不健全鎮守府   作:犬魚

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今回から二周年なトクベツ編、短編エンディング回
色々ご提案頂いた中から色々雑な感じで書いてます、雑に

とりあえず第一回は二本立て

【楽園】
【さる、高貴な女性と…】

の二本です、ウフフフー


提督とルート分岐のエンディング ①

【① 楽園】

 

かつて、戦争があった…海軍と深海棲艦の頂上戦争からもう何年経っただろうか、人類と深海棲艦の熾烈な戦いは終わり、軍縮の名の下に今まで強硬派が主だった海軍組織は解体され、新たな海軍、ネオ海軍が誕生

 

そして、今まで妖精の姿を見る事ができた海軍将校達の多くは、その、妖精を見る力を失った…

 

◆◆◆

 

「天海クン天海クン天海クンよォ〜?ちょっとコレ、荷物を持って行くだけのカンタンな仕事じゃなかったか?なんか依頼と内容が違い過ぎるんじゃねぇのか?」

 

「まぁ、この業界ではよくある話です、あ、ちゃんと前見て運転してください」

 

「言われなくても俺は安全運転にはうるさい男だよコノヤロー」

 

生まれ育ったニホンではないどこぞの島国、中古で購入したMINIのハンドルを握り、可能な限りの安全運転で道路を走る俺に対し、隣に座る相棒が鼻歌交じりに後ろから迫ってくる車輌に四角いナニかを放り投げると後方からゴキゲンな爆発音と衝撃が響く

 

「オイ、やりすぎんなよ」

 

「大丈夫ですよ、この業界、あの程度では死にません」

 

天海の野郎は涼しい顔で拳銃の残弾を確認しつつ、次の角を左でと冷静で的確なナビをし、俺はそれに従い冷静で的確なドライビングで左折を…

 

「オイ、こっから先は通行止めだってよ」

 

「一方通行の間違いでしょう?頼みますよ、中佐」

 

「中佐じゃない、元・大佐だ!」

 

まったく天海の野郎……俺をなんだと思ってやがる、まぁいい、とりあえず今は目の前を突っ切る事が何より最優先だ、ハンドルを握り、シフトレバーを操作しつつアクセルを踏み込む………MK VII!今!お前に生命を吹き込んでやる!!

 

ーーー

 

「あ、おかえりなさーい、ドーベルさん、ワンワンさん」

 

「ただいま」

 

「誰がワンワンだ」

 

宅配便の仕事を終えて帰って来た俺達を、いつものようにユウ……天海の妹が俺たちを出迎え、ユウは最近ベンキョーしただの言うピザ的なナニかを作ってますからちょっと待ってくださいねーとか言ってキッチンに引っ込んだ

 

「ったく…なんでオマエがドーベルマンで俺がワンワンとかカッコ悪い名前で呼ばれにゃならんのだ」

 

「さぁ?まぁ…ユウの感性は独特ですからね」

 

「独特すぎるわ、なんだ?アレか?マ●オか?マ●オでもやってたのか?」

 

「そう言えば……あぁ、ハワイに居た頃にやってましたね、変態ドクターと」

 

「ふ〜ん」

 

天海の野郎もあれから色々あったらしいが、その、色々あった結果、自分がユウの兄だと名乗る事はしない事にしたらしく、現在はドーベルマンと名乗っており、同じく色々あって死んだ事になった俺はコイツとコイツの妹、ユウと真っ当とは言い難いが、まぁ、それなりに悪いばかりではない仕事をしている…

 

「ふ〜ん♩ふんふ〜ん♩」

 

キッチンから聞こえてくる微妙に音程がハズれた鼻歌と、誰かと会話する楽しげな声……

 

ユウには妖精さんってのが未だに見えるらしく、しかもおしゃべりまで出来るってんだから、提督適性はズバ抜けて高いんだろう………ま、今更カンケーないが

 

