不健全鎮守府   作:犬魚

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疑惑のオールスターゲーム

【登場人物】

提督(クソ大人)
ヤキュウ中継見ながら文句タレるクソ大人

鳳翔(ママン)
通称ビッグママ、キセルが長い

陽炎姉妹
陽炎率いるスター集団、チームワークは悪い

夕雲姉妹
夕雲率いるエリート集団、姉妹の絶対支配者夕雲姉さん


提督と春の陽気なリトルリーグ

天気もいいしたまには運動でもするかと秘書艦の青髪ロング子とキャッチボールするべくグラウンドに行くと、駆逐艦のアホンダラどもがヤキュウをしていた…

 

ゲームは陽炎姉妹VS夕雲姉妹、互いに多くのスターを抱えるチームはまさしくオールスターゲームと言っていいだろう…

 

「オイ、今なんかボールが変な回転したで、ちょっと見せてーな」

 

バッターボックスに入っていた黒潮はキャッチャー巻雲からボールを受け取りそれを確認すると…

 

「あー!このボール!ヤスリかなんかで引っ掻いた痕があるー!エメリーや!エメリーボールやでー!」

 

エメリーボール…ッ!それは、ボールに故意に傷を付けてインチキ変化球を投げる卑劣なボールである、もしそれが事実なら決して許されるものではないッ!陽炎姉妹のベンチからここぞとばかりに非難の声があがった

 

「テメー!キタネーぞ夕雲ォ!」

 

「そこまでして勝ちたいのかインチキ野郎ー!」

 

………まぁ、たぶん陽炎の指示だろう、アイツ勝つ為には手段を選ばないからな、おそらく黒潮がボールチェックするとか言って紙ヤスリかなんかで自分で付けたのだ、まさに卑劣、まさに卑怯、見てくださいよベンチに座るあの陽炎の顔、なんて悪そうな顔なんでしょう…

 

そんなやりとりを見ながら歩いていると、グラウンドのフェンスのところに見覚えのあるクソ長キセルをプカプカふかす人物…

 

「ビッグママ!」

 

「こんにちは、ビッグママ」

 

「…ん?おや、ボーイとサミーじゃないかい?」

 

ビッグママこと最古の軽空母鳳翔がキセルふかしながらヤキュウ観戦していた、もしかして暇なんだろうか?このバ…

 

「誰が暇人さね」

 

「心を読まれた…!?まさか、能力者か…ッ?」

 

「フーッ~……そのツラ見てりゃアンタの考えてるコトなんて丸わかりさね、ねぇサミー」

 

「そうですね」

 

ビッグママは五月雨に飴でも食べるかいと袖の中から飴を取り出すと、五月雨は俺には決して向けないまるで母親を慕う子供のように無邪気な笑顔で受け取っていた…

 

「しかしアイツら、神聖なスポーツであるヤキュウをなんだと思ってるんだ」

 

「フーッ~…神聖なスポーツねぇ」

 

ーーー

 

グラウンドではエメリーボール実行犯である夕雲の身体検査をしろと陽炎組からの声が上がっているのだが…

 

「全然構いませんよ?私は」

 

エメリー疑惑の夕雲は堂々と身体検査を受けると宣言する、しかし…!

 

「ただし、私だけではなく現時点でボールに触った可能性のある三人、キャッチャーの巻雲さん、バッターの黒潮さん、主審の白露さんも身体検査を受けて頂けるならですが…」

 

現時点でボールに触った事のある人物全員を調べる、それならば身体検査を受けていい…!夕雲の提案に疑惑をかけた本人である黒潮は…

 

「えぇよ、それでいこーか?なぁ?巻雲も白露もそれでえぇやろ?」

 

その条件でOKや!黒潮も堂々と身体検査を受けると宣言する…!

 

ーーー

 

「おいおい、黒潮のヤツ、アイツ紙ヤスリ持ってるだろ?身体検査なんか受けたらダメだろ?」

 

せっかく夕雲を不正実行犯に仕立てあげる為に追い詰めたのに、これじゃ自分で追い詰められるだろう?

 

「フーッ~…さぁ?どうさね」

 

「たぶん黒潮さん紙ヤスリ持ってないですよ」

 

「ハァ?ナニ言ってんだオマエ」

 

「さっき黒潮さんがエメリーやー!って騒いでた時に両軍のベンチからバッターボックスに来てましたけど、たぶんその時捨てたんじゃないですか?」

 

五月雨曰わく、黒潮がシレっと捨てたのを不知火がシレっと回収していたらしい…

 

「オマエよく見てんのな」

 

「そうですか?」

 

そんなワケで、四人の身体検査が行われる事になったのだが、検査の公平性を記す為、フェンスのところに立っていた俺と五月雨、そしてビッグママに声がかかった…

 

ーーー

 

「はい、じゃお身体に触りますよ」

 

「ゲッ、なんでアタシだけテイトク…ッ!」

 

