提督(23)
最初と最後だけちょっと真面目ぶる紳士
男には紳士道がある
「え~…とりあえず、今回の作戦も無事完了する事が出来た、ややムラっ気のあるプレーも目に付くところはあったが、まぁ安心して見る事が出来た、よくやった」
ざわ…ざわ…
「さて、クソの役にも立たん挨拶はこれぐらいにして、お待ちかねのお給料の時間だ、サミールくん、アレを」
「五月雨です、はい」
五月雨が持って来たジュラルミンケースを壇上に置き、封を開封する
その中身こそ……現金ッ!キャッシュ!マネー!人の心を容易く支配する魔王ッ!
即ち、金ッ!!
「え~…では今回のMVPチケット獲得数ランキング1位は決定打を入れた雪風クゥ~ン、はいみんな拍手~」
パチ…パチ…
乾いた拍手の鳴る中、俺はジュラルミンケースから現金を取り出し、壇上に上がってきた雪風に数束の現金を手渡した
「ちゃんと額数えとけよォ~」
「押忍、ごっつあんです」
「はいドンドンいくぞォ~」
当鎮守府は年俸だの契約金など甘えた金は無い
仕事した分が給料になる完全歩合制を採用しており、活躍すれば活躍するだけ金を獲る事が出来る
それだけに誰しもレギュラーを目指し、レギュラーでなくともワンポイントでの活躍でも多額の現金を獲るチャンスがある
「マジで現金手渡しかよ…」
この光景は、来たばかりの新人に毎回ドン引きされている
「はい次ぃ~アイオワクゥ~ン、前回来たばかりのルーキーだが頑張ったな、ほれ」
「Great……こんなにッ!!」
「ちゃんと額数えとけよォ~、はい次ぃ~」
ちなみに、活躍度的に旗艦を討ち殺った方がポイントが高いので全員が旗艦を狙い、瀕死の旗艦を他人が外せばガッツポーズ、自分が殺る、自分が活躍する、自分が勝利させる、自分がMVPを総穫りする、こうして、最高のチームワークが発揮される
「で~…最下位、初雪クン」
「…500円」
「以上、あと、ささやかながらパーリーの準備もしてある、福利厚生費で落とすから好きに飲み食いしたまえ」
「ヒャッハー!水だァー!」
「オイ!ピザ持ってこい!ピザ!」
「イヒッ!イヒヒヒ~!今回結構稼いだし、ナニ買っちゃおっかな~?ね?ねぇ熊野ォ?」
「買う前に金返せですわ、ランチ代」
これにて作戦を終了
俺は外に出て煙草に火を点け、まずは一服する
「フーッ~…」
「はい、どうぞ」
後ろから付いて来たらしい、五月雨から酒瓶を手渡された
「なに?俺、便所に行くんだけど?」
「そうですか、じゃ、それはどこかで処分しておいて下さい」
「そうする」
…相変わらずムカつく奴だな
◆◆◆
「まぁ、今回もコレだけで勘弁してくれ」
酒瓶の中身をぶち撒け、答える者は誰も居ない草地に腰を下ろす
「そのうち、気が向いたらキラキラしたアレを持ってきてやるよ、ホントだぞ?」
毎回そう言っている気がするが……まぁ、仕方ない、今も昔もだらしない提督だからな
「…む」
ポケットの電話が振動している、無粋な奴め…
「もしもし?私、提督さん、今あなたの後ろにいるのー」
『そーゆーのはいいです』
「で?何の用かね?サミダリューンくん」
『五月雨です、新しく入った新人さんなんですけど…』
「給料形態に不満があるってか?嫌ならパパのチ●ポしゃぶってろと言っとけ」
『いえ、なんか女王みたいな人がいるんですけど…』
「はぁ?」
なに言ってんだコイツ?
「女王って…お前、え?女王って?ナニ?鞭持ってんの?そーゆープレイの人なの?」
『いえ、鞭は持ってないですけど…』
「え~?あ、もしかしてアレじゃねぇの?ちょっと特殊なデリ●ルの人が間違って来たんじゃねぇの?」
『…呼んだんですか?』
「呼んでないけど?」
『まぁ、それはいいです、とにかく来て下さい、とにかく女王なんです!』
ツー…ツー…
「切りやがった…」
まったく意味がわかんねぇな、疲れてんのか?アイツ
次回、女王降臨