく、乗り越えてからではなく“乗り越える”ために使った
「負けず嫌いか、叢雲らしい」
まぁ、俺も人のコトは言えないな、彼女が負けず嫌いなように、彼女の司令官である俺も負けず嫌いだ
「さて、向こうはどう出る?」
◆◆◆
「やりやがった!マジかよあの野郎!やりやがった!」
俺はテーブルをバシバシ叩き、今、目の前で起きている事態への正直な感想をアツく述べていると、隣に座っていた由良さんから勢い良く足を踏まれた
「うるさいんだけど?」
「…そーゆーの口で言ってくれるかな?」
グゥゥゥム、しかし川奈クンめ…一応可能性としては考えていたがマジでやりやがった、こちらのサミーは改、そしてあっちの叢雲は改二、改と改二では神と虫ケラほど実力の差があるのは既に常識…だが、最後にモノを言うのは
「クックック、ヤツにわからせてやれサミー…絶望を、そう、どうしようもない絶望をな!」
「うわ、ナニその負けフラグ、負けフラグよね?ね?」
「負けフラグじゃない、提督だ」
まぁ、これは予想の範囲内ではあるが………予想したからと言ってどうにもならないコトはある
…が、あの青髪ロング子を見てやってくださいよ、スーパー化した改二を前にまるでビビってる様子もない
それどころか、改二になる前に叢雲が捨てた槍を拾ってそれをわざわざ叢雲に手渡している…
まるでそれを持って、初めて自分と“対等”だと言うかの如く!!
ーーー
「どうしました?」
「へ、へぇ〜………?」
ず、随分と舐めた真似してくれるじゃないの?え?わかった、あーもうわかった!五月雨ェ!!絶対泣かす!マジで泣かすから!!
「フンッ!!!」
バキッ!!!(槍破壊)
「あー…もったいない」
さっきまでの愛用していた槍をへし折り、改めて海に捨てて五月雨に向き合い…
「ハッッ!!!」
「!」
不意打ち気味に右足の蹴りを打ち、ガードの上から五月雨を蹴り飛ばしたッッ!!
「フン、隙あらばどっからでもかかってきなさい!」
…イケる、いきなり改二実装に少し不安はあったが十分イケる、身体は絶好調だし動きもイメージ通りについてくる
「隙ですか…」
ガードしてたし、あまり効いてなさそうな五月雨は右手によくわからない機械的モノをプラリと下げ、隙ってコレのコトですか?と言ってこちらに投げてきた
ってかアレって………!
私の艤装の耳(浮いてるアレ)じゃない!?いつの間に…
「…面白いじゃない!」
「そうですか?」