【登場人物】
提督(168)
手強いシミュレーションゲーマーレベル50、命中率100%以外は信用しない
Ark Royal(2)
誇り高き上級女騎士風ロイヤル空母、田舎出身
爽やかな秋晴れのどちらかと言えば暇な日、明石のアホンダラの店で菓子パンと缶コーヒーを購入し、喫煙所でタバコでも吸いながらダラダラしようと考えながら歩いていると、廊下の先で赤い髪の女がチラシのようなものを片手に何やら立ち止まって考えていた…
「よぉ、こんなトコでナニやってんだ?えー……」
「Ark Royalだ、Admiral」
「あ〜そうそう、アークロイヤルくんだ、アークロイヤルくん」
最近ウチに配属された英国から来た刺客、英国式ロイヤル空母のアークロイヤル、そのいかにも気高く誇り高そうな外見はまさに戦場を駆ける女騎士を彷彿とさせ、具体的には特定のユニットをコイツの居るマスに隣接させると“はなす”とか“かいわ”とか特殊なコマンドが出て、話しかけると即説得に応じて仲間になってくれそうな上級職の綺麗なお姉さんと言ったところだろう…
「で?そのアークロイヤルくんはこんなトコでナニしているのかね?」
「Admiralか…いや、実は今日、コレを買いに行こうと思ってな」
そう言ってアークロイヤルくんは手に持っていたチラシをずいっ!と俺の顔の前に押し付けてきた、っーか近い、紙が近い、紙が
「…なんだこれ?パン屋?」
「あぁ、このパンなのだが…先日、女王陛下がこのチラシを御覧になられながら実に美味そうだとうっかり口を滑らせてな」
「へぇ〜」
っーか、それはただの見た目の感想な気がするんだが…え?なんなの?ちょっとパンが美味そうってコトすら陛下は言うとナニかマズいもんでもあるのだろうか?
「そこでこのアークロイヤル、女王陛下に日常の中の小さな驚きを与える為に今日は内密にコレを購入しに行こうと思ったワケだが…」
「ふ〜ん、ま、ガンバレよ」
得意げに話す気高き上級女騎士、そして、そんな上級女騎士に対して俺の長年の経験則と勘が告げている、コイツには関わるな!キケンがアブナイぞ!と…
「ところでAdmiral、もしかしてAdmiralは暇人ではないか?」
「誰が暇人だ、どっからどう見ても大忙しだよ」
「そ…そうか、それはすまなかった」
そう言ってアークロイヤルくんは折り目正しく丁寧に腰を折って頭を下げた、なんだろうな……真面目か?いや、きっと彼女の本分は大真面目なのだろう、あぁ、きっとそうだ、俺はそんなアークロイヤルくんの頭を下げた体勢からチラッと見えるロイヤルバレーを見つつ今日は良い事がありそうだと予感していた
「まぁ、提督が暇だったら街まで車を出してやるのもやぶさかでもなかったが…」
「車…?あぁ、あのなかなかのパワーとスピードのあるヤツのコトか」
なかなかのパワーとスピード?ナニ言ってんだコイツ、イカレているのか?
