不健全鎮守府   作:犬魚

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前後編の導入編ですって!

【登場人物】

提督(大人の男)
過ちを認め、次の糧にできる大人を目指す大人

五月雨(秘書の人)
めんどうくさがり屋さん


提督と茶会への誘い

「ンマー、お茶会ですって」

 

「何がンマーですか」

 

特にやる事もない午後の執務室、本日届いた郵便物に目を通していると、なにやら他の郵便物とは違う一際輝く封書を発見、とりあえず何事かと思って目を通してみると、以前、大人の事情で見合いをしたJSのお嬢様からのお便りだったワケだが…

 

「………マジめんどくせぇな、サミー、オマエ行って来いよ」

 

「イヤですよ、そもそもその招待状、提督宛じゃないですか、私が行ってどうするんですか…」

 

「バカ、オマエ、アレだよアレ、アレだ、俺は忙しいので主君の名代として参りました次第ですとかなんとかあるだろ?察しろよ」

 

「ナニが主君の名代ですか、戦国武将か」

 

こやつめ、戦国武将とは……実に冷静で的確な意見だ、さすがは我が軍になくてはならぬ戦士の中の戦士(マルダーンフ・マルダーン)よ、俺はそんな頼れる秘書艦である五月雨の意見を是とし、机の上に置いていたチ●コパイを褒美として投げつけた

 

「痛っ…」

 

「カッカッカ、遠慮はいらぬ」

 

「…まぁ、貰いますけど、で?どうするんですか?行かないなら行かないでカドが立つ系なんじゃないですか?それ」

 

「立つワケねーだろ、アレだよアレ、お嬢様もアレだ、気ぃ遣ってくれてんだよ、ほら?アレな、一応招待状だけ出しとくってアレだよ」

 

「そうでしょうか…」

 

まったく、若い内から汚い大人の事情に振り回されるお嬢様も大変だなぁ、ほら?見てくださいよこの手紙なんて、普通に印刷の書面でもいいのに、なんと直筆ですよ!直筆!綺麗な字だなぁ〜と感心しつつもJSらしさも感じられる少しあどけない感じなんてなかなか出来るコトじゃないですよ

 

「いや、それ普通にガチですよ、ガチ招待」

 

「カッカッカ!こやつめ、言いおるわい!」

 

そんな戦国的遣り取りをしていると、なにやら執務室の電話が鳴り、五月雨がはいはい提督ですか?えぇ居ますよとか言って俺に受話器を差し出してきた

 

「誰だ?」

 

「美音少佐です」

 

「…誰?」

 

「アレですよ、天海中佐のトコの……今は大将付きの秘書課ですけど」

 

「あぁ、あのボーイッシュガールか…」

 

あの口悪い女な、そういや第五特務が解体されて大将殿の下に付けられたらしいんだっけか、俺は受話器を受け取りお電話代わりましたハンサムな提督ですと小粋なテイトクジョークからスタートした…

 

『誰がハンサムだクソが、ハンサムってのは中佐みたいな人のコトを言うんだ』

 

「中佐ァ…?あぁ、俺のコトか、カッカッカ、よせよ、照れるじゃないか」

 

『オマエじゃない、天海中佐だ!バカッ!』

 

バ…バカだと?こやつめ、言いおるわい……っーか天海の奴はもう軍には居ないし、中佐どころか公的には死亡扱いにされているのだが…

 

『まったく………何故中佐はオマエなどに目をかけていたのか』

 

「やかましい、っーかなんだテメーは?ケンカ売ってのか?用件はケンカの販売しておりますが是非ご検討頂けませんか?ですかー?」

 

『チッ………用件だが、先日、有馬のお嬢様からオマエ宛てに郵便が届いているだろう?』

 

「届いてるぞ、さっき読まずに食べたが」

 

『山羊かッ!!』

 

「山羊じゃない、提督だ」

 

俺の返答に何がジョークだブッ●すぞクソが!とキィーキィーうるさい声が聞こえてきた、まったく、小粋なテイトクジョークを理解できぬとはなんとも心の狭いヤツだ、天海のヤツ、ちゃんと後輩の教育しとけよなー…

 

「で?お嬢様の招待状がどうしたって?行かねーけど」

 

『行かねーけど、じゃない、行け』

 

「ハァ…?誰に命令してんだテメー、行ってくださいお願いしますだろーが」

 

コノヤロー、元特務だからってチョーシに乗りやがって…たかが少佐風情が中佐であるこの俺に命令しようなんざ10年早ぇーんだよ

 

『………言っておくが、これは梶輪大将からの命令だ“関係ない、行け”とな』

 

「…ハァ?」

 

『あと、ガタガタ言ってると三等兵まで叩き落とす、との伝言だ』

 

