このお話は輪音様のご厚意で書かせて頂いております
【登場人物】
提督(160)
クズでヘタレでホモでロリコンのアツい疑惑をかけらている元大佐、色々あって降格した
北国の中佐
北国は函館から来た見た目は冴えないオッサン、提督はこの男、実は特A級の企業戦士なのではと疑っている
「ハッハッハ、わざわざ遠いところまで御苦労ですなぁ、ハッハッハ」
「どうも」
先日の天海からの連絡後、上から正式な連絡が届いた、今回は視察目的であると小難しい文書でダラダラと書かれていたが、とりあえず、前回みたく中将みたいな大物ではないのでかなり気はラクってヤツだ、しかも相手はヒラの中佐、いざとなったら行方不明になっても問題はなかろう…
しかし…
「ハッハッハ」
たしか“艦娘たらし”とかスゲー二つ名持ちのスゲーヤツと聞いていただけに、イキでイナセなダンディハウスみたいなナイスミドルなのだろうと思っていたのだが………これは一体どう言うことだってばよ?どう見ても、今、俺の目の前に居るのは冴えないオッサンにしか見えない…
正直なところ、この冴えないオッサンを誰もが羨むモテまくり主人公にするのは無理ゲーに思えるのだが…
…そして、このハンサムな提督がさっきから気になって気になって仕方ない事がある、それは、彼の後ろに控えているバンキュッバン!なグラマラスレディだ…
最初はこの男、マブいナオン連れてやがると思ったが……よく見ると、そのマブいグラマラスレディの頭にはロングホーンみたいなのが生えていた…
「提督」ヒソヒソ
「なんだ?」ヒソヒソ
どうやら五月雨も気になっているらしく、一応、念の為の確認をしたいらしい
「アレ、どう見ても深海棲艦の……しかも姫級のアレですよね?」ヒソヒソ
「バカヤロウ、そんなワケないだろーが」ヒソヒソ
「や、絶対そうですよ、三ヶ月に一回くらい見ますもん、あの人」ヒソヒソ
たしかに、どう見ても深海棲艦の姫級で、タフなディフェンスと影分身に定評のあるアイツにひじょーによく似ているが、そんなワケがあるハズない、だって深海棲艦は人類と敵対する謎の生物だぜ?そんなのが堂々オモテを歩いてたり、ましてや敵である海軍の人間と行動を共にするワケがない
「深海棲艦なワケねぇだろ、アレはほら…アレだ、アレ、バッフ●ローマンだよ」ヒソヒソ
「えー…」ヒソヒソ
「ほら、あのロングホーンとかまさにハリケーンミ●サーしそうだろ?」ヒソヒソ
そうそう、ないない、そんなワケない、そんなワケない、ヤツらは決して相容れる事のない敵なのだ、そう!どちらかが滅びるまでなァ!
ゴン!ゴン!
重厚なハガネの扉を叩き、ダサいジャージを着た頭の白いのが執務室の扉を開いた
「っれーしまース、テイトクぅ、なんかネット繋がらないんだけどぉ〜、今イベント中だからマジで困っ………って!?ゲェーッ!お、オマエはーッ!戦艦棲…っ」
「ハイハイハイ!ハルサメくん!話は外で聞こうかーッ!今ね!お客様来てるからお外でお話ししよーねぇー!さみ!五月雨クン!中佐殿にティーを!ティーを出してあげて!」
俺は素早く立ち上がってダサジャージのハルサメの顔面を掴み、中佐殿に少し失礼と頭を下げてハルサメと共に執務室を出た
ーーー
「ヤベェよヤベェよ…ついにここまで刺客が来やがったよ“あの御方”がとうとうワタシを始末スる気だよ!」
「やかましい、オマエが始末されよーがしまいがどうでもいいが、今んトコ、オマエはウチの春雨だ!いいな?間違っても駆逐なんたらとかゆー姫級じゃない、いいな?オマエはあくまで春雨だからな?髪の色は薬剤強過ぎて失敗したバカな春雨だ、わかったな?」
「て…テイトク、ソんなにワタシのコトを…」キュンっ!
