不健全鎮守府   作:犬魚

508 / 940
※先日、秋刀魚祭りに行ってきました、ただ、このお話はフィクションです、実在する店舗やら実際の秋刀魚祭りとは一切関係ないことをご注意ください

あと、これから行こうかな〜…っと考えている人は、このお話はまったく参考にならないので、ご自分で色々と情報を調べることをオススメします

【登場人物】

提督(おひとり様)
アレ…?オレ、水割りって言ったよね?これロックだよね?どう考えてもロックだよね?


提督と秋の秋刀魚祭り

キュウシュウから少し離れ、仕事の為に訪れたヒロシマ…

 

仕事は予定より早く終わったものの、今日中に基地に戻る必要はなく、時間の空いた俺はただ腹を空かせてこれからどうするべきかを考えていた…

 

いつもなら、秘書艦の青髪ロング子に卿から私に勧める飲食店はあるか?と尋ねるところだが、今回の出張に青髪ロング子は同行していないので、適当な店で食事をする必要がある、青髪ロング子は“出張に行くならネットとかで事前に近くにある美味しい店を探しておけばいいじゃないですか?”と当たり前のように言うが……まったく、そーゆートコもムカつくのだよ、あ、ヤベ、イライラしてきた

 

「さて…」

 

まぁ、落ち着こう、俺はただ腹が減っているだけなんだ…

 

とりあえず街をブラブラと歩いていると“さんま”と書かれた暖簾が下げられ、店先には海軍様歓迎と書かれた看板…なるほど、さすがは海軍最大戦力、四大鎮守府の一角、呉が近いだけはある…

 

先日、磯風が新鮮な釣りたての秋刀魚を調理した結果、秋刀魚は“コロシテ…コロシテクレ”と悲痛な声を出すワケのわからない物質になった事は記憶に新しい…

 

「よし…行くか」

 

とりあえず、腹も減っているコトだし、ここに決めてしまおう!俺は暖簾をくぐり店内へと入った…

 

---

 

店内に入ると、なるほど……どうやら海軍歓迎の看板に偽りはないらしく、客の多くは海軍の士官や将校らしい…

 

「だからワシはゆーたんじゃあ、深海のゴミクズどもを生かしちょってもしゃーないじゃろう?正しくなければ生きる価値はありゃあせん!とな」

 

「おーおー…怖いコトを言いなさる」

 

「まったく…甲勲章を諦めるゆーのは生き恥を晒すのと同じコトじゃろ?」

 

スイマセンでした、生き恥を晒してスイマセンでした

現在進行系で生き恥しか晒してないだらしない提督でスイマセン…(※注 甲勲章を諦めるのは生き恥ではありません)

 

やべー…なんだこの店、ヤバすぎだろ、もう全員アレだわ、俺以外は全員、当たり前のように覇気使ってて、当然のように自然系(ロ●ア)ブン殴れる感じの武装色だろ、あー…怖い怖い、とりあえずあっちのカウンターに座っとくか

 

「えー…とりあえずナマ一つ、それと…」

 

とりあえずナマ、そして、メニュー表にあるオススメ10種……か、まぁ、無難にコレぐらいにしとくか

速やかに注文を済ませた俺はメニュー表やお品書きを見るふりしつつ、店内の雰囲気、そして様子を改めて確認する…

 

どうやら今日の客は殆どが海軍の士官や将校で間違いないらしく、秋刀魚などを食いつつ和やかかつ、和気藹々とした様子に感じられる…

さっき俺の背後を通ったヤツなんか間違いなく“剃”とか使って移動したね、そして、俺の隣に座るこの男も並の将校ではないだろう…

 

「お待たせしましたー」

 

「おっ…!」

 

運ばれて来た小皿とメインであろう秋刀魚、なるほど秋刀魚か、ふむ……そうそう、こーゆーのでいいんだよ、こう…まずは冷たいビールでキューっとやってさ

 

「いただきます」

 

…うん、うん、秋刀魚だな、コレは、個人的にはもうちょい焦がす勢いでパリパリに焼いたのが好みだが、うん、悪くない…

 

刺身や秋刀魚、その他の小皿を満遍なく味わいつつ、どちらかと言えば酒に重きを置いて食べていた俺は、ふと、隣を見て…

 

「…っ!?」

 

早ェェェェ!!なんだコイツ!?ちょ!待てよ!アンタ俺と同じぐらいに料理きて、同じぐらいの量あったろォォォ!?なんでサラダしかねぇの!?あの量どこいったの!?牛丼屋に来た体育会系部員かよ!え?ナニ?俺が食うの遅い感じなの!?

