不健全鎮守府   作:犬魚

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最終章突入ゥゥ!最終章はわりと長めになるので不定期で断続的な更新になる予定です

【登場人物】

提督(中佐)
中佐、力こそ正義

五月雨(秘書艦)
秘書艦、巨乳の姉妹は死んだらええねん

梶輪大将(大将)
提督の上司、若い頃はイケメンだった時代もある


提督地獄変【最終章①】

海軍内部における東の陣営と西の陣営の溝は深い、それはもうバリバリと音を立てて裂ける暗黒のクレバスだッ!ってくらい深い…

 

そんな色々と深い両陣営ではあるが、表向きは一つの組織、ワンフォーオール・オールフォーワンであり、みんなで一致団結して深海棲艦のクソカスどもを殲滅する正義の軍隊である事は間違いない

 

そして、そんな両陣営にも年に数回互いの親睦や力量を確かめ合う事を目的としたイベントが存在している…

 

東西の将校同士が己の技量と陣営の威信を懸けて戦う“東西戦”と言う名のイベントもその中の一つだ

 

◆◆◆

 

「オイ、お茶くれ、お茶」

 

「はいはい」

 

今年度、そんな東西戦の呼び出しを喰らった俺だったが、演習場所は対戦相手である川奈大佐のホームであるヨコスカが舞台となるので大将殿から一度中央に来いとさらなる呼び出しを喰らい、現在、俺は秘書艦のコイツカミナゲーナと中央に向けて列車の旅をしていた…

 

「はぁ…メンドくせぇなぁ、なぁオイ?」

 

「まぁ、たしかにメンドくさいですね」

 

東西戦まではまだ日があるものの、今回は予め対戦場所の確認や対戦相手との顔合わせなど実につまらないイベント目白押しらしく、こうして大した用事でもないのに呼び出しを喰らったワケだが………あのクソオヤジ、電話で執拗にサミちゃん連れて来いとうるせーのな、マジで、いっそサミーじゃないで由良さんでも連れてくかと考えたが、それはそれで俺の肉体と精神に深刻なダメージを受けそうなのでやめた

 

「それ食べたのならこっちにください、ビニル袋に入れます」

 

電車の中で弁当を食べつつ憂鬱じゃねーの?とため息を吐いていると、俺の弁当容器を取り上げたサミーはビニル袋にそれを入れた

 

「しかしなんだって今回はこんなまどろっこしいんだろーな?」

 

「さぁ?」

 

前回の東西戦はVS函館、東と言うよりはむしろ北の陣営だったがそっちは特に面倒な事はなかったんだが…

 

「たぶんアレじゃないですか?対戦相手はヨコスカでも実力派エリートなイケメンですし、反逆の急先鋒とか呼ばれてる極悪提督とのマッチメイクをドラマティックに演出しておきたいとか…」

 

「誰が反逆の急先鋒だ」

 

昨年の定例会議で多数の将校を病院送りにして以来、俺のところには現状に不満や現体制への不信を持つ多くの将校や将兵から励ましのお便りが届いており、さらには四大鎮守府の一角でもある佐世保の壊滅を狙ったなどと言う根も葉もない噂も流れているらしい…

 

「まったく、根も葉もない………っーかよォー、根も葉もないっーのどーゆーコトだ?イラつく!すげーイラつくぜェー!」

 

「いや、根も葉もワリとありまくりでしたよ」

 

「バカ言うんじゃないよこの子は、俺は悪くない」

 

そうだ、俺は悪くない、悪いのは社会であり、社会とは世界であり、世界とは宇宙であり、宇宙とは……

 

「……宇宙の心は、彼!」

 

「言ってる意味がまったくわかりません、飴食べますか?」

 

「貰おうか」

 

俺は五月雨が投げてよこしたあわだまを口に放り込み、ゴロゴロと口の中で転がした

 

ーーー

 

「フーッ〜…よく来たのぉ」

 

「あぁ、よく来たモンだと自分で自分を褒めてやりたい」

 

中央行き超特急の旅、途中、なんか列車の車内が暑いなチクショウとか思っていたらバナナが固くて食べられなくなったり腰とか痛くなったりと散々な目にあったが俺達は無事、大将殿が待つ中央に到着した…

 

「ま、今回は下見みたいなモンじゃからな、まぁラクに構えとけ、ラクに」

 

「楽にねぇ…」

 

「サミちゃん、今日は何が食いたい?好きなモンを言いなさい、肉か?魚か?ガハハハハ!」

 

このクソオヤジ……ヒトを呼び出しといてそれで終わりかい、っーか五月雨に甘すぎか!孫可愛いがりか!