そう、間違ってもウチに深海棲艦が、しかも姫級とかゆーヤバい危険生物は居ない、居てはならない、もし上にバレようモンなら良くて裁判無しの銃殺か、悪くてバスターコールだ
「アリガトウ…アリガトウテイトク……こんなワタシを守護ってくれるんだ…」ポロポロ
「やかましい、いいな?とにかくオマエは春雨だ、わかったら部屋に帰ってオ●ニーでもしてろ」
「シ!シねーからっ!………ってかテイトク、なんでババアが居るの?」
「…やはりアレはそうか?」
「や、どー見てもソーっしょ、あのロングホーン」
駆逐棲姫もとい、春雨が言うのだから間違いなしってワケか、しかし何故、海軍中佐と共に…?ハッ!?もしやあの男!実は海軍中佐ではなく深海軍中佐なのか!?そうか、そして今日、俺を始末するか仲間に引き入れるかをしにここへ来たと言うワケか…なるほどな
「…でも、アイツよく見たらワタシの所属んトコのババアと違うかもっぽい」
「ナニがかもっぽいだ、秋津洲クンとオマエの姉に謝れ」
扉の隙間から中の様子を窺う俺とワルサメ、中佐殿と戦艦棲姫らしきグラマーは五月雨の淹れたコーヒーを飲み、なんとも微妙な顔で曖昧に笑っておかわりを断っていた
「ま、ワタシを始末シに来たワケじゃないならいいや、あ、テイトク、ネット繋がらないんだけど」
「やかましい、ほら!金やるからネカフェにでも行って来い!明日まで帰ってくんな!」
「ウェーイ!テイトク、やっさしぃー!」
◇◇◇◇◇
私の名は戦艦棲姫
この基地の艦娘は些かヤンチャに生きている
まず、基地に入ってすぐ、すれ違った駆逐艦達からメンチ切られ、駐車場で車を洗っていた軽巡や重巡からはメンチ切られ、執務棟の付近を歩いていた戦艦四姉妹からも今アネゴ見て笑ったかコラァ!誰の髪型がサ●エさんみてぇーだとコラァ!とインネンを付けらた…
正直、私を含め、提督もこんなパターンは初めてらしく、提督は“そもそもこんなオッサンだしね、普通はこんなものだよ”と言ってはいたが私としては納得がいかない、この基地に居るバ……頭の悪そうな艦娘達は何故、私の提督の魅力に気付かないのか…
「ありえないわ」
「何が?」
「何故提督の魅力に気付かないのか理解に苦しんでいるのよ」
「いや…だから、それはないって、艦娘とは言え若い娘さんだからね、見も知らないオッサンの評価なんてこんなもんだよ」
「理解に苦しむわ」
…まぁ、逆に、変に提督にちょっかい出してくるヤツが居ないのは安心と言えるかもしれない
◆◆◆◆◆
当基地内に存在する酒類などを提供する風営法に則った決して法には触れていない夜の店、倶楽部HO-SHOW
オーナーである軽空母、鳳翔の名を冠したエグゼクティブな空間で最高級の寛ぎを貴方にお約束します…
「大人3名、内1名がグラマー」
「フーッ〜…奥、空けてるから座ってな」
ビッグママはいつもの様に異様に長いキセルをトントンと叩き、一瞬、中佐殿の後ろに居るグラマーをギョっとしたように見つめたが、すぐに興味を失ったらしく再びキセルを咥え、煙を吐いた
「ハッハッハ、中佐殿、まぁラクにしてくださいよぉ、中佐殿ぉ」
「はぁ…」
冴えない企業戦士みたいな中佐との冴えない資料で冴えない事務的な会談を済まし、冴えなく基地施設内を回った俺は、まぁ出張の醍醐味と言うか、その為の出張と言うか、まぁ、冴えない仕事はとっとと終わらせ、夜のビジネスツールであるママの店へと来ていた…
中佐殿はグラマラスなボインを同伴でここまで来るぐらいだ、おそらくはグラマラスなボインがお好きなのだろう
「いらっしゃ〜い……って、あら?提督じゃない?」
「お前は…トリコ?」
「陸奥よ」
俺達の席へやって来たのは、倶楽部HO-SHOWでも1、2を争う売り上げ上位ランカー、陸奥ッ!もはや指名出来るだけで奇跡と呼ばれる伝説の修羅が来てくれたッ!!
