不健全鎮守府   作:犬魚

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戦慄!熊野改二!

【登場人物】

提督(139)
世間体を気にする大人

熊野(19)
とっくにご存じなんでしょう?私はアナタをぶっ飛ばして差し上げる為にやってきた神戸生まれのオシャレな重巡、穏やかな心でありながら激しいエレガントに目覚めた伝説の航巡


提督と熊野と滅多なサービス

改二改装ッ!それは、改を超えた改の力、改と言う力の奥にある“門”を開けた者のみが進入する事ができる更なるステージ!

 

「熊野ですわーッ!」

 

「お、おう…」

 

喫煙所で煙草を吸う前に、自販機で最高にイキでイナセなドリンクでも買って行くかと自販機コーナーに来た俺は財布から小銭に取り出し、何を買うかを考えていると、自販機の近くにある扉が勢い良く開き、熊野っぽい何かが………いや、熊野か

 

「なんだ?イメチェンか?」

 

「イメチェンではありませんわ、私、改二になりましたの」

 

「ふ~ん」

 

あ~…そういや最上型が近日中にどーのこーのってなんか上からFAXが来てたな、コイツのコトだったのか、まぁイメチェンと言う程イメチェンでもないんだが…

 

「そりゃ良かったな、提督がお祝いにジュースでも買ってやろう」

 

「ではオレンジジュースで!」

 

「オレンジね、オレンジっと…」

 

俺は自販機に小銭を入れ、オレンジジュースのボタンを押してやった

 

「ありがとうございま………む!?」

 

「なんだ?」

 

「コレ、オレンジジュースではありませんわ」

 

「バカ言うんじゃないよ、俺はオレンジジュースのボタン押したろーが」

 

熊野は取り出し口から取り出した缶をずいっと俺の目の前に押し付けた、むしろ目の前っーか、目にだが…冷てぇーよ!

 

「近い近い!ってか冷たい!」

 

「この赤さ………コークですわね!」

 

たしかにコーラっぽいな、たまにあるんだよな、缶を補充する時に間違ったスロットに補充して見なかった事にしようってそのままスルーする事が……たぶん明石のアホンダラがそのままスルーしたんだろう

 

「たしかにコーラだな、ちょっと貸してみろ」

 

「?」

 

俺は熊野から受け取ったコーラの缶を全力で縦横無尽に振り、再び熊野に手渡してやった

 

「ほらよ」

 

「ファーックス!なんで振りましたのォ!?」

 

「親切心だ、あとFAXじゃないFuckだ」

 

「クッ!なんて外道………ありえませんわ!アナタこそまさに最低のクズ…ッ!」

 

「最低のクズじゃない、提督だ」

 

まぁ、上手に炭酸を抜けばマラソンランナーも愛飲するきわめてエネルギー効率の良い飲み物になるらしいしな、良い事した後は気分がいい、思わず鼻歌でも歌ってしまいそうだよ

 

「まぁ、これは後で鈴谷にあげましょう」

 

「お前こそ最低のクズだよ」

 

熊野は炭酸爆弾と化したコーラの缶をポッケにしまった

 

「では改めてオレンジジュースを買ってくださいまし」

 

「やだよ、もう小銭ねぇもん」

 

「ファーックス!!」

 

熊野は相変わらず微妙に間違った英語を叫びながらエレガントさの欠片もないキックで壁を蹴った

 

グギッ!!(鈍い音)

 

「うぎゃああああああ!!折れたァァァ!私の足が折れましたわー!!」

 

鈍い音がした蹴り足を抑え、熊野は床を転げ回った………ナニやってんだコイツ、アホなのか?ってか壁に負けるとか何を強化したんだよ、改二改装したんじゃねぇのか?

 

「痛い痛い痛いですわァァァァァ!!」

 

「アホか、オマエは」

 

「い…医務室っ!医務室へ運んでくださいまし…っ!」

 

「甘えるなゴミが、立って歩け、前に進め、オマエには立派な足がある」

 

「その立派な足が今は緊急事態なんですのよ!ほら!早く運んでくださいまし!早く!ハリー!ハリー!ハリー!」

 

「吸血鬼かオマエは」

 

このアホをこのまま此処に放置して立ち去りたいところだが、後に誰かが通りがかった際にこのアホから俺が助けなかっただのあることないこと吹聴されるのも困る

 

「肩を貸してやるから立て」

 

「イヤですわ!」

 

「なんでだよッ!?」

 

「私、ONBUを所望致しますわ!」

 

ナニ言ってんだコイツ?イカレているのか?

 

「…はぁ?」

 

「さぁ背負いなさい!私を!丁寧にですわよ!」

 

「やかましい、何様だテメーは」

 

「失敗は許されませんわよ!無事に持ち上げるんですわよ!」

 

…女を殴りたいと思ったのは生まれて初めてだ

まぁいい、持ち上げろと言うなら持ち上げてやろうじゃないか、俺は熊野の身体を持ち上げて肩の上に仰向けに乗せ、顎と腿を掴んだ

 

「ぐわああああああ!!痛い痛い痛い痛いですわァァァァァ!」

 

所謂、アルゼンチンバックブリーカー!またの名をタワーブリッジ!

 

「やかましい、このまま医務室どころか病院に直行させてくれるわい」

 

「ギバップ!ギバップですわァァァァァ!!」

 

ギバーップと叫ぶ熊野があまりにもうるさいので、とりあえず下ろしてやった

 

「さ…更なるダメージを負ってしまいましたわ、これは立てませんわ…」

 

「だらしないヤツだな、それでも改二か?」

 

「誰のせいだと思ってますの!責任!責任をとってくださいまし!」

 

熊野は床をバシバシと叩き、とにかくおぶれと駄々をこねる、駆逐艦のキッズじゃあるまいし…どんな駄々っ子だよコイツ

 

「…はぁ、しゃーない、トクベツだぞ?」

 

「でかしたですわ!」

 

俺はこんなサービス滅多にしないんだからね!と念を押して熊野の身体を背負った

 

「………重い」

 

「失礼ですわね、生き埋めにしますわよ」

 

「やかましい、ドブに捨てるぞ」

 

「ごめんなさいですわ」

 

とりあえず、医務室に向かって廊下を歩き出した俺、なんだろうな?背中に当たるもの的な役得が何もないこの残念な感じは…

 

「こうやって歩いてますと、幼き日を思い出す……アレですわ!ノストラダムス!」

 

「思い出さねーよ、あと、ノスタルジックだ」


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