不健全鎮守府   作:犬魚

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冬の新人面接回

【登場人物】

峯雲(70万パワー)
朝潮姉妹の八女、朝潮型とは思えない規格外の肉体を持つ

早波(71万パワー)
夕雲姉妹の十二女、右が気になる気難しくて繊細な子

日進(8600万パワー)
水母界激震の最強水母、全てが一流の完璧の申し子

Johnston(95万パワー)
MAJORの刺客、Fletcher級、ここがサムのハウスね!


続続続続続続続・提督と新人と面接

今年はもしかして暖冬なのかしらと疑いつつもやっぱり朝と日中と寒暖差を感じる冬の執務室…

 

今日は新たにウチに配属された新人の面接をするべく朝から執務室の姿見の前でビッと気合いの入ったチェックを行っていた…

 

「う~ん、なかなかキマらねぇなぁ~」

 

「もうすぐ時間ですよ、その鉄腕ア●ムみたいなくだらねー髪型のチェックとか後にしてくださいよ」

 

「…あ゛?アンタ今、この髪型のコトなんっつた?」

 

まったく、誰の髪型がサ●エさんみたいだっーのな、コイツこそドラゴン紫●みてーな髪型しやがって、どんだけロングなんだよ、一回でティ●テ使いきりてーのかよ

 

そんなイライラ状態からスタートする今回の新人面接はなんと四人、駆逐艦三人と水母一人というゴキゲンな組み合わせだ…

 

「じゃ、まずは最初の方どうぞー」

 

執務室の重厚な扉を開き、入って来た第一の刺客はこれまた重厚な駆逐艦

 

「朝潮型八番艦の峯雲です」

 

「ほぉ…峯雲クンか」

 

「はい」

 

とりあえず手元にある履歴書的な資料を見る限りではごくごく平均的な、微妙に運の悪げな朝潮型か………朝潮型?

 

「キミ、朝潮型と言ったかね?」

 

「はい、朝潮型です、八番です」

 

「そうか…」

 

ま、まぁ朝潮型だって色々あるわな、綾波姉妹だって国宝・潮って駆逐艦を超えた怪物がいるぐらいだし…

 

「まぁ最初はファームで徹底的に鍛えてからになると思うがガンバリたまえ、わからないコトは姉妹にでも聞いてくれたまえ」

 

「はい、ガンバリます!」

 

---

 

「次の方どうぞー」

 

駆逐艦離れした将来性の期待できるガタイを持つ峯雲クンが去って迎える次なる刺客はスーパーエリート駆逐艦姉妹、夕雲型新たなる刺客!

 

「夕雲型十二番艦早波ですぅ」

 

「ほぉ…十二番っーと藤波クンの下かね?」

 

「そうですぅ」

 

なるほど、近い姉妹だけあってなんとなく似てる気がするな………しかしこの子、提督はさっきから気になって気になって仕方のないコトがある

 

「えー…早波クン?」

 

「はぃ~、なんですかぁ~?」

 

この子は何故か、頑なに目を合わせようとしないのだ、常にナニかあっちの方を見ており、試しに視線の先に移動してみると…

 

「なんですかぁ~?」

 

やはり視線を合わせようとはしない、グウゥゥゥム、なんと無礼なヤツ!例えエリート駆逐艦である夕雲型と言っても到底許されるものではない!

 

…いや、待てよ、単に無礼と考えるのも早計かもしれん、もしかしたら俺があまりにもハンサムすぎて直視出来ないと言う可能性も十分にあり得る!いや、おそらくはそうなのだろう………まったく、隠しているつもりなのだが、やはり溢れる美と言うものはどうしようもないらしい…

 

「フッ、サミー…早波クンにチョコレートケーキを出してあげたまえ」

 

「…はぁ?」

 

秘書艦青髪はナニ勘違いしてんだコイツ?マジキメぇみたいな顔をしているが、まぁ仕方あるまい、何故ならこの提督は完璧なのだから…

 

「とりあえず早波クンにはファームでガンバって貰う事になるだろう、なに…困ったコトがあればWHOちゃんにでも聞くといい」

 

「はい!」

 

---

 

聖なる完璧の試練…もとい完璧の面接、続く第三戦、迎えるのはこれまでに無いタイプの新たなる完璧水母!

