今回のお話は〜…
【トゲトゲトゲ】
【ハイリスク・ハイリターン】
の二本勃て、アッチを勃てればコッチが勃たずってヤツですね☆
【トゲトゲトゲ】
かつて、戦争があった…
人類と深海棲艦の終わりの見えない戦いは古き時代の亡霊ではなく、明日を生きる若者達の手でついにその幕を下ろした…そして大人になった今、かつての戦争から人類は再び立ち上がり、今度こそ過ちを繰り返さないと固く誓い、完全平和の為に必要なものを模索し始めたのだった…
「よいっす、センパイ」
「よぉ」
各国の軍隊は解体もしくは縮小され、そしてその活動内容を平和維持活動へと変えつつも今日もどこかで小競り合いは起きている
あの戦いで海軍大佐まで上り詰めていた俺だったが、軍縮と共に軍を辞め、現在は自ら立ち上げた輸送会社を細々と経営していた…
「何の用だ?ピアノ運送か?」
「アヒャヒャヒャ、んなワケないっすよ」
相変わらず開いてるのか閉じてるのかよくわからない糸みたいな目をした軍の後輩も今や平和維持軍でもトップに近い立場に成り上がり、左団扇の大将様だ…
そして、そんな大将様がウチのそんなに広くはない事務所にわざわざやって来て、仕事を依頼したいと…
「言っとくがウチはKENZENな企業だからな、ヤバいモンなら運ばないぞ」
「知ってるっすよ」
ヒメは上着から書類を取り出し、テーブルの上に置くとコイツを頼みたいんすよーと軽く言ったが…
「………ヤバイですね☆じゃねーか!」
一目見ただけで尋常ではないヤバイリストじゃねーか!
「ダイジョーブっすよ!ギリセーフ!ギリセーフじゃねーっすか?」
「アホらし、他所を当たれ、他所を、もしくは自分でやれ」
「もー!センパイはすぐイジワルから入るっすね、なんすか?ツンデレっすか?ツンデレとか今どき流行ンねーっすよ」
「やかましい」
俺はリストをヒメに突き返し、タバコに火を点けると事務所の扉をノックし、ウチの従業員がお茶とお菓子を持って来た…
「緑茶ですけど…」
「あ、どもっす」
「ついでにマヨネーズでも入れてやれ」
「なんなんすかそのイヤがらせ!?」
ヒメは緑茶を一口啜り、ンン!エクセレンツ!とか言いながらお茶受けのカントリーなんちゃらをワイルドに開けて口に放り込んだ
「うん、なかなかウマいっすね、このお茶も……ウン、センパイ、なかなかイイ娘雇ったじゃねーすか?」
「あ?雇ったもナニも前からウチに居るぞ」
「ナニ言ってんすか?前はこんな美女いなかったじゃねーっすか?」
ナニ言ってんだコイツ?イカレてんのか?
「コイツ山風だぞ」
「………は?」
「コイツ山風だぞ」
「………Once again please?」
「This is Yamakaze」
「オ〜ゥ〜……オ〜ゥ…って!!ハアアアアアァァァァァァァ!?え?山風、え?山風ちゃんって…?え?」
ヒメは信じられないモノを見たように、っーかヒメの開いてるか閉じてるかよくわからない目がカッ!と見開いている!コレはレアですね☆
「え…?山風ちゃんって、あの小っこくて目つき悪くてトゲトゲした…?え?」
「…そういや最近身長伸びたか?お前」
「最近、ってワケでもないけど…」
そういや身長は伸びた気がするな
「え?あの目つき悪いのは…?」
「メイクでもしてんだろ」
そういや昔に比べて目つきが穏やかになった気がするが…
「あのトゲトゲヘアーは?」
「ストパーだろ、ストパー」
そういやいつの間にやらあのトゲトゲしい髪が刺さらなくなった気がするが…
「………え〜、コレ、あの山風ちゃんなんすか?メチャメチャ成長してるじゃねーっすか?」
「そうか?」
まぁ、あの戦いからもう何年だ?そりゃガキなんだしちょっとぐらい成長はするだろう、ワン●ース見て育った子供だってもう二十歳過ぎだからな
「テイトクはまだ私を子供扱いするんですよ」
「へ、へぇ〜」
心なしか、ヒメの野郎がドン引きしているように見えるが…そんなに変わってないだろ?身長はちょい伸びたがまだまだガキな事に変わりはない、寝てたらすぐ布団に潜り込んでくるし
