不健全鎮守府   作:犬魚

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全三回の余分な回、とりあえず今回で花嫁編は終了です

【登場人物】

日女大佐(4)
通称、ヒメ
色々とめんどくさい性格とめんどくさい行動力を持つめんどくさい女性将校

有馬貴子
通称、有馬姉
有馬優の実姉で黒髪ロングの巨乳、件の見合い写真は優と言うよりは貴子に似ている


提督の花嫁編 延長戦

「あ、そう言えば…」

 

基地への帰路、行きと同じく鈍行列車の旅の途中で五月雨がふと何かを思い出したように手を叩いた

 

「提督と大将殿が全裸会議してる間にヒメさんに会いましたよ」

 

「ヒメだと…?」

 

何の用事かは知らんがアイツも来てたのか、別にこっちから会いたいって気は1ミリもないが、珍しく顔を合わせなかったな

 

「ふ〜ん、まぁ俺はアイツに用事ねぇし、相変わらずウザかったか?」

 

「えぇ、まぁ、そこそこ」

 

アイツが俺に会わずにとっとと居なくなるとは珍しい事もあるもんだ、いつもならしつこくまとわりつくが…まぁ、アイツはアイツで忙しいんだろう、職務に忠実で良い事じゃないか

 

「ちなみに、なんか言ってたか?」

 

「コレと言って特には……あ、でも提督がお見合いするって話をしたら、目がこう……カッ!!と開きました」

 

「ふ〜ん」

 

「それで、どこの誰とお見合いするって話をしたらなんか用事があるとか言って去って行きました」

 

「………イヤな予感しかしねぇな」

 

「えぇ、私もちょっと失敗したかなって思ったんですけど〜……当日は意外と何事もなかったですね」

 

「そうだな」

 

はて?あのアホンダラのコトだからそんな他人事の面白イベント、面白がって見に来るぐらいは平然とやるだろうとは思ったが、たしかに何事もなかったな…

 

「まぁどうでもいいか、五月雨、茶くれ、茶」

 

「はいはい」

 

◇◇◇◇

 

有馬

海軍にて様々な用途で使用されている特殊マテリアルを扱う国内を拠点とする製造業、その企業規模は広く、一見すると関係のなさそうな服飾や食品業にもグループの会社が存在している

 

「それで?海軍の大佐殿が唐突に何の用だ?」

 

最近建てられた真新しい社屋、有馬企業グループ広告会社の応接室で、顔馴染みとは言え突然やって来た海軍将校と面談をするのは腰まで届く長い黒髪とキレ長の眼、なんとなくネコ科の猛獣を連想させる雰囲気を持つ女性、有馬貴子

有馬の長女であり、有馬優の実姉

 

「ちょいとタカティン!ナニ人のオモチャに手ぇ出してるんすか!」

 

そして、応接室にて有馬貴子と向かい合って座るのは開いてるのか閉じているのかよくわからない糸みたいな目をした海軍の女性将校、日女

 

「………ハァ?」

 

「あ、しらばっくれる気っすか?」

 

「しらばっくれるもナニも、何の話かわからん」

 

有馬貴子はナニ言ってるんだコイツと言う表情で急須から湯飲みに熱い茶を注いだ

 

「ヒメさん知ってるんすよ!今日センパイとお見合いするんしょ?そーはいかねーっすよ!」

 

「……ハァ?」

 

「このヒメさんを倒さねー限りお見合い会場へは一歩たりとも近付けねーすからね!カクゴしろっすよ!」

 

日女はソファーから立ち上がり、袖から取り出した鞘に収まったままの短刀を有馬貴子に向けた

 

「………日女、お前が何を言っているのか、まったくわからんのだが?」

 

「まだしらばっくれる気っすか!」

 

「たしかに、私も立場上、見合いだの縁談の話はアホほど来てはいるが………今日はその予定は無い」

 

有馬貴子は内ポケットから取り出したスケジュール帳を開き、改めて本日の予定を確認するが見合いだのなんだのスケジュールは入っていない、むしろ、そーゆー話は可能な限り断っている、たまに渋々受けているぐらいだ

 

「………マジっすか?」

 

「真剣だ」

 

有馬貴子の言葉にも表情にも偽りは無い、基本的に物事を常に真剣を旨とする彼女は嘘を吐かない

 

「え〜…でも、ヒメさん確かなスジから確かな情報を得たハズなんすけど」

 

「そんな事は知らん、ならばその確かなスジとかやら誤情報なのだろう」

 

「マジっすかー!クッソ!マジっすかサミーちゃん!」

 

「そのサミーちゃんとやらに苦情を入れておくといい、あと、オマエは今日の私のスケジュールの邪魔をした代償に平手打ち1発で済ませてやろう」

 

「鬼かッ!!」

 

「鬼ではない、有馬だ」

 

