【登場人物】
明石(12)
野望の工作艦、現金とキャッシュとマネーが本当に好き
金こそ全てと思っているマネーモンスター
夕張(27)
ハッキリ言って自信作でない時はワリと大人しい謙虚メロン、謙虚さは胸に比例してる
鎮守府内に存在する煌びやかな光を放つ夜の店、ナイトクラブHO‐SHOW…
『HO‐SHOWへようこそロミオー!』
軽空母、鳳翔がオーナーを務めるこの店は決して、キャバレーナイトクラブ、略してキャバクラではない
薄い酒と安いツマミをおっぱいの大きな女が勧めてくるだけの店だ
「フーッ〜…なんだい?そのカゴ」
「ウシガエル、ママ捌ける?」
大きめの虫カゴ的な物の中でモ〝ーモ〝ーと最高にイキでイナセな重低音を発する生物、ウシガエル、執務棟の裏でキヨシとリベッチオのアホガキどもがチクショウ!デケェとか言って追いかけ回して捕まえたそうで、あまりのデカさにたまたま近くを歩いていた龍田に自慢してやろうと見せたところ、マジギレされ、今すぐ捨ててくるか今死ぬか選べと迫られたそうだ
「フーッ〜…前に何度かあるさね」
長い煙管から吸った煙をモクモクと吐き出し、ママはモ〝ーモ〝ーさんの入ったカゴに一瞥くれ、そこに置いときなと言って煙管でトントンと火鉢を叩いた
「テキトーな席にでも座ってな、ボーイ」
「ボーイはやめてくれよ、ボーイは、俺もう見合いするトシだぜ?」
「ガタガタ言ってんじゃないよ、アンタなんざ私から見りゃまだまだ“若僧”だよ」
ママとの挨拶を済ませ、週末でもなければ座る席には特に困る事はないテキトーな席に座り、胸ポケから取り出した煙草に火を点けて基地スポを広げた
「フーッ〜…サラトガ今期絶望かぁ〜」
「いらっしゃいませッッッ!明石です!」
「お待たせしましたー!夕張です!」
席にやって来たのは、お金大好き狂乱ピンク明石と自信作と言う名の問題作を作る狂気の天才夕張、当基地きってのロクデナシが手を組んだと言うのかッ!
「………チェンジで」
「まぁまぁ、チェンジとかヤボなコト言わないでくださいぉ〜」
明石のヤツはヘラヘラ笑いながら俺の横に座り、ヘイヘイ疲れてんのかブラザーと肩に手を回してきた
「そうですよ!あ、なんならウェルカムビンタしても大丈夫です!頰にしますか?尻にしますか?」
なんだよウェルカムビンタって、ウェルカムドリンクじゃねぇのかよ、とんだドMサービスだよ、っーかそれ、俺がサービスする側じゃねぇか、なんでコイツの痛みを俺が満たしてやらにゃならんのだ
「いいから消えろ、もうアレだ…あ、鳥海クン呼んでこい、鳥海クン、今日鳥海クン指名するわ」
「まぁまぁ!今日はこの明石で我慢してくださいよ!ね?ね?」
「やかましい、っーかオマエ、店はどうした?店は?なんでオマエがママの店に居るんだ?」
「…少々現金が必要になりまして」
明石は俺から目を逸らして非常にバツが悪そうに顔をそむけた、おそらく、なんかアホなコトでもして生活費が危うくなっているのだろう、まぁ深くはツッコまないでおくか…
「で?夕張、オマエは何事だ?オマエはボチボチいい給料払ってるハズだが…」
「私はキタ●ンブラックとかゆー馬に給料全部突っ込んだらお金がなくなりました!」
予想以上にダメな理由だった…コイツもしかしてバカなんじゃないだろうか?