「…マジっすか?え?センパイ、目ぇ腐ってるんじゃねーすか?」
「腐ってない、元提督だ」
「え?なんすか?センパイ、なんか軍辞めてから辛いコトとかあったんすか?目にフィルターとか入ってないっすか?味覚とか大丈夫っすか?」
「ナニ言ってんだオマエ、イカレてんのか?」
いや、イカレてるんだっけな、コイツ…
「ヒメさんからも言ってやってください、私を子供扱いするなって」
「え?あ、う、うん………ってかマジ山風ちゃんっすよね?お姉さんマジビビったんすけど…」
「山風ですよ、海軍在籍時は提督共々色々お世話になりました、あ、覚えてますか?私にキャンディーくれたりしましたよね?私あの時はちゃんとお礼言えなくて…」
「あ、うん……あった、あったっすね、うん、や、お礼とかいいっすから」
あの他人様を舐めた態度が基本のヒメが珍しく引き気味とは……まぁコイツも色々あるんだろ、色々
…と、そんなレアヒメケースに内心珍しいなと考えていると、事務室の扉をノックし、別の従業員が入ってきた…
「テイト……じゃない、社長、先週受けた依頼なんですけど先方からもうちょっと費用なんとかならないかって……あ、来客中でしたか、失礼しました」
「別に構わんよ」
入って来たのは改白露姉妹の自称長女の海風姉ちゃん、海風姉ちゃんも山風と同じくウチで雇って働いて貰ってるワケだが…
「って!!こっちは全然変わってねぇぇぇぇぇぇ!!」
「は、はい?」
ヒメは海風姉ちゃんを見てテーブルをダァンした
「……や、髪切ったっすか?短いのもアリっすよ」
「は、はぁ…ありがとうございます、えっとぉ〜……あ、日女さんでしたっけ?えぇ」
「ほらぁ!!センパイ!海風ちゃんは髪切ったくらいであんま変わってねーじゃねーっすか!?山風ちゃんの劇的ビフォアアフターなんなんすか!?なんで気付いてねーんすか!?」
ヒメはテーブルをバシバシ叩きワケのわからんコトを力説するが、正直、ワケがわからんので俺は海風姉ちゃんにも山風の変化を聞いてみた
「海風姉ちゃん、山風なんか変わったか?」
「え…?そうですね、ちょっと背が伸びた?」
「伸びたよ!もう海風姉ぇより高いよ、私」
「そう…?まぁ、言われてみたらそんな気が…」
「そうかぁ?」
まぁ、言われてみりゃ海風姉ちゃんよか身長ある気がするが……あぁ、アレか?遠近法的な…
「まぁ、子供の言うコトだしな」
「そうですね、山風、ちゃんとお茶はお出しした?」
「あの………二人揃って目になんかフィルターとか入ってるんすか?」
ヒメは何か諦めたように頭を抱えうなだれているが、コレもかなりレアですね☆だな
「あの……ヒメさん、私は気にしてないですから、テイトクも海風姉ぇも私をまだ子供扱いしてるだけですから」
「………アンタさんも大変っすね」
「え、えぇ…さすがにちょっと困る事は多いです、今みたく」
「ま、ガンバルっすよ、でもなんか困ったコトあったらお姉さんにいつでも相談してくれっす」
「ハイ、ありがとうございます」
□□□
テイトクが軍を辞めて早数年、私と海風姉ぇ、それと江風と涼風はテイトクと一緒に輸送会社をやってます…
テイトクは軍に居た時と変わらずに私達を扱ってくれて、それなりに上手くやっていけてるかなと思います
………まぁ、変わらな過ぎるところがあるけど
私ももう十分オトナになったハズなのにテイトクは変わらず子供扱いするし、そーゆー目で見てくれません
海風姉ぇにはたまにムラムラしてるくせに………前に五月雨姉ぇがあの男、胸しか見てないんでしょうねってディスってたのが今は言葉ではなく心で理解したよ、五月雨姉ぇ…
…でも、テイトクが居て、海風姉ぇが居て、江風と涼風が居る今が私は大事だし、今の生活は好きです
正直、海風姉ぇとテイトクがそーゆー関係でも私は大歓迎だと思うし…
…まだ私はその対象になってないってだけ!胸に関してはもうダメな気がするけど、まぁ五月雨姉ぇや江風と涼風には勝ってる自信あるし、まだ諦めるには早い!
