坂下郁様、本当にありがとうございます
【登場人物】
仁科大佐(変態)
今までもシレっとちょいちょいお借りしてましたが、仁科名義で出てくるのは初です
天才であり変態、外道でありド外道のまごうことなき最低の屑、ただ、変なところ律儀な面もあり
ロボットと言えばロケットパンチと目からビームと考える遊び心もある、でもド外道
大鳳(スペシャル)
仁科大佐に付き従うスペシャルな大鳳、大佐は本当に素晴らしい人だと信じる残念さと、大佐の為なら誰でも殺す残忍さを併せ持つノーガッツな娘
悪の組織の悪の科学者の隣にいる変なポンコツロボポジション
提督(中佐)
主人公、大佐の方が濃い?でも主人公
ニホンから遠く離れた太平洋上に浮かぶ南の島…
かつては常夏の楽園と呼ばれ、世界のあらゆる国からバカンスを楽しむ為に多くの観光客で賑わっていたその島も深海棲艦出没によるシーレーン分断の煽りを受け、最盛期より観光客は減ったものの今なお常夏の楽園の代名詞としてその名から輝きは消えてはいない…
そして、そんな常夏の島に居を構えている男の住む家には様々な来訪者がやって来る
ある者は家電修理の依頼に…
ある者は自身の健康相談に…
ある者は彼の知識と技術を求めて…
彼は島の人気者だった…
ある日、従者らしき少女と共にフラリとやって来て島の岬近くに家を作り住み着いた彼はあらゆる物を修理する確かな腕と知識、誰に対しても崩さない紳士的な態度、そして南国特有のファンキーで開放的なファッション(モロ出し的な意味で)はすぐに島の住人達に受け入れられた…
島の住人達は誰も彼の素姓を知らないが、彼を知る誰もが彼の恥じる事なき変態的な立ち姿から親しみを込めて彼をこう呼ぶ………
ドクター・モロと…
ーーー
「…それはなんですか?」
仁科良典、かつては海軍の暗部的な部署に所属し、口にするのも悍ましい非道な実験を日常的に行なっていた技術部所属の技術者であり、最終階級は大佐…
狂気の思考と発想力、そして、常人には不可能と思える神業の技術力、彼一人で技術を十年は進歩させたと言われており、今なお彼に並ぶ天才は海軍の後継には現れてはいない…
そんな仁科元大佐が、自らの淹れた爽やかなモーニングコーヒーの香りを愉しみつつ今日も良い日になるだろうと全裸で窓際に立っていると、同居人であり、自らの“自信作”と認める作品が朝の散歩を終えて自宅に戻って来たので朝食の準備をと命じようとしていた矢先、それは、何かよくわからないモノを持って帰って来た…
「はい!散歩中に見つけたんですが…」
数多の“作品”を作ったものの今、唯一自分の手元に残っている“それ”…
大鳳型空母の大鳳はなにやら大型犬サイズで血を流すナニかを持って帰って来た……
大鳳は“コレ、
「大鳳、私を誰だと思ってるのですか?この程度は文字通りの朝飯前に済みます」
「さすがです大佐!」
「とりあえずは奥に運んで下さい、あと、私はそれを修理しますので大鳳、アナタは朝食の準備をお願いしますよ」
「はい!わかりました!」
………とは言ったものの、これは少し遅めの朝食になりますかねぇと大鳳に聞こえない声量で呟き、仁科元大佐は早速それを、その“少女”を修理する最適かつ最速の手順を考えながら壁掛けハンガーに掛けてあったパンツを手に取り、それをスタイリッシュに穿いた
「さて、始めましょうか…」
◇◇◇
自分の居た世界とは違う外の空気……まだ、人類が恐怖と絶望の前に恐れ、隠れないでいられる世界…
「…成功した」
乗って来た乗り物を適当な感じで隠し、今、自分が居る場所が目的の場所の近くに着いた事を確認した女はポケットから取り出した一枚の写真を見て、決意を新たにしつつケツを抑えてやるせない気持ちも抑え、ここに来た本当の目的を果たすべく動き出した
「まずは………“提督”に会わないと」
その男に会い、出来るならば全ての事情を話して協力をして貰う、それが彼女の目的の一つであり、絶望への反抗の始まりでもある
◆◆◆
遥かなる八月も終わり、世の大半のちびっこ達が絶望する二学期が始まる今日この頃…
「………ハァ?」
執務室で買い置きの缶コーヒーを飲みつつ、スポーツ紙のエロ小説を読んでいた俺は五月雨からイマイチよくわからない報告を聞いていた…
なんでも、基地近海の海で所属不明で正体不明のナニかが近海でうろついているイ級だのロ級だのを狩りまくっているらしいのだが………所属不明で正体不明ってのはどーゆーコトだ?もしかしてアレか?またどこぞの国から来たワケのわからんヤツなのだろうか?
