【登場人物】
提督
ロリコンじゃない、提督だ
Jervis
英国から来た新たなる刺客、とにかくグイグイくる脅威のスピードアタッカー
山風
改白露型の守護らねばならない欲を駆り立てる緑の子
一目見たときから尋常ではない天敵と気付いた
アークロイヤル
英国から来た誇り高き騎士サマ、敵に囚われたら迷わず死を選ぶ
穏やかな晴天が続く春の日、俺は明石の店で缶コーヒーとサンドイッチを購入し、執務棟の外にあるベンチでダラリン時間を過ごしていた……こう、アレだな、この青い空を見ていると人類を狙う謎の存在と戦争しているのがバカバカしくなってくる
「あ、Darlingだ!オーイ!オーイ!ダー……」
「あ?」
「リン…ッッッ!!」
ドゴンッ!!(ロイヤルタックル)
「おごぉ!!」
ベンチに座る俺めがけ、力の限り英国式タックルを敢行してきたサラサラキンパツのチビはヘラヘラと笑いながらダリーン?ダリーン?大丈夫?とかワケのわからんコトを言いつつ俺の隣に座った
「…痛いじゃないか」
「Darlingナニやってたの?もしかしてヒマなの?あ、じゃあ、あたしとお喋りしまショー!」
「いや、提督はヒマではないのだが…」
「あ、sandwichだ!あたしも食べていい?ねぇ?ねぇ?ねぇ?」
「あ?あぁ…好きにしたまえ」
「やったぁー!!じゃ、一緒に食べましょ?あたしがDarlingに食べさせてあげル!ハイ!口開けて!口!ハイ、アーン」
「いや、いいから…提督はそーゆーのマジ無理な硬派な男だから、ホントいいから!」
英国から来たサラサラキンパツの刺客、ラッキー・ジャーヴィス……アホな駆逐艦特有の大変元気な子で、なんとか言うか……グイグイくる、すげーグイグイくる、提督こーゆーグイグイくるのは苦手なんだよな、マジで
本来、提督様にタックルを敢行してくるような頭の悪いクソガキには提督自ら火竜の鉄拳が火を噴くのだが、このジャーヴィスというガキは少し扱いに困っている…
英国出身と言うワケで、クッ殺パラディンのアークロイヤルとは仲が良いらしく、アークと呼んで懐いているようだが、問題はそこではない………このガキは、高貴な御方である陛下を“lady”と呼んでおり、陛下も特にそれを咎めるわけでもなく、むしろ陛下はこのジャーヴィスというガキを大変可愛いがっているのだ…
俺個人としては今すぐこのガキの両肩を掴んでダブルニークラッシュで九所にダメージを与えて馴れ馴れしいんだよ!このクソ野郎が!と言いたいのだが、もし仮に、このガキが陛下に並ぶ高貴な身分であった場合、俺は間違いなく処刑台を昇ることになるだろう、そして、仮に高貴な身分でないにしても陛下が目をかけて可愛いがっているお子だ、それを傷つけたとなれば間違いなく陛下の逆鱗に触れ、俺は断頭台にて地獄へ一直線、そして日英開戦!第三次世界大戦の幕開けとなるだろう…
「コーハ?コーハってナニ?」
「メチャシブいコトだ」
「メチャシブ…?なんかよくわからないけど、わかっター!あははは!」
…つまり、とても扱いに困るのだ、この危険物に周りにウロチョロされるだけで、いつ第三次世界大戦の引鉄を引くコトになるのかわかったものじゃない…
「…あ、テイトクだ」
「む…?」
そんなカラミティトリガーに絶讃指かけ中の俺のいるベンチに、相変わらず毛のないキモい猫を抱えた改白露型の緑のトゲトゲチビこと山風がやって来た
「…ナニしてんの?あと……………そいつ、誰?」
山風はいつもよりトゲトゲしい目ツキで俺の横に座っているサラサラキンパツのチビに視線を向けている…
「Lucky Jervisよ!アナタこそ誰?」
「…山風」
「フーン…ヘェー…ヤマカゼね、OKわかったワ、今、JervisはDarlingと楽しクお喋りしてたノー」
「…ふ〜ん」
なんだろうな、心なしか、もともといつも機嫌悪そうな山風ガールの機嫌がさらに悪化したような気がするのだよ、なんと言うか……そう、アレだ、アレ、大いなる闇の力を感じたと言うか…
「…で?テイトクは今から私と猫の餌買いに行くから」
え?提督そんな約束したっけ?はて……今日は終日ダラリンモードで夜は香取先生と食事しながらこれからのアツい教育の方針について話し合う予定なんだが…
「行くから!」
山風は俺の腕をあり得ないほど強力な力で掴み、グイグイと引っ張った
「ちょ!痛い!イタタタ!痛いってばよ!山風クン?ちょ!山風クン!?」
「ちょっと!!このトゲトゲチビ!Darlingが痛がってるじゃナイ!離しなサイ!」
「…トゲトゲチビじゃない、山風!私にメーレーすんな!パッキンチビ!」
「Really!?なんですっテー!!このトゲトゲチビ!誰がチビよ!」
ジャーヴィスと山風はお互いにクソチビだのゲロブスだのキィーキィー言い合いって取っ組み合いを始め、ゴロゴロと転がりながらマウントを争っていた
「やめんか見苦しい、ケンカするんじゃないよ、ケンカを」
「…でも!テイトク…っ!」
「だって!Darling!」