 

「呉生まれの最新鋭水上機母艦、日進じゃあ!」

 

「ほぉ……日進クンか」

 

とりあえず手元の書類を見るに、パワー・テクニック・知性、そして残虐性は過去にないレヴェル、瑞穂様やコマさんの輝きが淡すぎて霞んでしまう圧倒的輝き!まさしく最強の水母と言えるだろう

 

「ふむ、どうやら“聖なる完璧の基地(モン・サン=バーズ)”と名高いウチの門を叩くだけはあるらしい」

 

「カッカッカ!われがテイトクかぁ?ふむ……なかなか良いツラ構えじゃのぉ」

 

「サミー、彼女に羊羹出して」

 

そしてこの俺のハンサムを一目で理解し、褒め称えるとは…大した最新鋭水母だ

日進クンは出された羊羹をワイルドにかぶりつきカーッ!甘んめー!とか言いながらゲラゲラ笑う

 

「まぁ、とりあえず日進クンには下で鍛えてからの登板になると思うが………まぁ、キミならすぐに一軍登録だろう」

 

「当然じゃあ」

 

「ふむ」

 

そしてこの最強水母日進クン、なんと今まで秋津洲にしか懐かないと思われていたあの大艇ちゃんも懐くらしく、唯一の友達を失う恐怖に秋津洲が怯えた顔でブルブル震えていたのには興奮した

 

「実は神威さんにも懐くらしいですよ、大艇ちゃん」

 

「マジか!?」

 

結構ミーハーなヤツなんだな、大艇ちゃん…

 

---

 

最強水母日進くんの面接も終わり、本日最後の面接…

 

「えー………最後は~…駆逐艦だっけか?」

 

「駆逐艦の人ですね、米国の」

 

「…米国(ステーツ)、だと?」

 

ステーツと言えばアレだ、アイオワを始めとして今まで多くのメジャーリーガー達を輩出し、その圧倒的な戦力(バスト)と徹底的な正義(ジャスティス)で存在感をアピールしてきたまさしく誇り高き正義のスター集団…ッ!

その、新たなる刺客が来たと言うのか…ッ!!

 

「サミュエルさんと同じく駆逐艦ですけどね」

 

「…ふむ」

 

サムくんか、まぁ、彼女はメジャークラスとは言い難いが、間違いなくこの青髪ロング子よりはメジャーになれる可能性を秘めているだろう

そんな俺の考えを知ってか知らずか、可能性ゼロのゼロチャージキル秘書艦は次の方どうぞーとメジャーの刺客を部屋に招き入れた…

 

「Hi、あたしがFletcher級駆逐艦Johnstonよ!」

 

「…え?ナニ?フレッシャー?」

 

「いや、FresherじゃないでFletcherじゃないんですか?」

 

「ハッキリ言う、気に入らんな」

 

青髪ロング子の無駄に良い発音にイラっとしつつ手元の書類をチラ見し、入ってきた新たなるメジャーの刺客に視線を移す…

 

「ふ~ん、アナタがAdmiralなの?ふ~ん……Samから聞いてたよりは少しアレだけど……うん」

 

「え~…ジョンストンくん、だったかね?」

 

「Johnでいいわ、まどろっこしーの嫌いでしょ?」

 

「ふむ、ではジョンくんと呼ぶとしよう」

 

どうやら見た目通りにKAIKATSUな子らしいな、しかしこの子……なんかどっかで見たコトある気がするのだが………ふむ、気のせいか?

