【登場人物】
提督(192)
ジャ●プの今後を憂う大人、友情!努力!勝利はジャ●プから教わった
秋雲(8)
ジャ●プの今後を憂う子供、アニメ化したらケッコンの約束したいピュアな年頃
早霜(6)
夕雲姉妹一のおませな年頃、天才漫画家、団地妻エージ先生
狭霧(3)
幸の薄そうな薄幸美少女、ラノベを書いており、ペンネームは山田ゼレフ
「どーっすかね?」
歳末に向け、特にやる事もない執務室…
俺は缶コーヒーを飲みつつ、週刊少年ジャ●プでの連載を目指すアツかりし天才少年漫画家(自称)秋雲の描いた原稿を読んでいた…
今回の秋雲の作品はやはり最近の若者ウケを狙ってか、異世界に行ってみたりなんたりするアレだが、3人のJCがなんか高いタワーで社会見学中にいきなり剣と魔法の異世界的なところに転移させられ、転移先で合法ショタボーイからこの世界を救うためになんちゃらロード姫を救ってくれと依頼され、剣と魔法のドキドキの大冒険!途中で少年達の心をくすぐるスタイリッシュロボまで出てくる王道ストーリーなワケだが………最終的に、魔王を倒し姫を助けたものの、恋人である魔王を倒された事で姫ブチギレ、ラストは襲いかかってきた狂乱のブチギレ姫をSATSUGAIして異世界から帰ってくるこんなのってないよぉーな重厚かつ後味が良くないストーリー…
「秋雲的にはもうちょい筋肉量を増やしたいトコなんすけど…」
「オマエ、相変わらず絵だけは上手いよな」
「絵だけってなんすか!絵だけって!」
正直、頑張ればアニメ化すら視野に入りそうな気がするが、これはなんかアレだ、うん…なんか偉い人とかK談社からメチャメチャ怒られそうな気がするのだよ、っーかまず、ジャ●プ向きじゃない
「ダメだ、こんなチンカスじゃジャ●プには載れねぇ!」
「ち…チンカス!?」
「秋雲よォ〜…ジャ●プ舐めてんのか?ジャ●プを、偉大なる名作を次々と生み出し、社会現象は当たり前の先人達を舐めてんのかオマエは?今のジャ●プに必要なのはこんな中途半端な漫画じゃねぇんだよ!もっと少年達が毎週ワクワクしちまう浪漫溢れる漫画なんだよ!今のジャ●プに必要なのはそんな天才なんだよ…っ!」
「クッ!た…たしかに」
たしかに秋雲の絵は上手い、ハッキリ言って内容なんて必要ないドエロい漫画でも描けばそれはもう少年達の股間がカチンコチンになるどころか右手の本当の使い方を教えてくれるだろう、だがこの秋雲は違う、少年達の為に本当にアツい漫画を描きたい!そんな熱意にだけは溢れている!
「…フッ、この秋雲、どうやら金やちやほやされたいが為に大切なものを見失っていたみたいっすね」
「わかってくれて嬉しいよ」
まぁ秋雲の焦りもわからなくもない、つい先日、秋雲のライバル(一方的な)天才漫画家、団地妻エージ先生の読み切りが本誌に掲載、正直、このまま連載してほしいと思える抜群の面白さだった事が秋雲の焦りとPRIDEに火を点けてしまったのだろう…
「この秋雲、もう一度自分を見つめなおしてみるっす」
「うむ、その意気や良し!熱意や良し!」
「よぉーし!なんかやる気がMORIMORI湧いてきたっすよ!かーっ!甘いモン食ってエネルギー充填してぇー!」
「よし!じゃ甘いモン食いに行くか!」
「マジっすか?テイトク!マジっすかー?」
「本気!!(マジ)」
「さすがテイトク!この秋雲!どこまでもテイトクに付いて行くっすよ!ウヒャヒャヒャ!」
「よし付いて来な秋雲ォ…この世で二番目に強ぇ漫画家にしてやるぜェ…」
俺達が肩をバシバシと叩きながらよっしゃマミーヤ行くか!マミーヤ!と言って肩を組んでいる姿を見ていた青髪ロング子がナニ言ってんだコイツらみたいな目をしていたが、まぁアレだろう、コイツにはちょっと俺達の熱意がよくわかっていないのだろう…
ーーー
「今日のオススメはウィンターカップリン2016です」
クソ高ぼったくり価格に定評のあるスイーツショップ間宮、今日もカウンターに立つだけでなく、立っているだけでムチッやらキュッやらたゆんなど謎の擬音を立てる店主の間宮がいつもオススメを勧めてきた…
「チーズケーキ2つ、あとコーヒーくれや」
「秋雲さんはオレンジジュースを」
「今日のオススメはウィンターカップリン2016です」
「チーズケーキ2つとコーヒーとオレンジジュースだ、早くしろ、モタモタすんな、デブ」
「………は?」ピキッ!パキッ!
バカな!?この俺が無意識に退いた…?いや、この殺気…ッ!!ヘヘッ、何が給糧艦だ、戦艦なんかメじゃねぇ、コイツこそまさに殺意の塊だ
俺と秋雲は、ヘヘッ悪かった…悪かったよ、ヘヘッ少しに調子に乗りすぎちまったよ、と間宮に謝った…
「わかればいいんです、では、今日のオススメはウィンターカップリン2016です」
「チーズケーキ2つとコーヒーとオレンジジュース」
ーーー
美食四天王・間宮とのアツかりしバトルを終え、俺と秋雲はとりあえずテキトーに空いている席へと座り、エネルギーを充填しつ秋雲の漫画に足りていないものは何か、そのアツかりし議題をディスカッションする事にした…
「しかしアレだな、アレだよ、アレ」
「まぁ秋雲的にもアレかなって思ってはいるんすけどねぇ〜」
秋雲自身もアレだが、秋雲のアツい漫画カツドウを支援する超絶アシスタント集団、秋雲組にもかなり問題がある、モブキャラ描かせたら全てベルバラチックな夕雲、やたらと点描トーンを多用する巻雲、そして秋雲を現時点で明らかに超えているのに何故か秋雲の漫画に惚れ込んでいる風雲…
せめて秋雲組のバカの中に1人ぐらいまともなヤツがいれば………ん?