話はこれで終わったとばかりに有馬貴子は席を立ち、突然の来客のせいで時間の詰まった本日の仕事をしようとキャリーバッグに入れてあった現在進行中の案件に必要な資料一式を取り出し机に広げた

 

「そう言えば……今日は妹が見合いの日だからと朝からバタバタしていたな」

 

「妹?タカティン妹居たんすか?」

 

「あぁ、歳は離れているがな、あとタカティンと呼ぶな」

 

「へいへい………ってマジ初耳なんすけど?兄妹ってお兄様だけじゃなかったんすね」

 

「あぁ、まだ11…だったか、それに、あまり表に出たがらない子だからな」

 

「ふ〜ん」

 

日女は特に興味なさげに急須から湯飲みに茶を注ぎ、御茶請けに出された豆大福を口に放り込んだ

 

「ちなみに写真を見るか?ん?写真を、どうだ?可愛いだろう?」

 

「近い近い近い!んな目の前に出されても見えねーっすよ!」

 

有馬貴子は妹の写る写真を取り出し、珍しく少しハシャいだ様子で嬉々として日女に見せた

 

「優といってな、どうだ?可愛いだろう?うん、まさに目に入れても痛くない子とはこの子の事だろう、どうだ?あ、言っておくがこの写真はやらんぞ、私のお気に入りの1枚だからな、だがオマエがどうしても言うなら私が納めている写真ファイルの中から1枚を選び、その時に撮影した状況と妹の可愛いさを詳しく説明してやっても構わんが…」

 

「近い近い!マジ近い!ってかそんなヒマあるんすか!?」

 

「まぁ別に急ぐ仕事でもないしな、その気になればすぐに終わる」

 

「さっきスケジュール邪魔したからビンタするって言ったじゃねーっすか」

 

「それはそれ、これはこれだ」

 

ーーー

 

「ハナシはとりあえずイヤってほどわかったっす」

 

「そうか、オマエにもわかって貰えて嬉しいぞ」

 

結局、午前中全てを消費し日女は有馬姉から有馬妹が如何に可愛いかをウンザリするほど聞かされた

 

「ところでタカちゃん」

 

「タカちゃんではない、有馬貴子だ」

 

「そんな眼球に挿入れても痛くない妹がお見合いとか普通に一大事なんじゃないすか?」

 

ここまで聞いた話から察するに、この有馬貴子は妹を溺愛している、クラスの男子と会話しただけで自慢の愛刀、こてっちゃんで惨殺するレベルで溺愛しているだろう、龍●閃ではなく、龍●閃・惨で

 

「…まぁ、一大事ではあるが、妹の意志を尊重するべきと思ってな」

 

「ハァ?」

 

「あのいつも引っ込み思案な優がどうしてもと駄々をこねるなど初めてだったのだ」

 

有馬貴子曰く、引っ込み思案だが聞き分けの良い可愛い末っ子のおそらくは初めてのお願いに、自分を含め、兄と両親の心は一撃でヘシ折られて快諾してしまったそうだ

 

「まぁ、会いたい相手はどこぞのチンピラではなく一応、海軍の将校らしいが…」

 

「へぇ〜…まぁ海軍なんてだいたいチンピラっすけど……………ん?」

 

「なんだ?」

 

「タカちゃん、妹ちゃん、今日がお見合いなんすか?」

 

「タカちゃんではない、有馬貴子だ、さっきそう言っただろう?朝、慌ただしく出かけたと…」

 

「んんん〜?」

 

日女の脳内を電撃的に駆け巡る思考、五月雨から聞いたのはお見合いが今日と言うコトと、相手は有馬のお嬢様と言う情報…それ故に、相手は旧友でもあるこの目ツキの鋭い黒髪ロングの巨乳だと断定し、こうして乗り込んで来た日女だったが、それは大きな勘違いだったのでは…?

 

「クソッ!ヤラれたッ!!」

 

「なんだ?唐突に」

 

「いやいやいや、でもまぁセンパイはそーゆー趣味の人じゃねーし、まぁ相手が黒髪ロングで巨乳のタカちゃんじゃなかっただけ結果オーライな気が…」

 

「なんの話かはよくわからんが、その豆大福食べたらもう帰れよ、こう見えても私は忙しい身だ」

 

◆◆◆

 

「あー…やっと帰ってきたなぁ」

 

「そうですね」

 

鈍行列車の旅を終え、駅からタクシーに乗って懐かしの我が家?いや、我が基地へと帰還を果たした俺と五月雨、俺はタクシー料金を支払い、基地正門の前へと降り立った

 

「おーい!大提督様の帰還だぞー!」

 

門に向かって声を上げてみたものの、反応がない

 

「この時間だから正門は閉まってますよ」

 

「自分の城に入るのに、裏口から入らねばならない理由があるかね?」




次回は通常運転

大ビッチの帰還

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