じゃんけんの結果、俺は白露ねーちゃん担当、五月雨は巻雲と夕雲、ビッグママは黒潮の担当となった、正直、夕雲のお身体を触りますよの方がよかったのだが…

 

「じゃ、着てるもの全部脱いで」

 

「脱ぐかッ!フツーこーゆーの服の上でしょ!あとポケットの中とか…」

 

「あー…そーゆー感じ、じゃ、服の上から」

 

さわさわ…

 

「触り方がいやらしすぎる…っ!ってか揉む必要ないよね!?」

 

「じゃ、次パンツ脱いで、ア●ル自分で広げてみせて」

 

「できるかァァァァァァァァ!!!」

 

ビタンッ!(ビンタ)

 

白露ねーちゃんからスナップの利いたビンタを受けたが………なるほど、これほど健康的なビンタが出せるなら白露ねーちゃんの健康状態は良好だろう…

しかし、小粋なテイトクジョークも理解出来ないとは、ちょっとおっぱいデカくなったとは言え、まだまだ乳臭さの抜けんヤツよ…

 

「じゃ、ポケットの中全部出しな」

 

「はいはいポケットやね、ポケッ…」

 

おそらく、事前に夕雲のスカートのポケットの中には紙ヤスリが仕込まれているのだろう…

にやにや笑いながら夕雲の身体検査を見ていた黒潮は自分も身体検査を受けていたが……

 

「…?」

 

ポケットの中、今、なんかカサって…なんかある!なんか指先になんか当たって…こ、この感触…ッ!!

 

「(紙ヤスリやァァァァァァァァ!!なんでや!!なんでうちのポッケに紙ヤスリはいっとるん!?紙ヤスリ不知火が回収したやーん!!)」

 

「ほら、ポケットの中、全部出しな」

 

なんでや!?このままじゃうちが不正実行犯に……!?

 

「いやいやいやいや!!やっぱエメリーじゃないですよー!」

 

「は?」

 

「ほら!こんな傷!プレーしてたらフツーにつくんやないかなー?な?そーやろ!な?」

 

ーーー

 

一転!不正疑惑をかけた黒潮はやっぱエメリーじゃないですよと疑惑を撤回した…ッ!

その様子をベンチで見ていた陽炎は黒潮の様子がおかしい事に気付いた

 

「ちょっと、なんで黒潮焦ってんの?あの子紙ヤスリ持ってないでしょ!?」

 

「いえ………黒潮、紙ヤスリ持ってます」

 

「ハァ!?なんで?」

 

親潮からコレ見てくださいと渡されたタブレットの動画…

 

「ここ見てください、まず、この回の頭に陽炎姉さんが夕雲のポケットに紙ヤスリを入れました」

 

「入れたわよ」

 

「で、次なんですが、投げる前にマウンドで夕雲と巻雲が話してるんですけど……たぶんこの時に夕雲は紙ヤスリを巻雲に渡してるんです」

 

「ハァ!?」

 

「で、マウンドから戻ってくる巻雲なんですけど、ほら、ここ見てください!黒潮とすれ違う時に…」

 

黒潮のポケットに紙ヤスリっぽいものを挿入れている…ッ!!

 

「バ……バカな!じゃ、じゃあ…最初から夕雲には作戦がバレてたってコト…」

 

「えぇ、おそらく…」

 

ハメてやるつもりが逆にハメられた…ッ!!

そして、グラウンドでは黒潮がやっぱ夕雲に不正とかなかったですよーと必死に弁解していたが…

 

「ゴメンな、悪かったわ、な?」

 

「それではあらぬ疑惑をかけられ反則実行犯呼ばわりされたこちらも気が晴れませんね…」

 

「ゴメンな、な?ほなら、どーしたら許してくれる?」

 

「土下座してください」

 

「は?」

 

「土下座してください、本当に悪いと思っているなら出来る筈です…」

 

夕雲は黒潮に“イヤならいいんですよ?ただ、その時はアナタのポケットの中の紙ヤスリ的な物がどうなるかわかりませんけど…”とそっと耳打ちした…

 

「……うっ、うぅぅ…」ポロポロ…

 

土下座………それは、この国で最も誠意を現すポーズである

 

自分に疑いをかけた黒潮を、夕雲は土下座させた…ッ!!

 

まさに冷酷!まさに冷血艦!かつてこれほどまでの仕打ちを敵に強いた艦が存在したであろうかッ!

 

「ふふっ……じゃ、このくらいでカンベンしてあげますね」

 

ーーー

 

この後ゲームは陽炎組は精彩を欠き、終わってみれば7‐2と夕雲組の勝利と終わった…

 

「フーッ~……なかなか見応えがあるゲームだったねぇ」

 

「まぁ、所詮はリトルリーグ、MAJORの怪物達とヤり合うステージにはまだ早い」

 

「当たり前さね」

 

ママはキセルを手元でクルクル回して懐にしまってベンチから立ち上がった

 

「さて、ボチボチ開店の準備でもするかね…」

 

「ママ、今日誰が出勤?」

 

「高雄と愛宕」


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