そんな今回の二本は〜…
【提督と鈴谷アナザー・ワン】
【喫茶 五月雨軒】
三本目?気安いわね、次まで待てないの?ウフフフー
【提督と鈴谷アナザー・ワン】
かつて、戦争があった…
ただ1つのメインヒロイン・ザ・メインヒロインの座を賭け、メインヒロイン鈴谷の前に立ちはだかった運命の5メインヒロイン候補、鈴谷スーパーフェニックス、鈴谷ゼブラ、鈴谷マリポーサ、鈴谷ビッグボディ、鈴谷ソルジャー…数多の激戦の末、遂に鈴谷の
◆◆◆
…俺はどこでどう選択肢を間違えたのだろう?考えても、考えても、考えても、考えても、考えても、何が間違っていたのかわからない、どこから?いや、もしかしたら最初から全部間違えていたのか?何もかも!俺が今までしてきた努力は全部無駄だったんじゃないのか?
「だってさぁ!!」
「うるせーし!!ちょっと鈴谷今日チョーシ悪いんだから大声出さないでくれる?」
「ん?あぁ、スマン」
切り刻んだ野菜とバーモ●ト甘口を鍋に放り込み、グルグルと混ぜつつ俺は今までの人生について振り返っていた、思えばたぶんアレだろう、アレだ、酔った勢いだろうな、うん、っーかまさかイッパツでツモるとは思わなかったわ、うん、五月雨の野郎からは“提督は昼においても夜においても常勝の王者ですね”とディスられたし…
そして、なんやかんやで流れるように日々は過ぎ、今や俺は海軍中将となり、若くてエロい妻と、もうちょいで団体戦に出られるぐらいの数の子供も生まれ、日々の仕事と家庭を持っている…
「はいはい、アン●ンマンアン●ンマン、ね?おとーさん、アン●ンマンのDVDどこー?」
「あ?デッキに入ってるだろ?」
「入ってねーから聞いてるし、これト●ースじゃん」
ソファにダラダラ寝転がり、ガキどもの相手をしていた鈴谷はDVDの入ってるケースをテキトーに開き、アン●ンマンのDVDを探す、子供ってのは何故あれほどまでにアン●ンマンが好きなのだろうか…?長女も長男も最初に喋った言葉はアン●ンマン、どんだけアン●ンマンなんだよ
「ねぇし、って………オイィィィ!!」
「ん?って、アイッター!!テメぇコラ!DVD投げんな!」
「投げるわ!!なんでリビングのテレビのトコに、いか…いかがわしい!DVD置くの!?マジありえねーし!やめてって言ったじゃん!?」
「あ?あぁ、アレだよ、アレ、たまにはほら、デカい画面で見たい時とかあるんだよ」
「マジ最悪!マジでBADなんだけど!」
以前、若い時にノリと勢いでハメ撮りしたやつをDVDに焼き、アン●ンマンと書いてDVDケースに入れていたら間違って子供が見て、おとーさん、おかーさんをイジめないでと泣かれた事があり、さすがにその時ばかりは鈴谷もマジギレした、ってか俺もマジ謝りした、まぁ、アレは俺が悪い、ただ、その日の夜は、なんかちょっとムラムラして人妻物も悪くねぇなと思って新作ハメ撮りを敢行、そうしてデキたのが次女だ
「はいはい、悪かった悪かった、ん?どーした?」
鍋をグルグルまわす俺のズボンを引っ張り、三女がなにやらDVDのケースを差し出してきた
「…アン●ンマン」
「おう、なんだ、あるじゃねーかよ、どこにあった?」
「おかーさんが、こっちに、置いてた」
「そうかそうか、っーワケでオイ!アン●ンマンあるじゃねーか!ってか皿ぐらい用意しろダボが!」
俺は受け取ったDVDのケースをトドみてーに転がる鈴谷に投げつけ、鈴谷はアイッター!とか言いながらブツクサ文句を言って立ち上がった
「はいはい、やりゃいーんでしょ、やりゃ」
「はいはいじゃねーよ、ったく…」
「あ、そーそー、おとーさん、週末熊野が来るから、焼き肉とかしよーぜ?」
「熊野が…?」
