季節とイベントは積極的に取り入れるスタイル
【登場人物】
足柄(8)
通称、ワイルドウルフ
もう取り返しがつかないレベルに両足を捕られている、長姉から子持ち処●とディスられている
大淀(7)
足柄とはすげー友達
姉妹がいない故に孤独の時代を過ごした過去があるってばさ
「うっお―っ!! くっあ―っ!! ざけんな―っ!」
「オイ!足柄サンがまた荒れてんべ!」
「超怖えー」
妙高型重巡の三番艦、足柄、通称ワイルドウルフ、宿命の決着!父を殺したあの男との壮絶な戦いの結末は駆逐艦のキッズ達から憧れの対象とされている
「どうしたァ?足柄ァ…」
荒れて椅子とテーブルに当たり散らす、そんな近寄り難い足柄に平然と近寄るインテリ眼鏡系軽巡、大淀
足柄とは共にヤンチャな青春を過ごし、恋、喧嘩、単車、二人の青春グラフィティは昔の週マガに載ってても遜色ないと噂されている
「まぁ落ち着けよ足柄よォ~…ここはキッズのリゾート、談話室だぜ?見ろ、キッズ達がビビってデュ●マできねぇじゃねぇかよォ~」
憩いのスペース、談話室
広めのフローリング、寝転がれる畳敷き、誰かが持って来て放置した微妙に巻数が抜けてる漫画本、そしてスーパーファミ●ン内蔵テレビ、艦種を問わずに誰しも楽しめるスペースである談話室で、暁ちゃん達姉妹はデ●エマを楽しんでいたが、荒れ狂う足柄にビビって部屋の隅でガタガタ震え上がっていた、ちなみに、暁ちゃんはあまりの恐怖にジュースをスカートにこぼして別の意味でも泣いていた
「…フッ、私としたことが」
足柄はその様子を冷静に分析し、財布から数枚の紙幣を取り出して一番近くにいた雷にスタイリッシュに投げて渡した
「どうやら私のスカートが暁ちゃんのジュースを飲んじゃったみたいね、次は500mペットボトルを買うといいわ」
「ヒュー!足柄さんオトコマエー!」
「さすが足柄サン!“強い男”と書いて足柄サン!」
「ハラショー!お前のデュ●マは周回遅れだよ」
キッズ達は足柄に頭を下げ、キャッキャとハシャぎながら談話室から去って行った
「………で?いつものコトだが、ナンで荒れてんだオマエ?合コンか?」
大淀は手近な椅子に座り、スマホをポチポチとイジりだした
「行ってねーし、っーかあのオッサンに優良物件のイケメン紹介しろって言ってんのにロクなヤツしか紹介しねぇし」
先日、提督に超イケメンで超性格がいい超優良物件紹介してくれと頼んだら、なんか大本営の技術なんたらとか所属のイケメン大佐ならアテがなくもないとか言ってたので詳しく話を聞くと、変態だった…
「変態じゃ仕方ないな」
「イケメンでも変態はさすがにないわ」
足柄は机に置いてあったミロの瓶を手に取り、粉をスプーンで拾いコップに入れてポットからお湯を注いだ
「…まぁ、アレよ?午前中にキヨシとアサシとカスミとデパート行ったワケよ」
「ハイ来たよ!またコイツ!ハイ、コレだよ!また礼号仲間の私をのけものにするよこのヤバンナウルフはーッ!」
大淀は机をバンバン叩き、いつものように置いてけぼりを喰らった事に怒り狂った
「ハァー?ナニ?なんでいつも置いてくの?なんで声かけねーの?おかしくね?私は礼号組の仲間じゃねーの?礼号組にはケモノもいるけどのけものもいるの?え?ナニ?のけもの?私はのけものってワケですかー?ねぇー?足柄クゥン?えー?足柄クゥン?」
「やかましい!っーか、朝、ちゃんと声かけたろーが!」
「寝てますぅー!朝とか普通に寝てますぅー!昨日ネトゲ終わって、なんかムラムラしたんでオ●ニーしてから寝たんで疲れてたんですぅー!」
