【登場人物】
提督(19)
37話目にしてちょっと真面目
男には自分の世界がある
五月雨(9)
初期艦故にツーカーな面、そーゆートコもムカつく
いつもはアツいバスケットを繰り広げられている体育館
しかし今日は違う、所属する艦娘全員が召集されていた…
「え~オマエら、今日からいよいよ夏の大作戦、第二次マレー沖海戦が始まる」
本部から通達された迎撃作戦
「わかっちゃいるとは思うが、俺は使えるヤツは誰でも使う、たとえスタメンでなくとも全員コンセントレーションを緩めるな」
一攫千金のチャンス、たった一度のMVPでも普段のショボいバイト代を超えるカネを獲得でき、ボスを討ち取れる事ができたならば多額のカネがその懐に舞い込む、そのチャンスが全員にある
「どうした?金剛、ビビってるのか?」
最前列に並ぶ金剛型戦艦、そのヘッド、金剛は口許から一筋の血を流して小刻みに震えていた
「嬉しいん…デェス!命じてくだサァ~イ!…今すぐッ!」
「俺が許す、殺せ」
オオオオオォォォォォ!!!
コ・ロ・セ!コ・ロ・セ!コ・ロ・セ!
「とりあえず、作戦の詳細が届き次第、楽しい楽しいスタメンの発表だ、ワクワクして待てよ」
◆◆◆
「フーッ~…」
俺は椅子に座るとさっそく煙草に火を点ける
「お疲れ様です、あと、煙草は喫煙所でお願いします」
「作戦期間中は許す、そーゆー約束だろーが」
「まだ、です」
「ちょっとぐれー大目にみ…」
「みません」
断じて、五月雨のメンチにビビったワケじゃあない、が、大人は約束を守るものだ
俺は煙草の火を灰皿に押し付けた
「コーヒー」
「はい!今、淹れますね!」
「缶コーヒーな」
「自分で買って来たらどうですか?」
コイツ…なんて露骨に態度を変えやがる
恐ろしい子だよ
「そうするわ、上から連絡があったら、ただいまおかけになった電話はハンサム過ぎて女の子にキャーキャー言われて手が放せないですって言っとけ」
「そうですね、長めの糞に行ってますとでも言っておきます」
「チッ…」
「あ、これもどうぞ」
五月雨は机から小瓶を取り出し、俺に投げて渡した
「…そーゆートコもムカつくんだよ、テメーは」
「そうですね」
◆◆◆
一度目の夏、唯一の敗北を喫したミッドウェーの敗戦は俺に多くを教えてくれた
資材の運用、艦隊と艦種と練度、そして…仲間を失う痛み
「よぉ…ひさしぶりだなァ」
鎮守府から少し離れた岬の丘、昼ならなかなか景色がいいだろうが、夜だと少し飛び込みたくなる景色だな
俺は手にした小瓶の蓋を開け、雑に並んだ石に中身をぶちまけてやり、煙草に火を点ける
「フーッ~…またこの時期がきたぞオマエら」
去年もこうして訪れ、次に来る時はキラキラした勲章でも飾ってやろうと言ってみたが、結局、そいつは叶わなかった
「できれば、飾ってやりてぇなァ~…どうだオマエら?」
当然ながら、答えは返って来ない
「…ま、期待半分くらいで頼むわ」
俺は煙草を石に投げ捨て、缶コーヒーと煙草を買いに明石の店へと向かった
次回からちょっと真面目、だと思う
更新もやや変則的になります