不健全鎮守府   作:犬魚

612 / 940
キミもスタァになってみなイカ?

【登場人物】

KISO(OSAFUNE)
アイドル力98万カラット、中二系

TEN-RYU(OSAFUNE)
アイドル力95万カラット、中二系

NAKA(絶対アイドル)
アイドル力8500万パワー、ストリートのカリスマ



提督と群像戦国時代‐野望編‐

軽巡寮、球磨姉妹の部屋…

 

「木曾、この本なにクマ?」

 

いつもなら、部屋の片付けはキチンとしている木曾にだってたまには抜けている日もある、そして、そんなたまたまのタイミングで、木曾の部屋に入ってしまった長女は机の上に置いてあったそれを見つけてしまった…

 

「ゲッ…!!な、なんで球磨ねーちゃんがそれを…!」

 

「ねーちゃんはコレがナニかって聞いてるクマ!!」

 

球磨型恐怖の縦社会、長女絶対至上主義であるこの姉妹において、長女球磨は最も恐ろしい存在…

全ては長女の意向によって決定され、一番風呂は長女から、皆で囲む食卓もまずは長女が箸をつけてからが絶対の球磨型鉄の上下関係…

 

長女に逆らうなどあってはならない…

 

だが、その日、末妹は初めて長女に逆らったッ!

 

「べ、別に球磨ねーちゃんには関係ねーだろ?返せよ!」

 

「返せ…?木曾、なにクマ?その口の利き方は…?」

 

同室に居た木曾の姉達…多摩も、北上も、大井も戦慄したッ!あってはならないッ!!球磨姉ちゃんに逆らうなど決してあってはならないのだ…!

 

言葉に出せない空気だが、姉達は末妹に対し、謝れ!今すぐ球磨姉ちゃんに謝れ!ごめんなさいしろ!と心の中で叫んだ……

 

しかしッ!!

 

「い、いいから返せよ…っ!」

 

今すぐにでも逃げ出してしまいたい、今すぐお姉ちゃんごめんなさいと言いたい気持ちを全力で抑えつけ、木曾は長女に反抗したのだッ!

 

「木曾ォ………どうやらねーちゃんの言ってるコトがわからないみたいクマね」

 

絶対的捕食獣、その、圧倒的な恐怖の前に立つとはどんな気持ちになるのか?以前、球磨姉妹の北上と大井がこう答えたコトがある…

 

『オイオイオイ…』

 

『死んだわ私』

 

つまり、死ぬのだ

 

今から木曾は死ぬ、その、避けられない死を前に、姉妹の次女である多摩が助け船を出した…ッ!普段は何を考えているのかよくわからないところがある次女の多摩、しかし、一見クールに見える彼女は姉妹の誰よりも姉妹の和を重んじていた…ッ!

 

「まぁ待つにゃ球磨姉ちゃん、そもそもそれは何の本にゃ?」

 

「なんかアイドルだの音楽だのチャラチャラしたモンが載った雑誌だクマ」

 

「ア、アイドルだからってチャラチャラしてねーよ!」

 

「うるせークマァ!!!アイドルなんてチャラチャラしたモンにうつつを抜かすとかねーちゃん許さねークマァ!!絶対にクマァ!!」

 

球磨怒りの咆哮に、その場に居た誰もが戦慄したッ!!

 

「クッ!!っーせな!どうせ球磨ねーちゃんにはわかんねーよッ!!」

 

「わかるワケねークマァ!!あ、木曾!どこに行くクマ!まだハナシは終わってねークマ!」

 

◆◆◆

 

「っーワケでな、提督からも言ってやってくれねーか?」

 

「ナニがっーワケでな、なのだよ、舐めてんのかテメーは」

 

っーか前置きが長いわ、なんだよ?どんだけ前置いてんだよ、俺の出番ないかと思ったわ

 

絶賛エアコン稼働中の執務室、たまには真面目に仕事でもするかと書類を熟読し、ハンコを押す作業に従事していると、執務室の重厚な扉を勢い良く開き、木曾、そしてそのマジダチである天龍が俺にハナシがあるんだぜーッ!とやって来たワケだが…

 

「オレ、天龍とユニット組んでデビューしてぇーんだよッ!!軟派な気持ちじゃねぇ!!」

 

木曾は天龍とユニットを組み、チャラチャラした今のミュージックシーンに本物のグルーヴとアツいバイブスを叩きつけてやりたい!その為にはメジャーデビューするしかねぇ!と本気で考えていたらしく、その黄金のような“夢”を頭ごなしに全否定されたコトに怒りを感じていた

 

「ふ〜む」

 

仮にだ、俺から球磨ねーちゃんに“木曾のヤツ、アイドルとかやりたいんで許しちゃ貰えませんかねぇ?”とか言ってみろ、殺してくださいって言ってるのと同じだぞ

 

「頼むぜテイトク!オレからも!」

 

そして木曾のマジダチ天龍、ちなみには天龍は木曾んちと違ってアイドルとかゲームとかチャラチャラしたものに対して寛容らしく、妹にオレデビューしようと思うんだZE!と相談したら“へぇ〜そうなんだぁ〜、天龍ちゃんガンバって〜”と普通に応援されたそうな

 

「まぁ、今現状で球磨ねーちゃんをどーこー出来るとは思えねぇし、球磨ねーちゃんは無視するしかねぇな」

 

「…やっぱそうか」

 

「仕方ねぇ…!木曾!こうなりゃビッグになって見返してやろーぜ!そうすりゃオマエのねーちゃんだって…」

 

「あ、あぁ…そうだな!そう、それしかないよな!」

 

