【登場人物】
提督
自称ハンサムガイのバッドガイ、自称女子供にも容赦ない鉄拳の持ち主、サディスト
由良さん
長良姉妹の四女、サディスト
鳳翔
通称ビッグママ、さすがに着る自信は無かった
鎮守府内に存在する煌びやかな光を放つ夜の店、ナイトクラブHO‐SHOW…
『HO‐SHOWへようこそロミオー!』
軽空母、鳳翔がオーナーを務めるこの店は決して、キャバレーナイトクラブ、略してキャバクラではない
薄い酒と安いツマミをおっぱいの大きな女が勧めてくるだけの店だ…
「よぉ、ママ」
「フーッ〜………ん?なんだ、ボーイかい」
「ボーイはやめてくれよ、ってか何その箱?お中元?」
作戦もいよいよ大詰め、残すは最後の戦いとなった我々地上の愛と平和を守る正義の戦士達…そんなアツき血潮の戦士達は今日もやる気溢れる走り込みやヒッティングの練習に汗を流しており、俺はそんな仲間達を見て、いける!コイツらとならと確信し、ママの店で大人の英気を養うべく足を運んだワケだが…
「服、アンタ着るかい?」
そう言ってビッグママが服から取り出した服は、一目でただの生地じゃないとわかる高級な素材をふんだんに使った贅沢な仕立て物、エレガンテの中に光る大人の余裕と言うか、大人らしさと言うか…これを着こなす事こそまさしく大人である証明であり、その溢れ出る優美さとエレガンテは既製品には決して出せない本物の上質を演出してくれるだろう………しかし!
「バニーですか?」
「フーッ〜……バニーじゃないよ、ほら、ツノあるだろ?ツノ」
「あ、ホントだ」
よく見ると、ウサギ耳だけではなくたしかにツノがある、これはきっとアレだろう、夜のアリア●ン近辺とかに出てくるラリホーしてくるアレ的なものだな、たぶん
「え?なに?ババア、いい歳コイてナニ買ってんの?え?なに?無理すんなよ」
俺の冷静で的確な指摘に、誰がババアだいとマジギレした心の狭いババ……ビッグママからマジギレキセルで頭を殴打され、俺は顔面からカウンターに叩きつけられた
「誰がババアだい!あ?もういっぺん言ってみなァ!」
「サーセンしたァ!!」
「フーッ〜…わかりゃいいんだよ、ったく、口の利き方に気をつけな」
「へいへい」
心の狭いビッグママ曰く、このアル●ラージ的なセクシー&ラグジュアリーなバニー的な服はとある知り合いからの贈り物らしく、いちいち気を遣う必要はないんだけどねぇとケムリを吐いてキセルの火種を落とした
「…で?着るの?それ」
「………まぁ、貰っといてなんだけどねぇ」
まぁ、そうなるわな、っーか店に入ってママがバニー的な服着てたら店間違えたどころか異世界バーかなんかと間違えたと思って扉閉めるレベルだわ
ーーー
ママとの小粋なアイサツを済ませ、テキトーに空いている席に座り、タバコに火を点けて基地スポに目を通してみる…
「フーッ〜……電撃移籍!メジャーからの刺客かぁ〜」
「いらっしゃいませー」
「ん?おぉ………って!ゲェーッ!!」
本日、テーブルに現れた俺の予想を凌駕する刺客!五月雨と同じく、俺がここに配属された当初からの付き合いであり、まだ戦力と言えるものが整っていなかった頃、その白い髪と青い海を赤く染め上げ、チーム最初期のエースとして君臨した悪鬼の中の悪鬼…
「ゲェーッとはナニ?ゲェーッとは?」
「ゆ…由良さん、何故ママの店に…?」
「暇潰し」
暇だから、手短かかつ的確にそう言って由良さんは席に座りアイスペールのアイスをグラスに放り込んでグルグルと回した
「ち…ちなみにその服は?」
「コレ?さっきママから借りたのよ、アンタかわいいんだから似合うんじゃないかい?って、ね?」
控えめに言って、惨劇の王者と呼ばれたコトもある由良さん、その由良さんは今、つい先程、ママがどうしたモンかねぇと頭を悩ませていたラリホーウサギ的な着る者が着ればヨダレがジュピッ!確実ぅ!なハクい衣装を着て耳をピコピコと動かしていた…
「ね?どう?」
「………」
「ね?どうなの?」
俺は由良さんの両肩に手を乗せ、力の限り叫んだ
「スカスカじゃないかッッッ!!」
バニー的な衣装に存在するべきハズの谷が!峡谷が!デスバレーがッ!………嗚呼、なんてこと!なんてこと!これじゃあテーブルマウンテンじゃないか、盆地!圧倒的盆地ッ!