「そう言えばその変態ドクター、またなんかやらかしたらしく、ちょっと困ってるんですけどねぇ〜とか連絡がありましたが…」

 

「フーッ〜……無視無視、あんなのと関わるとろくなことねぇぞ」

 

「ですね、ま、勝手になんとかするでしょうし」

 

俺でもテロ屋にちょっと恨み買ってる程度なのに、あの変態はテロ屋どころか至るトコの国レベルで恨み買ってるからな、まぁ………どうせまたなんかの仕事でカチ合うだろと考えてると、ピザ的なナニかを手にしたユウが戻ってきた

 

「あー!!また家の中でタバコ吸ってる!家の中は禁煙ですよ!禁煙!」

 

「うるせぇな、ちょっとぐらいいいだろーが」

 

「ダメです!ケムリは身体に良くないってお医者さんが言ってました!たぶん!」

 

「そいつはヤブだな」

 

「え…?ヤブなんですか……?え?ドーベルさん?」

 

ユウはマジかよと言った顔でドーベルマンさんに顔を向け…

 

「……まぁ、ヤブかヤブでないかはアレですが、腕だけは確かです、変態ですが」

 

「ほらぁ!ドーベルさんだってヤブじゃないって!」

 

「へいへい、ったくガキのくせにうるせーな」

 

「ガキじゃありません!ちょ〜っと、寝てる期間は長かったけど、これでもオトナの女ですよ!オンナ!」

 

「はいはいオトナオトナ、無い胸張ってよくゆーわ」

 

「カッチーン!です!ワンワンさんは口も悪いし目ツキも悪いし性格も…まぁ、たまに優しいけどだいたい悪いし、そーゆーのはモテませんよ!たぶん!」

 

「やかましい、ドーベル犬、オマエもなんか言ってやれ」

 

「今のは中佐が悪いですね」

 

このシスコン野郎が……

 

「そんなワンワンさんにはピザ的なモノはあげません!飢えて苦しめばいいんです!」

 

「はいはい、そうですか………あ、ユウ、冷蔵庫にビール入ってるから出してくれ」

 

「ビールですね!はい、ドーベルさんも!」

 

「ありがとう」

 

………まぁ、色々となんやかんやあったが、今は軍も国も関係なく、余計なものは何もなくなったが、これはこれで悪くないか…

 

 

おわり

 

■□■□■□■□■□

 

【② さる高貴な女性に…】

 

かつて、戦争があった…

 

深海棲艦との戦いは終わり、なんやかんやあってニホンに居られなくなった俺に、自らの国へと戻る女王陛下は私と共に来なさいと手を差し伸べてくれた……

 

その時、俺は膝を折り誓った……この御方の為に生きよう、この御方こそ全宇宙の覇者となるべき御方だと…

 

◆◆◆

 

「Arkはどうですか?」

 

「…アークロイヤルですか、まぁ、些かヤンチャなところはありますが、将として決して劣ることはないかと…」

 

英国海軍の客員提督(ゲスト・アドミラル)となった俺は今日、麗しき我が女王陛下からの少々相談事があると呼び出しを受け、その御前へと来ていた…

 

「あぁ、いえ…そう言う話ではなく、Admiralもそろそろ身を固めてはどうかと…」

 

「………はぁ?」

 

「それで、その、出来ればArkを引き取っ……いえ、ArkならAdmiralの伴侶として相応しいのではないかと……その、ほら、Arkもアナタの事を悪い感情を持っていないようですし、よく2人で食事もするのでしょう?」

 

「え、えぇ…まぁ」

 

我が女王陛下はちょっと困った顔と言うか、ヤベ!ちょっと失敗した的な顔をしているが……まったく、そんな憂な御顔も御美しい……ってかオイィィィィィ!!勧めてるよォ!陛下自らアークのヤロウを引き取れって勧めてきてるよ!?どうすんだコレ!?断っていいのか!?