本来ならば“女の子同士だ、ケンカの一つぐらいするだろう!しかし今のは紳士的な行為ではないぞ!罰だ!二人とも罰を与える”と紳士的な対応をするところだが、今回に限ってはなんともし難い、特に、あのキンパツチビが怪我でもしようものなら第三次世界大戦開戦になるかもしれん
「でももだってもないのだよ、いいかオマエら?オマエら同じこの基地のファミリーだ、ファミリーがケンカするモンじゃねぇよ」
「…わかった」
「わかっター」
トゲトゲとサラサラのチビはとりあえず納得してくれたらしい、可愛い顔して舌打ちしていたが…
「わかってくれて嬉しいよ」
とりあえず世界大戦の危機を回避した俺はベンチに座り直すと、執務棟の裏側から赤い髪の女騎士みてーなヤツがザルに山盛りの人参を持って歩いて来た
「む?そこに居るのはAdmiralではないか?フッ、奇遇だな」
「よぉ、騎士サマ、ナニやってんだ?」
「フッ、ご覧の通り、馬の餌と手入れをな……そうだ!Admiral、私の馬を見に行かないか?」
ナニがフッだ、アホかコイツは……いや、まぁ、アホなんだよな、見た目は美人だが…
「あ、Arkだ」
「ん?おぉ、ジャーヴィスじゃないか……フッ、オマエも見に行くか?私の馬を」
「キョーミないからヤダ」
「そうか、あぁ…そうそう、ジャーヴィス、先程、我が女王陛下が捜しておられたぞ」
「Ladyが?ウーン……わかっター」
残念女騎士アークロイヤルから陛下が探していると聞いたジャーヴィスはどこか不満気にわかっターと頷いてベンチから立ち上がった
「あ、そーそーDarling」
「なにかね?」
「ホッペタ、パンクズついてルー」
「む、そうか…」
さっき食べたサンドイッチか、俺はジャーヴィスくんの指さした頰に手をやろうとすると、ジャーヴィスくんがズイっと顔を近づけて俺の頰に付いていたらしいパンクズをズギュウウウン!!と唇で吸い取った
「えへへへ〜…♪」
こ……これが英国式ロイヤルオベントーツイテマスヨーか…ッ!?ジャーヴィスくんは上機嫌に笑い、俺と同じく何事が起こったのかよくわかっていない山風の方を見てニヤリと笑い…
「DarlingともうKissはしたカシラー?まだだよネー…?初めての相手はトゲトゲチビじゃあない!このJervisネー!!」
いや、ジャーヴィスくん、提督はこう見えても大人なのでホッペチューとかよりもっとアレなコトをとっくにヤってるんだが……と考えていると、隣に居た山風が今まで見たコトもないキレっぷりで吼えた!?
「ジャアァァァァヴィィィィィー!!!」
「ホォ……あたしの名前を気安く呼んでくれルじゃないノー?」
山風とジャーヴィスはそのまま取っ組み合いをスタートし、飛びかかった山風を肘のカウンターで迎撃したジャーヴィス優位かと思いきや、よくわからない土壇場の爆発力を見せた山風の海風ねーちゃん直伝ビンタでジャーヴィスを滅多打ちにする大惨事となった…
ーーー
「…まぁ、女子たるものケンカの一つもするでしょう」
しかし紳士的な行為ではありません、罰として今日の夕食は抜きです………さる高貴な御方である陛下の前で正座させられたジャーヴィスくん泣きながらゴメンナサーイと謝っていた…
山風とジャーヴィスの苛烈!残忍!残酷!な戦いの後、たまたま通りがかった陛下から“これは一体何事ですか?説明してくださる?”とロイヤルプレッシャーをかけられ、女王陛下に誓って嘘偽りなき真実を伝えた…
「…Admiral、Jervisがご迷惑をおかけしました、私からよく言って聞かせますのでどうかAdmiralには寛大な心を…」
「あ、いやいやいや!頭を!!どうか頭を下げないでください陛下!ホントいいんで!ホントいいんで!」
じょ…冗談じゃない、王の中の王、高貴なる陛下の頭を下げさせるとか胃に穴が開くどころじゃ済まされない…
「なんて慈悲深い………ありがとうございます、Admiral…」ニコッ
「ハイッ!!」バキッ!!
見るもの全てが頭を垂れ、思わず忠誠を誓ってしまいかねない陛下の高貴なるロイヤルスマイルに、膝を屈し生涯を陛下と英国の為に使う事を誓いかけたが、俺は鋼の精神力と左手の中指と薬指を自らへし折る事で耐え抜いた
「山風、今日はピーマンだけよ」
「…えっ!?や…ヤダ!」
「ヤダじゃないでしょ!まったく………提督!本当にすいませんでした!本当に!」
改白露姉妹を守護らねばならない改白露姉妹の姉、海風ねーちゃんは山風に反省しなさい!反省!と強く言い、俺に深々と頭を下げた
「いや、とっさとは言え止める事が出来なかった俺にも非はある、すまなかった」
「いえいえいえ!!提督は悪くないですから!」
…こうして、緑のトゲトゲチビこと山風と、キンパツのサラサラチビことジャーヴィス、おそらくは神話の時代からの不倶戴天の天敵同士であったのであろう2人の戦いは終わった、だが……これが新たなる聖戦の始まりだと言うコトに、その時、俺たちは気付く事が出来なかった…