 

「私は特にコレと言って何も……あ、そうそう、提督、最近そば食いたいとかなんとか言ってませんでした?」

 

「言ってたか?」

 

「言ってましたよ、テレビ見ながら」

 

「そう言われると言った気もするな…」

 

俺は上着からタバコを取り出し火を点け、そこら辺に置いてあった日刊海スポを手にしテキトーな空いてるソファーに座った

 

「ところで大将殿」

 

「なんだ?」

 

「今回ここに来る前に貰った日程の予定表に謎の空白時間があるんだが?コレ自由時間か?」

 

せっかく中央まで来たんだから観光でもして美味しいものでも食べなさいって優しくて粋な配慮だろうか?

 

「んなワケあるかダボが」

 

「ですよねー」

 

観光目的じゃあない、あくまでビジネスの為の中央!まったく、世知辛い社会構造なのだよ、なぁオイ?

 

「ところでオマエ、川奈の奴に勝つ自信はあるのか?」

 

「まぁ、あるっちゃあるかな…」

 

「なんじゃいそれは、あんなの完封してやりますよぐらい言えんのかい」

 

「バカ言ってくれるなよ大将殿、相手はヨコスカのエース、こっちは地方の冴えないハンサムなだけの中佐だぞ」

 

「誰がハンサムじゃい」

 

まぁ、完封できる自信はさすがに無いが負ける気もない

 

「ふむ、ま…今回の東西戦、川奈の奴が対戦するならオマエがいいと希望が強くてな」

 

「フーッ〜………そりゃまたなんで?」

 

「ワシが知るか、むしろオマエの方が身に覚えがあるじゃろ?」

 

「あー………もしかしてアレかな〜、兵学校のトキにランチ代借りて返してないコトぐらいか」

 

イケメンのくせになんて心の狭いヤツだ、俺は2回も奢ってやったコトあるのに…

思えば川奈クンとは学生時代の同期であり、彼は当時からモテモテで成績優秀、仁・智・勇に優れた心までイケメンで次期海軍元帥は彼しかいないと言われていたが………やはり彼の中にはとてつもない邪悪が棲んでいたのだろうか?

 

「ま、結果はいいとしてブザマは晒すなよ、そのトキはワシがオマエをその場で処刑してやろう」

 

「へいへい」

 

彼と最後に会ったのはたしか兵学校を無事に卒業し、中央司令部で提督業の辞令を受けたトキだったか…

 

あの時は俺を含めて5人が辞令を受ける予定で、俺はその日の朝、猛烈な便意に襲われてトイレで大の大冒険を繰り広げ、遅刻したんだっけか…

 

で、このクソオヤジこと大将殿が待つ部屋に行ったら川奈クン以外の3人は既に秘書艦を決めて退室済みで、川奈クンだけ俺を待っててくれたんだっけな…

 

『大丈夫ですか?もしかして体調が…』

 

そうそう、彼はあの時、本気で俺を心配してくれていた!実の親以上に!彼は真剣に俺の体調を気遣ってくれていたのだ…ッ!俺はそんな川奈クンに感激し、男なら彼のような男の為に働くものだ…ッ!と考え…………入団試験に合格したのだった!

 

「…」

 

「なんだサミー?その目は?」

 

「知ってますか?女の子ってのは大抵、ホ●と甘い物が好きなんですよ」

 

「俺はホ●じゃねぇ!!」

 

◇◇◇

 

 

海軍横須賀鎮守府内、川奈大佐の執務室…

 

「着いたらしいわよ、例のアレ」

 

「そうか…」

 

正直、他の人から見たら変化は分かりづらいが私くらいになると目に見えて変化がわかる、我が司令官殿は凄く嬉しそうだ………クッ!あー!もう、なんかムカつくわね…

 

「で、明日こっちに来るって、梶輪のジジイと」

 

「叢雲、ジジイは言葉が悪いな…」

 

「ハッ?」

 

我が司令官は執務椅子から立ち上がり、私に背を向けて可笑しそうに笑っていた…





この提督地獄変が最終長編になりますのでこのお話が終わる時が最終回になります
ただ、断続的な更新でダラダラやっていくスタイルなのでいつ終わるかは私にもわかりません

基本は普段通りにアホな話を挟みつつになりますので良ければお付き合いくださいませ

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