「このアークロイヤルが生まれ育った村には馬車しか走っていなかったからな…」
「どこの田舎だよ!」
アークロイヤルくん曰く、生まれ育った村は農業が盛んなどこにでもある何のヘンテツもない村らしく、昔はよく村のチンピラどもと一ヶ月のお小遣いを賭けて賭けボクシングをしていたそうな…
「しかし車がないと街まではワリと遠いが……まぁ、提督としては公共の交通機関をオススメする」
「大丈夫だ、街まで行く足はちゃんと用意している」
なんだろうな、このアークロイヤルくんの自信に満ちた顔からは猛烈にイヤな予感しか感じないのだが…
「そうだ、せっかくだからAdmiralにも紹介しておこう!少しだけ時間を良いか?」
「え?あ、あぁ、まぁちょっとだけなら」
紹介………?なんだろうな、もうこの時点でイヤな予感が確信に変わっているが、とりあえず俺はアークロイヤルくんにグイグイと肘を引っ張られて執務棟の外へと出た
ーーー
「あ、テイトクだ」
「テイトクとアー……アーなんとかサンだ」
執務棟を出て、俺はアークロイヤルくんと共に倉庫の方向へと向かっていると、アホな顔したキヨシとアホな顔したリベッチオが蟻の巣らしき穴にホースの水を流し込むアホな子供特有の大人になった時に振り返れば無邪気とは言え残酷なコトしたなぁ〜としみじみと思うアホなコトをしていた
「アーなんとかではないぞ子供達、私はArk Royalだ」
アークロイヤルくんはアホなガキどもに心広く接し、ポケットからサクサクのクッキーを取り出してアホなガキどもに渡してやり、アホなガキどもはお礼を言いつつもスゲーまるで女騎士みてー!だの、クッ殺せって言ってーだのキャッキャとハシャいでいた
「クッ!殺せ!………これでいいか?」
「スゲー!カッケー!」
「リベ知ってる!“殺せ!”じゃなくて“殺した!”なら使っていいってローマさんが言ってたー!」
…あのパスタ野郎はピュアなガキになんてコト教えてるのかね
「テイトクとアーッさんはナニしてんの?なんか食べに行くの?清霜ハンバーグ食べたい」
「行かねぇよ、っーか調子に乗るなクソガキが」
「なんだ、じゃ、陛下にお願いしよ」
「あー!キヨシズルい!リベも!リベもハンバーグ食べたい!」
「オイやめろ、マジで、マジで、ホントやめろ」
陛下は大変御心の広い高貴な御方だが、このクソガキどもが何かの拍子で陛下の逆鱗にでも触れでもすれば日英開戦待った無し、そして第三次世界大戦勃発になりかねない
「わかったわかった、ファミレスでもなんでも連れてってやるから陛下に無茶を言うのだけはやめろ、な?」
「マジで!?ウェーイ!テイトク!ウェーイ!」
「ウェーイ!」
…このクソガキどもが、本来ならその下っ腹に全力キックブチ込んで水平線まで蹴り飛ばしたいところだが、まぁいい、今日はカンベンしてやる
「ところでアークロイヤルくん、そう言えば我々はどこに向かっているのかね?」
「ん?あぁ、もうすぐそこだ」
アホなガキどもを仲間に加え、俺たちは倉庫前を暫し歩くと、倉庫横になにやら木で造られた小屋?小屋的なナニかが現れた、なんだコレ?提督こんな施設知らないんだが…
「紹介しよう、私の愛馬だ」
アークロイヤルくんは小屋的な施設の中に入ると、上級騎士御用達に真っ白な馬を連れて外へと出てきた
「スゲー!馬だ!」
「リベ知っている!これペガ●スだ!」
アークロイヤルくんが颯爽と跨っているのは、まるで天馬の翼の如く広がる白くて長いタテガミを持つ純白の馬!これまさに戦慄の白き翼ッ!
「私の愛馬、エルアル●ンだ」
「ア●コンかよッ!?」
まさかの白の一族かよッ!!っーかやっぱコイツ、空母じゃないでペガサ●ナイトかなんかじゃないのか?三人揃ってトライア●グルあたーっく!ってヤツだろ!?
「スゲー!馬スゲー!アーッさん!乗せて!清霜も乗りたい!」
「あー!キヨシズルイ!リベも!リベも乗りたい!」
「…あの、アークロイヤルくん」
「なんだ?Admiral」
「もしかして、それで街まで行こうと?」
「………何か?」
アークロイヤルくんは何か不思議なコトが?とも有りげな顔で首を傾げているが………わかった、コイツ、アホなんだな、あぁわかったよチクショウ!ただの美人じゃないでやっぱアホなんだな!!