不健全鎮守府   作:犬魚

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完璧(パーフェクト)を超えた完全無欠(コンプリート)!最大の敵を前に、戦闘艦娘の誇り

【登場人物】

提督(中佐)
中佐、フラグは見えてない

大将殿(大将)
中央司令部所属の大将、あらゆる元凶

有馬優(お嬢様)
“提督の花嫁”以降からたまに登場する激烈箱入りお嬢様



Waltz For Venus 前編

あの人にとっては日常の些細な出来事

 

でも私にとっては世界の全てを変える出来事

 

もう一度あの人に会いたい、はじめて我が儘を言った時、父も、母も、兄も、姉も、みんなが見た事もないびっくりした顔をしたのに私もびっくりした…

 

それから、我が儘を言う悪い子になった私は何度も無茶なお願いをして、そしてまた、無茶なお願いをしてしまった…

 

本当はほんの少し罪悪感はある………けど、今はそれ以上に…

 

あの人に会える

 

それが楽しみで心が躍る自分がちょっと怖い

 

◇◇◇

 

キュウシュウのとある地方にあるちょっと外に足を延ばせば都市圏には行ける微妙な立地の基地…

 

今日、この基地はかつてないであろう厳戒態勢が布かれていたッ!!その厳戒態勢たるや世界最強の海賊を迎え討つべく最大・最強・最高の戦力が集められたに等しく、地域の住人達はこれから起こるであろう戦いはおそらく世界の命運を分ける戦いになるのだろうと予感していた…

 

「よぉーしオマエらーッ!既に聞いてるとは思うが、今日、ここに大将殿とお金持ちのお嬢様が来られる!もしなんか問題起こしたら俺もオマエら全員タダじゃ済まねーからな!」

 

気合と決起の全艦集会…

壇上に上がった俺は下に居るクズどもにあえて言ってもカスであると力強く伝え、これから来る来訪者に対し、決して危害を加えない、決して恐怖を与えてはならない、決して不安な気持ちにさせてはならないと厳命を下し、全員解散させた…

 

「さて……サミエルシュタイン、お客様は今どうなっている?」

 

「空港には着いたらしいですよ、今こっちに向かってるんじゃないですか?あと、五月雨です」

 

「そんなコトはわかっている」

 

移動中な事は百も承知だ、むしろそんなコトより移動手段だ、おそらくは黒塗りの高級車あたりで基地まで乗り付けてくるであろうコトは確実……そう、コーラを飲むとゲップが出るぐらい確実なコトだ

 

「基地周辺にそれらしい車両は?」

 

「今のところ見たって話は聞きませんね」

 

「そうか…」

 

一応、近隣地域の皆さまにいかにもな車両を見かけたらすぐにウチに連絡するように協力を仰いではいるが…ふむ、まだ姿を見せないとは………ハッ!?まさかタクシー!タクシーで移動しているのか!?

 

「サミエルシュタイン、タクシーだ!タクシーを警戒させろ!」

 

「はぁ?」

 

「何もここまでの移動手段はお嬢様専用黒塗りの高級車だけではない、空港からタクシーを拾った可能性もある」

 

「はぁ…?あと、五月雨です」

 

備えておいて憂いはない、相手がいつ現れるのか…

それを予想することでこちらはそれに先んじてあらゆる手を打つ事ができる

 

そんな知性溢れる先見の明を考えていると、五月雨はポケットから自分のケイタイを取り出して耳にあて…

 

「はいはい、えぇ、はい……あ、今着いたんですね、わかりました、お通ししてください」

 

ケイタイのボタンを押して机に置いた…

 

「オイ………今、なんて言った?」

 

「お客様、今、正門に着いたそうですよ」

 

「なん………だと?」

 

バ……バカな!!あり得ない!!空港から基地までの間、あらゆる手を使って監視させた厳戒態勢だぞ!?バカな、一体どうやって…!?まさか徒歩で来たとでも言うのか!?

 

「あー………たぶんアレじゃないですか?バス」

 

「バス………だと?」

 

たしかに、ウチの前にはバス停があるが……!!オイオイオイ、こりゃズイブンとエラい交通手段で来たじゃねーの!