「だって五月雨ちゃんがこのウマがいいらしいですよ〜って言ったんですもん」
五月雨ェェェェェェ!!とんだ蒼い死神だよ!あの子は!まぁ、そのしょーもない言葉で給料全額ぶっこんだコイツも大概アレだが…
「フーッ〜…まぁいいわ、とりあえず今日はオマエらでカンベンしてやる」
「あざーっす!そんじゃ提督!何か飲んでいいですか?モエ白とか?」
「ブッ殺すぞクソピンクがッ!」
客商売!サービス業!客に酒出す前にいきなり飲んでいいですかとかどんだけ舐めてんだこのクサレ工作艦は、俺は明石の顔面を掴み、生卵を握り潰すかの如く力を込めた
「ギャアアアアアアアア!!痛い痛い痛い!割れる割れる割れるーッ!!ヘッド割れちゃうぅぅぅぅ!!脳漿ブチ撒けちゃうぅぅぅぅぅ!!」
「艦娘ファイト国際条約第一条!頭を掴まれた工作艦は失格になるってハナシだぞ」
俺は明石の顔面を離し、二度とチョーシこいたコト言うんじゃねーぞと吐き捨て、明石は痛いよぉとか言いながらカンベンしてくださいと頭を下げた
「チッ、まぁいい…オイ夕張、ビールだ、ビール、キンキンに冷えた悪魔的美味さのヤツ」
「ビールですね!あと、私も何か頂いてもよろしいですか?」
「ん?あぁ」
「え?」
「え?じゃねーよ、早くビール注げ」
「あ、はい…」
夕張は心なしか、とても残念そうな顔でいつものオリ●ンビールをグラスに注いで俺に手渡した
「オマエもナンか飲んでいいぞ、俺が許す」
「あ、はい………じゃ、ウーロン茶で」
なんだ、意外に謙虚なヤツだな…よく考えれば、コイツはバカ兵器の開発に関しては紙一重のバカだが、それ以外の事はわりと質素で謙虚なんだよな、たまに一緒にメシ食いに行っても大して食わないし
「あ、夕張だけズルいですよ!提督!私も!この明石もドリンクをお願いします!シャンパンとか!」
「土下座しろ」
「厳しいッ!夕張に比べて明らかに私への対応が厳し過ぎるぅ!」
「やかましい、お前には謙虚さが足りんのだ、謙虚さが」
「チッ…わかりましたよ、じゃ、まずは私もウーロンでいいです」
明石の野郎、とりあえず前半大人しくして俺を酔わせて気分良くした後に高価いヤツを入れる作戦に切り替えやがった、っーかここまで露骨でバレバレとかコイツの頭はキヨリベ並にバカなんじゃないのか?
「とりあえずカンパーイ」
「カンパーイ!」
「カンパーイ!」
俺達はそれぞれのグラスを手に、とりあえずお疲れー!と言いながら乾杯をかわした、そういや最近は司令部行ったりとか無駄に疲れるコト続きだったし、たまにはこーゆーのも悪くない
「あ、そういや提督、お見合い行ったんでしょ?ケッコンするんですか?指輪売りますよ、指輪、ウチで買ったら今ならなんともう1個つけますよ」
「しねーし、っーか誰か聞いたんだ?そのハナシ」
「五月雨ちゃんですけど?」
おしゃべりさんか、アイツは…まぁ別にどうでもいいコトだが
「ってゆーか、提督ってホモなんじゃなかったんですか?アレですか?一応、世間体の為ですか?」
「ダ・レ・が・ホ・モだァァァァァ!!ア〝ァ?」
俺は明石の顔面を掴みアルミ缶を握り潰すかの如く力を込めた
「ギャアアアアアアアア!!痛い!痛い痛い痛い!割れるッ!!アカシヘッド割れちゃうぅぅぅぅ!?汚い液撒き散らして砕け散っちゃうよぉぉぉぉ!!」
「やかましい!オラァ!足をふんばり!腰を入れんかぁ!」
明石の頭蓋がメリメリ音を立て、ギブ!ギバーップ!と叫び、ママからうるせぇよ!と怒られたので俺は明石の顔面から手を離してやった
「ハァ…ハァ…ハー……砕けるかと思った、マジで」
「俺はホモでもなければロリコンでもない、わかったか?」
ヒィヒィ言って痛みに苦しむ明石を夕張は心なしか、とても羨ましそうに見ていた気がするが、まぁ気にしないでおこう
ーーー
「何のカラアゲですか?それ?」
適度に焼酎を飲みつつ、この夏に迫る大規模作戦、来たるべき対話の時について3人で話をしていると、ママがジューシィにカラッと揚がったカラアゲを食いなと言ってテーブルに持ってきた
「食っていいぞ」
「マジですか?提督のくせに優しい〜」
明石と夕張がジューシィな鶏肉ウメーと言いながらガツガツと皿に乗った肉をたいらげた、キヨシとリベッチオにはウシガエルはちょっと長い旅に……争いも、奪い合いもない場所、エデンへと旅立ったと伝えておこう