ヘヘッ…木曾のヤツ、俺らの前で強がっちゃいるが本当は球磨ねーちゃんにも自分を応援して欲しい、基本頑固が服を着ている頑固一徹な姉だが厳しさの中にも優しさを合わせ持つ長女が大好きなのだろう…

 

「TEN-RYU、KISO、オマエ達にメジャーまでの道は作ってやるぜ……この俺がな!」

 

「TEITOKU!」

 

「ヘヘッ…やっぱTEITOKUは頼りになるぜ!なぁ!」

 

こうして、俺たちはオレンジジュースの入っていたグラスをプロージーット!と床に叩きつけ、新進気鋭のストリート系アイドルユニットOSAFUNEは誕生した…

 

「………それ、ちゃんと片付けして掃除してくださいよ」

 

「サミサァス、卿の意見はまことに的確だな」

 

「それはどうも、あと、五月雨です」

 

ーーー

 

と、言うワケで、デビューするにあたって何をするべきか、やはりまずは知名度を上げるべくストリートでパフォーマンスでもするべきか…

 

ドンドン!!(ノックしてもしもし)

 

「入ってまーす」

 

そんな今後について俺たちが頭をひねっていると、執務室の扉を開き、新たな来客………北上と大井がやって来た

 

「ゲッ…!?ね、ねーちゃん達…!な、なんだよ…!球磨ねーちゃんに言われて来たのかよ…?」

 

「別に違うよ〜…大井っちがどーせテイトクんトコにいるんじゃね?って」

 

「ほら、やっぱりここに居た、ね?北上さん」

 

「ナニしに来たんだよ!オレは謝らねーぞ!マジだからな!」

 

木曾にとって最も恐ろしいのは長女だが、長女の以外の姉達も今の木曾にとっては敵に等しい!そんな警戒心と不信感剥き出しの木曾に対し、北上と大井は特に普段と変わらず、五月雨になんか飲み物ないー?とドリンクを注文する…

 

「まぁまぁ、木曾も座んなって」

 

「そうよ、私と北上さんは別に木曾の夢をダメって思ってないし、むしろ応援してあげたいわ」

 

「…えっ!?」

 

敵である姉達からのまさかの言葉に、木曾は激しく狼狽えた、それはもうPRIDEが真っ二つになるぐらい狼狽えた…

 

「ど、どーゆーコトだよ?きぃーねーちゃん、おーねーちゃん…」

 

「そりゃねぇ〜…可愛い妹の夢なんだから応援くらいするさぁ〜」

 

「まぁ、さすがに球磨姉さんの前では私達も何も言えないけどね」

 

「き…きぃねぇ……おーねぇ…」ポロポロ…

 

自分は1人じゃない…ッ!愛する家族達を自ら捨ててまで選んだこの道だったが、木曾は1人じゃあなかった…!大好きな姉達は口には出さないけど自分のコトをわかっていてくれたのだ………木曾は涙した

 

「まぁ、アタシらも昔は木曾みたいに夢を見たコトもあったしねぇ」

 

「そうねぇ〜…そうそう、昔、私と北上さんもなんかアイドルの衣装みたいなカードいっぱい持ってたし、あれもう捨てちゃったかしら?」

 

「さぁ?実家にまだあるんじゃね?」

 

北上と大井、オシャレ魔女ラ●&●リー世代

 

「多摩姉さんも心配してたわよ?わかるでしょ?多摩姉さんはああ見えて木曾にだけは甘いんだから」

 

「だよねぇー!多摩姉ってアタシと大井っちには厳しいのに木曾には優しいよねぇ〜?やっぱ末っ子は可愛いってヤツだよねぇ〜?」

 

「球磨姉さんも〜………ほら、あんな言い方しか出来ないけど本当は木曾の事を大切に想ってるのよ?木曾の将来とか」

 

「オレの将来は、別に……球磨ねーちゃんにはカンケーねーだろ?チッ!」

 

「まぁ、球磨姉もあーゆー気質だしさ、今だってきっと言い過ぎだかなって思ってるって」

 

………しかしなんだろうな、このホームドラマ…

木曾のヤロウ、ルックスもイケメンな上に属性も違うルックスも良いお姉ちゃんが4人とかどんな主人公だよ、ラノベ主人公かよコイツは…

 

「まぁ、球磨姉にとって提督と天龍は可愛い末っ子を不良に誘う悪い友達なんだけどねぇ〜」

 

「なんでだよ!!」

 

「俺もかよ!?」

 

球磨ねーちゃんにとって俺たちの存在とは…

 

「ま、今はナニ言ってもムダだろーけど、木曾は木曾なりにガンバんなよ」

 

「そうね、球磨姉さんには木曾は天龍のところに転がり込んでるって言っておくから、いい?」

 

「あ、あぁ…ありがとう!姉ちゃん達…」

 

こうして、アツいホームドラマを演じて北上と大井は執務室から去り、俺、天龍、木曾の3人はメジャーデビューへ向けて大きく動き出すコトとなる………

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

後日、ある駆逐艦姉妹の部屋…

 

「はぁ?………“あいどる”になりたぃ?なにバカなコト言ってるの!!そんなチャラチャラした仕事!認められるワケないでしょ!そんなバカげたコト!!」

 

「ハァー!?何がバカなコトよ!おぼこで鎖国中の神姉ぇにはわかんないのよ!」

 

「だぁぁぉぁれがおぼこじゃあああァァァァァ!!アサァァァァァ!!」

 

「行くわよ松、いえ…MATSU!こんな頭の固いのと話するだけムダムダムダムダぁー!WRYYYY!よ!」

 

「待ちなさい!!アサ!マツ!!話は終わってな…」

 

 

←To Be Continued


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。