【登場人物】
梶輪大将(拳系)
中央司令部所属の海軍大将、足が臭い
美音少佐(元特務)
元第五特務部で天海中佐の部下で後輩、シトラス系の香りかと思いきやわりと汗臭い
来たる東西戦の事前打ち合わせの為ヨコスカへ行き、無事打ち合わせを終え数日後…
「ほぉ…」
「何か面白いコトでも書いてあるんですか?」
執務室で一枚の書類に目を通していると、青髪ロング子が注文していないコーヒーをどうぞと執務机に置いたので、俺はその書類を青髪ロング子に渡してやった
「あぁ、東西戦の編成ですか………へぇ」
書類に目を通し、微妙な笑みを浮かべた青髪ロング子はなるほどですねーとか言いつつそれを机に置いた
「面白い真似、してくれるじゃあないか?なぁオイ?」
「どっちがですか」
今回は艦種やら編成やら色々と制限があるが……川奈クンは川奈クンでなかなか良い性格しているらしい、さすがは同期の華ってヤツだな
「オマエ出るって言ってたろ?キチンと仕上げとけよ、キチンと」
「そうですね」
◆◆◆◆◆
事前打ち合わせから更に季節は進み、遂にやって来た東西交流演習ッ!!
今回の会場である横須賀には東西それぞれの偉い人、まぁまぁ偉い将校、それなりに偉い将校、一般的な将兵、今は無名だが新時代の台風の目になるであろう才能溢れた新人達、そして地域の住民達が東西戦を観戦しようと会場へと集まっていた…
「カッカッカ、今回はまた大盛況みたいだなァ?なぁ?」
「なぁ?じゃないですよ、梶輪大将、こんなところで買い食いしてていいんですか!?」
「カテぇコト言うなよミネちゃん、どーせまだ始まらねぇし、あっちに行っても平均年齢高けぇ加齢臭しかしねぇ葬式の順番待ちかっーの」
海軍中央司令部所属大将、梶輪大将は会場に隣接された出店で焼き鳥を買いつつ自分の秘書にもどうだ?と串を1本強引に渡した
「あ…りがとうございます、って!酒!なんでお酒買ってるんですか!会場行かなきゃいけないのにヤバイですって!」
「カテぇコト言うなよ、なぁ?ガハハハハ!」
「クッ!こ…このジ…!」
かつて存在した海軍中央司令部第五特務、その第五特務部に所属していたものの、色々あって所属部署は消滅、現在はこの海軍大将付きの秘書として軍に身を置いている美音少佐は直属の上司である梶輪大将をジジイとディスりたい言葉をなんとか飲み込んだ…
「……しかし随分と派手なものですね、お祭りみたい、私、前の部署じゃ司令部付きの内偵みたいなコトばかりだったのであまりこーゆーの馴染みないんですよね」
「まぁ、今回はトクベツだな」
美音少佐が事前に知っている情報だと今回の東西戦、たしか東の陣営はルックスもイケメンな横須賀所属のエース、そして、対する西の陣営は…
「…天海中佐がなんか妙に贔屓してたメガネですか」
西の陣営所属の中でもその狂犬ぶりは中央にもそれなりに知られており、ルックスもイケメンで次期元帥候補と噂される川奈大佐とはまさしく真逆の評価でだいたい間違っていない
「ヤツは川奈に唯一黒星をつけた男だからのぉ」
「え!?ウソォ!?」
「ウソなワケあるかい、そんトキの立ち合いワシがやっとるからな、ガハハハハ」
「マジ………いえ、本当ですか?何かの間違いとかでは?悪い夢でも見ていたとか?」
「なかなか信じんのぉ、ミネちゃん」
「いや、普通に信じられないんですが…」
「ま、アイツらがガッコー出て初めて部下持って最初の演習だったしのぉ」
「へぇ…」
過去の意外な対戦結果を知り、それでもなお信じ難いと美音少佐が頭を悩ませていると、梶輪大将は道行く人波の中に知った顔を見つけたらしく声を張った
「お、オマエさんアレじゃろ?アイツんトコの白髪じゃろ?」
「…ん?あ、大将さんじゃない、ってか白髪はやめてよね、ね?」
「すまんすまん、え〜……湯葉だったか?」
「由良よ、今日が通夜で明日が葬式でいい?」
たまたま歩いていたのは艦娘であり、軽巡の由良、そして…
「物騒なコト言ってんじゃないよ由良……って、なんだい?このジジイまだ生きてんのかい?」
「カッカッカ!ジジイとはまた大将様に対して礼儀がまるで無いのぉ」
妙に長いキセルを手にしているのは由良と同じく艦娘であり、軽空母の鳳翔
「ナニやっとるんじゃ?こんなトコで?」
「ナニって……応援かな?ね?」
「フーッ〜………応援さね、今日はウチのサミーが珍しくヤるって聞いたからねぇ」
◆◆◆◆◆
東西戦開始の刻ッッッ!!既に会場へと集まった観衆達の前に、姿を現した東西両陣営の提督ッ!
そして!両陣営がこの日の為に考え、選抜したであろう編成が大型の電光掲示板に表示されると、会場内に衝撃と動揺が走った!!
「オイオイオイ…」
「表示ミスか?」
「おーおー、若い人は面白いコトをやりなさる」
この演習でぶつかり合う両陣営の編成…
【東】
駆逐艦:叢雲
【西】
駆逐艦:五月雨
両陣営共に、駆逐艦一隻のみッッッ!!
過去の通例として、六対六の多種多様な艦種が入り交じった派手な戦いが見られると期待していた観客席は驚きと落胆の色に染まっていた
しかしッ!!その、両陣営を指揮する両提督と、艦娘はそんな会場の空気を気にするコトはなく、互いの艦娘にこれから始まる戦いの指示を出していた
そして、戦闘開始の鐘が鳴るであろうタイミングに合わせ、両陣営から二人の艦娘が水上へと飛び出し、水上で真っ向から衝突するッッッ!!
「リベンジさせてもらうわッ!」
「できるものなら、どうぞ」