 

「チッ!あのクソオヤジが!まさか公共交通機関で来るとは…ッ!まぁいい、行くぞ!」

 

「そうですね」

 

俺は椅子に掛けてあった上着を手に取り、五月雨と共にお客様の待ち受ける正門へと向かった

 

ーーー

 

基地内正門前…

 

「ガハハハハハ!出迎えご苦労!ワシのかわいいサミちゃんは元気にしとるかー?」

 

「うるせぇよ、っーかフツーバスで来るかよ!バスで!」

 

正門前で待っていたのは俺をこの道に引きずり込んだ元凶、海軍中央司令部、梶輪大将…ッ!!そして…

 

「仕方あるまい?有馬嬢たっての希望だったからなぁ」

 

「ウソつけこのクソオヤジが」

 

大将殿、そして、大将殿に匹敵する年齢の割にガッシリとした体格を持つ執事風のジジイと、そのジジイの後ろに少し隠れるように立っている小柄な少女…

 

「お久しぶりですな、中佐殿」

 

「あ、あぁ…先日は色々と失礼しました」

 

「いえ…」

 

執事のジジイの鋭い眼光にやや怯みつつ、俺は正面からそのプレッシャーを受け止め、ジジイの後ろに居る、本日の最重要人物に顔を向けた

 

「遠路はるばるようこそ、まぁ、見ても大して面白くもないところですが…」

 

「////!」

 

本日の最重要人物、お金持ちのお嬢様(JS)

俺は出来る限り最高にプリズムの輝きを放ちつつお嬢様に挨拶すると、お嬢様も丁寧に頭を下げてくれた

 

「さて………では早速ですが基地を案内で?」

 

「ワシは構わんが、有馬嬢はそれで?」

 

「///」コクコク

 

「構わんそーじゃ、ま、時間も限られとるしな」

 

そんなワケで、まずはバ……優秀な駆逐艦のキッズ達が真面目に座学を受けている姿でも見て貰うか…

 

ーーー

 

執務棟、教室…

普段から駆逐艦・海防艦のアホガキどもを中心に一般教養を身につけさせるべく、香取・鹿島両先生が熱血指導を行っており、生徒達は皆、向上心を持って授業を受け、完璧なカリキュラムにより優秀な成績を修めます…

 

「押忍!駆逐艦清霜!九九を唱和させて頂きます!」

 

…そして、本日の授業は鹿島先生担当

 

「インイチがイチ!インニがニ!インサンがサン!」

 

「そうよ清霜ちゃん!ガンバって!……ガンバって!」

 

鹿島先生もアホの清霜を熱血応援するこの高難易度!五の段までは順調にクリアーし、難関である六、七の段もなんとか………そして

 

「九九、八十八ッ!!以上をもちまして九九終了しました!ご静聴ありがとうございました!」ペコォ!

 

「オウ、いつ聞いてもさすがじゃのぉキヨシの九九は」

 

「なんでも今度は分数のかけ算にも挑戦するって話だぞ…」

 

「ウーム…アイツならやるかもしれん」

 

同じく授業を受けるメンツもバカだった…

キヨシはみんなの拍手を受けつつ席に戻り着席した、その顔は、とても誇らしげな顔をしていた………が、鹿島先生は困ったような笑顔をしていた

 

「清霜ちゃん」

 

「ハイ元気です!」

 

「残念」

 

鹿島先生は指でバツを作った…

 

「…………オイ、オマエんトコ大丈夫か?」

 

「大丈夫です」

 

大将殿はまぁ、そーゆー時期もあるわいと一見すると軽く流しているように見えるが内心はよくわからない

 

「/////!」

 

…お嬢様は、小さく拍手していたが………お嬢様的には算数できるチンパンの芸を見た的な感じなのだろうか?

 

ーーー

 

続いて基地施設体育館…

普段はバ……艦娘どもがスポーツなどで汗を流したりする施設であり、全艦集会などはここで行われている…

 

「They doing basketball imitation in this country, please stop all the members right now or die!」

 

「な……なんてヤロウだ!」

 

「手も足も出ねぇ…クソッ!これが本場のバスケだっーのか!」

 

そして、今の時間は最高にマブいオンナ監督、瑞穂率いるチーム瑞穂とアイオワ率いるナショナルチームがバスケットでアツい青春の汗を流していた…

 

「ハッ?この程度のLevelで最高峰なの?大したコトなさすぎ」

 

ゲームはナショナルチームの大型新人、ジョンストンによって完全に支配され、チーム瑞穂は一方的に叩きのめされる展開となっていた…

 

「ま、アタシは天才だからこんな島国のmonkeyに負けるワケないんだけどー!アハ!アハハハハー!」

 

ジョンくんはまるでテンプレ悪役外人のようにケラケラ笑いチーム瑞穂を見下して笑っていたが、ふと、こちらと目が合った

 

「あら?Admiralじゃない?ナニしてんの?あ、もしかしてアタシの活躍見に来たの?」

 

「ただの職場見学なのだよ」

 

「ショクバケンガク?ナニそれ?あ、ドリンク飲む?アタシの飲みかけだけど?」

 

ジョンくんはメリケン特有のグイグイくる感じで自分のスポドリをグイグイ押しつけてきたが、俺は喉は渇いてないからノーセンキューなのだよとあくまで紳士的に断った

 

「エンリョしなくてイイのに………ん?」

 

ジョンくんは俺達職場見学ツアー集団の中にいるお嬢様を目ざとく見つけたらしく、俺にアレ誰?と聞いてきた

 

「VIP様だ、あまり失礼のないようにな」ヒソヒソ

 

「VIP様ねぇ、フ〜ン…」ヒソヒソ

 

ジョンくんはニヤリと悪役外人特有の邪悪な笑みを浮かべ、よりによってお嬢様に声をかけた!!