「それ朝の話だよ」
「は?」
大淀はピタリと動きを止めた
「朝、キヨシとアサシがオマエ呼びに行ったら大淀さんが悪魔に取り憑かれたーとか言ってから何事かと思って覗いたら自家発電中とかマジ焦ったわ」
「…マジ?」
「マジ」
大淀は冷静になって考える、そう言えば、ネトゲをログアウトしたのは何時だったろうか?そもそも、自分の部屋の遮光カーテンはかなり遮光性抜群なので夜も朝もわかり辛い…
「マジかぁ~…」
「マジ自重しろよ、マジで、エクソシスト呼ばなきゃとか言われるとか、どんだけ激しいんだオマエ」
「……スイマセン」
「とりあえず、キヨシとアサシには大淀とサタンの争いは私達ではどうにもならないから大淀を信じろって言っといたから」
「……スイマセン」
‐‐‐
「で?デパート行ってナニ?ナンか買った?」
「別に、あ、お土産にデパ地下スウィーツあっから」
「ヒュー、さすが足柄」
特に意味はないけどデパ地下スウィーツと言うだけでテンションが上がる、コレ、ギ●ルの鉄則
「大淀、オマエ今日ナンの日か知ってる?」
「今日…?」
5月の14日、今年は5月の第2日曜日…
「………千代の富士が引退?」
「バカか」
ちなみに、大鵬も引退した
「まぁアレだ、デパート行ってブラブラしてたらなんか催事場でイベントやってたのな」
「何のイベントだよ?」
「母の日」
「あー………」
死んだ魚のような目をして母の日と呟く足柄を見て全てを察したのか、大淀はカップのミロを一口飲んだ
「なんかカーネギー?ほら、なんかカーネギーとかそんな感じの花売ってたのな」
「カーネーションな」
「で、今、カーネーションを買うとかわいいヌイグルミが貰えるよとかなんとか言ってんの」
「へぇ~…なんのヌイグルミ?」
「なんかビオラ●テみたいなやつ」
「かわいくねぇ!!それただの売れ残りの在庫処分だろォ!」
「で、それ聞いたキヨシとアサシが欲しい欲しいってゴネまくり、カーネーションカーネーションって私の袖引っ張りまくり」
「あー、あるある」
「で、隣のカスミはカーネーションとかバカじゃないの!カーネーションなんて臭いだけじゃない!スンスン…!うぷっ!なんて臭いなの…っ!臭い!スン…!臭すぎるわ!なんでこんなもの欲しいのか理解できないわね!って罵倒してるけどヌイグルミチラチラ見てそわそわしてんのな」
「礼号組のお姉さんとしてはカスミの将来が心配になってくるよ」
「で、あんまゴネられても鬱陶しいし、一番安いやつ買ってこいって金渡したのな」
「オマエ、ホントに子供に甘いのな」
キヨシとアサシはカスミの手を引いて売り場へ行きカーネーションを購入し、無事、バイオ怪獣みたいなヌイグルミも手に入れた
「で、だ…」
「なんだよ?」
「その、買ったカーネーションがコレだ」
足柄は机の下から3つの花束を取りだし、うなだれるように机に両肘をついた
「………貰ったんか?オマエ」
「………あぁ」
どんな形であれ、贈り物は嬉しいものだ、しかし、今日の花は違う…ッ!何故なら足柄にはその花を貰う資格がそもそも無いのだから…ッ!
妙高姉さんからディスられている現実を思い出し、足柄は声無き野獣の咆哮を上げた
「足柄ェ…」ポロポロ
大淀はそんな足柄の心中を察し、友の為に涙を流した
「わかるってばよ…足柄、オマエの気持ちすげーわかるってばよ…」
「大淀ェ…」ポロポロ
姉妹のいる足柄、最初から孤独だった大淀、2人の間にはたしかな絆があった
「ママの店に行こうぜ、今日は私が奢るわ」
「大淀ェ…」ポロポロ
次回は第四海域
激突!オタサーの姫!