不健全鎮守府   作:犬魚

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男は狼、狼は男、男は男であり狼は狼であり狼は男であり男は狼であり

【登場人物】

提督(バットエンドフィンガー)
真実の愛を求めさまよう狩人

五月雨(寒色系)
常な魂の一杯を求め淹れ続けるアツいコーヒー愛好家


提督と五月雨と好感度について考える話

「ほぉ…夏祭りですか」

 

「えぇ、花火とかやるアレですね」

 

このアツかりし酷暑の中、駆逐艦のバカガキどもがヒィヒィ言ってアヘ顔さらしながら走り込みをしている姿を冷房の効いた室内で眺めつつ、机の上に置いてあったチラシを手に取ってみる…

 

チラシの内容は地域の夏祭りの開催のお知らせであり、開催日や時間、協賛企業の名前が書かれている………ゴキゲンなチラシだ

 

「夏祭りか、まるでデートイベントでも起きそうな青春の甘酸っぱさとノスタルジックさを感じると思わないかね?サミダリューン卿」

 

「はぁ…?」

 

五月雨はナニ言ってんだコイツ?イカレているのか?みたいな顔をしているが、まったく、こやつには浪漫……いや、定番と言った方がいいか?まぁ、夏祭りと言うイベントが持つ無限の可能性と言うものがワカっていないらしい…

 

「夏祭りとは古来よりエロゲー的には中盤戦の天王山と言われる大事なイベントなのだよ」

 

「ナニが天王山なのだよですか」

 

「浴衣・祭り・青●、これら全ての要素を兼ね備える重要性の高さ、卿にも理解でき……いや、●姦ではなく、野外フ●ックの方が今風で伝わり易いかね?」

 

「ナニが今風ですか」

 

五月雨は冷蔵庫から最高にCoolな麦茶を取り出して2つのグラスに注ぎ、1つを俺の机に置いた…

 

「なんなら誰か夏祭りおデートにでも誘ってみたらどうですか?」

 

「いやだわこの子ったら、夏祭りファ●クしろなんてよく言えるのだよ」

 

「言ってませんよ」

 

五月雨は若干イラッとしたような顔をしたが、すぐにニュートラル状態に戻り、どうでも良さげにため息を吐いた

 

「しかしサミダリューンよ、卿が考えるほど夏祭りおデートとはそう簡単なモノではないぞ」

 

「はぁ?」

 

「夏祭りおデートを発生させる為には、この時期までに一定以上の好感度を上げておく必要があるのだよ」

 

夏休み前までに好感度をひたすら上げ、夏休み前、もしくは夏休み中にフラグを立てる事、日々の弛まぬ研鑽と努力、そして執念を以てしてようやく夏祭りおデートイベントを勝ち取る事ができる事は既に常識…

 

「仮に、まったく好感度を上げていない者を夏祭りに行きませんかと誘ったとしよう…」

 

「はぁ?」

 

『夏祭りに行きませんか?』

『は?ナニ言ってんだオマエ?イカレているのか?』

 

…この流れになる事は必然、好感度が達していない場合、無惨に断られ、一人悲しいサマーデイズを過ごす事になるだろう

 

「なのだよ」

 

「なのだよ、じゃないですよ、あと、五月雨です」

 

「つまりは、まず好感度の確認が重要となる………そこでサミダリューン、卿の忌憚のない意見を聞きたい」

 

「忌憚のない意見ですか……」

 

あと、五月雨ですといつもの訂正を入れ、五月雨は好感度もクソも特に関係ないのでは?と身もふたもないコトを言ってグラスに再び麦茶を注いだ

 

「バカ言うんじゃないよこの子は、アレだよ、アレ、オマエは俺のなんだ?」

 

「…部下?ですかね」

 

「そう、部下であり、俺の最も信頼厚き右腕でもある」

 

「はぁ?」

 

「その右腕であるオマエなら今現在の好感度上昇度を答える事ができる、違うかね?」

 

「………スイマセン、何を言ってるかまったくわかりません」

 

つまりアレだ、自慢のライトアームであり頼れる秘書艦であれば、今、あの子の好感度はこのぐらいですよとスラスラ答えられる、好感度低なら気になっている、好感度中なら好きみたい、好感度高なら愛してしまったようじゃ!ぐらいは答えられるだろう…

 

五月雨はナニ言ってんだコイツ?みたいな顔をしていたが、とりあえずすぐにいつものニュートラルに戻り、そうですねとか言いながらひとつ咳をついた

 

「では、浜風ちゃんから俺への好感度を聞こうか」

 

「ゼロです、興味ないでしょうね」

 

「辛辣ゥ!!」

 

辛辣だよゥゥゥ!!いやだわこの子ったら、恐ろしいくらいハッキリ一刀両断しやがったよッ!!

 

「は……ハッキリ言う、気に入らんな」

 

「これでもオブラートに包みましたよ」

 

オブラートに包んでなおこの破壊力かッ!!ま…まさか浜風ちゃんからの好感度がゼロとは予想外だ、予想外すぎる…っ!何故だ!?やはりあの日あの時あの場面での選択を間違えていたのか!?俺はまた間違ってしまったのか!

 

「つ…つまり、今、俺が浜風ちゃんにおデートしませんかと電話をすれば、確実に断られると…?」

 

「えぇ、ほぼ確実に」

 

「ジーザスッッッ!!」

 

俺は黒檀の執務机を両手でワイルドにダァン!し己の無力を呪った!

 

「まぁまぁ、そう気を落とさず、あ、由良さんとか誘ったらどうですか?どうせ暇でしょうし、焼きもろこしでも買ってやるとか言ったら来てくれますよ、暇でしょうし」

 

「誰が由良さんなんか誘うかよ、っーか由良さんだって暇じゃねーかもしれないぞ?」

 

「や、絶対暇ですよあの人、今頃部屋で扇風機にアーっとか言ってますよ」

 

コイツ由良さんに何か恨みでもあるのだろうか?まぁ、五月雨と由良さんも付き合いだけは長いし、付き合い長いだけの憎しみもあるのだろう、たぶん

 

「どうせなら陛下でも誘ってみたらどうですか?庶民の夏休みとかきっと興味津々丸でお喜びになると思いますよ?」

 

「なんてコト言うのかねこの子は」

 

陛下と庶民的夏祭りに行けとか世界大戦を開始せよと言ってるのと同じだぞ、っーか陛下と夏祭りなんぞ、胃に穴が開くどころか胃が捻じれすぎて消滅するわい

 

「カッカッカ!こやつめ、俺に死ねと言いおるか!カッカッカ!こやつめ!」

 

とりあえず、陛下を誘うなら絶対に貴様を同行させる、どんなに嫌がっても必ず連れて行く!オマエも俺と共に死ぬんだと言ってやると五月雨は、じゃ、ナシでとアッサリと意見を取り下げた…

 

「…ま、冷静に考えたら夏祭りとかどうでもいいか」

 

「そうですね、あ、コーヒー飲みますか?」

 

「貰おうか、冷蔵庫に入ってる缶コーヒーを」

 

「ご自分でどうぞ」





次回は誰かと夏祭り的な話、見切り発車です

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