 

「Hi、アタシはUSS Johnston、アナタも見ているだけじゃ退屈じゃない?一緒にやらない?」

 

「///!?」

 

オイイイイイイイィィィィィィ!!ナニ言ってやがんだこのガキゃあァァァァァ!!さっきVIP様だから失礼のないように言ったばっかだろうがァァァァァ!!

 

案の定、お嬢様は困ったようにオロオロしているが……まさかこの激烈箱入りお嬢様がこんな激しいスポーツに耐えられるワケがない

 

「ま、やらないってならソレでもいいけどー?」

 

さらにジョンくんはメリケン特有のグイグイくる馴れ馴れしさで俺と腕を組んで煽る!!このガキ一体ナニ考えてんだよッ!?死ぬか!?いや、死なすか!今すぐスネークバ●トすべきか!?

 

「………///」

 

「は?」

 

執事のジジイはジョンくんの前に立ち、恭しく頭を下げ…

 

「お嬢様は、お受けすると…」

 

「Good!いいじゃない!」

 

ウソだろオイ!!ジジイ!オマエ止めろよ!それオマエの仕事だろオイ!!オマエさっきのジョンくんのプレー見てなかったのか!正直、デカい口叩くだけあってジョンくんの実力は白露型キ●キの世代と比べても遜色なかったぞ!10年に1人の天才レベルだぞ!?

 

「大将殿!」

 

そうだ!ジジイがダメなら大将!大将殿ならこの惨劇を止められ…

 

「サミちゃん飴食うか?飴、最近花粉症でなぁ、ガハハハハ」

 

「へぇ」

 

…クソオヤジは久々に会った孫に執拗に構うジジイのように五月雨に馴れ馴れしくしていた

ダメだ、このクソオヤジ状況がまるでワカってねぇ…

 

「勝負は1 on 1、アタシからポイント取れば……いえ、アタシを抜いただけでもアナタの勝ちでいいわ」

 

「……」コク

 

止める事はできない!焦る俺を無視して話がどんどん進み、ジョンくんとお嬢様はコートへと移動し、ジョンくんはお嬢様にボールを渡した

 

「オイオイオイ…」

 

「中佐殿、黙って見ていなさい」

 

執事のジジイは俺を鋭く睨んで威圧した、そして…

 

「GAME STARTよ!」

 

笛が鳴り、ジョンくんの猛こ………

 

「…!」

 

ボールを持ち、センターライン上から飛んだお嬢様の手から放たれたボールは綺麗なループを描き、ゴールに吸い込まれた…

 

「オイオイオイ…」

 

高弾道スリー…ッ!!!

 

「ウ……ウソでしょ?」

 

ジョンくんも信じられないと言った様子でポカンとしているが、いやいやいや!!高弾道スリー!?あのお嬢様が!?

 

「……」

 

「い、今のはレンシューよ!レンシュー!ってかアタシを抜いてないじゃない!今のじゃアタシに勝ったと言えないわね!」

 

ジョンくんが順調に積み重ねたフラグが今、音を立ててバクハツしている…ッ!!ジョンくんは再びお嬢様にボールを渡し、次が本番よ!抜けるものなら抜いてみなさい!と英語でまくしたてた

 

「…」

 

「ッ!!ウソ…ッ!早…っ!!」

 

開始直後からフルドライブッ!!有馬嬢はおそるべきスピードでジョンくんを抜き去った………しかし!!ジョンくんも負けてはいない!即座にそのスピードに対応し、再びお嬢様の前に立ちコースを塞ぐ!!

 

「!」

 

「コ…コイツ!!う、ウソでしょ……!!アンタの方が先に跳んだじゃない!なんでアタシの方が先に……!」

 

まるで翼が生えたかのようは跳躍!!空中戦にも負けたジョンくんはコートに落下し、有馬嬢はボールをゴールに叩き込んだ!!

 

「ま………負けた、こ……このアタシ、が」

 

オイ、オイオイオイ……え?えぇぇぇ?マジか、オイちょっとマジか?

 

「お嬢様はあらゆる分野において秀でた物をお持ちです」

 

「マジか…」

 

執事のジジイは当然の結果だと言った、っーかマジか…あのお嬢様、ただの引きこもり気味のおとなしくて繊細な子じゃなかったのか?

 

「ただ、今回は特に力が入っているようにも見えましたが…」

 

お嬢様はボールを置き、いつもの少し自信なさげな足取りでこっちに戻ってきた

 

「………いや、正直驚きました、スゲーっすね、お嬢様」

 

「/////」

 

いや、ホントに…





次回は後編、たぶん
もしかしたら中編

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