「そこら辺も不明です、ただ…」
「ただ?」
「…確認できた手持ちの砲や艤装から判断して、どこぞの国ではなく、国産の可能性があるそうです」
「ふ〜ん」
試験運用中の新型ってヤツだろうか?まったく……迷惑なハナシだな、オイ
「………まぁ、どこの誰かは知らんがウチのナワバリでヤンチャされるのは良くないな」
「そうですね」
「とりあえずだ、サミダレンブラント、そいつにウチのナワバリでヤンチャするのはやめたまえと警告して来い」
「はぁ…?私だけでですか?あと、五月雨です」
「大勢で行ったらビビっちまうかもしれねーだろーが、こーゆーのはアレだ、まず相手を刺激せず、対話する姿勢が必要なのだよ」
「………まぁ、わかりました」
五月雨は微妙に不満そうな顔をしたが、とりあえずニュートラルに戻り、じゃ、行って来ますと言って執務室を出て港の方へ歩いて行った………あの野郎、チンタラ歩きやがって、駆け足だろーが、駆け足
「ったく…」
しかし所属不明で正体不明か、こないだの大将殿の話といい、随分とイヤな匂いがプンプンする話だな、もしかして呪われているのだろうか?いや、厄年!?厄年ってやつか?
◇◇◇
「ふむ…」
肉体的には問題ありませんが、意識の混濁が見られますか…やはり使用したベースの等級が低いと成功率が格段に下がりますね、一応、手持ちの中でもそれなりに純度が高くフレッシュなものを使ったのですが…
「まぁ、その他諸々と問題はありますが………ま、いいでしょう」
今は経過観察です、大鳳が色々と世話をしているようですし……今は好きにさせて問題ないでしょう
拾ってきた責任をキチンと果たそうとするのは良い傾向です
………そんなことより、まずは今日の素敵な一張羅を選ぶ方が重要ですかとドレッサーの扉を開こうとすると、自室の扉が勢いよく開き、大鳳が入ってきた
「大佐っ!」
「なんですか?あと、ノックしなさい」
「し、失礼しました」
「ふむ、で?何事ですか?」
「あ、いや…えーと、しーちゃんのコトなんですが」
「…しーちゃん?」
しーちゃん…?シー・チャン、はて?大陸系の知り合いは記憶に無いのですが、まぁ、忘れると言うコトはわりとどうでもいい人物でしょうかね
「あ、間違えました、えーと…サンプルF259のコトなんですが」
「あぁ…」
なるほど、理解しました
「アナタ、アレに名前を付けたのですか?」
「あ……はい、ダメでしたでしょうか?」
「いえ、構いませんよ、アレはアナタの好きに呼ぶといいでしょう」
「あり…ありがとうございます!」
なるほどなるほど……たしかに、過去にも研究室にはサンプルに愛称を付ける人も居ましたし、それはきっとごく自然なコトなのでしょうね
“愛情”を持って接する、実に良いコトです
「それで?そのシーマンがどうしましたか?」
「シーマンじゃありません、しーちゃんです」
「これは失礼、それで?話をどうぞ」
「はい、実は…」
………大鳳の話は実に興味深い話でした、なるほどなるほど、色々と……そう、アレですね、目からウロコと言うヤツでしょうか、大鳳には教える事が多い反面、教わる事も多い、彼女は本当に私を退屈させない