【登場人物】
提督(未だ中二病を患う大人)
フラグ?あぁ、アレはダメだ、一級フラグ建築士の免許は難関資格だからな!
五月雨(駆逐艦)
由良さんより事務ができるので秘書艦になった
由良さん(軽巡)
事務に挑戦してみたけどすぐ飽きた、やれば一応できる
『とりあえず、誰も一緒に行くアテがないなら私が行きますよ、暇ですし』
浜風ちゃんと夏祭りファ●クにはまだ早い、今の俺には未回収の浜風ちゃん攻略フラグが多すぎる、よく考えたら俺と浜風ちゃんはお互いに好きな音楽のジャンルも知らない仲だ……おそらく、今、事を急げば大失敗必至…っ!浜風ちゃんへのルートは閉じられ、俺はこのα世界線で然る後、残酷な結末を迎える事になるだろう…
それにアレだ、功を焦る兵隊に良い未来はないとある特佐も言っておられたしな!
そんなワケで、俺はおとなしく我が頼れる秘書艦とブラっと出かけてみるかー!との結論に至り、夕方、五月雨と共に出かけようと執務棟の廊下を歩いていると、運悪……たまたまジュース飲みながら歩いていた由良さんに遭遇、由良さんにどっか行くの?と問われ、夏祭りに行くのだよと懇切丁寧に答えると、由良さんは、じゃ、由良も行くーとか言い出したので俺は丁重にないわーと断った
「テイトクさん?」ニコッ
「なんだい?由良さん」ニコッ
にこやかな由良スマイルは一瞬、既に、互いの必殺の間合いに入っている!!由良さんはノーモーションからの喰らえば絶命必死の手刀を放ってきたが俺はその手刀を肘で迎撃して上に流し、そのまま肘を由良さんの鳩尾に叩きつけた!
「…くっ!!今のは……!エンメイリュウ、ね?」
「裏蛇●山、朔光…」ニィ…
前に陸奥のヤロウが長門の拳にカウンターで喰らわしているのを一度見た、しかし咄嗟とは言え陸奥の技が出るとは……どうやら染み付いた血ってのはカンタンには拭えないらしい
そんな背景白めの俺と由良さんの激戦は二十分に及び、壮絶な殴り合いの末、お互いに、このクソ暑いのに不毛な事はやめようと和解し、夏祭りと言う冒険の仲間に加えるコトになった…
ーーー
地域の夏祭り会場は人が多かった…
えぇ、そりゃもう、ごったがえって言うんですかね?地元の人にとっては年に一回の大きなイベントですし、花火とか上がりますし、えぇ、それはもう大変な人出でしたよ、え?そんなにイッパイじゃ歩くのも大変なんじゃ?ハハハ、ないない、それはないですよ、そりゃあ人が多いと言っても田舎の夏祭り、三万とか五万発アガってTV中継がある花火大会じゃあるまいし、田舎としては、ですよ?ハハハ…
「フーッ、よっこらせんずり」
俺は手近なベンチに座り、財布から紙幣を取り出して五月雨と由良さん、それぞれの手に渡してやった
「ナニこれ?お小遣い?」
「あぁ、それで仲良く二人で出店でお買い物して来いよ」
ハッキリ言ってこの浮かれポンチな人波の中をダラダラ歩くのは今の俺にとっては苦行でしかない、とりあえず、俺はそこらの店で買ったビールの蓋を開けてワイルドに喉に流し込んだ
「あー………うんめー、っーワケだ、俺はこのベンチから動かないからオマエ達は提督に遠慮する事なく夏祭りを満喫してくるといい」
「うわー…ナニこのおっさん、マジで空気読めないわ、ね?」
「まぁ、提督が空気読める人なら今頃神社の裏でファ●クしてますよ」
コイツら、言いたい放題言いやがって…まぁ、正直なところ、一緒に来たメンバーが浜風ちゃんでない時点で俺のテンションはダダ下がりのMAX最底辺だ
「そんなコト言わずに、ほら、立って、ね?由良が金魚掬いするの見てたらいいじゃない?ね?ほらアレよ?Stand and Fightよ、ね?」
なんで立って戦わにゃならんのだ…?由良さんは俺の胸ぐらを万力みたいパワーで掴み上げ、イヤがる俺を群衆の中へと引きずり込もうとする
「ちょ!痛い!痛いってば!ちょ…やめてよ!サミー!助けてサミー!」
「イヤです」
「なんでだよ!?」
五月雨にしては珍しく遊び球無しのストレートだなオイ!