「ちくしょう!」
「提督さん、それ以上喋ったら殺すけどいい?」
由良さんは俺の両腕をありえないほど強力万力のような力で掴み、そのままの俺の腕を引いて鋭く尖った由良ニーに俺の鼻っぱしらをブチ当てた
「ウギャ!!」
「なかなか良い男に整形出来たんじゃない?ね?」
「さ…サーセンした…あと、ティッシュとかないっすか…?」
「なに?由良のセクシーな衣装に鼻血が止まらないの?ね?」
なにがセクシーだよこのヤロウ…まったく、いくつになってもバイオレンスぶりが止まらねぇなコイツ、まるでバイオレンスが服を着ているようなのだよ…
俺は鼻を捻じ曲げて軌道修正し、由良さんから受け取ったスコ●ティを鼻の穴に挿入した
「で?ナニ飲む?由良のおすすめはマッド・カクテル」
「それ飲み物じゃねーよ、錠剤だよ!錠剤の飲み方だよ!ちくしょう!」
「あ、そうなんだ〜」
ナニがそうなんだ〜…だ、コイツ、テキトーに知ってるそれっぽい名前を言いやがった
「まぁいいや、じゃ、氷食べる?」
「いらねぇよ、フーッ〜………とりあえずビールくれや、ビール」
「は?」
「は?じゃねーよ、ビールくれって言ってるんだよコノヤロー」
「なに?由良にビール注げって言ってるの?」
ナニ言ってるんだコイツ…?イカレているのか?
「そう言ってるのだよ」
「ビール注げって言ってるの?」
「言ってるのだよ」
俺と由良さんは思わずKISSしてしまいそうな超近距離でメンチを切り合ってバチバチと火花を散らした
「タイマンだ、オモテ出ろよ」
「へぇ……いいよ、久々にヤろうか?由良、今結構ムシャクシャしてるし」
そうそう…昔はよく由良さんとは殴り合いの喧嘩したっけな、給料が安いだの、疲れたから他の奴に替えろだのゴチャゴチャ言ってその度に殴り合いして執務室の壁にメリ込んだりメリ込ませたりしたな
そんなワケで、ハンサムが服を着たハンサムな提督である俺と、バイオレンスがウサギ的な衣装を着たバイオレンス軽巡の由良さんはゆらっと立ち上がり…
ゴスッ!!(煙管アタック)
「アダッ!?」
「痛い!?」
「ケンカすんじゃないよバカども」
俺たちの頭を愛用のキセルで強打し、ビッグママがゴチャゴチャ言ってるんじゃないよと言いながら新鮮な殺したての魚の刺身盛り合わせをテーブルに置いた
「痛いのだよ」
「ちょ…ママ、痛いんだけど!」
ママはケムリを吐きつつ空いている席に座り、アンタらも座りな、ほら!さっさと座りな!と急かすので俺たちは渋々座り直した…
「ボーイも由良も仲良くしな、仲良く」
「ボーイはやめてくれよ」
「ママ、由良は別に提督と仲悪くないよ?ね?ほら、仲良し仲良し、カラオケでデュエットしちゃうくらい仲良いから、ね?」
「あ?下賎な者が私とデュエットできるはずもないわい」
「あ?」ピキ!
「あ゛ぁ?」パキッ!
「…もう一発ぐらいブン殴られないとわからないかい?」
「サーセン」
「ご…ごめんママ、ぶたないで…」
ーーー
俺も由良さんもママには頭が上がらない以上、互いに今日のところは見逃してやると言う結論に達し、とりあえず接客業適性0の由良さんに注がせるのは無理だと悟ったので手酌で飲む事にした…
「ん」
「ん、じゃねーよ、テメーで注げよ」
ナニ呷る先から無言でグラス押しつけてきやがるんだこの髪長軽巡は…
「ケチくさい」
「ケチくさいじゃない、俺は客だぞ、ってか由良さんマジ何しに来たんだよ」
「暇潰し、あと嫌がらせ」
…女を殴りたいと思ったのは生まれて初めてだ……いや、由良さんに限ってはそうでもないか
「由良はね、提督が苦しむ顔が見たいだけなの」
「とんだサディストなのだよ」
「ジョークよ、ジョーク、ゆらっとゆらめくユラジョーク」
「ナニがユラジョークだ、まったく笑えねーよ」
俺は胸ポケからタバコを取り出し、口に咥えて火を点けようとすると由良さんが手にしたZippoライターで素早く火を点けた…
「お…おぅ、悪いな、って由良さんZippoとか持ってんのか」
「いいでしょ?ね?」
まぁ、俺も以前はZippoを使っていたが、なんっーか使い込むと味があるっーか愛着が湧くっーか……俺のお気に入りのアレ、どこかで失くしてしまって以来、新しいのを買う気になれずに………
「って!!それ俺のじゃねーか!!なんで由良さんが持ってんだ!?」
「え?覚えてない?」
「あ?」
ナニ言ってんだコイツ?覚えてないかだと……?いや、覚えがないな、うん
「返せッ!」
「ふ〜ん、絶対やだ」
「絶対かッ!」
「そ、絶対」
そう言って由良さんは俺のライターを胸元の内ポケットにしまい返して欲しいなら焼き土下座しろと要求してきたので、とりあえず今日のところは諦めることにした…
次回は最終海域、目覚める究極パワー!レイテで一番スゲェやつ!