「そ、なんかお高価い肉買って来なきゃウチの敷居跨がせねーぜって言っといたから」
熊野か……アイツもワリと暇人だな、まぁ、正直、アイツが来てくれるとガキどもの相手してくれるから楽なんだよな、たぶんアホすぎて子供心がよくわかってるんだろう
「ふ〜ん、まぁいいんじゃねぇの?お前とはマンネリ化してるし、たまには熊野に相手して貰うか」
「子供の前でそーゆーの言うなし、ってか、フツーに浮気すんな!」
「俺実は熊野が好きだったんだ、でも熊野は高嶺すぎて手が届かないから似たような遺伝子で妥協したんだ」
「妥協とかゆーな!!は?ナニ?え?鈴谷になんか不満あんの?あんだけヤっといてまだなんか不満?」
「ジョーダンだ、小粋なテイトクジョーク」
「小粋でもなんでもねーし、ったく………ジョーダンでも浮気とか言うなし」
………なんだろうな、俺はコイツのこーゆートコが意外と気に入ったのかもしれないな
「よし!今日はちょっと夜更かしすっか?なぁオイ?」
「え?あ、いや、今日はちょっと…」
「たまには仲良くマ●オカートすっか?マ●オカート」
「あ、そっち…?」
どこで間違ったのか、或いは最初から既に間違っていたのかは定かではないが、ある意味では、これはこれで良いのかもしれない……ただ、あの時の俺に戻れるとしたら、俺はまたきっと勇気を出して浜風ちゃんに一心不乱におっぱい揉ませてください!と頭を下げるだろう…
…で、ドン引きされる
あれ?もしかしてこれが分岐点だったくね?
おわり
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【喫茶 五月雨軒】
かつて、戦争があった…
長きに渡った人類と深海棲艦の泥沼の膠着状態は人類側の作り出した秘密兵器、オキシジェン深海デストロイヤーにより戦況は一変、深海棲艦達はこりゃマイッタ!と白旗を上げ、多数の同胞達と人類側の深海棲艦に理解ある一部の有識者達は新たなる新天地を求め、この星を去って行った
そして、敵性生物を失い、その役目を終えた世界各国の海軍は軍縮して行く事となった…
◆◆◆
キュウシュウのとある繁華街の街角に立地する雑居ビルの1Fにその店はある、かつてはメイドカフェだったらしいがそれも今は昔、テナント募集の張り紙が貼られて久しいその店を居抜きで借り、新たにオープンした喫茶店……本格珈琲専門店五月雨堂
軍を辞め、趣味が高じて退職金で喫茶店を始めた五月雨が始めたその店だが、まるで骨董屋みたいな名前だなと姉妹からディスられ、開店初日から殴り合いの大惨事を起こしたが、とりあえず無事営業は開始された…
しかし、趣味が高じて始めた程度………否、趣味と言うには些かユニークすぎたその味に、客が付く事などなかった
「いらっしゃいませー」
「チャーハン一丁、ご一緒にコーヒーもいかがですか?」
……調理場で中華鍋をブンブン振り、アツアツのチャーハンを皿に盛り付け、チャーハン一丁ーっ!と元気に声を張る俺と、そのチャーハンを客に出す五月雨…
何故本格珈琲専門店五月雨堂がこうなったのか、それには深いワケがある…
ーーー
「何故でしょうか…」
「何故もクソもねぇよ、なんで金出してヘドロ飲まにゃならんのだ」
五月雨と同じく軍を辞め、退職金を元手に何か商売でもするかと考えていた俺は、一応、それなりに付き合いのある五月雨の店で相変わらずクソマズいコーヒーを飲んでいた…
「提督は毎日来るじゃないですか」
「俺は優しいからな」
「正直イラっとしますが、ここ最近の売り上げが提督が毎日飲む380円しかないので我慢します」
コイツ、未だに自分のコーヒーが人類を破滅に追い込む殺人兵器だってのを認めないつもりか