 

「ねぇ?ナニか飲み物とかないの?あたし喉渇いてるんだけどー」

 

「ん?あぁ、サミー、彼女に飲み物を…」

 

面接に来てドリンクサービスを要求するとはなかなかの大物だな、さすがはメジャーからの刺客…

 

「コーヒーでいいですか?」

 

「OK、それでいいわ、あ、アタシCoffeeはblackだから、milkもsugarもいらないわ」

 

「ブラックですね…」

 

ミルクもシュガーもいらないと言って、ちょっと誇らしげなジョンくん、おそらくはこう……アレだろう、大人であるコトをアピールしたい気難しくて繊細な年頃なのだろう

 

そして五月雨は自慢のコーヒーマシンをいそいそと用意し、鼻唄まじりにこだわりの豆を選び始めた…

 

「へぇ、なかなか本格的なのね?アタシはこー見えてCoffeeにはちょっとウルサイのよ」

 

「そうかね」

 

「機会があったらAdmiralにも淹れてあげるわ」

 

「あぁ…機会があったら頼もうか」

 

しかし悲しいかな、今からジョンくんは自慢の殺人コーヒーを味わう事になるのだ…

俺はとりあえず手元の書類を見てジョンくんの性能について確認してみた…

 

「ほぉ、ジョンくんは先制対潜だけでなく対空射撃も得意なのかね?」

 

「ん?まぁね!あたし天才だしね!」

 

KAIKATSUフレッシャーのジョンくんは気を良くしたのか、スクールじゃ一番だったとかクラブのチアリーディングにも選ばれたとかわざわざ俺の横に座り馴れ馴れしくペラペーラペラペーラと喋り始めた

 

「コーヒーをどうぞ」ニコニコ

 

「ん、Thanks、ありがと」

 

五月雨からコーヒーを受け取ったジョンくんは早速コーヒーに口をつけ…

 

「マズっっっ!!!ペッ!ペッ…!!ナニこれェェェェ!!チョ…!!なんなのよコレェェェ!!ウソでしょ!」

 

言いやがったァァァァァ!!このフレッチャー級ゥゥゥゥ!!誰もが気を遣って言い淀む五月雨のコーヒーをハッキリとマズいとディスりやがったァァァァァ!!

 

「うえっ………マッズ、こんなマズいコーヒー初めて飲んだわ…こんなの毎日飲んでたらNeuroseになるわ」

 

まさかここまでハッキリと………さっきまでニコニコしていた五月雨は信じられないといった様子で目を見開き小刻みに震えていた

 

「い……今、なんと…?」ブルブル…

 

「Not my taste!マズいって言ったのよ!」

 

五月雨の淹れたコーヒーを正面きってマズいと言えるのはおそらく俺、由良さん、涼風のみ………あの高貴な御方である陛下すら気を遣って言わなかった本音をこの娘は言ってのけたのだッ!

 

………こ、殺される、間違いなくこの娘は殺されるッ!

 

ちょいちょいイラっとはしているものの、大激怒する事は滅多にない五月雨だが、自慢のコーヒーをこうもハッキリマズいと言われて黙ってはいないだろう、良くて半殺し、悪くて全殺し……五月雨はそもそも鱗一枚でヒューマン百人殺すと言うぐらい心の狭い奴、ジョンくん、キミは龍の逆鱗に触れてしまったのだ…

 

しかし…ッ!!

 

「………提督、ちょっと頭痛いんで早退していいですか?」フラフラ

 

「え?あ、あぁ…」

 

意外ッ!!逆鱗は炸裂しない……?

五月雨は早退しますと言い残し、荷物を持ってフラフラと部屋から去って行った…

 

「あら?あの子体調悪かったの?」

 

「あ、あぁ…そうらしい」

 

ジョンくんは特に気にした様子もなく再びコーヒーに口をつけ、マズ…っ!と呟き…

 

「でもまぁ、なかなかクセになる味ね………うん」

 

う〜む、この娘はなかなか大物なのかもしれん…


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