「オイちょっと待てコラ、ちょっとクソオヤジに代われ!」

 

『大将殿は先日から休暇を取ってゴルフ三昧満喫ツアーに行かれている』

 

「ハァ!?なんだとコラ!?」

 

『大将殿の命令はたしかに伝えたからな、いいな?必ず行けよ、あと、これは私の個人的な話だがもし中佐への連絡先を知っているなら教え……』

 

ブチッ!!!ツー…ツー…

 

…アホかコイツ、公的に死んだやつの連絡先なんか軍の回線使って話せるかっーの、ってか、俺もあいつが今、どこでなにしてるのかすら知らねーってのな

 

「………はぁ」

 

「行くんですか?お茶会」

 

「行かざるをえないらしいな、ティーパーティー」

 

正直、1mm足りとも行きたくないのだが……いや、本当に

 

ーーー

 

「…さて、ではティーパーティーに赴くにあたり、供の者を連れて行くのだが、サミダリューン、卿の意見を聞こう」

 

「お茶会くらい1人で行ってくださいよ、そもそも招待されてるの提督だけじゃないですか、あと、五月雨です」

 

「こやつめ、言いおるわい」

 

さすがはこの俺が厚き信をおくMein Freund(我が友)だ、実に冷静で的確な意見を言いおるわい……しかし惜しいかな、卿の意見では些かこの俺の描く高次元的発想に一つ及んではいない

 

「だって1人でお茶会に行くなんて恥ずかしいじゃない」

 

「ナニが恥ずかしいじゃないですか」

 

「カッカッカ!こやつめ!カッカッカ!」

 

小粋なテイトクジョークはさておき、大なり小なり軍とつるんでるような裏表のある清濁併せ呑む企業、その創業者一族のティーパーティーだ、こちらとしてもハイそーですって!と行くワケにはいかない、警戒する必要がある

 

「いざとなれば俺の盾となる護え……ではない、せっかくのセレブなティーパーティーだ、後学の為の社会見学を兼ねて2人ほど連れて行こうと思うのだが……卿の考えを聞こう」

 

「………はぁ?いいんじゃないですか」

 

「ふむ、では俺と五月雨とあと1人を誰にするか…」

 

「え?私は必須なんですか?」

 

「いや、別に必須ではないが………何か断る理由でもあるのか?」

 

「そうですね………正直、めんどくさいかなと…」

 

こやつめ、なかなか小粋なサミダレジョークを吐きよるわい、だがそれでいい、ハッキリと自分の意見を言える環境こそ、この俺が目指す基地運営のホワイトぶりと言うものが伺える

 

「まぁ、どうしてもと言うなら行きます、あと、提督の人望がなさすぎて誰も一緒に行きたくないって時に」

 

「カッカッカ!こやつめ!」

 

さて…では誰か暇そうなヤツに声をかけるとして、とりあえずまた基地を数日空ける事になるので後の事を香取先生にでもお願いしてくるか…

 

ーーー

 

執務棟の一階にある教務室…

俺は数日の間不在になるのでその間、風紀と規律溢れた健全な基地運営をお願いするべく教務室へ行くと、丁度、バカどもへの今日の授業を終えた香取先生と鹿島先生が仲良くティーを飲んでいた…

 

「なるほど………数日の間ですね、わかりました、この香取にお任せください」

 

「いやぁ、いつもいつも申し訳ない、しかしこういった事に関しては香取先生になら安心して任せられる」

 

「まぁ、提督ったら…褒めても何もでませんよ」

 

香取先生は右手を口許に遣りエレガントに笑い、貰いものですがどうぞと九十九島せんぺいを取り出して手渡してくれた

 

「ほぉ…九十九島せんぺいですか」

 

「えぇ、友人からのお土産で…」

 

「九十九島、一度行った事がありますがなかなか良いところです、一度、皆でピクニックにでも行きたいものですなぁ」

 

「ピクニックですか、なるほどなるほど………素晴らしいお考えです、提督」

 

香取先生は俺の意見にいたく感動して頂いたらしく、実に素晴らしいと賛同してくれた、まったく…香取先生はいつだってエレガントでいらっしゃる、ウチのクズどもにも香取先生のエレガントオブエレガントを見習って欲しいものだよ…

 

「ハッハッハ!」

 

「提督ったら、フフフ…」

 

そんな俺たちを見ながら、鹿島先生はトレンディ小芝居がどうのこうの言っていた気がするが………まぁ、そんな些細な事は気にする事はない

 

 

 

…後日、この、俺と香取先生の何気ない会話がとんでもない事態を招く事を、この時俺は予想だにしなかった




※お知らせ
活動報告のところで事前に書いてますが、このイベントに同行するゴキゲンな人材案を広〜く募集中、ですって!

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