不健全鎮守府   作:犬魚

321 / 940
君は自分の中に宇宙を感じたコトがあるか!

【登場人物】

由良さん(3)
開幕からまさかの展開に緊急登板した偉大なるエース、エースとは出て来るだけで流れを変える人材

鈴谷(49)
航巡とは違う、もう負けないぞ!カ●ドキアームズいざ出陣エイエイオー!




再打通作戦発動!②

「……負けた、だと?」

 

夏らしく、たまには執務室にオシャレなものを飾ろうと買ってみた掛け軸はまるで故人を偲ぶ尊い気分にさせてくる…まぁ、そんなコトはどうでもいい、今はまさかの敗北宣言だ、信じて送り出した五十鈴パイセン率いる部隊が敗北を喫したと言う衝撃的事実ッ!

 

「フーッ〜…つまり、どーゆーコトだってばよ?」

 

煙草に火を点け、吐き出した紫煙に露骨にイヤな顔をする五月雨にその衝撃的事実関係を訊ねる

五月雨曰く、今回、深海の先発はいつものアイツではなく、データにないルーキー!しかも、その性能は今までのアイツを凌駕し、さらには開幕雷撃も撃ってくる!

 

「潜水新棲姫と言うらしいです、で、こちらがその画像です」

 

「ふむ…足がないな」

 

「や、たぶん普通にありますよ、コレ乗り物的な感じじゃないですか?」

 

「ハッキリ言う、気に入らんな」

 

件の深海スーパールーキーの画像を見るに、なるほど……コイツはナマイキそうなクソガキ臭がプンプンしやがる、まだ若いのに高性能、まさしく、The genius submarine girl、やはり天才か…と言うワケだ

 

「それで?五十鈴さんはなんと?」

 

「メンバーチェンジで」

 

「メンバーチェンジか…」

 

五十鈴さんからの報告では、カス…大鷹が思ったよりザコ過ぎて使えないので他のヤツに、あと、択捉もザコ過ぎて使えないので換えろとのコトだ、ふむ…まさかの期待を込めて出したウチのルーキーが向こうのルーキーに負けた形だな

 

「まぁ、しゃーなしだな、カス鷹くんの代わりの軽空母は…」

 

「五十鈴さん的には潜水艦よりヌ級がうぜぇから潜水艦ではなくヌ級をブッ殺すヤツ募集中だそうです」

 

「ムチャゆーな」

 

そんな正規空母じゃあるまいし、潜水艦を狙わない軽空母なんて都合のいいヤツいるワケねーだろ、あのヤロー、ちょっとおっぱいデカいからってチョーシに乗りやがって

 

「いますよ、潜水艦を狙わない軽空母」

 

「あ?ナニ言ってんだオマエ?イカレてんのか?」

 

「アレですよ、アレ、攻撃型軽空母ですよ」

 

「ハァ…?攻撃的小宇宙……あぁ、そう言やなんか前に誰かがそんな話をしていたような…」

 

たしか潜水艦を狙わない超攻撃的陣形をとるよくわからん軽空母、その、第1号と2号…

 

「…よし、鈴谷を呼べ」

 

「鈴谷さんで?熊野さんではなく?」

 

鈴谷の野郎、前回何もしてないせいか、今回は出たくて出たくて仕方ないのだろう、真面目にプルペンで艦載機の投げ込みしている姿を見かけた事を提督は評価しているのだよ

 

「見せて貰おうか、攻撃型軽空母の性能とやらを」

 

「鈴谷さんですね、あと、択捉さんの代わりはどうしますか?五十鈴さん的にはとにかく潜水艦をブッ殺すヤツ希望ってコトですが」

 

「とにかく潜水艦をブッ殺すヤツか…」

 

あの五十鈴さんが攻めあぐねているぐらいだ、おそらくはハンパな性能では太刀打ちできまい、それに、序盤の序盤から詰まらされるのは俺の精神衛生上よろしくない、ならば………ハンパではない、あの方を出撃すしかあるまい

 

「五月雨、由良さんを呼べ」

 

「…マジですか?」

 

「マジだ」

 

◆◆◆

 

『アナタタチハ…トオサ……グヘァ!?』

 

再び帰ってきたリンガ泊地沖、深海東方侵入艦隊…

 

『グワアアァァァァァ!!』

 

『ヌ!ヌ級ーッ!!ヌ級ガヤラレタ!』

 

『チクショウ!!アノイカニモ遊ンデル頭スカスカノJKミタイナ奴!的確ニ潜水艦以外ヲ仕留メニキヤガッタ!』

 

攻撃の手を制限する為に考え出された無敵の深海フォーメーションが突破された事に戦慄が走る潜水新棲姫擁する旗艦艦隊、まさか潜水艦を狙わない空気読めない軽空母が居るとはまったくの予想外…っ!理解の外…っ!常人である深海棲艦にはない、悪魔的発想ッ!

 

「キンモー…マジキモいわー、うぇ、変なの付いたし!」

 

『チクショウ!』

 

頼みのヌ級がブクブクと気泡を残して沈んだ、しかし、潜水新棲姫の心に焦りはない、たとえヌ級はいなくても自分にはこのタフなスピリットがあるのだから!今まで潜水艦を恐怖のズンドコに叩き落としていたイスズだろーが負ける気がしな………

 

『イタイ!ヤメ!イタイ!ヤメ!イタイ!ヤメ……ヤメ!ヤメロォ!?』

 

…がっ!!無理…っ!一転、もう負ける気しかしない!あきらかにさっきまでの手と違う、確実にこちらの弱いところを突き刺してきてる!この可愛い見た目でも容赦なしだ!

 

「ね?今から手足バキバキにするけど、なんか言いたいコトある?」

 

潜水新棲姫の頭をまるでバスケットボールのように無造作に掴み、さっきまでのメンバーには居なかった髪の長いヤツ、白髪っぽいようなそうでないような不思議な色の髪は微妙に朱に染まっている

 

「ね?」

 

『マタクルワ…ッ!ヒ…ヒヒヒ…アギャア!?』

 

折れたっ!?何の躊躇もなく折りやがったコイツぅ!?

 

「え?ナニ?」

 

『マ…マタクル…ワギァァァ!!』

 

「ね?こっちが痛い?ね?どうなの?ね?」

 

なんだコイツ超怖ぇ!!ダメだ…!早く!早くごめんなさいしないとバッキバキにされてガヴ●ークに変形させられるぅ!?

 

「ね?ね?」

 

『ア〝ア〝ア〝ア〝ア〝ーッ!!イタイイタイイタイ!ヤメ?ヤメテ!ヤメテ!ホントヤメテッ!!』

 

 

「さすがは由良さんだ…ハンパじゃねぇ」

 

「リベちょっと漏らしたー」

 

「汚ねーなオイ、ズーヤさん、リベにパンツ貸してやってくれよ」

 

「え?やだし、ってかパンツ貸したら鈴谷ノーパンじゃん」

 

こうして、リンガ泊地沖の死闘は敵旗艦である新人をバッキバキにして海に投げ捨てて幕を閉じた…

しかし、あの見た目だけは可愛い新人潜水艦、由良さんの執拗な洗礼の前に吐血しても泣き叫んでもおしっこ漏らしても、最後までゴメンナサイしなかった事には誰もが感動し、愉快なオブジェのような形で沈んでいく潜水新棲姫に自然と敬礼をして見送った…




次回はリランカ戦、です

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。