そんなワケで俺達はまず、由良さんが金魚掬いしたいと言うので金魚掬いの屋台へと向かった…
「よし!今日はいっぱい獲るから、ね?」
「獲るのはいいが、キチンと責任持って飼えよ」
「大丈夫大丈夫、由良は金魚とか弱々しい魚は反吐が出るほど嫌いだけど、名取姉にでもあげたらキチンと餌やってくれるだろうし」
「最悪だよこの白髪女!!」
いや…?白髪と言うにはちょっと色味がかっているんだが、なんだろうなこの色、血?血だな、たぶん血の色だ、うん
「では…」
由良さんは500円と引き換えに手にいれたポイを悪魔のように大胆に水にブチ込み、悪魔のように大胆に水の中から引き抜いたッ!!
「………ね?」
「ね?じゃねーよ、ド下手かッ!?」
ナニ可愛く言った風に流そうとしてんだこの女、なんで悪魔のように大胆にしかねーんだよ!なんで天使のような細心さがねーんだよ!
「…まさか由良さん、一匹も獲れないとか、正直ウケますね」
「は?」
そして既に五匹も捕まえてプークスクスと笑う五月雨のいらん煽りが由良さんのPRIDEに火を点けた、っーかなんで煽るんだこの青髪ロング子は!?仲悪いのも大概にしろよ!!
「はー………キレた、由良久々にキレちまったよ、ねぇ?」ピキッ!パキッ!
「待て待て待て!落ちつこう!な?ほら、アイス!提督がアイス買ってやるから!な?サミー!ほら、オマエもごめんなさいしろ!」
「はぁ?スイマセン」
ーーー
一触即発!とびっきり最強対最強の危機はなんとか回避された、これもひとえに、俺と言うよく出来た大人であり、空気の読める上司のおかげである事を皆に知って貰いたいものなのだよ…
「…当たりませんね」
「見て見てテイトクさん、ほら、無駄にデカいヌイグルミ!見れば見るほどブッサイクよね?ね?」
射的屋台の戦いは由良さんに軍配が上がったらしく、由良さんは無駄にデカいヌイグルミをブチ抜き、五月雨はどうにも当たりませんねとオモチャの銃を店のおっさんに返却していた…
あと、コイツらさっきから最初の1回だけ自分のポッケから金出して、後全部をごく自然に俺に出させる鬼畜のスキルを持っているらしく、さすがに二人がかりで湯水の如く使われると俺の財布も悲鳴を上げっぱなしなんだが…
「オマエら、もういいだろ?もう祭りは堪能したろ?帰るぞ」
「テイトクさん、まだお金ある?」
「あるが?」
「じゃ、それ全部使ってから帰りましょ?ね?」ニコッ
な……なんて発想だ、常人には思いつかない悪魔的発想…っ!悪魔じみている…っ!搾り取る気だ…っ!何も残さない!全て奪い尽くす!狂気…っ!狂人の考え…っ!!
「ブチ●すぞアホンダラ、まぁいい、俺は帰るから後は二人で仲良く遊んで帰れよ、じゃあな」
「私も飽きたんで帰ります」
「ふ〜ん、じゃ、由良も帰ろうかな」
コイツら………まぁいい、飽きたなら飽きたでそれもよかろう、俺は手にしていた缶ビールの缶をゴミ箱に長いループを描くロングシュートして眼鏡をクイっと上げて歩き出した
「テイトクさんテイトクさん、帰りラーメン食べて帰らない?」
「ラーメンなぁ〜…ま、いいんじゃねぇの?サミーはどうよ?」
「いいんじゃないですか、ラーメン」
…そういや昔は三人でよくラーメン食いに行ったな、まだ基地がシャバかったその昔、俺の奢りでラーメン食いに行って作戦の方針だのル級のブチ殺し方だのよくエキサイティングに話し合ったもんだ…
「ま、ラーメンぐらい提督様が奢ってやるぞクズども」
「は?ナニ言ってるの?当たり前じゃない、ね?」
「そうですね、上司なんだからラーメン代くらい気持ち良く払って下さいよ」
………まったく変わらねぇなコイツら
この後、俺達はラーメン屋に寄ってラーメンを注文し、俺のチャーシューは由良さんに奪われ、由良さんのチャーシューは五月雨に奪われ、五月雨のチャーシューは俺が奪うと言う凄惨なループを繰り返してラーメンを食べた