「山風〜…お風呂空いてるから入りなさ〜い」
「あ、あぁ…うん、わかった」
「なんならテイトクと入ったら?久しぶりに髪洗ってもらったら?」
「何年前の話だよ!!子供扱いしないで!」
う〜ん………テイトクも海風姉ぇもホント、私をいつまで子供扱いする気なんだろ…?
◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎
【ハイリスク・ハイリターン】
かつて、戦争があった…
夢と浪漫に満ちたこの海の奥!まだ見ぬ冒険の海で繰り広げられた数々の戦いと伝説!人類の知られざる歴史!そして世界を揺るがす大事件!いくつもの哀しみの海を越えて、深海棲艦と人類の戦いは各国の連合海軍が深海棲艦のアジトで最終決戦を行い、七日七晚の死闘の末、海軍が勝利した…
そして、戦争は終わり、軍縮の煽りを受けた俺は軍をクビになり、微妙な額の退職金だけを受け取りいい歳こいて社会と言う名のジャングルに放り込まれた…
そして………
「明石…っ!奴も墜ちてやがった…っ!!この船に…っ!」
色々あって、ギャンブルクルーズ船に乗る事になった俺は軍時代の同僚、明石と再会した…っ!
◆◆◆
「いらっしゃいませー」
「ご一緒にマタタビいかがっすかー?」
狂気のギャンブルクルーズから無事生還した俺と明石は、これからは真面目に働く時代だと考え、とりあえず二人で金を出し合い、猫カフェをオープンした…
「まったく、猫なんてその辺をウロウロしてるのに金出してまで触りに来る神経が理解できませんねぇ」
「なんてコト言うのかね、この店員は」
「やっぱ時代は動物ビジネスですね、動物ビジネス!」
猫カフェビジネスは意外にもそこそこ当たり、とりあえずは当面の生活には心配がなくなった…
「ぷくぷくぷー、明石サン、コーヒーセット欲しいぴょん」
「コーヒーセットですね!テイ……長、コーヒーセット1つ!」
「提督じゃない、店長だ」
ウチで働くアルバイト店員のうーちゃんはいつもぷくぷくぷくぷく言ってるが非常に真面目で仕事にもソツがない、しかも可愛いので猫ではなくうーちゃん目当てのファンすらいるのだからマジパナイ、明石のカスにも少しは見習って欲しいものだ
「ほれ、コーヒーセットな」
「持っていくぴょん」
うーちゃんはトレイを持ってぷくぷく言いながら軽やかにお客様に提供しに行く…
「まったく、うーちゃんはホントに働き者ですねぇ」
「あぁ、お前の一億倍は働き者だ」
「いや、一億倍はさすがに言い過ぎでは……?」
「レジ打ち以外無能なお前とうーちゃんでは神と虫ケラほどの差があるのだよ」
「失礼な、ま、まぁ〜…接客はさすがに劣りますし、軽食メニューとかは私が作るよりテイー…チョーが作った方が見た目も味もアレですけど」
まぁ、レジ打ち以外で明石の良いところは無駄にアイディアを出せるところぐらいか?あとはまぁ……内装のセンスはわりといい
「あ、そーそー提督、そろそろ引っ越ししましょーよ、引っ越し、もうちょい広い部屋に」
「提督じゃない、店長だ………まぁ、引っ越しは考えている」
「でしょ?ほら、家族だって増えるし」
「そうだな」
………ギャンブルクルーズの激戦を生き抜いた俺達、まぁ、あの時は色々とテンションが上がったってのもある、うん、まぁ……なんやかんや明石は身体だけはワリとエロいからな、むしろピンクは淫乱とはよく言ったものだ
「目指すは真っ白な庭付き赤い屋根の家ですね!」
「そいつはもうちょい儲けてからだなぁ〜」
「あと犬飼いたいですね!白くてデカい犬!」
「お前が犬嫌いだろ?っーか俺も嫌いだが」
「バカですねぇ、大きな犬飼ってるってコトで御近所様に富裕層アピールする為ですよぉ〜」
クズ…っ!!まっことクズっ!!救えない…っ!!
「ま、もーちょい儲けてからにしましょうか」
「そうだな」
この後、動物ビジネスは色々と軌道に乗り、俺達は念願の赤い屋根で白い屋根のガレージ付きを購入したが、最後まで札束風呂に入る夢だけは叶う事はなかった…
次回は
【鉄の戦慄】と【修羅の花嫁】の二本立て、たぶん