【登場人物】
香取先生(熱血指導)
提督への好感度がマズい方向に振り切れている艦の1.2を争う大変にエレガントな先生、上司の深いお考えを皆にわかりやすく説明してくれる悪魔みたいな人
鹿島先生(転属は諦めた)
香取先生の妹、比較的まともで常識人だが趣味は腐ってる
あと、リューホーとは非常に仲が悪い
提督がお供の者を連れて基地を出立した翌日…
執務棟内、小会議室には提督不在時の基地運営を任されている香取と妹の鹿島、そして数名の艦娘達が集まっていた…
「皆さん、お集まり頂きありがとうございます、早速ですが………佐世保殲滅作戦についての概要をお話しさせて頂きます」
「ハアァ!?ちょ…香取姉ェ!?ナニ言ってんの!?」
ホワイトボードの前に立ち、教鞭を手にベシベシと叩く姉の口から出たとんでもない発言に、鹿島はナニ言ってんのこの姉はと驚愕し、思わず姉の両肩に手をかけてしまった
「…ナニって?鹿島、アナタ、提督の話を聞いていなかったの?」
「提督の話って……?アレでしょ?ちょっと出かけるからその間はお任せしますって…?」
「………はぁ」
香取は本当に残念なものを見るような目で妹を見て、アナタには本当に失望したわと言いたげに首を振り、教鞭をベシベシと手に打ちつけてため息をついた…
「まったく……鹿島、提督は不在を任せるの他に重要なことを仰っておられたでしょう?」
「重要なこと…?」
はて?そんな重要なことを言っていただろうか…?鹿島は先日のやり取りを思い出して頭をひねってみた…
たしか提督が教務室に来て、どっかに出かけるので数日の間基地と艦隊の運営をお任せしますとかなんとか言って、姉から貰った九十九島せんぺいを食べながらハッハッハだのホッホッホだのトレンディ小芝居をしていたぐらいしか覚えがないが…
「………はぁ、鹿島」
「な、なに…?香取姉ェ、その残念な妹を見る目は?」
「提督は仰っておられたでしょう?“九十九島ですか、皆でピクニックにでも行きたいものですなぁ”と…」
「あ〜…」
たしかそんなコトを言っていた気がするが…それと佐世保殲滅に何の関係があるのだろうか…?
「…まぁ、たしかそんなコト言ってた気がするけど」
「…鹿島、提督の言葉の意味をよく考えなさい」
「いや、言葉の意味も何もピクニックに行きたいですなぁって意味以外に何の意味が…?」
香取は本当に可哀想なものを見る目で妹を見てため息をつき、首を振って今度はホワイトボードをベシベシと教鞭と叩き、ペンを手に取った
「…九十九島にピクニックにでも行きたい、これはつまり長崎に存在する四大鎮守府の一つ、佐世保を攻略せよと仰られているのです」
「なんでッ!!?」
「九十九島に行く際、最も邪魔になる拠点は佐世保でしょう?提督はおそらく、私達の想像を遥かに超えたお考えをお持ちになって今も自ら動いておられます、そして、この程度の事は我々だけで十分と厚い信を置き、私達はその信に応えねばなりません」
「いやいやいや、香取姉ェ…いやいやいや!考え…ッ!考え過ぎなんじゃ…」
ナニ言ってんだこの姉、イカれ……いや、もうイカれてるそんな段階じゃない、この姉は完全にヤバイ方向にしかイッてないと戦慄する鹿島は、誰かこの姉を止めてくれると小会議室に集まった面々に視線をやるが…
「なるほど……さすがは同志提督、まずはキュウシュウ征伐か」
「えぇ、Mon amiral…私達の考え付かない深い鬼謀の持ち主…」
「大したヤツだ…」
小会議室に集まった面々の大半は基本的には深く物事を考えない偏差値低めの不良偏差値高め、毎日がワルのオリンピック常態であるこの基地では当たり前の事…そんなワルのオリンピアン達はどいつもこいつもフッ…だの笑いつつこれから始まるIKUSAに胸をワクワクさせていた
「いやいやいや!皆さん!え…?皆さん!?」
「つきましては皆さんにはそれぞれ駆逐艦及び海防艦を率いてそれぞれの方面への任務を遂行して頂きます、宜しいですね?」
「ヘイ、教師カトーリ」
「なんでしょう?金剛さん」
不良偏差値0120、暴力の化身こと戦艦金剛が静かに挙手した
「目に付いたヤツをDIEするのではナニかイケナイのデスカー?」
「はい、目に付いたヤツを片っ端からDIEするのは提督の望むところではありません、提督は慈悲深き方……軽くDIEする程度で良いかと…」
「フ〜ム………ま、オーケーね、OKOK、軽くネ」
軽くでもDIEはするんだ………鹿島は心の中でそう呟き、おそらくはもうこの姉も、この不良偏差値高めの軍団も止めらない、止める事はできない、諦めるしかない………それでも!
「………あの、香取姉ェ」
「なに?鹿島」
「一度、そう…一度!提督にちゃんと確認したらどうかな!?そうだよ!確認…っ!うん、確認は大事!」
鹿島は姉の両肩に手かけてアツくその身体を揺らす、そう!キチンと確認すればトンデモ拡大解釈だったと思い直し、佐世保殲滅など物騒な考えは改めてくれるハズ……
鹿島のただならぬ熱意溢れる進言を受け、香取は妹もなかなか考えるようになったのねと感動し、ポケットから取り出した携帯電話のプッシュボタンを押して耳に当てた…
「…もしもし?提督、今お時間宜しいですか?」
『これは香取先生…何かありましたかな?』
「えぇ、少しご相談したい件がありまして…はい、えぇ…先日仰られていた件なのですが……駆逐艦と海防艦を中心の編成にしようと考えているのですが…」
『………先日?あぁ、先日の!あぁ先日のね!えぇ!例の件!例の件ですね?えぇ!………いいですとも!』
「なるほどなるほど…では万事滞りなく」
『えぇ、全てお任せ致します、なんなら大和でも武蔵でも空母機動艦隊でも登用して頂いて構いません(演習に)』
「まぁ……ありがとうございます、必ずや提督に御満足頂けるよう、基地所属艦一同、より一層の働きをしてみせます(殲滅を)」
ブチッ!!ツー…ツー…
「………こほんっ、では皆さん、作戦の概要ですが」
「なんで!?香取姉ェ!提督やれって言ったの!?マジで言ったの!?」
「…鹿島、アナタはもっと考える事を覚えなさい、そして提督の仰られる言葉の意味を、その御心を察する……それが出来ればアナタも一人前ですよ」
香取は優しく妹の肩を叩き、これからも基地の、そして我々の提督の為に励みなさいと微笑み、鹿島は全てを諦めた…
次回から前後編ティーパーティー、まだ人選を考え中のだらしない提督ですまない…