「む?あれは…」
「なんすか?」
俺達の座る席よりやや離れた席に座り、見た目でわかるアンニュイな様子で文庫本を読みながらコーヒーを飲んでいるなんか髪の長い子………えぇと、なんだっけか?名前がちょっとアレだが……
「そうそう!キタローくんだ!キタローくん」
「キタロー?あぁ、早霜っすか」
「キタローくん!キタローくん!ちょっといいかなー?」
俺は理解と親しみある爽やかな大人として、キタローくんに声をかけると、キタローくんはいつもと何も変わらず、ややダウナーな感じで視線を上げた
「どうかね?キタローくん、この秋雲の漫画!ちょっとキタローくんの忌憚のない意見を聞かせてくれないかね?」
「え〜?早霜みたいなネクラにこの秋雲の漫画の良さとかわかるんすかねぇ?」
「バカ言ってんじゃないよ、アレだよアレ、こーゆーのは一般的かつ忌憚のない意見ってのが必要なんだよ」
まぁ、秋雲は知らないがこのキタローくんこそ秋雲の敵視するライバル(一方的な)団地妻エージ先生その人なんだがな…
俺から原稿を受け取ったキタローくんはパラパラと原稿を捲り、最後に小さなため息をついた…
「…まぁ、絵は上手いと思います、絵は」ボソボソ
「え?なんだって?」
「…この絵が生かせる原作を書ける人材を探しては如何でしょうか?」ボソボソ
「かーっ!コレだからシロートは!原作者とか知った風なコト言ってくれちゃってるっすよこの子はー!」
や、そいつシロートじゃないから、編集部が土下座して連載してくださいってお願いしてくる真の天才だから
「やっぱダメっすよテイトクぅ、こんな月刊サス●リア定期購読してそーなネクラっ子じゃ、この秋雲の漫画の良さとかゼッテーわかんねーっすよ」
「まぁそう言うな、すまんな、キタローくん」
「…いえ」ボソボソ
しかし原作者か………そういや前にも秋雲に勧めた事があるが、その時は結局見つからずじまいだったなぁ
「あ、提督と……え〜と、夕雲型の人…?」
「ん?」
俺達のいる席に、女子力高めのふわふわカップケーキを皿に乗せた幸の薄そうな、え〜……?なんだっけコイツ?なんか森のエルフみたいな…
「サギ………いや、トキだったか?」
「…狭霧です」
「そうそう!サギーくんだ!サギーくん」
「ちなみに秋雲さんは夕雲型じゃないで陽炎型っす」
「…早霜は夕雲型で間違いありません」ボソボソ
「あ、す…スミマセン、なんか制服似てたのでつい…」
サギーくんはスンマセンスンマセンとヘコヘコと頭を下げて秋雲とキタローくんに謝る、まぁ秋雲の場合、自分が陽炎型なのか夕雲型なのかよくわかってない名は体を表す偽りのような存在だが…
「あ………そう言えばサギーくんはアレだったな、たしか小説とか書いてるんだったな?」
「え?あ、はい…」
そうそう、たしか彼女は新進気鋭のライトノベル作家、山田ゼレフ先生とかなんとかでプロデビューしているとかなんとか…
「山田ゼレフ先生よぉ、ちょっとコイツの為にビッとおもしれー原作でも書いてやってくれねぇか?」
「は…?はい?原作?」
「ちょ!ナニ言ってるんすかテイトク!こんなどこの森出身とも知れない幸薄そうなヤツにこの秋雲さんの絵に相応しい原作とか書けるワケが…」
「バカ言ってるんじゃないよ、いいか?サギーくんはあの有名なライトノベル作家の山田ゼレフ先生なんだぞ」
「や、知らねーっすよ、私ゃライトノベルとか読まねーし」
「大丈夫だ!山田ゼレフ先生を信じろ!いいか秋雲!山田ゼレフ先生はライトノベル界では最も凶悪だったとまで言われ、その作品は悪魔の書とすら呼ばれるそれはそれはスゲーヤツなんだぞ!」
「マジっすか!?」
「あぁ、あの8っちゃんさんが大事そうに持ってるハードカバーだって実は山田ゼレフ先生の本だ、腹筋バッキバキの最強の悪魔AMGが封印されている」
「マジっすか!?」
秋雲も山田ゼレフ先生に俄然興味を持ったらしく、その目をキラキラさせながらその場でスクワットを開始しだした
「かーっ!こりゃ俄然やる気がMORIMORI湧いてきたっすよー!シャーッス!山田ゼーロフ先生シャーッス!」
「よし!その意気や良し!熱意や良し!山田ゼレフ先生と秋雲!今ここに力と技の最強タッグ!技巧コンビの誕生だぜー!ガッハッハッハ!」
俺と秋雲は若干ドン引き気味の山田ゼレフ先生の肩をバシバシ叩き、ほら!ここ座れ!この席空いてるから座れと促し、着席させるとアツい乾杯を交わした
「よし!今日はテイトクの奢りだ!好きなものを頼みなさい!予算3000円までで!」
次回はクリスマス回、たぶん