「陸奥、ちょっと、陸奥ちょっとこっち来い」
「なによ?」
俺は陸奥の肩に手を回し、小声で今回のステキ接待ミッションについて陸奥に伝えた、オーダーはオンリーワン、とにかく楽しませろ、気持ち良く飲んで頂き、明日にはお帰り頂くのだと…
「まぁ、そもそもそーゆー仕事だから別にいいけ………あ、じゃ、一つ私のお願い聞いてくれない?」ヒソヒソ
「なんだ?金か?女か?」ヒソヒソ
「金はわかるけど女はないでしょ…はぁ、ま、いいケド…や、実は今度あの子達と合宿ついでに小旅行にでもって計画してるんだけど、ちょっと予算が不安かな〜って」ヒソヒソ
「俺が許す、行け」ヒソヒソ
「OK、商談成立ね」ヒソヒソ
陸奥は並の男ならカチンコチン必至な悪魔的ウィンクをして中佐殿の隣へと移動した、恐るべし陸奥よ…今のはこの俺ですら“ケッコンしたい…”と一瞬ときめきかけたぞ
「初めまして、陸奥です…北海道からわざわざ来られたんですって?」
「えぇ、函館から」
「へぇ〜…函館、あ〜…アレだ、五稜郭があるトコだっけ?」
「えぇ、そうですね」
まずは陸奥お得意の絶妙な間合い取り、先手を取りつつも相手も仕掛け易い地域性のある話題…この距離なら、まずは互いに出方を窺う事になるだろう、艦娘殺し……じゃない、艦娘たらし!その実力、見せて貰おうか
「あら?グラス……ウィスキーでいい?」
「えぇ、水割……いえ、ロックグラスをいいですか?」
「ロックね」
ーーー
……陸奥と艦娘たらし、そのやり取りはまさに出張に来たビジネスマンと嬢との時にアツく、そして時にクールな高度な技術戦の様相を呈していた、あわよくばバックの大きいアルコールを入れたい陸奥、しかし中佐はそれをのらりくらりとかわしつつも不思議と嬢に不快感を与えない…ッ!むしろ、接待の席なのに俺の支払いに気遣いすら感じさせているのか……この男、かなりビジネス慣れした企業戦士ッ!ホントに軍人か?実は取引先企業の人とかじゃないのか?
「あらあら、ちょっと前を失礼…」
アイスペールを取るとみせかけ、陸奥が仕掛けたッ!中佐の腕に自らの胸を密着させ、その弾力を伝える技、虎砲!
並の童貞ならおっふせざるを得ない!
「いえ、大丈夫です」
効いていない!?陸奥の虎砲を受けてこの男!少しの顔色すら変わらない…?さすがは艦娘殺…じゃない、艦娘たらし、陸奥レベルの相手にまるで鼻の下が伸びない豪傑ぶりは伊達ではない
「…」イライラ
「あ、グラス注ぎましょうか?」
ちなみに、中佐殿の連れであるグラマラスレディは先ほどから目に見えてイラついており、俺はさっきからこの暴れ出したら確実にヤバそうなモンスターのグラスにアルコールを注ぐマシーンと化していた
「芋ロック!あと、冷たいおしぼり!」
「あ、はい、芋ロックとおしぼりですね!」
…なんで俺がサービスを提供する側に回ってるんだ、ってかコエーよ、なんだよコイツ、さっきから陸奥に殺意の篭った視線と舌打ちとたまに小声でコロス…って言ってるだけじゃん、いつハリケーンミ●サーで俺がバラバラにされてもおかしくねーよ!
…こうして、中佐殿は深夜12時前には明日の電車に遅れるといけないので今日はここまでにしましょうと僅か2時間ばかりで切り上げ、終始、紳士的な態度を崩す事なく夜のビジネスツールを終了した…
ちなみに、この日の支払い額はいつもニコニコ現金払いで済む額であり、前回、中将殿を接待した際は鈴谷のアホンダラがチョーシに乗ったのでカード払いだった…まぁ、アレは中将殿も鈴谷のビッチパイに思わずニコニコだったから仕方がない、それが大人の特権だよ
◆◆◆
中佐殿とグラマラスモンスターが去った後日…
いつものマックス大冷房の執務室…
「結局、艦娘たらしの技はよくわからなかったな…」
「あくまで、噂でしたからね」
天海の野郎がわざわざ要警戒の連絡入れてくるぐらいだから、どんなすげーモレス●アーツの使い手かと思ったら、びっくりするほど冴えないオッサンだったし、ウチのバカどもは相変わらず虫捕りだのヤキュウだのバカやってるし…
「あ、そう言えば転属願いが来てますよ」
「誰だよ?鹿島先生か?」
まぁ、最近は減ったが鹿島先生はワリと定期的に転属願い出してくるんだよな…
「いえ、香取先生です」
「ハァ!?マジか!?」
バ…バカな!?あのエレガントで眼鏡な素敵な香取先生がウチから居なくなるだと…?も、もうダメだぁ…もうおしまいだぁ…
「冗談です、小粋なサミダレジョークですよ」
「…オマエ、マジぶっとばすぞ、そーゆー笑えないジョークはやめろ、いや、やめてくれ、俺に効く」
この青髪ロングが………まぁいい、許そう、俺は心が広いからな、そんなジョークでいちいちキレるボゥイではない大人だからな
「ティーッス!提督いるぅー?鈴谷おこ……」
「スネークバ●トォー!」
「づがいぃぃぃぃぃぃ!!!グヘァ!!」
開いた扉から出て来たアホ面を掴み、情け無用の毒蛇の牙が床と顔面をコンニチワさせた
「クズが…」ペッ!
「どこが大人なんですか…」