 

「Arkはああ見えてなかなか器量もあるし、容姿も美しいと思うし…」

 

「は、はぁ…」

 

ただし、色々と残念な娘である………陛下としてはそう付け加えたいのだろうが、それはやはり付け加えないところに陛下の御心の深さを感じられる

 

「そ、そうです、AdmiralとArkの2人……えぇ、それなら私も、いえ、国を挙げてのroyal weddingで祝福しましょう!royalだけに!」

 

「アークロイヤルだけに、ですな!」

 

ハッハッハ、さすがは女王陛下、ロイヤルジョークも一流でいらっしゃる…

ってかマズいぞ、陛下はマジで俺にアークのヤロウを押しつける気だ、国を挙げてのロイヤルウェディングと言う名の逃走防止策までお考えになるとは……まぁ、たしかにアークとはなんやかんやで仲は悪くない、頭はアレだが見た目は悪くないし、っーか美女だ

 

「どうですか?Admiral、そして出来ればArkと2人、これからも我が国を支えて頂けると…」

 

「そ…そうっすね、ちょ、ちょっと考えさせて頂けると嬉しいなと…」

 

「Admiral!」

 

ダァン!!(テーブルドン!)

 

女王陛下は珍しく大きな声をあげ、その高貴な御手でテーブルをダァンした

 

「紳士たるもの度胸……えぇ、度胸です!出来ればこの場にてAdmiralの真摯なお気持ちをお聞かせ願えませんか?」

 

さすがは女王陛下…っ!今、この場の攻勢にて畳み掛けるおつもりか!なんという…なんという王ラ!まさしく王たる者に相応しい覇気っ!

 

「どうなのですか?」

 

「そ……そうですね、ま、まぁ…アーク、うん、アークなら、うん……えっと、数いる候補の中の上の方に加えておこうかな………っと」

 

「そ、そうですか!」

 

陛下はとても嬉しそうな御顔で微笑み、しれっとその右手をグッと握り締めちょっとだけ肘を後ろに引いたのは俺じゃなきゃ見逃していただろう…

 

「うんうん、ですね!やはりAdmiralは私が見込んだ真の紳士……えぇ」

 

「あ、アハ…アハハハ……」

 

ダメだ、逃げきれるヴィジョンがまったく思い浮かばねぇ…

 

そんな半ば諦めかけた中、ティーラウンジの扉を大きく開き、陛下と同じくサラサラストレートのキンパツ美少女がファーックスとか言いながら転がりこんできた!

 

「Lady!今のはどーゆーツモ・リー!?あ、Arkと!Darlingが!ケ、ケケケ!ケッ・コーンなんてこのJervisはゼッタイに認めないワ!そうゼッタイ!」

 

「あらJervis、丁度良かった、アナタとKellyにはArkのVeil Girlをお願いしようかしら?」ニコニコ

 

「ハァァァァ!?ヘイヘイヘーイ!Lady!ナニそのroyal joke!ゼンッゼン!おもしろくないワ!」

 

「………ふぅ、Jervis、アナタ、少し口の利き方に勉強が足りないみたいね」ギンッ!

 

「ひぎぃ!!」

 

今のは……覇王色ッ!陛下の放った覇王色を受け、ジャーヴィスはブクブクと泡を吹きながらブッ倒れた…

すげぇ、なんて覇気だ………これが王の力!

 

「失礼しましたAdmiral、では、この話は前向きに考えると言うコトで…」ニコッ

 

「は…はぁ、前向きに…」

 

 

…後世の歴史家達はニホンから来た客員提督と英国空母のロイヤルウェディングが今世まで続く大英国の快進と躍進の契機となったと分析をしており、半ば定説となっているが、歴史の真実はその時を生きた者達にしかわからない、歴史家達はただ、ありもしない物語を夢想する語り部なのかもしれない…

 

英国の歴史に、また1ページ

 

 

おわり




次回は②

【提督と鈴谷のアナザー・ワン】
【喫茶五月雨軒】
【ナイスガッツ・ナイスラン】

の三本の予定です、ウフフフー

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