「どうせならアレだ、村雨とか夕立とかねーちゃん達雇ったらどーだ?で、ちょっとパンチラさせりゃ客なんてホイホイつくぞ、10000円で1ポイントのポイントカード作ってさぁ」
「イヤですよそんな商売、私は純粋にコーヒーを楽しんで貰いたいんです」
「無理だな」
「イラっとします」
五月雨はコーヒーカップを丁寧に拭いて並べ、目に見えて大きく肩を落とした…
まぁ、アレだな、この店の問題はコーヒーの味だけで、全体的にシックな店の雰囲気も立地も悪くない、コーヒーの味がアレなだけだ
「どうせならアレだ、コーヒーだけじゃないで菓子とか出したらどうだ?菓子とか」
「お菓子ですか…」
女が大好きなふわふわスウィーツ的なモン出しとけばある程度はなんとかなるもんだろう
「パンケーキとかですかね?」
「パンケーキ………?取り消せよ、今の言葉」
「はぁ?」
「ホットケーキだッ!間違えるな!パンケーキなんてふわふわした名前は認めねぇ!」
「まぁ、私としてはどっちでもいいんですけど……ただ、私、コーヒーは得意ですけどパンケーキだかホットケーキだかは作った事ないんですけど」
「マジかよオマエ…」
女子力低いなコイツ、まぁ…よく考えたらコイツも含めてコイツの姉妹、全員女子力低いか……?いや、海風姉ちゃんならあるいは…
「ったく、仕方ねぇな…俺が見本作ってやるから覚えろ」
「え?提督、ホットケーキ作れるんですか?キモっ…」
「誰がキモいだ」
こうして、俺は喫茶五月雨堂で出すホットケーキを作り、その技を五月雨に伝授したら意外にもアッサリと覚え、五月雨堂の売り上げは1日380円から1日1万円台まで伸びた…
「意外と売れますね、コーヒーの売り上げは相変わらず380円ですけど」
「俺から容赦なく金とるのがスゲーよ、オマエ」
「売り上げは伸びましたけど、でも、コーヒーが売れなかったら本末転倒です」
コイツ、まだコーヒーに拘るのか………俺は1杯380円のクソマズコーヒーを飲みつつ、元部下の為に新たな案を考え…
「アレだよアレ、たぶんアレだ、まだオマエのコーヒーについてイケる客が来てねぇんだよ」
「はぁ?」
「だからそう…アレだ、オマエのコーヒーについて来れる客を探すべくアレだ、まずはコーヒーと並行して客を集めるメニューを作る、でだ、そしたらついでにコーヒーを飲んだ客の1000人に1人ぐらいは“んんっ!エクセレンツ!”とか言うかもしれねーぞ」
「なるほど、ただ、1000人に1人はちょっとイラっとします」
ーーー
「なんと10万円台です」
「フーッ〜………ま、今日は忙しかったしな」
本日の営業時間も終わり、売上集計をしていた五月雨は帳簿に今日の収支を書き込み、売上金を手提げ金庫に入れてダイヤルを回す
「儲かるのは良いコトだな、なぁオイ?」
「なぁオイ?じゃないですよ、最近ネットでウチの評判検索してみたら、ウチの紹介がラーメン屋になってるんですけど、キュウシュウの濃厚さとか細麺とか、あと、なんか知らないけどコーヒー勧めてくるクレイジーな若奥さんとか」
「クレイジーか!カッカッカ!クレイジーか!」
「笑い事じゃないですよ」
「ま、そのうち時代がオマエのコーヒーについていけるようになるだろ、世界が一巡ぐれーしたら」
「ステアウェイ・トゥ・ヘ●ンですか」
「メイド・イン・ヘ●ンな、っーかよく知ってるなオマエ」
「はぁ………もういいです、コーヒー淹れますけど、飲みますか?」
「貰おうか」
どうせ俺しか飲まないカワイソーなコーヒーだ、五月雨はコーヒーを淹れる準備をしつつ、俺に右手を差し出し…
「380円です」
…まぁ、コイツはこーゆーヤツだな
おわり
次回は③
【ナイスガッツ・ナイスラン!】
【MOW-THE LAST-】
ですって!たぶん!