 

「……スイマセン、ナマもう一つ」

 

「はーい」

 

…おそらくは俺なんぞモクモクしちょるだけの男と違い、きっと名のある御方なのだろう、たぶんアレだよアレ、執務室のサイドボードとかに甲勲章飾っちゃってる感じだよ、間違いないねー!

 

ってか、きっとこの店内!俺以外はみんな勲章とか当たり前な感じだよオイ!仮にだ、仮に、俺が何かの間違いで“甲勲章?アハハハハ、あんなのマゾの証じゃないですかー?”とか言おうモンならこの店の海軍将校全員を敵に回す恐れすらある

 

『モクモクしちょるだけのミジメな敗北者がァ!』

 

『海軍に相応しくない海のゴミクズが!」

 

『生きて帰れると思うちょるじゃろうなぁ〜?』

 

…ダメだ死ぬ、勲章一つない、俺は所詮モクモクしちょるだけのミジメな敗北者だ(※注 甲勲章を諦めても敗北者ではありません)

 

そんな事を考えつつ酒を呷り、ショボい人生でゴメンな!と小学生だった頃の俺に謝っていると、店内からなにやら歓声のようなものが聞こえてきたので、ふと、そっちを見てみると…

 

「あー!いかんかったのぉ!」

 

「今日はどうやら“ツキ”がないらしい!フッフッ!」

 

………なんかチンチロやってた、え?チンチロ?チンチロしてんのアレ?

 

「フッ…どうやら始まったらしい」

 

「え?ナニが!?」

 

思わず隣に座る男に聞いてしまったが、どうやらアレはチンチロではなく、今日、この店に出る限定品を購入する権利を賭けているらしい………屈強な海軍将校達が欲しがるとは、なんだ?まさかメラ●ラの実でも売るつもりなのか!?

 

そんな事を考えていると、賽子を持った店員がこちらにも回ってきたらしく、隣に座る男もチンチロリーンし、良ければどうぞ、と俺にも順番が回ってきた…

よ、よぉーし!メ●メラの実かー!たぶん!買って帰ったら暁ちゃんきっと喜ぶぞぉー!もしかしたら一緒にお風呂入ってくれるかもしれないなー!

 

…と、賽子を手に持ったら!!

 

「うおっ!!」

 

「どうしました?お客さん!」

 

「い、いえ……なんでも!」

 

重いッ!!な、なんて重いんたこの賽子…っ!なんだコレ!?アダマンタイトかなんかでデキてんのか!?嘘だろ、アイツら全員、コレを軽々と振ってたのかよ!?バ…バケモノ、バケモノ揃いだ!!俺なんか下っぱ中佐と“格”が違いすぎる!

 

「ふ……フンッ!!」

 

チンチロリーン(ハズレ)

 

「あー残念、ハズレですねー」

 

「アハ、アハハハハ…そーっすねー」

 

無茶ゆーな、振れるかッ!!あんなもん!!覇気か!?武装色しとかんとあかんのか!?

 

そんなワケで、メラ●ラの実は普通に諦めた、暁ちゃんには紅葉饅頭でも買い、モミモミの実とか言っときゃ喜ぶだろ、たぶん

 

ーーー

 

「アリアトアシター!」

 

………入店から約二時間、とりあえずは良い感じに飲み食いでき腹も満たされ、店の外に出た俺はタバコに火を点けてとりあえず一服した

 

「よし、ラーメン食って帰るか」

 

キュウシュウ男児である俺としては、やはり〆はラーメンが要る………トンコツじゃないのは少し寂しいが

 

「…ん?」

 

ポケットに入ってるケイタイに、メールの受信を報せるランプが点いているので何事かと思って確認してみると、五月雨からで、内容は……

 

【尾道ラーメンとかいいんじゃないですか?】

 

「………」

 

コイツのこーゆーところがムカつくのだよ





次回はたぶんイベント終了回、楽しいお給料の時間!
次回以降はいつもの新人圧迫面接回、今回もまた濃いのが…

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。